ベイブレードNEO Season4   作:マツザキ蓮

12 / 13
ベイブレードNEO・4 第12話 軍神

パラレルワールドの根尾公園にてベイの練習に来た想。 

 

そんな中、Dr.カインが造った人造人間・アベルと出会い、ベイバトルをすることとなった。

 

敵同士という立場を超えて、ベイバトルに興味のある彼にその基本を教えたのだった。 

 

――根尾中ベイブレード部部室――

 

翌日、ソウタ達はいつも通り部室に集まり、Dr.カインのことについて話し合っていた。

 

「ウィリアムはDr.カインのことを救ってくれないかと言っていた。カインは別の目的を抱えているってことか……」 

 

「恐らくな。町民達には町の復興と銘打っているが、それは彼らに向けた『嘘』ということだろう」

 

「俺達の世界と向こうの世界を融合して、エネルギーを奪う……。多分そこは変わらないよな」

 

カインの目的が何なのか掴めずにいる中、部室のドアが軋む音を立てながら開いた。

 

「!」

 

その直後、自分たちがいる場所にきたある人物に驚きを隠せなかった。

 

「お邪魔するわ、あなた達」

 

「想!」

「珍しいな、お前の方からここに来るなんて」

 

その人物の正体は蒼龍想。

 

いつもはソウタ達の方から彼女のいるパラレルワールドに来ていたのだが、今回は逆に想の方から第一世界へやってきたのだった。

 

「それで今日はどうしたんだ?」

 

「あなた達に話があってここに来たの」

 

「話?」

 

彼女はソウタ達に話があり、ここへ来たというが……。

 

「Dr.カインの弟についてよ」

 

「弟!?」

 

想の口から明かされたのはDr.カインの「弟」についてだった。

 

その内容にソウタ達は一斉に驚愕、またしても増えた謎に戸惑いを隠せていなかった。

 

「えーと……。なんで想がそれを知って……?」

 

「昨日の昼、根尾公園で偶然出会ったのよ。その経緯も含めて話させてもらうわ」

「公園でベイの練習をしようとしたら、チャラそうな男が女の人のバッグをひったくったのよ。私がそいつを追いかける中、加勢して撃退してくれたのよ」

 

「大変だったんだなぁ……。本当にお疲れ様」

 

「ありがと。……話を続けるわ。名前を尋ねたところ、相手は「アベル」と名乗った、彼は「Dr.カインの『弟』として造られた『人造人間』」だと言ったの」

 

「人造人間……!?」

 

「その、アベルというのはどんな印象だったんだ?」

 

全員が驚く中、ヒカルが直ぐに質問をする態勢に切り替える。

 

「機械的ながらどこか幼く、純粋……。そんな感じだったわ」

 

「なるほど……。他の敵達とはまた違った雰囲気だ」

 

「ふむふむ……」

 

「どうかしたのか? ツバサ」

 

そんな中、ツバサが何やら言いたげにしていた。

 

「いや、アベルは『Dr.カインの弟として造られた人造人間』だって言ってたよね? もしかしてDr.カインの目的って……」

「アベルを『人間にする』ために僕達の世界との融合でエネルギーを奪い取るということだったんじゃないかな?」

 

「!」

 

考察とはいえ、彼の言った内容に衝撃が走る。

 

「けどよぉ、ツバサ。それだったらなんで龍、メイ、シオンを狙って……」

 

「Dr.カインは次の計画に移る過程で、3人にエネルギーが秘められているのを発見したということだろうね。3人の中で犠牲者が出なかったのは幸いだけど……」

 

「……」

 

改めて3人の内一人でも犠牲者が出なかった事実に確かなことだと思いつつも、更に戦いは激化していくだろうという心境は変わらなかった。

 

「とはいえ、ここで歩みを止めるわけにはいかないな。俺達のやるべきことを果たすまでは」

 

「そうだな」

 

それでも自分たちの持つ役割を全うすべく進んでいく。

 

部室のドアに手をかけ、あの場所へ……。

 

その一方で……。

 

――根尾第一研究所――

 

「……」

 

根尾第一研究所ではDr.カインが黙りながら、カップを手に取り、コーヒーを嗜んでいた。

 

「いかがなされましたか? Dr.カイン」

 

「吉良。私にとって最後の砦はお前だ」

「私が長い年月をかけて開発したこいつで奴らを迎え撃て……。この『バスターオーディン』で……!」

 

「かしこまりました。この戦いは我々にとっての『天下分け目』の大勝負……。必ずや奴らを仕留めてまいります」

 

カインから渡されたベイを手に持ち、吉良は研究所を後にした。

 

――根尾の竹藪――

 

「行こうぜ」

 

ソウタ達は竹藪に着き、小屋のロックを解除。

 

再びパラレルワールドへ出向くのだった。

 

「……!!」

 

――根尾通り(パラレルワールド)――

 

「待っていたよ。根尾中ベイブレード部、蒼龍想」

 

「!」

 

「フフフ……」

 

扉を通じて出てきたのは根尾第一研究所の前。

 

そこには灰色の無造作ヘアの少年が待ち構えていた。

 

「誰なんだ? お前は」

 

「おっと、自己紹介が遅れたね。僕の名前は吉良賢司。Dr.カインの『側近』さ」

 

ソウタの問いに対し、吉良は自身の名を名乗る。

 

「ド……Dr.カインの側近!?」

 

Dr.カインの側近であると聞いて、全員は驚かずにはいられなかった。

 

「そうさ。ちなみになんだけど……黒澤とソフィアにベイを奪うよう、指示したのも僕だ」

 

「なッ……何だって!?」

 

「『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』。相手を屈服させるには、そいつらが一番大切にしているものや頼り切っている部分を先に崩すのが効果的という意味さ」

 

諺を交え、自身が嘗て行った策略を明かす。

 

あの2人自らと思っていた全員ではなく、誰かの根回しがあったことに衝撃が走る。

 

「もっとも、それも失敗に終わったけどね」

「そして今、Dr.カインからの命を受け、君達をここで始末しに来たというわけ」

 

「お前を倒さないと向こうへは通れないってことか」

 

「そういうことだよ。それじゃあ早速バトルを始めようか……」

 

「!!」

 

吉良が指を鳴らしたその時、地面が震え上がると同時にスタジアムが迫り上がってきた。

 

更には……。

 

「なんだ……ッ!?」

 

地面の一部が限界まで下がり、細い通路のみが残る形となった。

 

「まさかお前……!」

 

チラッと下を見ただけで彼らに襲いかかる恐怖――それでもソウタは吉良の方に目を向ける。

 

「舞台は整った……。今、僕と君達がいる場所は『デスゲートスタジアム』。バトルに負けたものはそこの通路が回転して落下する。奥底に地面があるから流石に死にはしないけど、落ちたら最後……助かる道はないよ」

 

6人がいる場所……それは「デスゲートスタジアム」。

 

流石に死ぬわけではないが、深く暗い底に落ちれば助からないのは明らかだった。

 

「……!」

(なんて高さだ……! 俺が負けたらバン達が……!)

 

「君達が刺客たちを撃破してきたのは確かだ。けどここからは『背水の陣』の気持ちで行かないと僕を超えることはできないよ?」

「さあ、出陣の時だ。バスターオーディン」

 

吉良はDr.カインから渡されたベイ「バスターオーディン」を手に取る。

 

段階的に大きくなっている5枚刃とその内、最大級の大きさを誇る1枚刃が彼らの目を引く。

 

「それで、君は何を使うのかな?」

 

「俺はこいつを使う」

「この……ツヴァイオルトロスを! あいつが託してくれたベイで前に進むぜ」

 

ソウタが手に取ったのはウィリアムから託された「ツヴァイオルトロス」だった。

 

「へぇ……。ウィリアムが君にベイを託すとは。やはり彼は『純粋な戦士』だったということか」

 

「……」

 

ソウタはオルトロスのブレードチップを一旦外し、プラパーツをずらしてディフェンスモードにする。

 

「Ready……Set!」

 

3・2・1 ゴーシュート!

 

シュートされた2つのベイ。

 

いずれも偏重心という特徴は共通していたが、そのアプローチは異なる。

 

ツヴァイオルトロスの偏重心は攻撃と防御を使い分けるため、バスターオーディンの偏重心は一撃に特化させるためのものだ。

 

「ディフェンスモード……。それでオーディンの攻撃を受け止める作戦というわけか」

 

ツヴァイオルトロスは中央で回転し、更にはディフェンスモードでの運用により、アタックモード時より安定した回転力を見せていた。

 

しかし、吉良の表情は余裕そのもの。

 

スタジアム中央に向かって、バスターオーディンが迫ってきた。

 

(来たッ……!)

「受け止めろ! ツヴァイオルトロス!」

 

2機はスタジアム中央内で激突するも、オルトロスが次第に押されていく。

 

「オルトロスが……!」

 

「どうしたのかな? オルトロスの性能を引き出せていないようだけど」

 

「……!」

 

「そっか、なら終わらせようかな。バスターオーディン!」

 

吉良の声に呼応し、オーディンのオーラが現れ……。

 

「ストライクグングニル!」

 

バスターオーディンの巨大な1枚刃がクリーンヒットし、オルトロスは失速。

 

そのまま回転が止まった。

 

「スピン……フィニッシュ……!」

 

ソウタは悔しさにまみれながら、ツヴァイオルトロスを手に取る。

 

「小さな刃から大きな刃へ移るたびに押されていく……。そんな感覚だった……」

 

「君の言う通り、バスターオーディンの5枚刃は『極小・小・中・大・極大』で成り立っている」

「けど、それだけじゃない」

 

「!」

 

吉良がそう言うと、バスターオーディンをパーツごとに分解し、それぞれ指差す。

 

「幅が広いフラット軸による加速はもちろん、ブレードの5枚刃の内、最大級の1枚刃とメタルディスクとディスクフレームの先端のメタル刃が重なることで一撃を生み出す。これがバスターオーディンの武器さ」

 

(攻撃箇所を1点に集めることで最大限の火力を実現しているってことか) 

 

彼の解説を聞き、情報を整理する中……。

 

「!」 

 

「通路が……!」

 

後ろの通路が傾き、すぐ下にある暗闇が顕になる。

 

(次負けたら、俺達はここで……!)

「!」

 

着実に近づく危機に焦りを覚える中、ツヴァイオルトロスのギアを見て何かを思いつく。

 

「……」

 

暫くして……。

 

「『賽は投げられた』。これで決める」

 

ソウタも諺を交えつつも、再びブレードチップを外し、プラパーツをずらすが今度はアタックモードでの運用に切り替えた。

 

手に持っているオルトロスを見て、自身の意志を感じ取るのだった。

 

「始めるぞ、2戦目」

 

「……さあ、行こうか」

 

Ready……Set!

 

「……」

 

3・2・1 ゴーシュート!

 

ソウタは斜め打ちでオルトロスをシュートし、ベイのアタック性能を引き出していった。

 

アタックモードで迎えた2戦目、ツヴァイオルトロスはブレードを揺らしながらスタジアム内を駆け巡っていく。

 

「アタックモードか……。けど、それでいいのかな? バスターオーディンの積層刃はどんな相手だろうと正確に捉える。それをしたところで――」

 

後ろからオーディンが接近する中、オルトロスのギア『ユナイト』がスタジアムを蹴り上げ、カーブする軌道を見せる。

 

「!!」 

 

それだけではなかった。

 

「何ッ……!?」

 

ブレード同士が高い金属音を響かせた後、バスターオーディンを逆に弾き飛ばした。

 

「オーディンが弾かれた……?」

「確かにオルトロスは2つの動きを使い分けられる。けどここまでの動きは見たことが……」

「……まさか、ランチャーを傾けてシュートしたのはそのために……!」 

 

「ああ。偏重心のブレードがもたらすブレとユナイトギアのすぼまった形状による動きの使い分けを組み合わせることで不規則な動きを実現した」  

「読めない動きを作る……それが今の俺の戦略だ!」

 

(どんな状況だろうと戦略を組み立てる……。それが君の……!)

 

「決着をつけるぜ、ツヴァイオルトロス!」

「双牙獄命撃!!」

 

ソウタの声に共鳴して、オルトロスのオーラが現れると同時に……。

 

「!!」

 

弾けるような音を立てた後、バスターオーディンのパーツがバラけていった。

 

見事、ソウタがこのバトルを制したのだった。

 

その直後、吉良のいた通路が後ろに倒れ、これから落下することを彼らに知らせる。

 

しかし……。 

 

「ソウタ!」

 

「!」

「蒼龍ソウタ……! なんで……」

「その手を話せ! 僕は負けたんだ、情けなんていらない……!」

 

「情け? 俺はそんな気はない。ただ『納得』がしたかっただけだ」

 

「納得?」

 

「ああ。これからお前を引き上げる」

「バン達、少し手伝ってくれ!」

 

ソウタが突如として、彼の腕を掴み、「納得がしたかっただけ」と言う。

 

「ああ!」

 

「行くぜ……! うぉぉぉぉ……!!」

 

吉良の両腕をソウタが掴み、後ろからバン達が引っ張っていき……。

 

「良し……! なんとか引き上げられた……」

 

彼を引き上げることに成功した。

 

「まさか敵に助けられるとはね……」

「それで、君が納得したいことって?」

 

「お前が何故Dr.カインの側近になったのかを聞きたい。今までの刺客達からは何で奴に従っているのかを聞けなかったからな」

 

「そういうことか。まぁ、敵である君達に手を差し伸べられたんだ。少しぐらいなら……」

 

ソウタの聞きたいこと、それは「吉良の経歴」と「刺客達がDr.カインに従っている理由」だった。

 

「僕も含めてだけど王、隼人、ウィリアム、ソフィアは研究所にあった児童施設で育った身だ。その中でも僕は、Dr.カインからベイの実力、才能を高く評価されて今の座に就いたんだ」

「ついでにいえば、黒澤は雇われて研究所に入ったんだよ。その後はソフィアの教育係となった。当時からあらゆる感情が欠落していたけどね。似た者同士って訳さ」

 

彼から聞かれたことを洗いざらい話した後、パーカーのフードを被る。

 

「これからお前はどうするんだ?」

 

「僕はもはや裏切り者同然だ。暫くは研究所から身を引いて、その後を待つ。『運は天にあり』。人の運命は天命によって定められ、足掻くことは出来ない。僕の未来と君達の未来がどうなるか観察させてもらうよ」

 

そう言い残した後、スタジアムを後にするのだった。

 

「吉良……」

 

その一方で……。

 

――根尾第一研究所――

 

「3・2・1 ゴーシュート!」

「……」

 

「一体何なんだろう……この気持ちは。蒼龍想……彼女のことを思い出しただけでそれが頭から離れない……」

 

アベルは自室でベイをシュートしていたが、心のなかに何かを抱えているような様子を見せる。

 

「……」

(アベル……。お前、まさか奴に……!)

 

「どうかしましたか? 兄さん」

 

「いや、何でもない。ただお前に一つだけ言っておく。いかなる時でもウラヌスは手放すな、兄である私からのたった一つの『願い』だ」

 

「……分かりました」

 

「決着をつけ、全てを手に入れるのは私達であることを示す……。蒼龍ソウタ、蒼龍想……」

 

Dr.カインは自身のベイを握りしめ、タブレットの画面に映った2人を睨む。

 

Dr.カインの側近・吉良賢司に勝利したソウタ。

 

そして着実に近づく決着の時――。

 

世界の命運は最後の戦いに託された。




__イメージCAST__

蒼龍ソウタ:小林千晃

門守バン:梶裕貴

一角ヒカル:小野賢章

焔ツバサ:榎木淳弥

蒼龍想:高橋李依

Dr.カイン:加瀬康之

吉良賢司:戸谷菊之介

アベル:神谷浩史

ナレーション:森川智之

ベイブレード

バスターオーディン.Ht1.WF
(ヒットワン・ワイドフラット)
(オーディンモチーフのアタックタイプ。)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。