ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
「……」
リーフをジムから追い出した後。
ナツメは、一人でジムの奥へ戻っていた。
静かなジム。
誰もいないバトルコート。
その中央に立つと、ナツメはゆっくりと目を閉じた。
「……」
頭の中に浮かぶのは、先ほど見た光景。
水晶玉。
その中に映った、リーフの未来。
いや――。
未来と呼んでいいのかすら分からない。
あれは――。
「死相……」
ナツメが小さく呟く。
リーフの未来に、何かがいる。
強大な何か。
それは、リーフを呼んでいる。
いや。
正確には――。
リーフが、それに呼ばれている。
「……駄目」
ナツメは首を振る。
「この試練は、受けさせられない」
師として。
あの子の姉と昔から付き合いのある人間として。
ナツメには分かっていた。
リーフは強い。
才能もある。
ポケモンとの絆も深い。
けれど――。
だからこそ、危うさもある。
危険だと分かっていても、誰かが困っていれば飛び込んでいく。
大切なポケモンが傷つけば、自分の身を顧みず助けようとする。
そんな、優しい子だ。
だから。
「……ここで止める」
ナツメは、水晶玉を布で覆った。
「それが、私の役目よ」
◆
翌日。
「おはようございます!」
「……」
「ナツメさん?」
ヤマブキジム。
朝一番にやってきたリーフを前に、ナツメは静かに口を開いた。
「昨日も言ったでしょう」
「試練は終わり?」
「ええ」
「でも――」
「終わりよ」
珍しく。
ナツメが、言葉を遮った。
「あなたはもう十分に強くなった。これ以上、私から何かを教える必要はないわ」
「……」
「だから、これからは自分で旅をしなさい」
「でも、最後の試練は……」
「そんなもの、最初からなかったのよ」
「え?」
リーフが目を丸くする。
「三つ目の試練なんて、忘れなさい」
「……」
「あなたは試練を終えて、ポケモンリーグへ挑戦できるだけの力を手に入れた。それだけよ」
ナツメは、いつもの無表情に戻っていた。
「だから――」
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ。
その瞳が揺れる。
「もう、私のところへ戻ってくる必要はないわ」
「……」
リーフはしばらくナツメを見つめていた。
やがて。
「……分かりました」
小さく頭を下げる。
「今まで、ありがとうございました」
「ええ」
リーフが踵を返す。
その背中を見ながら。
ナツメは、拳を握りしめた。
「……ごめんなさい」
聞こえないほど小さな声だった。
◆
数日後。
私は、ヤマブキシティの実家に戻っていた。
「……暇だ」
「オウ」
「暇だねぇ」
「オウ……」
ソファに寝転がりながら、リオルの頭を撫でる。
試練は終わった。
ポケモンリーグへ行ってもいい。
そう言われた。
なのに――。
何故だろう。
心の奥が、妙に落ち着かなかった。
「……」
リーフは窓の外を見る。
青空には白い雲。
いつもと変わらない景色。
それなのに。
胸の奥に、何かが引っかかっている。
「……あの城」
あの夢。
霧の中に浮かんでいた城。
赤い屋根。
白い壁。
左右対称の庭。
そして――。
誰もいない部屋。
『……何故ですか……様……』
あの声。
「……」
もう一度、あの夢を見たい。
そう思った。
けれど。
次の日も。
その次の日も。
城の夢を見ることはなかった。
「……」
だからこそ。
余計に気になった。
そんなある日のこと。
リーフは、何気なくテレビを眺めていた。
ニュース番組。
ポケモンリーグの特集。
『そして、ポケモンリーグへと挑むチャレンジャーが、最後の特訓の為に集まっている場所が――』
「……んん?」
リーフの手が止まる。
画面に映ったのは――。
広大な山々。
一面緑の草原。
そして。
「……!」
そこに映った、一枚の画像。
赤い屋根。
白い壁。
左右対称の庭。
中央にそびえる、西洋風の巨大な城。
「…………」
リーフの呼吸が止まった。
見間違えるはずがない。
夢の中で見た城。
「……嘘」
テレビの画面には観光名所の名前が表示されていた。
ドクン。
胸が大きく鳴った。
「アウ?」
リオルが心配そうに顔を覗き込む。
私はテレビへ近づいた。
画面に映る城から――。
何かが伝わってくる。
波動。
いや。
これは――。
「……呼んでる」
「オウ?」
城が。
あの場所が。
私を呼んでいる。
「……」
気づけば、私は自分の胸元を押さえていた。
頭で考えているわけじゃない。
理由も分からない。
ただ――。
行かなければならない。
「……行こう」
「オウ?」
「この城に」
私は立ち上がった。
「私、ここへ行かなきゃ」
◆
「……え?」
数日後。
ナツメは、自分の水晶玉を見つめていた。
何度も。
何度も。
同じ未来を占う。
結果は――。
変わらない。
「そんな……!」
ナツメの指先が震える。
昨日までとは違う。
リーフにまとわりついていた黒い霧が――。
今は、完全に消えていた。
代わりに。
遠くへ伸びる一本の光。
「……」
ナツメは、目を閉じる。
「……リーフ」
ナツメは目を開く。
「あなたは……」
止められなかった。
いや。
違う。
自分は、止めようとした。
試練を取り消した。
危険から遠ざけた。
それでも――。
リーフは、自分の意志でその場所へ向かっている。
「……そういうことなのね」
ナツメは、静かに水晶玉へ手を添える。
未来を変えることはできない。
少なくとも。
あの子が自分の意志で選んだ未来を、無理やり捻じ曲げることなど――。
「私には……できない」
けれど。
だからこそ。
悔しかった。
「……止められなかった」
ナツメは目を伏せる。
あの子を守るために。
試練を終わらせた。
なのに。
結果として、何も変わらなかった。
むしろ。
自分が最後の試練を与えなかったことで――。
リーフは、誰の手も借りずに、運命へと向かって歩き始めてしまった。
「……ごめんなさい」
ナツメは小さく呟いた。
「あなたを止めることが……できなかった」
水晶玉の中。
遠く離れた場所で。
少女が、城を見上げている。
ナツメは、その姿を見つめることしかできなかった。
「……どうか」
祈るように。
ナツメは、目を閉じる。
「無事で帰ってきなさい、リーフ」
それが。
師匠として最後にできることだった。
この物語が書きたくて筆を取りました。
駄筆ながら今まで付き合ってくださりありがとうございます
次回・長編第二弾始まります。
リーフに使わせたいZ技
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ノーマル
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くさ
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でんき
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ドラゴン
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フェアリー