ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
「バトル開始です!」
会場中に、審判の声が響き渡る。
「行くよ、チルル!」
「チルッ!」
ルチアが指示を飛ばす。
「りゅうのまい!」
「チルルゥ!」
チルルが大きく翼を広げる。
その身体を中心に、青白い風が渦を巻いた。
舞い上がったチルルが優雅に身体を回転させる。
まる青空そのものを舞台にしているような、美しい羽ばたき。
同時に、チルルの身体から放たれる力が一段階強くなった。
「いきなりりゅうのまい……!」
私は思わず息を呑む。
さすがルチア。
最初から一切の隙がない。
「フシギバナ、ヘドロばくだん!」
「フシィ!」
フシギバナの背中に咲く巨大な花。
そこから、紫色の毒の塊が次々と放たれる。
コンテストで毒タイプの技を使うのは難しい。
見た目が派手な炎や氷と違い、どうしても観客から受ける印象が悪くなりやすいからだ。
だが、私のフシギバナは凄いんだそ?
「その毒……キラキラだぁ!」
ルチアが目を輝かせる。
リンドウさんが教えてくれた植物学。
古今東西、毒草についての知識。
それを使って作り上げた、フシギバナだけのヘドロばくだんだ。
毒の色は透明感のある紫。
まるでアメジストのような輝きを放ち、光を受けるたびに内部で七色の光が揺らめいている。
見た目だけではない。
威力も毒性も、これまでとは別物だ。
「チルル、れいとうビーム!」
「チルッ!」
チルルの口元から、凍てつく光線が放たれる。
「迎え撃つよ!」
「フシィ!」
紫色の毒塊と、冷気が真正面からぶつかった。
ドォン!!
紫と青の光が弾け飛ぶ。
その中心から、無数の氷の粒が舞い散った。
「綺麗……!」
観客席から声が上がる。
まだまだ、バトルはここからだ。
「ダブルウイング!」
「チルッ!」
チルルが一気に加速する。
二枚の翼が交差し、青白い光を纏いながらフシギバナへ迫ってくる。
「パワーウィップ!」
「フシィ!」
フシギバナの蔓が伸びる。
左右から迫る翼の舞と、しなる二本の蔓が激突した。
バシィン!
一撃目。
二撃目。
そして三撃目。
踊り、ぶつかる度に花火のような閃光が飛び交う。
「チルッ!」
やがてチルルの翼がフシギバナの身体を捉える。
「フシギバナ!」
ドンッ!
フシギバナが後ろへ吹き飛ばされた。
私のゲージが――。
100から86へ。
対するルチアのゲージは97。
「……っ」
一撃でこれだけ持っていかれた。
やっぱり強い。
「まだだよ!」
私はすぐに立て直す。
「ヘドロばくだん!」
「フシィ!」
再び紫色の毒の塊が放たれる。
しかし。
「避けて!」
「チルッ!」
チルルが翼を羽ばたかせる。
紙一重。
ヘドロばくだんが空を切る。
「そのまま、れいとうビーム!」
「チルル!」
冷気が迸る。
「フシギバナ、パワーウィップで防いで!」
「フシィ!」
蔓が地面を叩く。
しかし、氷の光線が蔓を凍らせ、そのままフシギバナへと迫る。
「フシギバナ!」
ドォン!
冷気が炸裂する。
ゲージが、さらに減った。
「……」
まずい。
このままでは、何もできないまま負ける。
私は歯を食いしばる。
「だったら……!」
「フシギバナ、はかいこうせん!」
「フシィィィ!」
巨大な光が、フシギバナの口元へ集まっていく。
「チルル、りゅうのまい!」
「チルッ!」
チルルが身体を翻す。
青白い風が渦を巻き、放たれたはかいこうせんの軌道をわずかに逸らす。
「だいもんじ!」
「しまっ――」
炎の花がフシギバナを捉えた。
ドォン!
「フシギバナ!」
ゲージが大きく減少する。
私は思わず拳を握った。
……違う。
これじゃない。
このやり方では、ルチアには勝てないーー
「フシギバナを信じて!」
リンドウさんの声が飛んできた。
「……!」
私は顔を上げる。
そうだ。
私はルチアじゃない。
フシギバナも、チルルじゃない。
だったら――。
私たちには、私たちの戦い方がある。
「フシギバナ!」
「フシィ!」
「いつものやつ、やろう!」
フシギバナが力強く頷いた。
「パワーウィップ!」
「フシィ!」
二本の蔓が天井へ突き刺さる。
そのまま――。
「天井へ!」
「フシィッ!」
蔓が勢いよく縮む。
天井へ突き刺さった二本の蔓。
フシギバナはその蔓を思い切り引っ張った。
「えっ!?」
身体が浮き上がる。
そのまま――。
空中へ。
「今だよ!」
「フシィィ!」
フシギバナが宙を舞う。
「チルル、れいとうビーム!」
「チルッ!」
冷気の光線が迫る。
「ヘドロばくだん!」
「フシィ!」
空中で身体を捻りながら、紫色の毒の塊を撃ち出す。
氷と毒が真正面から激突した。
バキィン!
冷やされた毒塊が、紫色の氷となって砕け散る。
「……!」
ルチアの目が輝いた。
「そう、それ!」
そして――。
「もっと見せて!」
「チルルル!」
チルルが空中へ飛び上がる。
「フシギバナ、パワーウィップ!」
フシギバナは蔓を伸ばし――。
「捕まえて!」
「フシィ!」
二本の蔓がチルルの両翼を掴んだ。
「チルッ!?」
「そのまま!」
フシギバナが全身の力を込める。
チルルの身体が引き寄せられる。
そして――。
「げきりん!」
「フシギィィィ!」
フシギバナが至近距離から猛烈な攻撃を叩き込む。
ドゴォォン!!
「チルゥッ!!」
チルタリスが悲鳴を上げる。
「まだまだ続けて!」
「バナァッ!」
フシギバナの体から発生した青白い竜のオーラが地上を、空中を、会場全体を飛び回る。
ルチアのゲージが――。
97から。
86。
74。
そして――。
「……!」
私と同じ、残りのゲージがほぼ同じになった。
「追いついた……!」
私は思わず声を漏らす。
ルチアが嬉しそうに笑った。
「やっと……」
チルルを見つめる。
そして私を見る。
「あなたらしいバトルが見れた!」
「……!」
「これが、あなたのキラキラなんだね!」
ルチアが一つの道具を取り出した。
「私たちも、本気でいくよ!」
「チルチルゥ!!」
それは、透明な球体のような道具。
内部には無数の光が渦巻いている。
「キラキラ〜!くるくる〜!」
ルチアが輝く球体をチルタリスへと投げた。
次の瞬間、眩い光が会場を包み込んだ。
「もーっと輝け、テラスタルーッ!!」
「なっ……!?」
チルタリスの身体が光に包まれる。
顔、身体、翼、尾羽。
チルタリスの全身がクリスタルのように輝き出した。
「なんだ、あのチルタリスは!」
「初めて見たぞ!」
「氷の彫像みたい……」
観客席がどよめく。
チルタリスの身体を包む結晶が巨大な氷の冠へと変化していく。
そして、青白い光が会場を照らし出した。
氷のような透き通る姿へと変化したチルタリス。
「これが……テラスタル」
私は初めて見る光景に息を呑んだ。
◆
テラスタル。
ポケモンが秘める力を結晶化させ、一時的に特殊なタイプと能力が発現する、パルデア地方の禁足地・エリアゼロで発見された現象。
そして、それを人為的に発動させるために必要なのがテラスタルオーブ。
ルチアが持つ透明な球体が、恐らくそれだ。
「チルル、れいとうビーム!」
「チルッ!」
先ほどまでとは比べ物にならないほど、強烈な冷気が放たれる。
「はかいこうせん!」
「フシィ!」
フシギバナ最強のビームを撃ち出す。
しかし――。
「凍らせちゃせ!」
一瞬で、光の柱が巨大な氷へと変わる。
「え……マジで?」
はかいこうせんが、凍りついた。
私の脳が、目の前の現象を理解するのには数秒の時間が必要だった。
チルタリスのれいとうビームは止まらず、そのままフシギバナを貫いた。
「ヴァナアッ!?」
「嘘でしょ……!?」
会場中の人間全てが目を疑った。
テラスタルはタイプを変えるだけだと思っていた。
でもまさか、ここまで技の威力が上がるだなんて……
「まだ終わらないよ!」
ルチアが叫ぶ。
「ダブルウイング!」
「チルル!」
氷の光を纏った両翼を広げたチルタリス。
「だいもんじ!」
炎を纏った巨大な翼が、フシギバナへ迫る。
「フシギバナ!」
「フシィィ!」
燃え盛る氷の翼。
矛盾する攻撃がフシギバナへと叩き込まれた。
ドォン!
ドォン!
「フシギバナ!」
ゲージが大きく減っていく。
さっきまで追いついていたはずなのに。
一気に引き離された。
「フシギバナ……」
息が荒い。
身体も傷だらけ。
これ以上のバトルは無謀だろう。
それでも――。
「フシ……」
フシギバナは立っている。
まだ、戦える。
「……そうだよね」
私は拳を握った。
「最後まで、やろう」
「フシィ!」
ルチアも構える。
「行くよ、チルル!」
「チルッ!」
最後の攻防。
ここで、全部を出す。
「だいもんじ!」
「いっぱいヘドロばくだん!」
「チルル!」
「フシィィィ!」
炎の華と、猛毒のエネルギーが激突する。
ドォォン!
毒の成分に反応して変色した炎が、会場中に七色の火の粉を撒き散らす。
「まだ!」
私は叫ぶ。
「パワーウィップで掴んで!」
再度フシギバナの蔦がチルタリスを掴んだ。
そして――。
「はかいこうせん!」
「れいとうビーム!」
「フシィィィ!」
「チルチルゥ!」
互いに必殺の光線が放たれた
「フシギバナ!」
「チルル!」
冷気の光と破壊の光。
ぶつかった光は粒となって会場中に飛び散った。
その光景は、まるで空から降り注ぐ星の雨だった。
◆
そして――。
静寂。
やがて。
光が少しずつ晴れていく。
「……」
フシギバナが立っていた。
しかし。
その身体は――。
ゆっくりと膝をつく。
「フシギ……」
「……!」
そして。
ドサッ。
地面に倒れた。
「……」
審判が判定を下す。
「フシギバナ、戦闘不能! 勝者、ルチアさん!」
「……」
歓声が上がる。
けれど、私の耳には何も入ってこなかった。
私はただ、倒れたフシギバナだけを見つめていた。
「……フシギバナ」
ゆっくりと駆け寄る。
そして、その身体の横に膝をつく。
「……」
まだ温かい。
ちゃんと息をしている。
それを確認した瞬間――。
胸の奥に張り詰めていたものが、少しだけ緩んだ。
「……よく頑張ったね」
私はフシギバナの頭を、そっと撫でる。
何度も。
何度も。
「……」
涙が、頬を伝いそうになる。
でも、今は泣かない。
だって――。
フシギバナは最後まで、私と一緒に戦ってくれた。
だから。
私は笑顔で、フシギバナに伝える。
「ありがとう……」
◆
その後、準決勝で白星を挙げ、決勝戦まで進んだリンドウさんもルチアのチルタリスの前に敗れ去った。
まあ、リンドウさんのクサイハナはバトルが得意なポケモンじゃない。
それでも、よくここまで勝ち上がったものだと思う。
帰り道。
目的だった太陽の石を手に入れられなかったはずなのに、リンドウさんとニワカゼさんの顔には、軽やかな笑顔が浮かんでいた。
「結局、太陽の石は手に入らなかったね……」
「でも、私たちのコンテストを見てくれた多くの人が、植物ポケモンに興味を持ってくれました」
「そうですね」
ニワカゼさんも嬉しそうに頷く。
「今度、ムラサメ植物園を訪れたいと言ってくださった方もいました。いいPRになりましたよ」
「クゥ〜サ」
「……そっか」
太陽の石を手に入れられなかった悔しさよりも、ずっと大きなものを得た顔をしている。
きっと、これでよかったのだ。
その時――。
「いたいた! おーい!」
「ん?」
振り返る。
そこには、チルタリスに乗ってこちらへやってくるルチアの姿があった。
「あなたたち、今日はありがとう!」
「いえ、こちらこそ。今日は貴重な経験をさせてもらいました」
「また、コンテストに出てくれるよね?」
ルチアは満面の笑顔で、両手を広げる。
「この出会いと決意にタイトルをつけるなら……」
そして――。
「『キラキラ! ポケモンコンテストに心トキメキ!』……って感じだよね!」
「……」
ルチアちゃん……。
凄い話し方をするな……。
「ええ。植物ポケモンの素晴らしさを伝えるには、素晴らしい機会かもしれませんね」
「クゥ〜サァ〜」
どうやらリンドウさんとクサイハナは、コーディネーターとして本格的に活動していくつもりらしい。
「やったやったー! あー、早くリンドウちゃんの次のステージが見てみたいなー!」
そう言って、ルチアは何かを思い出したようにポンと手を叩いた。
「そうだ!」
そして――。
「記念に、これ!」
取り出したのは、オレンジ色の石だった。
「太陽の石! あなたにあげるね!」
「いいんですか!?」
「いいのいいの! 私たちがここで出会った運命記念なんだから!」
「……!」
リンドウさんが太陽の石を両手で受け取る。
その表情が、一気に明るくなった。
「ありがとうございます!」
「大切に使ってね!」
「はい!」
一通り話し終えたルチアは、今度は私の方を向いた。
「リーフちゃんは? もちろんコーディネーターするよねっ!」
「私?」
私は少し考える。
コンテストは楽しかった。
ポケモンの新しい魅力を引き出すことも、バトルとは違う形でポケモンと向き合うことも好きだ。
できることなら、これからも続けたい。
でも――。
今の私には、ポケモンリーグという目標がある。
リーグに向けた特訓と、コンテストに向けた特訓。
どちらも片手間で極められるほど甘い世界じゃない。
グランドフェスティバルを目指して本格的にコーディネーターの道へ進むなら、ポケモンリーグは諦めなくてはならない。
デビュー当時のルチアのように、リーグ出場とグランドフェスティバルを両立するなんて――。
今の私には、とてもできそうにない。
だから。
「……リボンを一、二個集めるくらいなら、やってみてもいいかな」
私は笑う。
「ポケモンリーグ優先で」
「そっか!」
ルチアが嬉しそうに笑う。
「リーフちゃんもカントーリーグに出場するの?」
「うん。今回はね……」
……ん?
私は首を傾げる。
「リーフちゃん『も』?」
「うん、そうだよ!」
ルチアは、何でもないことのように笑った。
「私も私も、カントーリーグに出ちゃってみるの!」
「…………」
「……マジでか」
思わぬ強敵を前に、私は頭を抱えた。
・試験的に書いてみたポケモンコンテスト編
ぶっちゃけ一次審査考えるのめんどくさいんだよね……次やるんだったらプロレス風味の二次審査だけの大会とかになりそう……
・この世界のルチアはクソ強い
四天王やチャンピオンともいい勝負できるくらい。何故そうなっちゃったのかは次回。
・テラスタルも解禁
アニメ版の地方を問わずにテラスタルできるモデル。ルチアには似合いそうだと言うことでここで解禁です。
リーフに使わせたいZ技
-
ノーマル
-
くさ
-
でんき
-
ドラゴン
-
フェアリー