ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
「マサラタウンの近くにある植物園、ムラサメ植物園に行きなさい。そこで第2の試練が待ってるわ」
そうナツメさんに言われて、やってきたのはどこか寂れた植物園だった。
管理人のニワカゼさんに案内され、植物園で育てられている珍しい植物を見て回る。
嗅いだポケモンに酩酊作用をもたらし、酒の材料にも使われるというポケモンマタタビ。
技の『しびれごな』と同じ麻痺毒の成分を持つ危険な草、しびれ草。
古来よりシンオウ地方を中心に食べられているケムリイモの突然変異種、ユメノケムリイモ。
「うーん……」
私は周囲を見渡す。
「どれも珍しい植物だけど、試練というには少し違うような気が……」
「確かにムラサメ植物園では危険な植物も育てているけど、試練というべきものはないかな」
ニワカゼさんも首を傾げる。
「何か困っていることとか、ありませんか?」
そう尋ねると、ニワカゼさんは一つ心当たりがあると教えてくれた。
「ムラサメ植物園の管理者であるリンドウさんのクサイハナの成長が、どうも良くないんだ。良かったら、見てくれないか?」
「分かりました」
そう言われ、私たちはリンドウさんに会ってみることにした。
◆
「初めまして。ムラサメ植物園を管理しているリンドウです。こちらが私のクサイハナです」
「クサ〜」
「バナー」
リンドウさんのクサイハナは、フシギバナの背中に咲く大きな花へ興味津々だ。
植物が大好きな主人に似ているのだろうか。
「成長が良くないと聞きましたが……」
「ムラサメ家では、植物ポケモンを立派に育てるのが家訓なんです。私もそれに倣ってクサイハナを育てているのですが……太陽の石を与えても、キレイハナに進化しなくて」
「ふむ……」
進化の石を使っても進化しないポケモン、か。
「……」
……いたな、うちのイーブイが。
「案外、珍しくないのかも?」
「ブイ?」
「そういうものなんでしょうか……」
リンドウさんは不思議そうにクサイハナを見る。
私も改めて観察してみる。
見た目も悪くない。
波動にも特に異常は感じられない。
何より、図鑑に書かれているような強烈な匂いも漂ってこない。
心身ともに健康なクサイハナと言っていいだろう。
「とりあえず、私のイーブイを研究していた研究所に相談してみましょう。そこでなら、きっと専門的な調査が――」
その時だった。
ピィィィィィィーッ!!
植物園中に、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「な、何!?」
「緊急警報だ!」
ニワカゼさんが叫ぶ。
「植物園の奥で、誰かが騒いでいる!」
「行きましょう!」
私たちは急いでサイレンの鳴った方向へ駆け出した。
◆
「これがしびれ草か……」
「気をつけなさいよ。匂いを嗅ぐのはもちろん、鋭い葉で指を切るだけでもアウトなんだから……」
「お前らは!」
駆けつけた私たち三人が見たのは、植物園の草を手当たり次第に奪おうとしている、見慣れた顔だった。
「ヤマトにコサンジ!」
「リンドウさん、この人たち!」
「この前、太陽の石を持ってきた商人さん!」
「……え?」
思わず固まる。
まさか――。
「まあ、あの時の。偽物の太陽の石に大金を払っちゃった、お馬鹿なお嬢様じゃない」
「お陰でロケット団をなんとか復興できたぜ……。それとそこのバイオレンスガール、俺はコサンジじゃなくてコサブロウだ!」
「なんだって!?」
なるほど。
どうやらこの二人、リンドウさんから大金を騙し取ったらしい。
……アコギな商売しやがって。
「リーフさん、どういうことですか!?」
「説明は後! 今はこの人たちを止めよう!」
私はモンスターボールを取り出す。
「やっちゃえ、ロトム!」
「ロトロト!」
ロトムが飛び出す。
「ふっ、これでも喰らいなさい!」
ヤマトは、刈り取ったばかりのしびれ草を握り――。
その汁を、飛び回るロトム目掛けて勢いよく振りかけた。
「残念! 電気タイプには、そんなの効かないよ!」
「なっ!?」
「エレキネット!」
「ロトォォォ!」
バチバチバチッ!
ロトムが電撃の網を放つ。
「「やな気持ちー!!」」
二人はあっという間に電撃に包まれた。
「はい、そこまで!」
駆けつけたジョーイさんとガーディが、電気の網にからまった二人を取り押さえた。
「離しなさいよー!」
「覚えてろよ、バイオレンスガール!」
「はいはい。続きは警察で聞きますからね」
そのまま二人はジョーイさんに連行されていった。
◆
「まさか、騙されて大金を払ってしまっていただなんて……」
リンドウさんはショックで俯いている。
「リンドウさん……」
ニワカゼさんも心配そうに声をかける。
……。
これは、試練どうこうの話ではない。
フシギバナとクサイハナ。
……同じ花ポケモンを愛する同士として、放っておけない!
「……顔をあげてください」
「えっ?」
リンドウさんが顔を上げる。
「悪いのはリンドウさんでもニワカゼさんでも、もちろんクサイハナでもないんですよ!」
「リーフさん……」
「このまま泣き寝入りなんて、神様が許可しても私が許さないんですから!」
「バーナッ!」
私の言葉が伝わったのか、フシギバナも力強く鳴き声を響かせる。
「……クサ」
クサイハナは、少しだけ寂しそうに俯いている。
やっぱり。
この子も分かっているのだ。
自分が進化できないことを、主人が気にしている。
だったら――。
「クサイハナ」
私はしゃがみ込み、その目を見る。
「進化できないからって、悪いことなんて何もないよ」
「クサ……?」
「うちのイーブイだって、進化の石を使っても進化しないんだから」
「ブイ!」
隣からイーブイが胸を張る。
「大事なのは、進化することじゃない」
私はクサイハナの頭をそっと撫でる。
「リンドウさんと一緒に、元気に生きていくこと。それだけで十分なんじゃないかな」
「……」
リンドウさんは黙ってクサイハナを見る。
そして――。
クサイハナの頭を、優しく撫でた。
「……そうですね」
その声は、先ほどまでより少しだけ明るかった。
「私も、いつの間にか『進化させること』ばかり考えていたのかもしれません」
「クサ……」
「ごめんなさいね、クサイハナ」
「クサ〜」
クサイハナが嬉しそうに目を細める。
……うん。
少しだけ、空気が変わった気がする。
でも。
「それはそれとして――」
リンドウさんは立ち上がる。
「本物の太陽の石は探しましょう」
「え?」
「偽物を売りつけられて、大金まで騙し取られたんですよ?」
拳を握る。
「そこは別問題です!」
「……ふふっ」
このお嬢様、一見可憐な花に見えて根っこは雑草の如く逞しいみたいだ。
「そうですね。私たちで探しましょう。本物の太陽の石を」
「はい!」
「私も協力します!」
ニワカゼさんも力強く頷く。
「バーナ!」
「ブイ!」
フシギバナとイーブイも元気よく鳴いた。
こうして――。
私たちは第二の試練ーー本物の太陽の石を探すことになった。
・しょくぶつえんのクサイハナ
当初はサトシやシゲル、ヒロシくんも出す回を書く予定だったのですが、うまく書けなくて没。アニポケ原作をベースにオリジナルの話にしました。代わりにとあるキャラを出す予定です。
リーフに使わせたいZ技
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