Dr.カインの側近・吉良賢司に勝利したソウタ。
吉良はバトルの舞台であるデスゲートスタジアムからの落下を受け入れようとした矢先、彼に助けられ生存。
自身と研究所の刺客達の生い立ちを明かした後、そこを後にした。
遂に世界の在り方を決める戦いへ突入するのだった。
「……」
ソウタは根尾第一研究所を見上げながら、最後の戦いがやってきたことを肌で感じ取る。
彼の頭には別世界の自分との出会い、刺客達との戦いの記憶が流れ込んできた。
研究所の扉に手をかけ、仲間達の方を向いてこう言う。
「この扉を開ければDr.カインとの戦いが……。皆、準備はいいか?」
「ああ」
「もちろんよ」
「そっか……じゃあ行くぜ」
目前となった最終決戦……ソウタは多少緊張している様子を見せたが、仲間達の覚悟を見て決意を固める。
扉を開け、研究所に入った。
――根尾第一研究所――
「来たか……根尾中ベイブレード部、蒼龍想」
「Dr.カイン……!」
研究所に入って早々、現れたのは所長にして倒すべき敵・Dr.カイン。
相対したソウタ達は一斉に彼の名を呼んだ。
「刺客達と吉良を退け、私にたどり着いたこと……敬意を示そう」
「それはどうも。そして、あんたには『弟』がいると想から聞いた。このバトルには弟さんも来るんだろ?」
「当然だ。全ては私の願い……ひいては弟のために決着をつける」
想からアベルのことを聞いていたソウタは、最終決戦に彼も参戦するのだろうと聞き、カインもそうであると答える。
その直後、何者かが足音を立ててそこへ近づく。
「……」
「……!」
「根尾中ベイブレード部の皆、はじめまして……で間違いないよね? そして、久しぶりだね蒼龍想」
そこへやってきたのはDr.カインの弟として造られた人造人間・アベル。
ソウタ達に淡々とした態度で挨拶した後、想の顔を見て穏やかな表情を浮かべる。
しかし……。
「アベル」
「失礼しました、兄さん」
それを見たカインはアベルの名を一言だけ呼びながら、注意をする。
それは親がまだ小さな子供に軽く注意するようなものだったが、ソウタ達にとってはアベルを縛り付けているように思えた。
「……」
「それで、Dr.カイン。あなたは何の『目的』でこの世界と向こうの世界を融合しようとしたの?」
「目的という俗っぽい言い方はやめろ……私にとってこの瞬間が『願い』を叶えるための貴重なものだというのに」
「言い方が悪かったのは申し訳ないわ。それで、あなたの願いというのはそちらにいる弟さんのことかしら?」
想の「目的」という言い方にDr.カインは苛つく様子を見せる。
「私の願い……それはこの世界と蒼龍ソウタ達の世界を融合し、アベルを『完全な人間』にすることだ……」
「アベルを『完全な人間』に……!?」
「待て! あんたは弟さんを模した人造人間を『人間』にすると言った。だが、本物の弟さんはあんたが世界を滅茶苦茶にすることを望んでいないはずだ!」
ベイブレード部全員が驚愕する中、ソウタがカインに対し、異論を唱える。
「無駄口を叩くな。あの日から私の日常は……時間は止まったままだ……。私がひたすら歩いてきた虚しい道のりをお前ごときの安っぽい物差しで測れると思うな」
鋭い目つきで反論し、彼を睨みつける。
そこには自身の歩んできた道のりの否定に対する怒りが込められていた。
「……」
ソウタはどこか複雑そうな顔をし、一瞬だけ髪に手を触れる。
「……これからバトルを執り行う。ただし……」
「このバトルに参加するのは私とアベル、蒼龍ソウタと蒼龍想だ」
発表された参加者、Dr.カインとアベルがコンビを組むのに対し、その相手に選ばれたのはソウタと想。
偽りの兄弟と2つの蒼龍の戦いとなった。
「そして、戦いの場も用意した」
「!」
Dr.カインが壁にあったスイッチを押すと、床が開き、底からスタジアムが迫り上がる。
更にはスタジアムからコードらしきものが伸び、一方はカプセルに、もう一方はアベルの右足に接合した。
「!!」
「戦いの場は整った。これが最後の戦場……『エネルギーラインスタジアム』だ」
「エネルギーラインスタジアム……!?」
「このスタジアムはベイの衝突をカプセルでエネルギーに変換し、コードを通じてアベルに送り込む。お前たちのベイのパワーが強ければ強いほどアベルはより一層、強力な人間として復活を遂げる……」
最終決戦の場として用意された「エネルギーラインスタジアム」に驚きを隠せない中、想がある行動に出る。
(なによそれ……! 最早、スタジアムというレベルを超えているわ……! けどそれよりも……)
「アベル、あなたはどうしたいの?」
「どうしたいって?」
「あなたはDr.カインの弟として生きるよう言われてきた。でも、それがあなたにとっての本当の望みなの?」
「僕は兄さんが喜ぶのなら――……!」
「……」
想の顔を見た瞬間、アベルの言葉は途切れる。
「涙?」
真剣な表情をしながらも、彼女の瞳には涙が浮かんでいた。
「想……」
言葉を紡ぐことはなかったが、その瞳はアベルの行く末を案じているようでもあった。
「今は無理に答えを出さなくて大丈夫。あなたの人生を決めるのは他の誰でもない、あなた自身の答えが人生だから」
「……」
「……話は終わりか? 蒼龍想」
アベルが黙り込む中、Dr.カインはバトルの準備に移ろうとしていた。
「ええ。この世界の命運は私達に託された。この役目はきっちりと果たさせてもらうわ」
「ああ。俺達は世界の崩壊を防ぎ、あんたを正しい道に戻すためにここへ来た。この戦いでそれを示すぜ」
「そうか……。ならば私はこれを以て、栄光を示す。我が科学の真髄『フォビドゥンスプリガン』で……!」
「!!」
(何だあのベイ……ブレードにラバー刃とメタルが同時に存在している……!)
遂にベールを脱いだDr.カインの使用ベイ「フォビドゥンスプリガン」。
その異端な形状にソウタ達は驚きを隠せなかった。
「僕はこのベイで戦う。イーヴィルウラヌス」
(あれがアベルのベイ……。想はそれに勝ったが、どんな能力を……?)
続いてアベルが取り出したのは「イーヴィルウラヌス」。
彼は数日前に想と戦っていたが、ウラヌスを手に取るのは久しぶりだ。
「Ready……Set!」
3・2・1 ゴーシュート!
スタジアムに4つのベイが放たれ、遂に開始された最終決戦。
アルティメットドラグニルとサイバードラグニルの後ろをイーヴィルウラヌスが追いかけ、フォビドゥンスプリガンが2機の前に立ちはだかる。
「このままじゃ追いつかれちゃう……」
「想、2人でスプリガンに攻撃だ。あのベイを弾けば逃げ道が作れる!」
「その作戦、乗ったわ」
ソウタと想、2人はフォビドゥンスプリガンに同時にアタックして、弾くことで逃げ道を作る作戦に出た。
2VS1でブレードがぶつかり合う中、それを見ていたバン達はある違和感を覚える。
(妙だ……。アルティメットドラグニルとサイバードラグニル、2機がかりで攻撃しているのにフォビドゥンスプリガンは全くその場から動いていない)
(それどころか……)
「想、気の所為か? 2人がかりで攻撃しているのにスプリガンがその場から弾かれない」
「気の所為ではないはずよ。そうだとしたら今の状況が起こるなんて……」
「だよな……。……!?」
「これは……! ドラグニルがフラついている……!」
ソウタ達も徐々にその違和感に気づきはじめた瞬間、それは決定的となった。
「まさか、回転吸収……!」
「その通りだ」
「!!」
「フォビドゥンスプリガンはブレードにラバー刃を搭載していることによってどんなベイだろうとその回転を吸い上げる。もっともスプリガンの真骨頂は『それだけではない』がな」
2人が感じた違和感の正体、それはフォビドゥンスプリガンに搭載されたラバー刃による回転吸収。
ぶつかっていく度にスタミナを奪われる状況に焦りが生じるなか――。
「まだ僕がいるよ」
「アベル……!」
アベルのベイ・イーヴィルウラヌスが割って入り、一気にそのスタミナを削り取る。
「アベル、完全なるトドメを奴らに刺す」
「はい……兄さん」
「未来を示せ……フォビドゥンスプリガン!」
「輝け……イーヴィルウラヌス!」
Dr.カインとアベルの声に共鳴し、スプリガンとウラヌスのオーラがそれぞれ現れる。
「ロード・オブ・グローリー!!」
「……! そんな……」
「嘘……」
2機によるコンビ技でソウタと想のベイは一瞬にしてスタジアムの外へ弾き出された。
「2人が一瞬で……」
「……! 待て! ソウタ、想!」
驚きを隠せないバン達だが、そんな中ヒカルが手を震わせながら言う。
「体が……!」
「……!!」
「そんな、体が透けて……!?」
「嘘だろ……!?」
「……」
なんと2人の体が透け始めた。
とうとう彼らにも「消失」の危機が迫り始めたのだった。
遂に幕を開けた最終決戦、そこで得て、そして失うものは何か答え合わせの時は近い。
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ:小林千晃
門守バン:梶裕貴
一角ヒカル:小野賢章
焔ツバサ:榎木淳弥
蒼龍想:高橋李依
Dr.カイン:加瀬康之
アベル:神谷浩史
ナレーション:森川智之
ベイブレード
フォビドゥンスプリガン.Ax0.Dl
(アックスゼロ・デルタ)
(スプリガンモチーフのバランスタイプ。ベイブレードバーストのスプリガンのオマージュ。)
(備考:両回転)