ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
小さい頃から、ルチアは親族であるミクリにベッタリくっついていた。
「お兄ちゃん! きょうもポケモンみせてみせて!」
「ふふっ。ルチアは本当にポケモンが大好きだな」
「ミロロ〜!」
当時からトップコーディネーターとして名を馳せていたミクリ。
その相棒であるミロカロスは、世界一美しいポケモンとも呼ばれていた。
「うん! だって、ポケモンをキラキラにするの、大好きなんだもん!」
日頃の徹底的なケア。
日々の弛まぬ特訓。
それらによって、ミロカロスの美しさがさらに磨き上げられていることを、幼いルチアもなんとなく理解していた。
「わたしも、ポケモントレーナーになってポケモンをキラキラにする!」
小さな拳を握りしめる。
「そして、お兄ちゃんみたいなポケモンコーディネーターになるんだ!」
それを聞いたミクリは――。
何も知らない通りすがりの人が見れば、少し奇妙に思うかもしれない。
しかし、一種の芸術性すら感じさせるポーズを決めながら、ルチアへ語りかけた。
「ではルチアよ。一度、コンテストと並行しながらでいい。ポケモンリーグにも挑戦してみるといい!」
「ポケモンリーグ?」
ルチアは小さな首を傾げた。
「バトルは、あんまり好きじゃないかな……」
「ふふっ。そう言うと思ったよ」
ミクリは穏やかに笑う。
「だが、ポケモンの美しさを引き出せる場所は、コンテストの舞台だけではない」
「……?」
「港町の風を浴びるキャモメ。朝日を浴びる山のノズパス。ハブネークとザングースが、互いの誇りを懸けて戦う姿」
ミクリは、遠くを見るように目を細める。
「世界には、様々なキラキラが存在しているのだ」
幼いルチアには、その言葉の意味がまだよく分からなかった。
けれど、大好きなお兄ちゃんが「キラキラ」だと言うのなら。
きっと、それはキラキラなのだろう。
そんなふうに、ぼんやりと思った。
「全力のバトルの中には、そこでしか見ることのできない美しさがある」
ミクリはルチアの頭を優しく撫でる。
「ルチアも一度、それを感じてみるといい」
「……うん!」
ルチアは元気よく頷いた。
「わかった! 私、ポケモンリーグもやってみる!」
◆
そして十歳になったルチアは。
ポケモンコンテストとポケモンリーグ。
二つの頂点を目指して、ホウエン地方を旅した。
その旅は、幼いルチアが想像していたよりも遥かに厳しかった。
思うように勝てない。
思った通りにポケモンが動いてくれない。
何度も負けて。
何度も悔しがって。
何度も心が折れそうになった。
それでも。
いつも側にいてくれたポケモンたちがいた。
共に戦い。
共に悩み。
共に笑い。
何度倒れても、また立ち上がる。
そんな日々を繰り返すうちに――。
彼女たちとルチアの絆は、コンテストでもバトルでも、少しずつ強くなっていった。
コンテストのスポットライトを、全身の輝く鎧で受け止めるアーマルド。
ジムバトルで、相手ポケモンの咆哮にも負けない音色を響かせるチリーン。
森で、山で、海で。
コンテストで、そしてバトルで。
ルチアは、たくさんのポケモンたちが持つ「キラキラ」を見てきた。
強いから輝く。
美しいから輝く。
そんな単純なものではない。
不器用に戦う姿も。
失敗して悔しがる姿も。
それでも立ち上がる姿も。
全部が、ポケモンたちの「キラキラ」だった。
いつしか彼女は――。
全てのポケモンを、心から愛せるようになっていた。
◆
初めてのグランドフェスティバル。
ルチアは見事に出場権を獲得した。
けれど、優勝には届かなかった。
悔しかった。
ものすごく悔しかった。
だからこそ、今度こそ優勝するために。
ルチアはコンテストに全てを懸けることを決めた。
ポケモンリーグへの挑戦は、そこで一度終わった。
もう二度と、リーグの舞台に立つことはない。
当時のルチアは、そう思っていた。
――けれど。
彼女の運命を、もう一度動かす出会いがあった。
◆
それは、パルデア地方でポケモンコンテストの運営を手伝っていた頃。
会場で働く学生ボランティアの中に、一人だけ妙に元気な少女がいた。
「ねえねえ! あなた、凄く強いポケモントレーナーなんだって!?」
キラキラと目を輝かせながら、少女はルチアへ近づいてくる。
「私とバトルしよっ!」
「ええっ!?」
あまりにも突然の申し出に、ルチアは目を丸くした。
「ふふっ。いいよー!」
そして――。
「バトル、スタート!」
「いっけー!」
「チルルー!」
◆
その少女は、とにかくバトルが好きだった。
強い相手と戦う。
ポケモンと一緒に考える。
負けたら悔しがる。
そして、勝ったら思いっきり喜ぶ。
その姿を見ているうちに、ルチアもいつしか笑っていた。
「いいね、いいね!」
少女はルチアのポケモンたちを眺めながら、嬉しそうに声を上げる。
「あなたのポケモンたち、みんな実ってる!」
「実ってる?」
「うん!」
少女は大きく頷いた。
「バトルしてると、ポケモンの魅力がどんどん出てくるんだよ!」
バトルとコンテスト。
分野は違う。
けれど――。
ポケモンを深く愛している。
その一点だけは、二人とも同じだった。
だから。
二人が親友になるまでに、それほど時間はかからなかった。
◆
「ねえ、ルチア!」
ある日、少女がいつものように尋ねてきた。
「ルチアって、ホウエン地方のポケモンリーグに出たことがあるんだよね?」
「うん!」
「どんなポケモントレーナーがいたの?」
「えーっと……」
ルチアは少し考える。
「キラキラしてる子に〜」
「うんうん!」
「キラキラしてる子に〜……」
「みんなキラキラ!?」
「そうそう!」
「いいね、いいね!」
少女は目を輝かせる。
「私も挑戦したくなってきた!」
「……」
その言葉を聞いた瞬間。
ルチアの胸の奥で、何かが小さく揺れた。
忘れていた記憶。
幼い頃、ミクリから聞いた言葉。
全力のバトルの中にしかない、美しさ。
そして――。
ホウエン地方を旅していた頃。
仲間たちと共に、汗を流し。
悔しがり。
笑い。
勝利を喜び。
敗北に涙した日々。
あの頃、確かに。
ルチアはバトルの中にも「キラキラ」を見つけていた。
コンテストだけじゃない。
ポケモンたちが輝く場所は、もっとたくさんある。
「……そっか」
ルチアは、ふっと笑った。
そして――。
一つの決断をする。
「もう一度、ポケモンリーグでキラキラくるくるしちゃおう!」
「チルル〜ッ!」
おまけ・最後の試練
霧の奥に、何かが見える。
少しずつ近づいていく。
それは、見たこともない城だった。
赤い屋根。
白い壁。
西洋風の立派な城。
豪華絢爛、そして質実剛健という言葉が似合う。
実際に人が過ごすことを考えて作られたのであろう、どこか城塞を思わせる建物だった。
「……?」
かつて夢のような場所で見た城。
相変わらず、その正体はわからない。
左右対称の美しい庭。
澄み切った池。
水面に映った私の姿は、やっぱりぼやけている。
何かに導かれるように、私は城へ近づいていく。
けれど、向かったのは城の中心ではない。
庭の奥。
立派な城の一部に溶け込むように存在していた、一つの扉。
私は、なぜか迷うことなくその扉を開けた。
中には、何もない。
一見すれば、ただの空き部屋。
家具もない。
人の姿もない。
それなのに――。
そこには、人とポケモンが暮らしていた跡だけが残っていた。
「誰?」
呼びかける。
返事はない。
白い霧が視界を埋め尽くしていく。
その向こうから、声のようなものだけが響いた。
「……何故ですか……様……」
◆
「……」
ムクリと、ベッドから起き上がる。
「まさか、狙った夢を見られるだなんて……」
「超能力と夢は深い関係にあるわ。こうやって占う方法もあるのよ」
ナツメさんが持ってきた水をゴクゴク飲みながら、私はベッドから起き上がった。
先ほど見た城が最後の試練の舞台なのだろう。
しかし、私の知らない城だ。
まず、どこの地方なのかすらも分からない。
そういうわけで、私は夢の内容をナツメさんと共有し、その場所を占ってもらうことにした。
「……」
水晶玉をじっと見つめるナツメさん。
数分後。
今度は、私の顔を見た。
「リーフ」
「はい」
「……試練はここまでよ」
「ええ!?」
思わずずっこけた。
なんで!?試練は3つじゃなかったの!?
「もうポケモンリーグにあなたは出られる……そう占いは言っているわ」
……
「な、何よ」
……ナツメさん。
「嘘ついてますね」
「……何のことかしゅら?」
ほら、噛んだ。
それに占いが言っているって、普段そんなこと言わないでしょ師匠。
「とにかく!試練はこれまでよ!!家で英気でも養ってなさい!!」
私は叩き出されるように、ジムを追い出された。
リーフに使わせたいZ技
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