ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
というわけで。
やってきました、トキワの森。
うっすらと薄暗い森の中には、様々なポケモンが生息している。
木々の隙間から差し込む光。
湿った土の匂い。
葉の擦れる音。
遠くから聞こえてくるポケモンたちの鳴き声。
そして――。
「お、やっと発見!」
サトシが声を上げた。
彼が見つけたのは、いもむしポケモン。
キャタピーだった。
木の枝にしがみつき、呑気に葉っぱを齧っている。
「キャタピーか」
私はサトシとピカチュウを見る。
これは……来たな。
原作でも有名なイベントだ。
「サトシ、ピカチュウならでんこうせっかが使えるはずだよ」
「でんこうせっか?」
「うん。全身の筋肉に一気に力を込めるイメージで!」
「分かった!」
サトシはすぐにピカチュウへ指示を出す。
「ピカチュウ、力を込めろ! でんこうせっかだ!」
「ピッカ!」
ピカチュウの身体が一瞬沈み――。
次の瞬間。
シュッ!
まるで一筋の矢のようになって、木を駆け上がる。
そのままキャタピーに鋭い一撃を叩き込んだ。
「ビィー!?」
キャタピーが驚いて枝から逃げようとする。
「今だ!」
サトシがモンスターボールを投げる。
赤と白のボールがキャタピーを包み込み、そのまま地面へ落ちた。
コロコロ……。
一回揺れる。
二回。
三回。
カチッ。
「キャタピー、ゲットだぜ!」
「ピッカ!」
サトシが拳を突き上げる。
私はその姿を眺めながら、しみじみと思った。
……うむ。
感無量である。
まさかこの世界で、サトシの初めてのポケモンゲットを直接拝めるとは。
アニメを見ていた頃の自分に教えてやりたい。
お前、将来こんな場面に立ち会うぞ、と。
「私も何かゲットしたいな……」
そう呟いた、その時だった。
ゴーン!
「うげぇ!?」
頭に重たい衝撃が走った。
「リーフ!?」
「ダネッ!?」
サトシとフシギダネの声が重なる。
何かが私の頭に直撃した。
「い、痛ぁ……」
頭を押さえながら、足元を見る。
そこに落ちていたのは――。
「……トランセル?」
キャタピーの進化形。
トランセルだった。
「あ、危な……」
帽子がなかったら即死だった。
……いや。
普通に痛い。
恐らく、さっきのピカチュウのでんこうせっかの衝撃で、木の上にいたトランセルが落ちてきたのだろう。
「うう……頭が痛い……」
「ダネ……」
フシギダネが心配そうに私を見上げている。
すると。
トランセルの身体が突然、青白い光に包まれた。
「え?」
まばゆい光が森の中を照らす。
「これって……進化!?」
トランセルの身体が大きく変化していく。
硬い殻が崩れ、その中から大きな羽を持ったポケモンが姿を現す。
「バタフリー……!」
私の頭に落下した衝撃で経験値が貯まったのだろうか。
いや、そんなわけない。
……ないよね?
「フリー!」
進化したバタフリーは、大きな羽を羽ばたかせる。
そして、私の周囲を心配そうに飛び回った。
「……もしかして、心配してくれてるの?」
「フリー……」
バタフリーが私の頭の近くまで降りてくる。
なんて優しい子なんだ。
さっき私を殴ったのも、きっと事故だ。
うん。
事故だから。
「ありがと……」
私はそっと手を伸ばす。
バタフリーは逃げなかった。
そのまま私の指先に触れる。
「ねえ」
私は少し考えてから、笑った。
「……一緒に来る?」
「フリー♪」
バタフリーは嬉しそうに鳴いた。
「本当に?」
「フリー!」
よし。
私はモンスターボールを取り出す。
「それじゃあ――」
ボールを投げる。
赤い光がバタフリーを包み込み、その身体をボールの中へ吸い込んだ。
コロン。
一回。
二回。
三回。
カチッ。
「……」
私はしばらくボールを見つめる。
「……ゲットしちゃった」
まさかの初ゲットである。
しかし。
「……なんか締まらないなぁ」
普通なら、さっきのサトシみたいに野生のポケモンと熱いバトルを繰り広げて、弱らせてからゲットするものだ。
それが私の場合。
頭に落ちてきたトランセルが進化して。
その進化したバタフリーに心配されて。
「一緒に来る?」と聞いたらついてきた。
……なんだ、この流れ。
「まあ……いいか」
私はボールを手に取る。
「よろしくね、バタフリー」
「ダネ!」
隣ではフシギダネも嬉しそうに鳴いている。
こうして私は――。
旅を始めて二日目にして、3匹目の仲間を手に入れた。
……もっとも。
初ゲットにしては、あまりにも締まらない一幕だったのだが。
◆
「うう~……痛い、痛い~」
私は頭にできた大きなたんこぶを押さえながら、冷水を入れた袋を額に当てていた。
先ほどトランセルがぶつかった場所が、ずきずきと痛む。
「リーフ、大丈夫か?」
サトシが心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫……たぶん」
「たぶんって……」
「サトシが冷たい川を見つけてくれて助かったよ。ありがとう」
「いいって!」
本当に助かった。
このまま痛みが引かなかったら、トキワシティのポケモンセンターまで戻る羽目になっていたところだ。
幸い、手足の痺れや吐き気、意識が朦朧とするといった症状はない。
たんこぶだけなら、そこまで重症ではないだろう。
……とはいえ。
ポケモンセンターに着いたら、真っ先に診てもらったほうがよさそうだ。
そんなことを考えていると――。
「お主らもマサラタウンのトレーナーか」
「……ん?」
なんだ?
今、変な声が聞こえたような。
顔を上げる。
そこにいたのは――。
鎧武者の兜を被った、半袖短パンの少年。
背中には虫取り網。
そして腰には――。
「……刀?」
なんか変な幻覚が見え始めたぞ。
頭をぶつけたせいだろうか。
私はそう思った。
しかし。
「拙者はトキワの森の虫取り少年!」
少年は堂々と名乗りを上げる。
「いざ尋常に、勝負!」
次の瞬間。
シュッ!
「「え?」」
少年が刀を抜いた。
「キエエエエエッ!」
「「うわあああああ!!」」
幻覚じゃない!
本物だー!
私とサトシは慌てて逃げ出した。
頭を押さえていなければ、闇雲に刀を振り回す狂人程度、昔ヤマブキ格闘道場で修得したいわくだきでなんとかできるのだが。
今は逃げるので精一杯だ。
「待つでござる!」
虫取り少年が追いかけてくる。
「目と目があったらポケモン勝負! トレーナーとしてなっていない奴らめ! 成敗してくれる!」
「刀を振り回す危険人物相手にバトルなんてできるかー!」
サトシが叫ぶ。
全くだ。
どうなっているんだ、この森は。
そんなこんなで、私たちは森の中を全力疾走する。
すると――。
「うわっ!」
虫取り少年が木の根に足を取られた。
「ぐおっ!?」
そのまま前のめりに倒れ――。
ドンッ!
よりにもよって。
一本の木に勢いよくぶつかった。
「「……」」
嫌な予感がする。
私たちは木を見上げる。
そこには――。
大量のスピアーが巣を作っていた。
そしてビードルにぶつかった、少年の刀。
「「「うわあああああ!」」」
ブチギレるスピアー。
今度は三人仲良く逃げる番だった。
っていうか!
エセ侍!
アンタのせいだろ!
なんとかしろよ!
「拙者の刀は刃のない模造刀でござる! あのスピアーには通用しないでござるよ!」
「「そんな紛らわしいもの持ち歩くな!」」
私とサトシの声が綺麗に重なった。
そうこうしている間にも、スピアーたちは猛烈な勢いで追いかけてくる。
「くっ……!」
速い。
このままでは――。
「蜂の巣になってしまうでござる!」
……意味が違う気がする。
「くそっ!」
サトシが振り返る。
「ピカチュウ、でんきショックだ!」
「ピィーカァー……」
ピカチュウが電撃を放とうとした、その瞬間。
「キシャアアアアッ!」
スピアーの群れが一斉に襲いかかってきた。
「ピカッ!?」
電撃を放つより早く、ピカチュウが攻撃に巻き込まれる。
「ピカァッ!」
「ピカチュウ!」
ピカチュウが地面を転がる。
「チ、チューウ……」
「ピカチュウ!」
サトシが慌てる。
「ど、毒状態でござる!」
まずい。
ピカチュウは戦闘不能寸前。
私は頭が痛くてまともに動けない。
そして――。
「拙者のポケモンでは、この数は相手にできぬ!」
虫取り少年は役に立たない。
……詰んだ。
私たちは、そのまま大きな川まで追い詰められてしまった。
前は川。
振り向けばスピアー。
横にも逃げ場はない。
「「「……」」」
これは。
本当にまずい。
ああ、ごめんなさい。
父さん、母さん。
私のPCは水に沈めておいてください。
そんな遺書を心の中で考えながら、私は覚悟を決めようとした。
その時だった。
――ビュオオオッ!
白銀の吹雪が、森を覆った。
「え?」
吹雪がスピアーたちを包み込む。
「ギ……!?」
「シャ……!?」
スピアーたちの動きが止まった。
次々と身体が凍りつき――。
ポタッ。
ポタッ。
ポタポタッ。
その場に落ちていく。
「……え?」
私は呆然とする。
そして。
川の奥から、聞き慣れた声が響いた。
「全く。森が騒がしいと思ったら……」
聞き慣れた声。
聞き慣れた、頼りになる声。
「貴方たち、大丈夫?」
「お、お姉ちゃん!」
そこに立っていたのは――。
ラプラスに乗った、私のお姉ちゃんだった。
第8話でようやく主人公ポケモンゲット。
この前のアンケートですが、あと1週間以内に反映させられそうです。
投稿時間何時くらいがいい?
-
6時
-
12時
-
15時
-
17時
-
18字
-
20時
-
21時