Dr.カインの第一の刺客・王と対決したヒカル。
彼が使うベイ「バーンジラーガ」のラバー刃による防御をジークアキレウスの連続攻撃によって無力化。
見事勝利を収めるも、王はまだまだ刺客がいることを告げて去っていった。
別世界に潜む刺客達との戦いは続く――。
――根尾公園(パラレルワールド)――
「Dr.カインの刺客を退けるなんて……さすが根尾中の頭脳ね。けど……これで完全にアイツラにマークされてしまったわ」
「そうだな、お前の言う通りこれから大変な目に遭うかもしれない。だが、数多の困難を乗り越えてきたのは確かなことだ」
「そうだぜ、想! 俺達は色んな壁にぶち当たってきた、それも数え切れないくらいだ! でも最後まで諦めることはなかった……だからお前の背中を俺に預けてくれ!」
想はその先を案じる様子を見せていたが、ヒカルとソウタのポジティブな言葉をかけられる。
特にソウタの笑顔は眩しいと言っていいくらい、希望に満ち溢れていた。
「……!」
(最後まで諦めない……。世界線が違えど私とあなたの根本的な部分は変わらないのね……)
「よろしくお願いするわ」
彼女は別世界の自分の熱意に触れ、優しい笑みをたたえる。
「よろしくな! 想!」
互いに手を取り合い、自分同士の絆を深め合う。
今ここに世界線を超えた繋がりが生まれたのだった。
――根尾第一研究所――
「Dr.カイン。王が敗れました」
「ほう……」
「どうやら一角ヒカルがベイを変えたことでジラーガの弱点を突いたようです」
「油断したな、王……。だが、邪魔者は徹底的に排除する。次はお前が行け、隼人」
「承知しました……」
一方でDr.カインは側近である少年・吉良賢司から王が敗北したという報告を聞き、次なる刺客・神代隼人を送り込む。
――根尾通り(パラレルワールド)――
根尾町はすっかり夕方を迎えていた。時間帯的に町民達は家に帰る頃合いだ。
「……そういえば、俺達そろそろ帰らなきゃやばくないか?」
「確かにそうだな……。想、ここから近くの扉はどこにあるか分かるか?」
「早速反応があったわ……!」
探知機が早速反応した、指し示していたのは根尾幼稚園だった。
「それで扉はどうやって出てくるんだい?」
「探知機に暗証番号を入れると出てくるわ」
想の言う通り、暗証番号を入れた瞬間、扉が現れる。
「すげぇ……!」
「これで元の世界に帰れるわ。また明日ね、あなた達」
「ああ! また明日な!」
ソウタは帰宅のために自分達の世界へ帰っていく。
「私もそろそろ帰らなきゃ……」
想も自宅の方へ向かって、通りの方を過ぎていった。
「俺にも見せてもらおうか……もう一つの世界を」
そんな中、帰りを急ぐ想を他所に通行人に紛れていた隼人がもう一つの探知機を持って意味ありげに呟く。
2人はすれ違うだけだったが新たな事件の引き金となるのは確かなことだった。
――根尾中ベイブレード部部室(翌日)――
「さて、想達の世界に行くか」
「昨日は王を倒したが、奴は他にも刺客がいると言っていたな」
「いずれにせよ油断出来ないね」
「そうだな、いつこの世界に来ても可笑しくはない」
バンの言う通り、いつ刺客達が自分達の世界に侵攻してきても可笑しくはない。
それは確かであると同時にソウタ達に更なる緊張感をもたらした。
「そんな、考え過ぎだって……!」
「それで終われば良いけどな……」
ソウタ達が部室を出る中、Dr.カインの刺客・神代隼人が窓からその様子を眺めていた。
「ここが『第一世界』か……。根尾中ベイブレード部、是非ともこの俺を楽しませてくれよな」
4人は根尾の竹藪に行き着き、ソウタが想から貰った鍵のスペアで小屋のロックを解除する。
「ここだな。じゃあ早速鍵を使って……」
「それじゃあ行こうぜ!」
小屋内の扉を開けて再びパラレルワールドに入った瞬間、扉はまたしてもどこかへ消えた。
「想、会いに来たぜ!」
「良かった……! 無事にこの世界に来れたのね!」
ソウタと想……。
異なる世界の自分同士でお互いの無事を喜び合う。
その一方で新たな危機が迫ろうとしていた。
――根尾公園(第一世界(ソウタ達の世界))――
「行っけーー!!」
「負けないぞ!!」
「いい攻撃ね、けど……」
「私も負けちゃいないわ」
「!!」
「お姉さん強すぎるよー!」
「良いなぁ、僕もお姉さんみたいに強くなりたい……」
「強くなれるわよ。大切なのはベイが好きという気持ちなんだから」
「成長したな……メイ。……やっぱり呼び捨てってなんか恥ずかしいな……」
「良いじゃないですか、瀬際さん。それに私はメイの笑顔を見れるだけで十分幸せですよ」
「杏子さん……」
第一世界……いわばソウタ達の世界の根尾公園ではメイ達瀬際家が子どもたちと一緒に遊んでいた。
娘の成長を「義父」の瀬際刑事と「実母」の杏子は微笑みながら喜んでいた。
しかし、そんな温かい光景にあの男が入り込んできた。
「随分楽しそうなことしてんじゃねぇか」
「!!」
――根尾通り――
「いやぁ、今日はこの世界の根尾町をたっぷり体験させてもらったぜ」
「この世界でも招福苑のラーメンは絶品だったなぁ。想、今日はご馳走になったな」
「どういたしまして」
ソウタ達は想とともにパラレルワールドの根尾町を楽しんでいた。
好物のラーメンも食べれてすっかり多幸顔になっていた。
「そういえば今のところ他の刺客を見かけていない気がするけど……」
「言われてみれば確かに……」
そんな中、ツバサは他の刺客の襲撃が今までに起こっていないことに違和感を覚えていた。
その直後のことだった、探知機からブザーが鳴り、ほのぼのとした雰囲気が一変、一気に不安を煽った。
「な、何だァッ!?」
「これは……! 警報音よ! 何者かが別世界で行動しているというメッセージだわ!」
「でも妙だわ……この音は誰かが他の探知機を持っていることで鳴るはずなのに……」
「何だってッ!? だが探知機を持っているのはお前だけのはず……! まさか……!」
「そのまさかだ……」
重厚な声とともに探知機から立体映像が投影されていく。
「!!」
「まさかお前は……!」
「あなたは……!」
「Dr.カイン!!」
彼らの前に立体映像として現れたのは根尾第一研究所の所長・Dr.カインだった。
「はじめましてだな……蒼龍想、根尾中ベイブレード部。先程私が送り込んだ刺客・神代隼人が第一世界に踏み入った。隼人は第一世界の根尾公園でお前達を待っている。その世界を手に入れるのは私達であることを改めて教えてやろう」
「そんな……! Dr.カインの刺客が俺達の世界にまで入ってきたのかよ!」
Dr.カインが送り込んだ刺客・神代隼人が第一世界へ侵攻。
恐れていた最悪な事態が起きてしまった。
「こうしてはいられない……。想、ここから近くの扉を探せるか?」
「ここよ!」
次に探知機が指し示していた場所は書店・NEO-Booksだった。
暗証番号を入力し、扉を出現させて第一世界へ向かう。
「皆、行くぜ!」
(根尾公園と言ったな……! 俺達の大切な場所を奪わせはしないぜ!)
――根尾公園(第一世界)――
「俺の勝ちだな」
「そんな……僕のベイが……」
「ひどい…………!」
第一世界の根尾公園では神代隼人がそこにいた子供達のベイをボロボロにしていた。
「なんて残酷な……」
「貴様……! よくも子どもたちのベイを!」
杏子は彼の所業にドン引きし、瀬際刑事は静かに怒りに震えていた。
「さーて次は……」
「見つけたぞ!」
「!!」
「なッ……! ベイが傷つけられている……! お前の仕業か! 神代隼人!」
扉を通り、ソウタ達も現場に到着。
ソウタはそこでの惨状を目撃し、激昂する。
「だったらどうする?」
「! お前には人の心ってのがねえのかよ……!」
「そんな脆弱なもんDr.カインが掲げる理想に必要ねえ」
「許さねぇ……!」
「王には拒まれたが今度こそ俺がお前をやっつけてやるぜ!」
「何勝手に決めてんだ? 俺とバトルしてもらうのは……」
「焔ツバサと……そこの嬢ちゃんだ」
隼人はツバサとメイを指差し、ソウタのことは眼中にない様子を見せる。
「またかよ……!」
「えーっと確か『神世』……じゃなかったな。今のお前は『瀬際』メイだったな」
「御託はいいわ、さっさと始めるわよ」
「ソウタ、バン、ヒカル。その子達をよろしく頼むわ」
メイはソウタ達に子どもたちを預け、バトルの準備をする。
「メイ、君と組むのは今回が初めてだね」
「いきなり巻き込んですまないが手を貸してくれないかい?」
「全く、誰かと組むのも久々ね」
「けど……私にも守るべきものはあるし、協力するわ」
ツバサは嘗ての仲間との初めての共闘に懐かしそうな顔をしつつも、直ぐにランチャーを取り出す。
「用意はできたようだな……」
「さあ……羽ばたこうぜ! テンペストガルーダ!!」
隼人は神鳥・ガルーダモチーフのベイ・テンペストガルーダを取り出す。
「あれがお前達のベイを……」
「うん……」
「気をつけて……あいつのベイは『回ってから』が『本領発揮』だよ」
そんな中、一人の子供が意味ありげな言葉をかける。
「焔ツバサ、お前はどうする?」
「僕は……これを使う!」
「!!」
ツバサはというと、ネオマートで買ったトルネードイーグルを取り出した。
「それは象栄の……!」
メイはフェニックスではなく、別のベイを使ってきたことに驚いたが、直後に真剣な表情へ切り替えた。
「お前もベイを変えてきたか……、面白え!」
「だが俺は王のように甘くねぇ……。それをガルーダで教えてやるよ」
「なら僕からも言わせてもらおう」
「この世界の『今とこれから』を踏みにじった罪は重いよ……?」
別世界からの刺客と第一世界を生きるブレーダーとの対決。
公園には緊張感が走った。
3・2・1 ゴーシュート!
スタジアムに放たれた3つのベイ。
シュートされた直後、テンペストガルーダは回転と同時に気流を生み出す。
「あぁっ……! 来た……!」
「僕達のベイはあの風に切られるようにボロボロにされたんだ!」
「何だってッ!?」
「えっ……」
「ベイが切りつけられる…つまりガルーダは強い回転力によって風を起こすことが出来るのか…!」
「さすが飲み込むのが早いな。テンペストガルーダはブレードに空いている穴によって気流をコントロールする」
「覚えておけ……空気を制する者はスタジアムを制すってことをなぁッ!!」
「暴虐暴風斬《テンペスト・アウトレイジ》!!」
ヒカルの考察に隼人は正解だと言わんばかりの笑みを浮かべ、テンペストガルーダの必殺技でイーグルとハデスを切りつけようと迫る。
「メイ……」
「ええ」
「OK、この位置がいい……!」
「?」
しかし、ツバサとメイは焦りの表情を見せず、デミスハデスはトルネードイーグルを匿うように位置する。
それに対して隼人は疑問符を浮かべた直後のことだった。
「な……何ッ!?」
なんとテンペスト・アウトレイジがハデスによって受け流された。
「このぐらいの気流……ハデスにとってはどうってことないわ」
「そして……この風を利用させてもらうよ」
それを受けて、トルネードイーグルがスタジアム上空限界までに上昇する。
「そうか……!」
「どうしたんだよ、ヒカル」
「ハデスが気流を受け流して、それを後ろにいたイーグルが身にまとって上昇する……2人はこれを狙っていたんだ」
「これが『今』を歩むブレーダーの力だ!」
「トルネードシューティング!!」
「何だとッ!?!?」
上空からの攻撃にガルーダはたまらずバースト。
見事神代隼人に勝利した。
「やったぞッ!! ツバサとメイの勝ちだァーッ!!」
「2人とも、ありがとう!」
「どういたしまして」
「ね、私の言ったことは本当だったでしょ?」
「でも……ベイがボロボロに……」
受け流していたとはいえ、ハデスのブレードには少々ダメージが入っていた。
「そこは大丈夫、私のお友達ならあなた達のベイを直せるわ」
「本当!?」
「やったーー!」
「友達……?」
「マイとシオンのことよ」
「いつの間に……」
しかし、メイ曰く、マイとシオンの手を借りて修理すれば大丈夫だと言う。
いつの間にか親睦を深めていたことにソウタは静かに驚いた。
「俺のガルーダがこんな過去の遺物に……!」
「隼人、これが今を生きるブレーダー達の魂だよ」
「!!」
「……そんなクセー台詞を吐いてられるのも今のうちだ……! 次会った時には全員ぶっ潰す!!」
ツバサの決め台詞に対し、隼人は捨て台詞を残して根尾公園を去った。
「ところで……あなた」
「ソウタに似てるけど……誰なの?」
そんな中、メイがとうとう想の方に目線を移す。
「私は蒼龍想。別世界から来た蒼龍ソウタ本人よ」
「え?」
「ちょっと待って……。本当に……!?」
「大丈夫、本当だから」
「何だってッッ……!?!?」
「お義父様、驚きすぎよ」
「あぁ、すまない。まさかソウタ君が別世界ではこんなに可愛い女の子だとは……」
「だが想君。君の真っ直ぐな瞳は確かな正義の心を証明している。これからのその心を忘れないでな」
瀬際刑事は想の正体に驚きつつも、すぐさま彼女から正義の心を感じ取り、その肩に手を乗せる。
「あ、ありがとうございます……」
(今、確かに感じたわ。この世界の者達からは確かな温かさがあるわね)
夕暮れの根尾公園はソウタ達の温かさを象徴していた。
――根尾第一研究所――
「エネルギーはまだ足りないな」
「だが私は果たさねばならない……! 『アベル』を完全な『人間』にすること……。それが兄としての義務なのだ……!」
その一方でDr.カインは研究所内の巨大なカプセルを見て独り言を呟く。
Dr.カイン第二の刺客・隼人を撃破したツバサとメイ。
残る刺客はどれぐらいか、そしてDr.カインの真の目的は何か謎は深まるばかりだ。
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ:小林千晃
焔ツバサ:榎木淳弥
瀬際メイ:竹達彩奈
瀬際勝:玄田哲章
瀬際杏子:三石琴乃
根尾第一研究所
Dr.カイン:加瀬康之
吉良賢司:戸谷菊之介
(髪型:灰色の無造作ヘア/目の色:青)
(Dr.カインの側近)
神代隼人:木村良平
(髪型:逆立った赤髪/目の色:黄色/その他:鳥の形のフェイスペイント(顔の左側))
(第二の刺客)
ナレーション:森川智之
ベイブレード
新規登場▽
テンペストガルーダ.F8.CB
(フローエイト・サークルボール)
(ガルーダモチーフのスタミナタイプ。)
既存モデル▽
トルネードイーグル.C2.Y
(サークルツー・イールディング)
(鷲モチーフのスタミナタイプ。)
(初出:ベイブレードNEO 第58話)