ベイブレードNEO Season4   作:マツザキ蓮

4 / 5
ベイブレードNEO・4 第4話 武の誇り

Dr.カインの第二の刺客・隼人と対決したツバサとメイ。

 

隼人は第一世界の根尾公園にて子どもたちのベイを傷つける暴挙を働き、ソウタ達の怒りを駆り立てた。

 

しかし、自らが指名した2人の機転のもとに敗れ去った。

 

別世界からの来訪者と第一世界の者達の対面はこれから起こる数奇な運命を仄かに示していた。

 

――根尾中ベイブレード部部室――

 

「マジで昨日は大変だった……。まさかDr.カインの刺客がこの世界に入ってくるなんて思わなかったぜ」

 

「奴等はこの世界への入り方というのを既に熟知しつつある。ここの平穏がいつ脅かされるか分かったもんじゃない……」

 

神代隼人との戦いから翌日、ヒカルは昨日のこともあり、警戒心を強める。

 

ソウタもすっかり疲れ切った様子だった。

 

――根尾第一研究所――

 

「Dr.カイン……」

 

「知っている。王に続き隼人も敗れた……、根尾中ベイブレード部……やはりお前達は我々にとっての『障壁』だ」

 

「まさに『目の上の瘤』、私達はどんな手を使ってでも奴等を『排除』せねばなりませんね」

 

「そうとなれば手段は選ばん! ウィリアム、廃工場で奴等を迎え撃つのだ……」

 

側近の吉良が諺を交えて話す中、Dr.カインは第三の刺客であるウィリアム・ヒガシを送り込む。

 

「はっ……!」

 

「……生憎だが吉良」

 

「はい」

 

「黒澤とソフィアに連絡しろ。あの2人は私でさえ扱いに困る……。が、阻止程度には役目を与えると伝えろ」

 

「かしこまりました」

 

しかし、Dr.カインは続けて吉良に「第四の刺客」と「第五の刺客」に連絡するよう指示。

 

容赦のない襲撃がソウタ達を待ち構える。

 

「そろそろ行くか……」

 

ソウタ達がパラレルワールドに行く準備をする中……。

 

「うぉっ!?」

 

部室の窓近くまで鳩らしき鳥が迫る。

 

「あれ? よく見たら……足になんかついてるな」

 

「どうやら伝書鳩のようだな。恐らく次の刺客が放ったものだろう」 

 

鳩の足には手紙が括り付けられており、そっとそれを手に取って開く。

 

――

 

根尾中ベイブレード部へ

ここまでの健闘、実に見事だ。

私の名はウィリアム・ヒガシ。  

Dr.カインの忠実なしもべだ。 

私から言いたいことはただ一つ。

私と闘え。

私は扉を抜けた先の根尾町にある廃工場で待っている。

根尾中学校を基準に廃工場までの道のりを示した地図を添えてある。

良い闘いが拝めるのを楽しみにしているぞ。

 

――

 

手紙には点字が打ち込まれており、なんと読むのかというのも書かれていた。

 

「なんか……王や隼人とはまた違った感じだな」

「でも何故かすげぇワクワクする……!」

 

ソウタは次なる刺客に対し、何故かワクワクする素振りを見せる。

 

――根尾の竹藪――  

 

竹藪に行き着き、ソウタは鍵のスペアを使って、小屋のロックを解除。

 

「クルックー……」

 

「よしよし。大丈夫だからね」

 

ソウタ達はパラレルワールドに行くついでに伝書鳩も連れて行く。

 

伝書鳩は何故かツバサの肩に乗っていた。

 

「それじゃあ……行くぜ」

 

――根尾中学校校庭(パラレルワールド)――

 

光が差し込んだ後、ソウタ達が出たのはパラレルワールドの根尾中学校の校庭だった。

 

「あっ! おーい!」

 

「! あなた達……!」

「あれ? その鳩は?」

 

「ああ、こいつはDr.カインの次の刺客が扉を通じて送ってきたんだ。しかもご丁寧に手紙と地図まで」

 

ソウタは想に「点字とその読みが書かれた手紙」と「廃工場までの地図」を見せる。

 

「王や隼人とは一味違う……そんな気配を感じるわ」

 

想は次なる刺客に「一味違う」という印象を見出す。

 

――廃工場――

 

地図の案内に従い、一行は廃工場に辿り着く。

 

中には一人の少年が目を閉じながら、杖を持って座り込んでいた。

 

「よく来たな、根尾中ベイブレード部」

 

「お前がウィリアム・ヒガシか」

 

「ああ」

 

「お前、目を閉じているのは点字の手紙からして目が見えないってことだよな」

 

ソウタはウィリアムが目を閉じている理由を手紙の内容から推察する。

 

それに対し、ウィリアムは一瞬だけ微笑んだ後、答える。

 

「そうだ……。私は病によって盲目の身となった。目を開けたとしても姿形をはっきりと捉えられない」

「だが、その代わりに高い聴覚を持っている。最初にこの場に来たのは蒼龍ソウタ、お前だな?」

 

彼は病をきっかけに視力を失い、それを補うために聴覚が発達していると話す。

 

「正解だ」

 

「……本題に移ろう。私と闘ってもらうのは……蒼龍ソウタ。お前だ」

 

「おぉっ! 俺か!」

 

ようやく回ってきた自分の出番にソウタは瞳を輝かせる。

 

「お前は何を使う?」

 

「!」

「流石に2度もベイを変えた事例を聞いたら察知されちゃうか……」

 

「あっ……!」

 

「案ずるな、あの伝書鳩は研究所で厳しく調教してある。ちゃんと研究所に向かっていく」

 

伝書鳩は研究所の方へ向かって飛び去っていった。

 

「俺は……こいつで行ってみるぜ!」

 

 

「あれは……!」

「ギャラクシードラゴ……!」

 

ソウタが取り出したのはギャラクシードラゴ。

 

第一世界で彼にとって最高のライバルである皇龍が使用していた機体だ。

 

もっとも入手経路はパラレルワールドのネオマートであるため、市販品として販売されていたものであったが。

 

「ほう……。お前もやはりベイを変えてきたか……。だが男たるもの誰かが使う『武器』を否定せず、ありのまま受け入れる」 

「それが我が『武の誇り』だ。そして、此方も見せねばな……」

「これが『武の誇り』の象徴、ツヴァイオルトロスだ……!」

 

ウィリアムは自身のベイ・ツヴァイオルトロスを取り出す。

 

王や隼人とは一味違う刺客・ウィリアムとの戦いの火蓋が切って落とされる。

 

「闘いは先に3点取った者の勝ちとする」

「が……お前にも聞いておこう。このルールでお前は良いかを」

 

「もちろんいいぜ!」

「お前とのバトル、楽しめそうだ……!」

 

「ならば……戦闘者として手は抜かない」

「始めから全力で行かせてもらうぞ……!」

 

ツヴァイオルトロスのブレードチップを一度外し、内部のプラパーツをずらしてモードチェンジ。

 

攻撃力に特化したアタックモードを選択した。

 

「盲目でありながら普通にモードチェンジを……!」

 

「オルトロスとは何年も一緒に歩んできたからな。モードチェンジの方法も既に掴んでいる」

 

「なるほど……」

「さあ、闘いの刻《とき》だ」

 

「……」 

 

ソウタのランチャーを構える音にもすかさず耳を立てる。

 

3・2・1 ゴーシュート! 

 

ツヴァイオルトロスは揺らめくような軌道を見せる。

 

「見つけたぞ……! そこだな……?」

 

「なッ……!?」 

 

ウィリアムは自身の聴覚でギャラクシードラゴの位置を特定し、ツヴァイオルトロスの偏重心によるアタックを仕掛ける。

 

「ギャラクシードラゴは左回転のベイ……。回転方向が対極になるのは当然」

「それにお前は斜め打ちをした……。確かにアタックタイプにはそれが向いている。だが……」

「動きが読めるぞ……!」

 

「一発一発の攻撃が重い……!」

 

ツヴァイオルトロスの偏重心による重たい攻撃が炸裂。  

 

回転を吸収するどころか自身が弾かれていく。

 

「ギャラクシードラゴの軸先はラバー製かつねじれた形状。斜め打ちによるスタジアムへのグリップ音だろうとオルトロスは決して逃さない……!」

「双牙獄命撃!!」

 

オルトロスの必殺技になす術なくオーバーフィニッシュ。

 

「あぁっ……」

「……」

「ウィリアム、すまな……」

 

「謝るな……!」

「蒼龍ソウタ、闘いにおいて一方が下に出ることは自身に迷いを生む」

 

「!」

 

「私はDr.カインに忠誠を誓っているが、その人のためではない。私自身の武を研ぎ澄ますために闘っている……!」

 

ソウタは十分な闘いが出来なかったことをウィリアムに謝ろうとしたが彼はそれを拒み、自身の美学を説く。

 

「ウィリアム……」

「分かった……!」 

「俺はお前の信念のもとで改めて闘うことを誓うぜ」

 

「……迷いのない良い声だ」

「その闘志が燃え尽きぬ内にお前がどんな武を示すか、見せてもらおう」

 

ウィリアムの美学を聞いたソウタは改めてその信念のもとで闘うことを誓う。

 

誓いに対するウィリアムの声も心なしか嬉しげだった。

 

「ああ!」

(ツヴァイオルトロスの偏重心攻撃は確かに強力だ……。けど俺はこいつのことを信じる……! 最後の瞬間《とき》まで!)

 

ギャラクシードラゴを見つめ、静かに微笑む。

 

それに返答するかのようにベイが一瞬だけ輝いた。

 

「?」

(さっきとはまた違ったシュートフォームか……?)

(だがそれがお前の武というのならスタジアムで示してもらうぞ)

 

3・2・1 ゴーシュート!

 

その直後、ソウタはランチャーを水平に構えてシュート。

 

ギャラクシードラゴの軸先が更にスタジアムにグリップする。

 

「!! この音は……!」

(さっきとはまるで…いやそれ以上に…)

(龍が咆哮しているような……)

 

ウィリアムが音の変化に困惑している中、ツヴァイオルトロスとギャラクシードラゴがぶつかり合う。

 

「回転吸収か……?」 

 

「そうだぜ……」

 

「!」

 

ソウタはシュート直後、龍の鼓動を発現。

 

髪が青い炎のように揺らめく。

 

「俺は水平打ちでドラゴをシュートした」

「正直言ってアタックタイプとは相性が悪いことだってのは知っている」

「……『普通』のアタックタイプはな」

 

「……そうか」

「お前はドラゴを水平にシュートすることで機動力を上げ、スタミナがなくなりそうなところを正面衝突による回転吸収で巻き返す……」

「それがお前の『武』ということだな?」

 

「そうだ……」

 

「フッ……」

 

ソウタの戦略を聞いた途端、ウィリアムは何故か微笑む。

 

「?」

 

「ご存知の通り、オルトロスはアタックモード……」

「偏重心によってマトモなスタミナはない、お前はそれを利用し戦略へと昇華させた……」

 

「俺のしたいことがここまで分かっちゃうなんてすげぇよ……ウィリアム」

「だから……お前に対する敬意をギャラクシードラゴで表するぜ……」

   

回転力を取り戻したギャラクシードラゴはスタジアム内に轟音を響かせながら、ツヴァイオルトロスの方へ向かっていく。

 

「!!」

 

(蒼龍ソウタ……。お前の『武』確かに届いたぞ……!)

 

「ギャラクシーオーバードライブ!!」

 

ソウタは独自で編み出した必殺技でツヴァイオルトロスをバーストさせ勝利した。

 

「ふぅ……」

 

「完敗だよ……。蒼龍ソウタ……」

「見事、私に武を示したな」 

 

「いや、まだ示してないぜ」

 

「何……!?」

 

ソウタはそう言うと、バーストしたオルトロスを拾い、組み上げる。

 

「ほら」

 

「……!!」 

 

「これもやってこその武だぜ」

 

そうして組み上げたツヴァイオルトロスをウィリアムに渡すのだった。

 

「面白いやつだ……」

「蒼龍ソウタ、お前はこの私にとって初めて顔を見たくなった男だ……。お前のことは一人の戦士としてこの頭の片隅に留めることを誓おう」

 

「ありがとな、ウィリアム」

「互いは敵だがお前、いや……アンタは紛うことなき誇り高い戦士だ」

「俺はアンタのことを忘れはしないぜ」

 

「今後、お前達にはさらなる試練が待ち受けている」

「だがその強さは本物だ……。それが試練を乗り越えることを心から祈るよ……」

 

ウィリアムは自身の近くに置いてあった杖を持って廃工場を後にする。

 

Dr.カインの第三の刺客・ウィリアムを撃破したソウタ。

 

敵同士ではあったがそこには「立場さえも超える敬意」があった。

 

敵ながら高潔な精神はソウタ達の心に世界線を越えて永遠に刻まれるだろう……。

 




__イメージCAST__

蒼龍ソウタ:小林千晃

門守バン:梶裕貴

一角ヒカル:小野賢章

焔ツバサ:榎木淳弥

蒼龍想:高橋李依

根尾第一研究所

Dr.カイン:加瀬康之

吉良賢司:戸谷菊之介

ウィリアム・ヒガシ:KENN
(髪型:水色のウェーブパーマ/その他:グレーのハチマキ&盲目)
(第三の刺客)

ベイブレード

新規登場▽ 

ツヴァイオルトロス.Od2.U
(オッドツー・ユナイト)
(オルトロスモチーフのバランスタイプ。)

既存モデル▽

ギャラクシードラゴ.Cl3.L
(クロースリー・リード)
(青龍モチーフのアタックタイプ。爆転シュートベイブレードのドラグーンとメタルファイトベイブレードのエルドラゴのオマージュ。)
(備考:左回転)
(初出:ベイブレードNEO 第32話)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。