2人組で襲撃してきたDr.カインの第四の刺客・黒澤と第五の刺客・ソフィア。
彼らはソウタ達のベイを盗んだ挙句、自身のテリトリーに誘い、部下達とともにベイブレード部と戦いを繰り広げる。
そこに残るのは「正義」か「悪」か――。
――謎の場所――
「君のドラグニルはたった今、僕が完璧にコピーした……。本物よりも鋭く冷酷な攻撃で君を蹴散らしてあげるよ……」
「黒澤の野郎……、もうドラグニルをコピーしやがったのか……!」
「だが俺はドラグニルと常に前に進んできた。お前のような偽物使いはぶっ倒してやる!」
「威勢はいいね……。けど、君より僕の方がドラグニルを使いこなせるかもしれないよ?」
「既にケルベロスがコピーされていたとはな……」
「クククッ……! お前の大事な相棒の力……俺がもっと引き出せるということを教えてやるぜ……!」
「ユニコーンのコピーか……。強さはほぼ同等ということか……」
「そうかもなぁ……、だが性能はそれ以上かもしんねぇよ?」
「そんな……フェニックスのコピーだって?」
「驚いたかァァァ! これがァァァ 黒澤様のォォ 技術の結晶であるぅぅぅぅ!」
「君……随分キャラ濃いね……」
ソウタ達ベイブレード部はマスクドブレーダー達と相対。
自分達の本来の相棒のコピーを見て、驚くと同時に使い手に対し様々な反応を見せる。
「私が勝ったら本当にドラグニル達を返してくれるんでしょうね……?」
「フッ……約束しよう……。もっとも今までの刺客達と戦ってこなかった君に出来るとは思えないがね」
「……!」
一方で想は黒澤と対決することとなり、黒澤は彼女を小馬鹿にしながらランチャーを構える。
3・2・1 ゴーシュート!
それぞれのステージで開始されたベイバトル。
ソウタはブリッツファフニールを、バンはディヴァインペルセウスを、ヒカルはウィザードピクシスを、ツバサはドレッドピファウルを使用。
いずれもパラレルワールドのネオマートにて市販品として販売されていたものだ。
「吸収しろ! ファフニール!」
「無駄だよ」
「何ッ!?」
ソウタはファフニールによる回転吸収作戦に出るも、ブラックドラグニルにあっさりと弾かれてしまう。
「言ったよね? ドラグニルは完璧にコピーされたってね。黒澤様のコピーは君の戦術を遥かに理解している……」
「闇に染め上げられた君の愛機の実力を見せてあげるよ!」
「守りきれ! ペルセウス!」
「なんてしつこい攻撃だ……!」
バンはペルセウスで攻撃を受け止めるが、ブラックケルベロスの猛攻に対し、焦る様子を見せる。
「単にコピーしただけじゃねぇ……。基になったベイ以上にスペックが強化されている。お前の代用品が力尽きるのも時間の問題だぜぇ……」
「ピクシスのガードが追いつかない……!」
ヒカルはピクシスでブラックユニコーンの連打攻撃を受け切るが、相手の方は一切攻撃をやめる様子を見せない。
「頑張って守ってるなぁ……! けどよぉ、ブラックユニコーンはじわじわとお前のベイの体力を削り取っていくぜぇ……」
「フェニックスのスライドギミックがこんなにも強化されているなんて……」
ツバサはピファウルでひたすら攻め込むが、ブラックフェニックスのスライドギミックによってそれさえも無効化されていた。
「ハーッハッハッハ! ブラックフェニックスは貴様のベイを基にィィィ 更なる高水準化に成功した奇跡のベイなのだァァァァ!!」
その一方で、サイバードラグニルのアタックにクライスガーゴイルはびくともしなかった。
「どうなっているの……? 攻撃をしてもまるで最初からそんなもの無かったかのように……!」
「フッ……これぞクライスガーゴイルの真髄……!」
「ブレード下部に搭載された『リカバリースイッチ』が押されることでロックの進行を戻す……」
「余計な邪魔が一切入らない守り……まさに魅惑的な演技《ベイバトル》を可能にしているのだよ」
想は黒澤からのギミック解説に驚きを隠せなかった。
「一つのベイにこんなギミックが詰まってるなんて……!」
「けど……私はあなたのような誰かの尊厳を踏みにじる『悪』に屈しないわ! 確かに今までの刺客達と戦ってはこなかったけど私はこの世界を守りたい!」
「この世界を守りたい……か。実にテンプレ極まりないセリフだ……」
「!!」
「誰かの尊厳だなんてどうでもいい……。全ては私の実験したいという欲を満たせればその実験は成功なのだから。いいかい、実験とは即ち『遊び』なのだよ」
(『遊び』ですって……!? この男、骨の髄まで腐りきっているわ……!)
(でも今はコイツを倒すこと……それが何よりも最優先事項だわ。ベイを見極め、必ず弱点を掴む……!)
黒澤の吐き気のするような持論に想は静かに怒りを燃やす。
彼女の瞳には黒い炎のようなオーラが一瞬だけ宿る。
その瞬間、ガーゴイルのブレードチップの上下部分が赤くなった。
(今のは……! 見つけたわ……攻略ルートを!)
「さぁ……フィナーレと行こうかぁ……!」
「お前はもう終わりだぁ!!」
「俺は優しいからな……そのまま寝かしつけてやるぜ……!」
「我がブラックフェニックスの力ァ とくと見るがいいッ!! 貴様のベイを深淵まで沈めてくれるわァァァァ!!」
最後の仕上げと言わんばかりにそれぞれの対戦相手に襲いかかる。
「!!」
(もう……希望はないのか……)
「…………」
「!!」
「龍真……?」
「シアス……」
「カイト……」
「アイ……」
ソウタ達が絶望の表情を浮かべる中、光が差し込み、代用ベイの本来の使用者の幻影が彼らの前に現れた。
「蒼龍ソウタ、根尾町を救った勇者がこんな有様では面子というのが丸潰れじゃないか」
「そ……それは……」
「僕は君を信じているんだ。君ならファフニールの新たな顔を見せられる……贋物で満足している奴なんか敵ではないということを示してくれ」
「龍真……!!」
「全く……私を倒した男が相棒の鏡写しに苦戦しているとは」
「何が言いたい? シアス」
「私はお前の不屈さを認めている。今こそそれを発揮する時ではないか?」
「……!!」
「君は自分のベイのコピーにまで苦戦するやつじゃないだろ?」
「カイト……お前……!」
「あの時、君の計算を超えた戦いは今でも覚えている……。僕にも研究できないほどの知略を見せてくれよ」
「!!」
「情けないわね、アンタとあろう者が……」
「アイ……。僕は……」
「言っとくけど忘れてないから……。アンタとマイが共闘して私を救ってくれたこと」
「シオン様に従っているだけしか心の拠り所がなかった私に『信頼』というもう一つの場所を与えてくれた……。ニセモノで遊んでるヤツなんかに負けないで」
「分かった……! 君の力をヤツに示してくるよ」
4人の幻影は穏やかな表情を浮かべた後、消えていった。
それは、たとえ幻でもソウタ達と築いた絆は変わらないことを確かに証明していた。
光が明けた先にはそれぞれの目の前にマスクドブレーダー達が再び現れるも、4人の表情にはもう迷いはなかった。
「避けろ……ファフニール……」
「なッ……!」
ソウタは龍の鼓動を発現させ、それに合わせるかのようにファフニールの軌道が逸れる。
「暴れまわれ……ペルセウス!」
「何ッ!?」
「叩きつけろ……ピクシス!」
「うぉっ!?」
「切り裂け……ピファウル!!」
「な……何だァッ……!?」
迷いのない曇りのない表情の4人……。
彼らは予想外の戦法でマスクドブレーダー達の動揺を誘う。
「けど逃げたからって逃がしはしないよ!」
「これでトドメだッ!!」
ブラックドラグニルの軸先が格納し、加速。
一気に襲いかかるが……。
「そう来ると思っていたぜ」
「ハッ……! しまっ……」
ブリッツファフニールと衝突した瞬間、ラバー刃がひしゃげブラックドラグニルの回転力を吸い上げていく。
「ドラグニルの加速は確かに強力だ……。だがその分スタミナをかなり使う……、だからそれを逆手に取りファフニールを避けて回転吸収に持ち込んだんだ」
「……ッ!!」
「根尾中ベイブレード部を舐めんじゃねぇーーッ!!」
「ああっ……!」
ブリッツファフニールをあえて遠ざけることで、ブラックドラグニルの加速から回転吸収をし、立て直した。
見事、形勢逆転を果たしバーストフィニッシュで勝利した。
「ふぅ……」
(ありがとな……龍真……)
ソウタは心の中で龍真の幻影に礼を言い、胸に手を添えた。
『対戦者の敗北を確認。間もなくこの床は「開きます」』
「えっ?」
実験室の音声が流れ、その内容にソウタは思わず思考停止。
振り返った先には……。
「うわぁぁぁぁぁぁ……!!」
「蒼龍ソウタ……! 君にはまだまだ試練が待ち構えている、これで終わりだと思わないでよ……!」
マスクド・ブルーがいた床が鈍い音を立てて開く。
彼は根尾中ベイブレード部のこれからを暗示するような台詞を残して落下していった。
「負けた奴はいらないってか……。……考えてる暇はねぇ、今はあいつらが来るのを向こうで待っていよう」
部下にも容赦のないやり方に引きつつも、ソウタは向こうの通路を渡っていく。
「ただ守るんじゃない……攻めに転じる。それが今の俺だ……!」
「ディヴァインクラッシュ!!」
「うぉぉぉ!?」
「ガードするための武器が叩きつけるための武器に変化した時の恐ろしさ……それを示すッ!」
「ウィザードハンマー!!」
「何だって!?」
「これはただの攻撃じゃない……裁きの羽だよ……!」
「ドレッドブレイク!!」
「なァァァにィィィ!?」
根尾中ベイブレード部の残る3人も新技とともにマスクドブレーダー達とそのベイを打ち破った。
勝利を掴み取った彼らの表情は凛々しかった。
『対戦者の敗北を確認。間もなくこの床は「開きます」』
「うぉぉぉぉぉぁぁぁぁ!!」
「やるな……根尾中ベイブレード部……。だが、試練は続くぜ……どこまでもなぁ……!!」
「俺の敗北というわけか……さらばだ、焔ツバサァァァァ!!」
「最後の最後まで一貫してるね……君は……」
残るマスクドブレーダー達はそれぞれ、台詞を残して落下していく。
その中で、イエローのハイテンションさにツバサは引き気味な様子を見せた。
「マスクドブレーダー達の敗北を確認致しました」
「な……何ッ……!?」
(私の部下達が敗れただと……!?)
実験室のアナウンスから部下の敗北を知った瞬間、黒澤の余裕は一気に崩れ去った。
「どうしたの? まるで計算が狂ったかのような顔をしているけど」
「……!!」
想からそれを指摘され、図星だったのか黒澤は無意識のうちに歯軋りをする。
「だがそれがどうした……! クライスガーゴイルのリカバリースイッチは貴様のベイのアタック程度で揺らぐものじゃねぇ……!」
彼は完全に動揺し、口調までもが荒々しくなる。
「ええ……そうね。『今まで』の私ならね……」
意味深長な発言をした途端、想の瞳に宿った「黒い炎のようなオーラ」が更に燃え上がる。
更には……。
「な……何ッ……!?」
小気味良い音を立てて、クライスガーゴイルのロックが進行し始めた。
「あなたのベイ……一見無敵に見えるけど致命的な『弱点』がある。それは……『ブレード中央の印』よ」
彼女はそう言って、クライスガーゴイルのブレードチップの上下部分を指し示す。
「回転時に印が赤い時、それは攻撃のチャンスってことよね? 確かにそんな一瞬をついて攻略だなんて至難の業だわ」
「だけど別世界の者たちが頑張っている……。私も応えなきゃいけないわ……」
(何ということだ……! ガーゴイルの弱点を一瞬にして理解するとは……!)
ガーゴイルの弱点を見抜かれた黒澤は言葉を発することも出来ずに只々焦るだけだった。
「さぁ……行きましょ。サイバードラグニル……!」
スタジアムを駆け巡るのと同時に一番下の軸先が摩耗し、更なる加速を見せる。
「た……耐えろッ!! クライスガーゴイル!!」
「サイバードライブ!!」
加速による激突でリカバリースイッチの働きさえも無効化し、バーストフィニッシュで勝利。
クライスガーゴイルのパーツはスタジアム外へ全て弾け飛んだ。
「やったわ……!」
想は静かに勝利の喜びを噛み締める。
「何だと……!? この私が……!」
「さぁ、返してもらうわよ」
「それともまだ抵抗する気かしら?」
「少し想定外の結果だっただけだ……!」
(碌な実験にならなかった……。ならば…!)
「もう一度だ……!」
「えっ……?」
「さっきのは貴様に運が向いていただけ……真の運の良さはこの私にあることを教えてやる」
黒澤は敗北を受け入れられず、先程のバトルをなかったことにし、仕切り直しを図る。
しかし、想はため息をついた後、スマホを取り出した。
「……やっぱり悪党ってのはいつの時代も同じね……」
「何だと……?」
「そういえばあなた、黒澤景光って言ったわよね」
「どこかで聞いたことあると思っていたら世間では俳優さんで知られているみたいね」
スマホの画面には黒澤景光の「表の顔」が書かれたWikipediaが表示されており、彼は焦りをいっそう強める。
「……!! 貴様……! いつの間に」
「あなたがいる場所に運ばれている時にこっそり調べていたの」
「それだけじゃないわ」
彼女は名前に聞き覚えがあり、彼がいる場所へ転送されている中である程度の情報を調べ上げていたのだった。
『誰かの尊厳だなんてどうでもいい……。全ては私の実験したいという欲を満たせればその実験は成功なのだから。いいかい、実験とは即ち「遊び」なのだよ』
更には彼の持論をスマホで録音までしていた。
「なっ……何ぃッ……!」
(こいつ……! 録音していたのか……!?)
「貴様ぁ……! 私に脅しをかけたつもりか!?」
「脅し……? よく言うわよ、自分の趣味のために無関係な人々の尊厳を弄んでいる癖に……」
「まぁ、私から一つ提案があるわ」
「何だ……?」
「Dr.カインの本当の目的を話しなさい」
「なっ……!何ッ……!?」
「貴様……! やはり脅しじゃないか!?」
「別にそんな気はないわよ」
「あなたの下劣さを表に出しても私は構わないわ。だって、私が損害を被る訳じゃないから……」
俳優としての破滅をチラつかせ、透き通りつつも冷徹なトーンで語りかける。
瞳にオーラを宿した想の静かな怒りに黒澤は震えるしか無かった。
(私の本質が表沙汰になるのは非常にまずい……!)
(Dr.カインの目的を話したら私自身がどうなるか、それは自分でも分かっている……!)
(だがそれでも私は実験をしたい……私にはそれしかないんだ……! ならば……)」
「あぁ……!言ってやる……!言ってやるぞォォ……!」
「ド……ドクタ……ド……」
(うぉぉぉ……! ダメだ……! 口が動かねぇ……! 寧ろ動くのを拒否してやがる……!!)
「ド……ド……! アッ……!」
「…………ァ……ァ……!」
黒澤はDr.カインの目的を話そうとしたが恐怖故に錯乱し、実験台にして来た人々と同様「廃人」と化した。
多くの人々の尊厳を弄んだ下劣な科学者は皮肉にも彼らと同じ末路を辿ったのだった。
「?」
黒澤のズボンのポケットからリモコンらしきものが落ちた。
「これは……? Unlock……」
「ロック解除を承認」
「!!」
リモコンにUnlockと書かれているボタンを押すと、壁の一部がタンスのように飛び出る。
その中にはドラグニル達が入っていた。
「良かった……! 早速持っていかなきゃ……!」
想は急いでソウタ達の方へ向かう。
Dr.カインの第四の刺客、黒澤を討った想。
彼女の秘められし実力が開花した今、彼女は基本世界とパラレルワールドのそれぞれの世界を生きる者達にとっての希望の光となった。
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ:小林千晃
門守バン:梶裕貴
一角ヒカル:小野賢章
焔ツバサ:榎木淳弥
蒼龍想:高橋李依
金山龍真:櫻井孝宏
瀬里シアス:福山潤
四天カイト:山下大輝
虹羽アイ:沢城みゆき
黒澤景光:成田剣
マスクド・ブルー:斉藤壮馬
マスクド・レッド:三浦祥朗
マスクド・グリーン:福島潤
マスクド・イエロー:伊丸岡篤
ナレーション:森川智之
既存モデル▽
ブリッツファフニール.Y8.Rv
(ヤードエイト・リバーブ)
(ファフニールモチーフのスタミナタイプ。ベイブレードバーストのファブニルのオマージュ。)
(初出:ベイブレードNEO 第61話)
ディヴァインペルセウス.Ar6.WN
(アーマードシックス・ワイドニードル)
(ペルセウスモチーフのディフェンスタイプ。)
(初出:ベイブレードNEO 第28話)
ウィザードピクシス.Wd4.AB
(ワイドフォー・アーマーボール)
(羅針盤モチーフのスタミナタイプ。メタルファイトベイブレードのフレイムビクシスのオマージュ。)
(初出:ベイブレードNEO 第31話)
ドレッドピファウル.Br4.Qc
(ブレイクフォー・クイック)
(孔雀モチーフのアタックタイプ。メタルファイトベイブレードのキラービフォールのオマージュ。)
(初出:ベイブレードNEO 第33話)