ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
その後も、マツリカとの旅は続いた。
グレンタウンでは、カツラさん主催のグレン火山を巡るクイズラリー大会に挑戦した。
優勝賞品のポケモンのタマゴをかけて頑張ったんだけど、最後の最後で私もマツリカちゃんも間違えちゃって落とし穴にドボン。タマゴはピカチュウとヒトカゲを連れたトレーナーがゲットした。
マサラタウンでは、バッジを8個集めたサトシと再会した。
お昼寝するピカチュウとリオルを、みんなでスケッチしたりもした。
起きた後の、恥ずかしそうにしていたリオルを描き忘れたのは一生モノの後悔である。
こうして振り返ってみると、随分と色々な場所を巡ったものだ。
そして――。
「ここがオコリザルと出会った四番道路だよ」
「へぇ〜。一見、人の通る道だけど……」
マツリカが道の脇へ視線を向ける。
「ちょっと逸れればポケモンの草むら。これがカントーの道なんだね」
これまで何気なく歩いてきた道も、アローラ地方から来たマツリカの目には新鮮に映るらしい。
アローラかぁ……。
私もちょっと気になってきた。
「アローラの道って、野生のポケモンが多いの?」
「野生のポケモンも多いけど、近所の人が飼ってるニャースやイワンコ、それにケンタロスライドのケンタロスなんかも多いね」
マツリカは楽しそうに話す。
「いろんなところに、絵になるポケモンがいるんだ」
「へぇ……」
ポケモンライドは、機械の乗り物が中心のカントーではあまり普及していない。
そこは地方柄ってやつなんだろうな。
「そういえば、マツリカはアローラでどんなところを旅してたの?」
「海とか、雪山とか、火山とか……あとは森かな」
「結構いろんなところに行ってるんだね」
「うん。アローラは小さな島が集まった地方だから、少し移動するだけでも景色が変わるんだ」
そう言って、マツリカは周囲を見渡す。
「カントーも好きだよ。大きな街があって、そこから少し離れると自然が広がっている。人とポケモンが暮らしている場所と、野生のポケモンが暮らしている場所が、近いようで少し違う」
「……言われてみれば、そうかも」
自分が生まれ育った地方なのに。
誰かに言われて初めて気づくこともある。
「だから、もっと見てみたいんだ」
マツリカはスケッチブックを抱えながら笑う。
「カントーのポケモンが、どんな場所で暮らしているのか」
「じゃあ、次はどこに行く?」
「うーん……」
マツリカが空を見上げる。
「まだ見ていない場所がいいな」
「それなら――」
私は少し考える。
「四番道路の奥に、小さな森があるよ。野生のポケモンも多いし、木の実もたくさん採れる」
「行ってみたい!」
「よし、決まり!」
◆
四番道路の脇道。
二人で歩いていると、木々の間からポケモンたちの鳴き声が聞こえてきた。
「わぁ……!」
マツリカが目を輝かせる。
木の上にはポッポ。
草むらにはナゾノクサ。
少し離れたところでは、サンドが地面を掘っている。
「すごい……!」
マツリカは夢中でスケッチブックを開く。
「リーフ! ちょっと待って!」
「ん?」
「今のポッポ、すごく綺麗だった!」
「え?」
「もう一回、あっちを向いてくれないかな……」
そう言って、マツリカはゆっくりポッポへ近づいていく。
すると――。
「ピジョッ!」
ポッポが驚いて飛び立った。
「待ってー!」
マツリカも追いかける。
「ちょ、ちょっと!」
私も慌てて追いかける。
そして――。
「わっ!?」
マツリカが木の根に足を取られた。
「マツリカ!」
咄嗟に手を伸ばす。
なんとか腕を掴んだ。
しかし。
「きゃっ!」
私まで引っ張られる。
二人の身体が、そのまま斜面を転がっていく。
「うわあああああ!」
「きゃあああああ!」
ゴロゴロゴロ……!
「痛っ!」
最後には、二人揃って地面に倒れ込んだ。
「……」
「……」
顔を見合わせる。
「……大丈夫?」
「……うん」
マツリカは少し笑った。
「リーフは?」
「私も大丈夫」
二人で立ち上がる。
幸い、大した怪我はない。
ただ――。
「……ここ、どこ?」
周囲を見渡す。
いつの間にか、道からかなり外れてしまったらしい。
「うーん……」
マツリカがスケッチブックを抱え直す。
「ちょっと迷っちゃったね」
「大丈夫。来た方向は分かるから――」
その時だった。
「グルルル……」
「……」
聞き慣れない唸り声。
私は足を止めた。
「マツリカ」
「うん」
私たちはゆっくりと振り返る。
木々の向こう。
そこから姿を現したのは――。
「……オニドリル?」
一匹。
二匹。
三匹。
さらに、その後ろから何匹ものオニドリルが姿を現す。
「こんなに……?」
様子がおかしい。
羽毛は逆立ち、目は血走っている。
明らかに興奮している。
「どうしたんだろう?」
マツリカが一歩前へ出る。
「近づかないで!」
私は慌てて腕を掴む。
「何かに怒ってるみたい!」
「でも……」
マツリカはオニドリルたちを見つめる。
「怖がっているようにも見える」
「え?」
その言葉に、私は改めてオニドリルたちを見る。
確かに。
怒っている。
けれど――。
それだけじゃない。
怯えている。
何かから逃げているような――。
「グワアアアアッ!」
突然、先頭のオニドリルが突っ込んできた。
「危ない!」
私はマツリカを抱えて横へ飛ぶ。
ズドォン!
鋭い嘴が地面へ突き刺さる。
「リーフ!」
「大丈夫!」
私はすぐに立ち上がる。
「オコリザル!」
「ムキムキッ!」
ボールから飛び出したオコリザルが、二人の前へ立つ。
「頼んだよ!」
「ムキァ!」
オコリザルが拳を構える。
「れいとうパンチ――」
その瞬間。
「待って!」
マツリカが声を上げた。
「え?」
「この子たち……私たちを襲いたいわけじゃない!」
「でも!」
「違う!」
マツリカはオニドリルたちの後ろを指差した。
「見て!」
そこには――。
倒れた木。
荒らされた巣。
そして、木の実を根こそぎ奪われた跡があった。
「……」
なるほど。
この子たちは、自分たちの住処を追われている。
だから混乱して、近くにいた私たちへ襲いかかってきたのだ。
「でも、このままじゃ……!」
オニドリルたちが再び翼を広げる。
「逃げよう!」
私が叫ぶ。
しかし――。
「グワアアアアッ!」
「きゃっ!」
数が多すぎる。
一匹を避けても、次の一匹が迫ってくる。
「ひゃん!」
マツリカがバランスを崩した。
「マツリカ!」
私はマツリカの腕を掴む。
だが、その瞬間。
巨大な影が私たちの前へ飛び込んできた。
「オコリザル!」
「ムキムキッ!」
ドゴォン!
オコリザルが両腕を広げる。
その身体に、オニドリルの攻撃が次々と叩き込まれた。
「オコリザル!」
「ムッ……ッ!」
「やめて!」
マツリカも叫ぶ。
それでもオコリザルは退かない。
何度攻撃されても。
何度吹き飛ばされても。
私たちの前から動かなかった。
「なんで……」
私は呆然とする。
オコリザルはいつも怒っていた。
怒りを力に変えて。
その怒りを抑えることができるようになって。
それでも、まだ怒りそのものを完全に消すことはできなかった。
けれど――。
今のオコリザルは違う。
怒っている。
確かに怒っている。
でも、その怒りは自分のためじゃない。
「……私たちを守ってるの?」
「ムキッ!」
オコリザルが吠える。
その声が、森全体を震わせた。
「オコリザル!」
私は拳を握る。
「もういい! 私たちも戦う!」
「リーフ!」
「この子一人に任せられない!」
私はモンスターボールを握る。
「マツリカ、下がって!」
「分かった!」
オニドリルたちが再び飛び立つ。
その瞬間――。
「……ウガ」
オコリザルが、ゆっくりと拳を握った。
「え?」
身体が震えている。
傷だらけになって。
何度も攻撃を受けて。
それでも倒れない。
そして――。
オコリザルの中で、何かが弾けた。
「ムキムキィィィ!!」
凄まじい咆哮。
周囲の空気が震える。
「オコリザル……?」
拳に力が集まっていく。
今までとは違う。
怒りそのものを叩きつけるような、激しい力。
けれど。
その力の根底にあるのは――。
「……私たちを守りたいって、思ってるの?」
私は呟く。
オコリザルがこちらを振り返った。
そして――。
ニッと笑った。
「……!」
次の瞬間。
オコリザルが地面を蹴る。
「ウガアアアアアッ!」
「オニドリルたちが来るよ!」
「リーフ、見て!」
マツリカが叫ぶ。
オコリザルの拳が、真っ赤に染まっていく。
怒り。
そして――。
私たちを守りたいという強い想い。
あらゆる感情が、拳の中で一つになる。
「これって……!」
私は息を呑む。
オコリザルが拳を大きく振りかぶる。
「ムキムキィィィィィッ!!」
ドゴォォォォン!
地面が爆ぜた。
攻撃を何度も受けて、限界まで溜まったふんどのこぶしが炸裂する。
その衝撃が、一直線にオニドリルたちを吹き飛ばしていく。
「……!」
森を覆っていた騒音が、一瞬で消えた。
オニドリルたちは地面に倒れ込み、動かなくなる。
「……オコリザル?」
オコリザルは、ゆっくりとこちらへ振り返った。
「……」
身体は傷だらけ。
呼吸も荒い。
それでも――。
拳だけは、まだ強く握られていた。
「……凄い」
私は、思わず笑みを浮かべる。
「オコリザル。あなた、ちゃんと強くなってるんだね」
「ムキッ!」
オコリザルが胸を張る。
進化したわけじゃない。
姿も変わっていない。
それでも。
今の一撃には、これまでとは違う何かがあった。
怒りだけじゃない。
悔しさだけでもない。
仲間を守りたいという気持ち。
そして――。
私たちと一緒に戦いたいという意志。
それらすべてが、あの拳に込められていた。
「ふんどのこぶし……」
私は小さく呟く。
「これが、あなたの力なんだね」
「ムキィ!」
オコリザルが拳を突き上げる。
「ふふっ」
私はその拳に、自分の拳を軽く合わせた。
「よく頑張ったね」
「ムキッ!」
◆
「でも、どうしてオニドリルの巣がこんなに荒らされているの……?」
オニドリルは強いポケモンだ。
ちょっとやそっとじゃ、巣を荒らされたりしないはずだが……。
その時だった。
嫌な波動を捉えた。
「ぐへへ、ポケモンが大量だぜ!」
木々の向こうから聞こえてきた下卑た笑い声。
「……この波動は」
姿を現したのは――。
黒ずくめのロケット団だった。
彼らは森を荒らし、野生のポケモンを乱獲していた。
「やめなさい!」
私はロケット団を睨みつける。
「森を傷つけないで!」
マツリカも声を上げる。
「チッ、見られたか!」
ロケット団員が舌打ちする。
「黙らせろ! ニドキング!」
「ニード!」
ロケット団のニドキングが前へ出る。
「ポケモンたちをこれ以上、苦しめさせない!」
ボールを投げる必要すらない。
「オコリザル!」
「ムキッ!」
進化したばかりではない。
それでも――。
さっきの戦いを終えたばかりの拳には、まだ熱が残っている。
「一気に決めるよ!」
私は左腕のZリングを胸の前へ構えた。
「オコリザル――」
呼吸を整える。
左腕を引き。
右腕を突き出す。
全身を使って、オコリザルへ力を送る。
「全力無双激烈拳!!」
「ムキムッキィィィィィ!!」
オコリザルから、莫大な闘気が溢れ出す。
それは拳へと集まり――。
次の瞬間。
ドゴォォォォォン!!
凄まじい衝撃が森を駆け抜けた。
「ニ、ニード……!」
ニドキングはそのまま吹き飛ばされ、後方のロケット団員たちを巻き込みながら彼方へ消えていく。
「うわあああああっ!」
そのまま不埒な輩は空の彼方へと吹き飛んでいった。
◆
「……」
私は、しばらく動けなかった。
今のZ技。
これまで繰り出してきた、どのZ技よりも強かった。
「これが……オコリザルの力……」
オコリザルを見る。
進化していない。
それでも。
身体中から溢れ出している力が、今までとは比べ物にならなかった。
「これが、今のあなたの力なんだね」
「それだけじゃないよ」
「マツリカ?」
隣に立つマツリカが、私を見る。
「今のゼンリョクポーズ。リーフからも、すごい力を感じた」
「私からも?」
「うん」
マツリカは、静かに頷いた。
「Z技は、人とポケモンが心を合わせて自然と一つになり、守り神への敬意を示す祈りでもあるんだ」
「……」
「あなたの守り神が誰なのかは、私には分からないけれど――」
マツリカは、コノヨザルを見る。
「今のあなたとコノヨザルは、確かにカントーの大自然と一つになっていたよ」
「自然と、一つに……」
その言葉を、胸の中で反芻する。
そうか。
ナツメさんが言っていた『世界を知る』っていうのは、そういうことだったんだ。
ただ強くなるだけじゃない。
大自然の中でポケモンと生きる。
人とポケモンが全てを分かち合い、同じ方向を向く。
それこそがZ技の真髄。
「……」
私はマツリカへ向き直る。
そして、頭を下げた。
「マツリカ。ありがとう」
「……?」
「あなたのおかげで、大事なことに気がついたよ」
マツリカは少し驚いた顔をした。
けれど、すぐにいつもの笑顔を浮かべる。
「私も、この数日楽しかったよ」
そして、スケッチブックを胸に抱える。
「カントー案内、ありがとう」
「ううん。私のほうこそ、ありがとう」
互いに礼を言ったあと。
私たちは顔を見合わせ――。
「ふふっ」
「えへへ」
自然と笑い合った。
こうしてマツリカとの旅は――。
私にとって、ただの観光では終わらなかった。
リーフに使わせたいZ技
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ノーマル
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くさ
-
でんき
-
ドラゴン
-
フェアリー