ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている   作:はらへりニャンコ

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第58話 ポケモンコンテスト・タマムシ大会

 

 

 

 

 

第一審査は、アピール勝負。

 

制限時間内に、ポケモンとトレーナーが演技を行い、三人の審査員がそれを採点する。

 

そして、第二審査へ進めるのは、得点の高い上位四名のみ。

 

残りの参加者は、ここで敗退となる。

 

「コォ〜ン!」

 

エントリーナンバー1番のロコンが、ほのおのうずで作った炎の輪を潜り抜ける。

 

その身体には、しんぴのまもりによる淡い光。

 

炎の輪を高速で潜るたびに、その炎が赤、青、緑、黄色と色鮮やかに変化していく。

 

「コンコォ〜ン!」

 

「キャー!」

 

「七色の炎が綺麗〜!」

 

「尻尾がまるで絵筆みたい!」

 

観客から大きな歓声が上がる。

 

結果は――。

 

27.5点。

 

いきなりの高得点だ。

 

その後も、モルフォンが27.3点。

 

ケーシィが27.7点、カモネギが27.5点。

 

次々と高得点が叩き出されていく。

 

その様子を、私たちは控え室のモニター越しに眺めていた。

 

「皆さん、凄いですね……」

 

リンドウさんが感嘆の声を漏らす。

 

美しいアピールの裏には、きっと長い時間をかけた特訓があるのだろう。

 

実際、控え室へ戻ってきたトレーナーとポケモンは、みんな汗だくだ。

 

それだけ全力で演技をしているということだ。

 

「……」

 

私はモニターを見つめる。

 

「リーフさん、緊張していますか?」

 

いつの間にか、隣にいたリンドウさんが私の手を握ってくれた。

 

「はい……」

 

限られた時間。

 

その中で、勉強も特訓も全力でやってきた。

 

でも、こうして本番が近づいてくると、どうしても緊張してしまう。

 

しかもステージには大量の照明が設置されている。

 

その熱で、会場内には僅かな気流まで発生していた。

 

実は今回、私たちが用意してきた演目は風の影響を大きく受ける。

 

予定していた動きの一部を変更して、アドリブで対応するしかない。

 

「うう……無事にやれるかな……」

 

「大丈夫です」

 

リンドウさんは、優しく微笑んだ。

 

「あなたの努力は、私もずっと見てきましたから」

 

そして――。

 

「後は、お互いのポケモンを信じましょう」

 

「……はい!」

 

その言葉を聞いて、少しだけ肩の力が抜けた。

 

「リーフさん、準備をお願いします」

 

そしてスタッフが私の名前を呼んだ。

 

「……よし」

 

私はモンスターボールを握る。

 

「行こう、フシギバナ!」

 

「バナ!」

 

◆

 

「続いて、エントリーナンバー9番!」

 

司会者の声が会場に響き渡る。

 

「今回がコンテスト初出場! リーフさんとフシギバナです!」

 

拍手が巻き起こる。

 

私はフシギバナと一緒に、ゆっくりとステージ中央へ歩いていく。

 

昨今のコンテストでは、トレーナー自身もドレスアップしてショーに華を添えることができる。

 

実際、リンドウさんは自宅のクローゼットからドレスを貸してくれた。

 

私も一度くらい着てみたかった。

 

……けれど、今回の審査はあくまでポケモンが中心。

 

だから私は心遣いをありがたく受け取りつつも、いつも通りの服装で参加することにした。

 

ステージ中央。

 

フシギバナと向かい合う。

 

観客席から無数の視線が集まってくる。

 

……怖い。

 

ジムバトルとは、まるで違う。

 

相手のポケモンを見ればいいわけじゃない。

 

会場にいる全員が、私たちを見ている。

 

「……」

 

一度だけ、深呼吸。

 

そして――。

 

「フシギバナ、エナジーボール」

 

「バナッ」

 

フシギバナが上空へ向けて、小さなエナジーボールを放つ。

 

ポンッ。

 

それは空中で弾けることなく、そのまま私の手のひらへ落ちてきた。

 

私は両手で包み込むようにして――。

 

「……えいっ」

 

パキン。

 

エナジーボールを砕く。

 

光の粒が、粉雪のように舞い上がった。

 

「ハードプラント」

 

「バナァ!」

 

フシギバナが大樹を伸ばす。

 

ステージを漂う光の粉。

 

その流れを追うように、一本の樹木が空中を走った。

 

「ひかりのかべ」

 

「バナ!」

 

フシギバナの周囲に、淡い光の壁が展開される。

 

蔓に弾かれた光の粉が、その光の壁へと絡みつく。

 

桃色の光が広がった。

 

「……」

 

会場の声が、聞こえなくなった。

 

静かだ。

 

さっきまであれほど騒がしかった観客席が、まるで遠い世界の出来事のように感じる。

 

私は、もう一度エナジーボールの粉を撒いた。

 

風に乗って、無数の光が舞う。

 

それを逃さないように、フシギバナが次々と蔓を伸ばしていく。

 

一本。また一本。

 

蔓が光を絡め取り、空中に大きな形を作っていく。

 

それはまるで――。

 

どんな風雨にも負けずに育ち。

 

長い冬を耐え。

 

春になって、大輪の花を咲かせた桜の木。

 

現れては消える光。

 

風に舞う花びら。

 

儚い春を、そのまま具現化したような桜吹雪が会場いっぱいに広がっていく。

 

「……綺麗」

 

どこかから、小さな声が聞こえた。

 

私は少しだけ笑う。

 

……まだ終わりじゃない。

 

そろそろフィナーレだ。

 

「フシギバナ」

 

「バナ!」

 

フシギバナが、細い蔓を伸ばしてくる。

 

私の身体を支え、まるでエスコートするように、ゆっくりと体を持ち上げていく。

 

観客からは見えない足場。

 

一歩。また一歩。

 

ここで転んだら、全てが水の泡だ。

 

心臓の鼓動が速くなる。

 

落ち着け。

 

フシギバナは全力を出した。

 

なら、次は私の番だ。

 

私は一歩ずつ、ゆっくりと進む。

 

そして、フシギバナが用意してくれた光の桜へ、そっと腰を下ろした。

 

「……フシギバナ」

 

「バナ?」

 

「最後だよ」

 

フシギバナが大きく息を吸う。

 

「はなびらのまい!」

 

「バナァァァァ!」

 

最後に、一際鮮やかな大輪の花が咲く。

 

大量の花びらが舞い上がり、光の桜と重なり――。

 

桜吹雪となって、会場全体を包み込んだ。

 

◆

 

「リーフさん、素晴らしいパフォーマンスをありがとうございました!」

 

大量の拍手が聞こえた。

 

その瞬間。

 

「……はぁ」

 

全身から力が抜けた。

 

「フー……」

 

隣のフシギバナも、その場にへたり込む。

 

「はぁ、はぁ……」

 

疲れた。

 

物凄く疲れた。

 

ジムバトルや野生の強敵を相手にした時とは、使っている身体の部位がまるで違う。

 

何より緊張が凄い。

 

観客の視線で岩砕きできるんじゃなかろうか。

 

「大丈夫ですか?」

 

スタッフが駆け寄ってくる。

 

「無理ぽ……」

 

スタッフに支えられながら、なんとか折り畳み式のパイプ椅子へ座る。

 

まさか、コンテストがここまで体力を使うとは……。

 

司会者が何か喋っている。

 

でも、よく聞こえない。

 

私の聴覚がようやく正常に戻ったのは、点数発表の直前だった。

 

「それでは、集計結果が出ました!」

 

ドゥルルルルル……。

 

「リーフさんの点数は――!」

 

ダン!

 

9.8/9.4/8.8

 

「28.0点!」

 

会場から歓声が上がる。

 

「暫定1位です! これほどの高得点を叩き出す新人を、私は初めて見ました!」

 

「ウオオオオオオオオッ!」

 

会場が揺れる。

 

私が座っている椅子までグラグラと揺れた。

 

「この歓声!会場が揺れた瞬間、私は確信しました!このアピールは審査員の皆さんにも響いたと!」

 

司会者がさらに興奮して叫ぶ。

 

「特にジョーイさん! 9.8点の超高得点です!」

 

審査員たちが、それぞれ感想を述べていく。

 

「はい。春に咲いては風に散る、桜のようでした」

 

ジョーイさんが微笑む。

 

「なんというか……お酒が飲みたくなっちゃいました! うふふ!」

 

「好きですねぇ」

 

スキゾーさんが頷く。

 

そして――。

 

「素晴らしかったですね」

 

コンテスタという人が締めた。

 

「何百年も生きた大樹を思わせるハードプラントの動き。桜の花びらを最も美しい角度で私たちに見せる光の壁の角度。ポケモンとのコンビネーションだけではありません」

 

一度、言葉を区切る。

 

「フシギバナとトレーナー、お互いに桜をしっかり観察していなければあの演技はできないでしょう」

 

「……!」

 

そこまで見てくれていたのか。

 

嬉しい。

 

しかし――。

 

「惜しむべくは、テンポが少しゆっくりだったこと。フィナーレへ入るまでが長かったですね」

 

「うっ……」

 

「それから、会場の明るさです。照明をもう少し落として、光の桜を際立たせても良かったでしょう」

 

「テンポと照明……」

 

確かに。

 

そこは盲点だった。

 

私なら波動で足元を正確に把握できる。

 

それに、フシギバナが支えてくれるなら、会場を暗くしても問題なかったかもしれない。

 

テンポについては――。

 

「……こればっかりは許してほしいな」

 

私はフシギバナを見る。

 

「これが、私とフシギバナの歩幅なんだから」

 

「バナ!」

 

フシギバナが嬉しそうに鳴いた。

 

◆

 

そして――。

 

次の演技は、リンドウさんとクサイハナの番だった。

 

「エントリーナンバー10番、リンドウさんとクサイハナ!」

 

二人はステージへ向かう。

 

「クサイハナ、あまいかおり!」

 

「クサ〜!」

 

甘く柔らかな香りが、ステージいっぱいに広がっていく。

 

「かふんだんご!」

 

「クサ!」

 

そこへ淡い黄色の花粉が舞い上がる。

 

「ムーンフォース!」

 

「クサァァァ!」

 

そして月のような光が花粉を照らしだした。

 

キラキラと輝く粉が、まるで夜空の星のように舞い踊った。

 

一つ。また一つ。

 

花粉の光が、色とりどりの花の形へと変化していく。

 

一つ一つの花の形は異なり、その花が持つ特徴を観客に教えるかのように輝いている。

 

クサイハナ自身が持つ甘い香り。

 

独特の花粉。

 

そしてムーンフォース。

 

自分のポケモンの特徴を最大限に活かしたパフォーマンスだ。

 

やがて光が弾ける。

 

会場が大きな拍手に包まれた。

 

結果は――。

 

9.6/9.5/9.6

 

「28.7点!」

 

歓声が上がる。

 

「暫定1位! リンドウさんとクサイハナ、素晴らしいアピールです!」

 

「やったね、リンドウさん!」

 

私は思わず控え室から声を上げる。

 

「ええ!」

 

リンドウさんも嬉しそうに笑う。

 

「クサイハナと一緒に、全力を出せました!」

 

私たちなら、このまま優勝を狙える。

 

この時はそう思っていた。

 

◆

 

しかし。

 

上には、上がいた。

 

「ソーラービーム!」

 

ステージ中央。

 

一人の少女が指示を出す。

 

雪の降る中、雄大に空を舞うポケモンの身体を包むように、黄色い光が広がった。

 

放たれたソーラービームが、雪の結晶に当たって何度も屈折し、稲妻のように会場を駆け抜ける。

 

「……!」

 

美しい。

 

圧倒的だった。

 

「絶景!こんな光景がこの世にあったとは!」

 

司会者が叫ぶ。

 

「審査結果、出ました!」

 

10.0/10.0/10.0

 

「……」

 

「……」

 

私もリンドウさんも、言葉が出ない。

 

さっきまで自分たちが積み上げてきたものが、ほんの一瞬で霞んで見えてきた。

 

ーーこの人と、優勝を争わないといけないのか。

 

「ルチアさんとチルタリス――!」

 

「30.0点! 文句なしの1位です!」

リーフに使わせたいZ技

  • ノーマル
  • くさ
  • でんき
  • ドラゴン
  • フェアリー
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