ベイブレードNEO Season4   作:マツザキ蓮

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ベイブレードNEO・4 最終話 別れの時

遂に幕を開けたDr.カインとの最終決戦。

 

対戦形式はコンビを組んでのバトル。

 

ソウタは想と、カインはアベルと組んで戦うこととなった。

 

一戦目はDr.カインのフォビドゥンスプリガンとアベルのイーヴィルウラヌスのコンビ技で先制。

 

一方で、ソウタと想には敗北による「消失」の危機が迫っていた。

 

「ソウタ! 想!」

 

「バン、ヒカル、ツバサ……」

「……大丈夫さ! ここから巻き返していくのがいつもの俺達だ! ……だから見守っていてくれ」

 

ソウタは体が透けていながらもポジティブな言葉をバン達にかける。

 

しかし、段々と語気が弱まり、消失への本能的な恐怖を窺わせる。

 

「ああ……」

 

「……」

「ソウタ、お前にたった一つだけ言わせてくれ。お前のその明るさは確かにどんな困難も乗り越えてきた。だからこそ聞きたい、お前の本当の気持ちを」

 

ヒカルが渋々受け入れる中、バンが言葉を続ける。

 

「……やっぱり分かっちゃうよな。……本当は怖いさ。『単に消えること』より『誰にも会えないこと』が俺にとっては一番怖えよ……!」

 

「それがお前の気持ちなんだな……」

 

「ああ。俺一人ではここへは来れなかったからな。色んな奴らと出会ってきたからこそ今の俺がいる。これからもこの先もな!」

 

「お前らしい答えだ。この勝負、最後まで見届けさせてもらうぜ」

 

「ああ、頼んだぜ!」

 

バンからの真剣な問いに対し、ソウタは心からの思いを打ち明ける。

 

先ほどまで若干暗かった表情と瞳に明るさが宿り、いつもの明るさを取り戻していった。

 

未来を掴もうとする逞しい意思と共にランチャーとベイを手に取る。

 

「行こうぜ、想」

 

「ええ」

 

「待たせたなDr.カイン。俺達が未来を掴むってことを今ここで証明してみせる!」

 

前向きな言葉を互いに交わして最後の戦いへ挑む。

 

「まだ向かってくるか……。その意思も含め、完膚なきまでに叩きのめしてやろう」

 

「……」

(僕の手と腕が……。さっきのエネルギーか?  いや、今は……)

「君達の答えを僕らにも見せてほしい」

 

何気なく自身の手と腕を見たアベル。

 

そこには限りなく人間に近い手と腕に少しずつ変化していた。

 

それでも今は自分の胸の内に秘めて戦いの準備をする。

 

Ready……Set!

 

3・2・1 ゴーシュート!

 

フォビドゥンスプリガンは右回転モードへ回転方向を切り替え、ブレードも外側のメタルと内側のメタルが混在した見た目へ変化した。

 

イーヴィルウラヌスはブレードの背が低くなり、アッパー攻撃に特化したアッパーモードとなった。

 

「スプリガンとウラヌスの見た目が……!」

 

「想、お前が前に戦ったイーヴィルウラヌスは……」

 

観戦していたバンとヒカル、ツバサの3人はスタジアムに落とされた2機の見た目の変化に驚く。

 

特にヒカルはウラヌスの変化について想に尋ねていた。

 

「見ての通りよ。イーヴィルウラヌスはブレード外周を捻ることで高さを切り替えられるわ」

 

彼女は嘗ての経験をもとにウラヌスの性能を話し、すぐにバトルの方へ切り替える。

 

そんな中、フォビドゥンスプリガンがサイバードラグニルの後ろから迫っていく。

 

「!!」

 

重さを乗せた一撃がベイをスタジアムの壁ギリギリまで弾き飛ばしていく様は言葉を失うほどであった。

 

「想!」

(フォビドゥンスプリガンの見た目は変わったのはもちろんだがなんだあの弾きは……!)

 

「これがスプリガンのもう一つの顔だ」

 

「Dr.カイン……!」

 

「フォビドゥンスプリガンのブレードはひっくり返すことで回転方向と性能を切り替えられる。今はブレードの外側と内側のメタルにより剛性と攻撃力を高めた右回転モード……。一度捉えた標的は必ず仕留める……」

 

フォビドゥンスプリガンのもう一つの顔……それはブレード外側と内側のメタルによる性能の向上。

 

まさに先ほどの一撃はその賜物であった。

 

「左右で性能が違うってことか……」

 

「その通りだ。……だが、よそ見をしている場合か?」

 

すぐにその意味を理解したがカインは険しい表情で彼に忠告する。

 

「ハッ……!?」

 

ソウタの視線には既にアベルのベイ・イーヴィルウラヌスが迫っていた。

 

「君には申し訳ない。けど、君がこの状況をどう乗り越えるか見てみたい」

「イーヴィルウラヌス!!」

 

「……!!」

 

アベルはあくまで自身の興味に基づいて攻撃を仕掛けていく。

 

高さを低くしたウラヌスのブレードはアルティメットドラグニルのギアのディスク部分にまで潜り込む。

 

(これがウラヌスの攻撃……! 確かに潜り込まれたら厄介だ……けど今は……!)

「そのままだ。そのまま受け切るッ!!」

 

「!」

 

なんと、あえてウラヌスの攻撃をディスクで受け止めてその反発でウラヌスを弾いた。

 

「ウラヌスが弾かれた? まさか……」

 

「ああ。アルティメットドラグニルのレガシーギアにはバウンド攻撃ができるディスク部分が搭載されている。俺はそれを利用してあんたのベイを弾いた」

「けど、狙いは『それ』じゃない」

 

「それ……じゃない?」

「ハッ……!」

 

ソウタの意味深長な言葉からその場にいた全員が同じ反応を示す。

 

「サイバードラグニル……!」

 

アルティメットドラグニルによって弾かれたイーヴィルウラヌスはサイバードラグニルの方へ一直線に向かっていく。

 

それも一瞬のことだった。

 

激突直後、サイバードラグニルのレベルギアの先端が摩耗し、太めのフラット軸へと変化した。

 

「これは……!」

 

「ソウタ、もしかして最初からこれを……!」

 

「ああ。その通りだぜ、想。お前のベイをちょっと見た時気づいたんだ。サイバードラグニルのギアはバトルをすればするほどその軸先は摩耗していくってことに」

 

(サイバードラグニルの最後の力を引き出すために相手の技まで利用する……。それがあなたの……)

 

「想!」

「2人で……いや、皆で掴もうぜ。未来を」

 

「……ええ!」

 

2人の目に迷いはなかった。

 

あるのはただ輝かしい未来を目指す眼差しだけだった。

 

「行こうぜ……」

 

「行きましょ」

 

「「ドラグニル!!」」

 

アルティメットドラグニルとサイバードラグニルからそれぞれドラゴンのオーラが現れ、Dr.カインとアベルを捉える。

 

「……蒼龍ソウタ、蒼龍想……。これがお前達の……」 

 

「「これで全てを決める!」」

 

「俺達……」

 

「私達が……」

 

「「前へ進むために!!」」

「「XTF(クロス・ザ・フューチャー)ドライブ!!」」

 

「!!」

 

同時に加速した2つのドラグニル――。

 

勢いを止めることなくスプリガンとウラヌスをスタジアムから叩き出してバーストフィニッシュで決着した。

 

「バン、ヒカル、ツバサ……」

「これは……」

 

「ああ」

 

「ソウタ達の勝ちだよ……!」

 

「や……やったぞーーーーッ!!」

 

「遂にやったのね、私達……!」

 

「ああ……! あれ、体の色が戻ってきた……!」

 

激闘の末、遂に勝利を掴んだソウタと想。

 

それと同時に透けていた体に徐々に明るさが戻る。

 

「ん?」

 

その直後、エネルギーラインスタジアムのコードに電流が走り……。

 

「まさか……!」

「待て! このコードが破損したら私は前には……!」

 

鼓膜を一瞬で伝うほどの爆発音を立ててコードは破損。

 

それと同時にアベルの手と腕は元に戻っていった。

 

「何故だ……!」

「何故お前達はそんなにも前を向いていられる……!  特に蒼龍ソウタ、もし私達に敗れていたら己の身が消えたかもしれないというのに」

 

拳を作って、それを地面に叩きつけながらDr.カインは項垂れる。

 

彼はソウタに対し、何故前向きになれるのか……その理由を問う。

 

「前を向けられる……か」

「……実は俺も家族を亡くしたんだ。爺ちゃんを」

 

「何……!?」

 

「俺が10歳の時に爺ちゃんは亡くなった。病気でな」

「父さんと母さんからそれを聞いた時は頭が真っ白になったさ。そんでいっぱい泣いた。もう二度と会えないんだなって……」

 

カインからの質問に対し、ソウタの口から語られたのは父方の祖父・龍吾との別れ。

 

当時のことに思いを馳せ、諭すような声で自身の原点を語る。

 

「俺自身、なんで前を向けられるようになったかは分からない。強いて言うなら『泣く時間を作った』ってところだ」

 

「蒼龍ソウタ……」

「泣く時間を作った……か。アベルを亡くしたのは当時19歳のこと。その時の私には『大人に近い男が泣いていいのか』という考えが頭にあった。……そこがお前との差ということか」

 

彼が前を向けられるようになった理由――それは「泣く時間を作った」こと。

 

それを聞いたカインは家族を失った者同士でありながら明確に異なるものを察知する。

 

「……完敗だ。失われた時間を取り戻そうなど結局は私の自己満足でしか……」

 

「待ってくれ。俺はあんたを責めているわけじゃない。現にあんたは弟さんを模した人造人間を造って今を生きている。弟さんのことが今でも大好きだってのはすぐに分かる」

「だから自分が今までしてきたことを否定する必要はないと思うぜ」

 

「兄さん……」

 

「アベル……。私は……」

 

「兄さん。確かに私は本物のアベルの記憶はありません。しかし、私を造って……そして1日1日を共に過ごしてくれたのは兄さんだけです」

「私は『本物のアベルとして生きる』のではなく『この世に新しく生まれた生命』として生きたいです」

 

「アベル……。すまない……すまなかった……!」

 

アベルが浮かべた笑みに『本物の弟』の姿を重ねたのかDr.カインは思わず彼に泣きついてしまった。

 

「Dr.カイン……」

 

そんな中、聞き覚えのある声が彼の名前を呼ぶ。

 

その声がある方に顔を向けた先に――。

 

「吉良……!」

 

そこにはDr.カインの側近を務めていた少年・吉良賢司の姿があった。

 

「吉良、久しぶりだな!」

「けど……ここへ来た理由は?」

 

「ああ、せめて最後に顔出しをしておこうかなと思ってね」

 

「吉良……」

 

「Dr.カイン。私は根尾中ベイブレード部を倒すことは出来ませんでした。更には彼らに助けられ、研究所から身を引くという選択を取りました」

「あなたの側に仕える者でありながら裏切った……。どんな罰でもいい……私に今一度罰を」

 

吉良がここへ来た理由……それはソウタ達に敗れた後、研究所から身を引いたこと。

 

研究所からの追放を覚悟して自ら罰を受けることを選んだのだ。

 

「分かった……。それでは吉良、お前に罰を与える」

「お前の罰はこれからも私の側近として仕えることだ。今度こそ私達が前を向くためにな」

 

「はい、かしこまりました……」

 

吉良に与えられた罰……それはこれからもDr.カインの側近として仕えることだった。

 

彼は忠義の証として胸に手を添えるのだった。

 

「……蒼龍想」

 

「どうしたの? アベル」

 

そんな中、アベルが想に向かって一歩歩み出す。

 

「僕と友達になってほしい……」

 

「えっ……!?」

 

「!!」

 

なんと、アベルは想と友達になりたいと話しかけてきた。

 

「ようやく気づいたんだ。僕は君のことが好きなのかもしれないって……」

 

「……!!」

 

「その……少しずつ少しずつ君と仲良くしたい。無理にとは言わない。君の意見をまず聞きたい」

 

「私も……どこかあなたのことは放っておけない、そんな気がしたの。だから……私もあなたと少しずつ仲良くしていきたい。私に気持ちを伝えてくれてありがとう」

「よろしくね、アベル」

 

「よろしく、蒼龍想」

 

アベルはずっと心の中に抱えていた想いを彼女に打ち明け、文字通り友達となった。

 

ソウタ達は無意識に目を潤わせ、そこに手を擦り付けていた。

 

暫くして……。

 

――根尾通り(パラレルワールド)――

 

研究所を後にしたソウタ達は最後の扉を探しに通りまで出る。

 

「とうとうこの世界とも別れの時が……。長いようで短かったなぁ……」

 

「そうね……。あなた達と出会って気づいた時には今日を迎えて……早いものね」 

 

ソウタと想が言葉を交わす中、探知機が扉の位置を知らせる。

 

「あったわ。場所は……根尾中学校」

 

「根尾中学校かぁ……。まさに最後に相応しい場所って感じだな」

 

探知機が指し示していたのはパラレルワールドの根尾中学校だった。

 

5人はそこへ向かって足を動かしていく。

 

そして……。

 

「着いたな」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

暗証番号を入力し、最後の扉を出現させる。

 

「想、今までありがとな。お前に初めて出会った時のことは今でも覚えてるし、これからも忘れはしない。短い間だったけど楽しかった! またいつかどこかで会おうぜ!」

 

「私からもありがとう。あなたの熱さ、仲間達の温かさに触れられたからこそ私も成長出来た。また会えるのを楽しみにしているわ」

 

「それじゃあ、元気でな!」

 

扉に手をかけ、別れの言葉を交わす。

 

ソウタ達は想に手を振りながら扉を通って、自分達の世界へ帰っていった。

 

そして……。

 

――根尾中ベイブレード部部室(翌日)――

 

翌日、放課後を迎えた学校内には生徒達が行き交う……ありふれた日常の風景が作り出されていた。

 

そんな中、ベイブレード部の部室ではいつもの4人が何気なく話していた。

 

「そういえば小屋はどうなったかな?」

 

ソウタはふとパラレルワールドへの入口である小屋のことを思い出す。

 

「確かにそうだな……」

 

「行ってみようか」

 

「ああ!」

 

バン達も小屋がどうなっているのか気になっていたようであり、そこへ同行する意思を見せる。

 

――根尾の竹藪――

 

「えーと確かここに……」

「あっ……!」

 

根尾通りの北にある竹藪にたどり着いたソウタ達。

 

彼らはあるものを見て驚く様子を見せた。

 

「小屋の前に竹が……!」

 

小屋の前にはいつの間にか「行く手を阻む」ような形で竹が生えており、もう行くことは出来ないということを静かに表していた。

 

「……」

 

「ソウタ?」

 

「いや……これでいいのかもしれないって」

「俺達の世界と想の世界……本来は交わってはいけない世界だったからこそ、この竹は互いの世界を守る役割を持ったのかもしれない」

 

「……そうだな」

 

ソウタの言葉に対し、その場にいたバン達は穏やかな表情とともに賛同の意を示す。

 

「久々にこの世界で外に出たんだ。根尾公園でバトルでもしようぜ!」

 

「ああ」 

 

竹藪と小屋を後にし、根尾公園へ向かう。

 

そんな中――。

 

「……!」

 

通りすがりの男女に対し、ソウタは既視感を覚える。

 

「何かあったか? ソウタ」

 

「……いや、何でもないさ」

 

「……?」

 

バンからそれについて聞かれた直後、彼はただ「何でもない」と言う。

 

(たとえ生きている世界が違っても……)

 

(心は通じてあっている……いつまでもいつまでも)

 

先ほどの男女に対し、言及はしなかったが自分と同年齢ぐらいの少女にはどこか「心が通じ合っている」と感じ取っていた。

 

そして、少女もまた通りすがりの少年に――。

 

         ――Fin――




__イメージCAST__

蒼龍ソウタ:小林千晃

門守バン:梶裕貴

一角ヒカル:小野賢章

焔ツバサ:榎木淳弥

蒼龍想:高橋李依

Dr.カイン:加瀬康之

アベル:神谷浩史

吉良賢司:戸谷菊之介

ナレーション:森川智之

ベイブレードNEO Season4 堂々完結です!

ここまで長きにわたってソウタ達の冒険とバトルを書くことが出来て本当に楽しかったです。

――そして。

2つの世界を巡る戦いはこれで一区切りとなりますが、シリーズはあと少しだけ続きます。次回作「ベイブレードNEO Season5」では新たな世代のブレーダー達の物語を書いていきます。作者として着々とその準備を進めてまいります。好きなテーマだったからこそここまで続けられました。少し充電期間を設けてからまた新しく物語を紡いでいこうと思います。本当にありがとうございました!
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