ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている   作:はらへりニャンコ

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◆凶兆◆

 

 

 

 

 

「……」

 

リーフをジムから追い出した後。

 

ナツメは、一人でジムの奥へ戻っていた。

 

静かなジム。

 

誰もいないバトルコート。

 

その中央に立つと、ナツメはゆっくりと目を閉じた。

 

「……」

 

頭の中に浮かぶのは、先ほど見た光景。

 

水晶玉。

 

その中に映った、リーフの未来。

 

いや――。

 

未来と呼んでいいのかすら分からない。

 

あれは――。

 

「死相……」

 

ナツメが小さく呟く。

 

リーフの未来に、何かがいる。

 

強大な何か。

 

それは、リーフを呼んでいる。

 

いや。

 

正確には――。

 

リーフが、それに呼ばれている。

 

「……駄目」

 

ナツメは首を振る。

 

「この試練は、受けさせられない」

 

師として。

 

あの子の姉と昔から付き合いのある人間として。

 

ナツメには分かっていた。

 

リーフは強い。

 

才能もある。

 

ポケモンとの絆も深い。

 

けれど――。

 

だからこそ、危うさもある。

 

危険だと分かっていても、誰かが困っていれば飛び込んでいく。

 

大切なポケモンが傷つけば、自分の身を顧みず助けようとする。

 

そんな、優しい子だ。

 

だから。

 

「……ここで止める」

 

ナツメは、水晶玉を布で覆った。

 

「それが、私の役目よ」

 

◆

 

翌日。

 

「おはようございます!」

 

「……」

 

「ナツメさん?」

 

ヤマブキジム。

 

朝一番にやってきたリーフを前に、ナツメは静かに口を開いた。

 

「昨日も言ったでしょう」

 

「試練は終わり?」

 

「ええ」

 

「でも――」

 

「終わりよ」

 

珍しく。

 

ナツメが、言葉を遮った。

 

「あなたはもう十分に強くなった。これ以上、私から何かを教える必要はないわ」

 

「……」

 

「だから、これからは自分で旅をしなさい」

 

「でも、最後の試練は……」

 

「そんなもの、最初からなかったのよ」

 

「え?」

 

リーフが目を丸くする。

 

「三つ目の試練なんて、忘れなさい」

 

「……」

 

「あなたは試練を終えて、ポケモンリーグへ挑戦できるだけの力を手に入れた。それだけよ」

 

ナツメは、いつもの無表情に戻っていた。

 

「だから――」

 

一瞬だけ。

 

ほんの一瞬だけ。

 

その瞳が揺れる。

 

「もう、私のところへ戻ってくる必要はないわ」

 

「……」

 

リーフはしばらくナツメを見つめていた。

 

やがて。

 

「……分かりました」

 

小さく頭を下げる。

 

「今まで、ありがとうございました」

 

「ええ」

 

リーフが踵を返す。

 

その背中を見ながら。

 

ナツメは、拳を握りしめた。

 

「……ごめんなさい」

 

聞こえないほど小さな声だった。

 

◆

 

数日後。

 

私は、ヤマブキシティの実家に戻っていた。

 

「……暇だ」

 

「オウ」

 

「暇だねぇ」

 

「オウ……」

 

ソファに寝転がりながら、リオルの頭を撫でる。

 

試練は終わった。

 

ポケモンリーグへ行ってもいい。

 

そう言われた。

 

なのに――。

 

何故だろう。

 

心の奥が、妙に落ち着かなかった。

 

「……」

 

リーフは窓の外を見る。

 

青空には白い雲。

 

いつもと変わらない景色。

 

それなのに。

 

胸の奥に、何かが引っかかっている。

 

「……あの城」

 

あの夢。

 

霧の中に浮かんでいた城。

 

赤い屋根。

 

白い壁。

 

左右対称の庭。

 

そして――。

 

誰もいない部屋。

 

『……何故ですか……様……』

 

あの声。

 

「……」

 

もう一度、あの夢を見たい。

 

そう思った。

 

けれど。

 

次の日も。

 

その次の日も。

 

城の夢を見ることはなかった。

 

「……」

 

だからこそ。

 

余計に気になった。

 

そんなある日のこと。

 

リーフは、何気なくテレビを眺めていた。

 

ニュース番組。

 

ポケモンリーグの特集。

 

『そして、ポケモンリーグへと挑むチャレンジャーが、最後の特訓の為に集まっている場所が――』

 

「……んん?」

 

リーフの手が止まる。

 

画面に映ったのは――。

 

広大な山々。

 

一面緑の草原。

 

そして。

 

「……!」

 

そこに映った、一枚の画像。

 

赤い屋根。

 

白い壁。

 

左右対称の庭。

 

中央にそびえる、西洋風の巨大な城。

 

「…………」

 

リーフの呼吸が止まった。

 

見間違えるはずがない。

 

夢の中で見た城。

 

「……嘘」

 

テレビの画面には観光名所の名前が表示されていた。

 

ドクン。

 

胸が大きく鳴った。

 

「アウ?」

 

リオルが心配そうに顔を覗き込む。

 

私はテレビへ近づいた。

 

画面に映る城から――。

 

何かが伝わってくる。

 

波動。

 

いや。

 

これは――。

 

「……呼んでる」

 

「オウ?」

 

城が。

 

あの場所が。

 

私を呼んでいる。

 

「……」

 

気づけば、私は自分の胸元を押さえていた。

 

頭で考えているわけじゃない。

 

理由も分からない。

 

ただ――。

 

行かなければならない。

 

「……行こう」

 

「オウ?」

 

「この城に」

 

私は立ち上がった。

 

「私、ここへ行かなきゃ」

 

◆

 

「……え?」

 

数日後。

 

ナツメは、自分の水晶玉を見つめていた。

 

何度も。

 

何度も。

 

同じ未来を占う。

 

結果は――。

 

変わらない。

 

「そんな……!」

 

ナツメの指先が震える。

 

昨日までとは違う。

 

リーフにまとわりついていた黒い霧が――。

 

今は、完全に消えていた。

 

代わりに。

 

遠くへ伸びる一本の光。

 

「……」

 

ナツメは、目を閉じる。

 

「……リーフ」

 

ナツメは目を開く。

 

「あなたは……」

 

止められなかった。

 

いや。

 

違う。

 

自分は、止めようとした。

 

試練を取り消した。

 

危険から遠ざけた。

 

それでも――。

 

リーフは、自分の意志でその場所へ向かっている。

 

「……そういうことなのね」

 

ナツメは、静かに水晶玉へ手を添える。

 

未来を変えることはできない。

 

少なくとも。

 

あの子が自分の意志で選んだ未来を、無理やり捻じ曲げることなど――。

 

「私には……できない」

 

けれど。

 

だからこそ。

 

悔しかった。

 

「……止められなかった」

 

ナツメは目を伏せる。

 

あの子を守るために。

 

試練を終わらせた。

 

なのに。

 

結果として、何も変わらなかった。

 

むしろ。

 

自分が最後の試練を与えなかったことで――。

 

リーフは、誰の手も借りずに、運命へと向かって歩き始めてしまった。

 

「……ごめんなさい」

 

ナツメは小さく呟いた。

 

「あなたを止めることが……できなかった」

 

水晶玉の中。

 

遠く離れた場所で。

 

少女が、城を見上げている。

 

ナツメは、その姿を見つめることしかできなかった。

 

「……どうか」

 

祈るように。

 

ナツメは、目を閉じる。

 

「無事で帰ってきなさい、リーフ」

 

それが。

 

師匠として最後にできることだった。




この物語が書きたくて筆を取りました。
駄筆ながら今まで付き合ってくださりありがとうございます





次回・長編第二弾始まります。

リーフに使わせたいZ技

  • ノーマル
  • くさ
  • でんき
  • ドラゴン
  • フェアリー
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