Dr.カインの第四の刺客・黒澤を倒した想。
彼女は急いでソウタ達のもとへ向かう。
一方、根尾中ベイブレード部メンバーもそれぞれのもとを目指して向かっていくのだった。
残る刺客はソフィアのみ。
感情が欠落した無邪気な残酷さを持つ少女はどう彼らの行く手を阻むのか……。
「あっ……!」
「想! ここへ来たってことは……!」
「あいつを……黒澤を倒したんだな!」
通路を通り、遂にメンバーが揃う。
やっとの再会に全員笑顔を浮かべて、それを喜び合った。
「ええ……!」
「良かった……! それで黒澤は……?」
「実験台にして来た人々同様『廃人』になったわ」
想は早速黒澤がどうなったかをソウタに告げる。
「えっ?」
「あいつのこと調べてみたら、表の顔は俳優だったみたいよ。随分ゲスい発言をしていたからそれを録音して突きつけたわ」
「それに加えてDr.カインの目的を話すようにって追い打ちをかけたら急に焦り始めたのよ。それで最終的に廃人にというわけ」
「そうだったのか……」
(別世界の俺、怖いな……)
「そういえば……。もう一人いたような……」
別世界の自分が行った「冷徹な制裁」に恐怖を覚えつつも、もう一人の刺客がいたはずと呟く。
「あはははっ……! 正解ー!」
その直後、黒澤と行動を共にしていた少女・天野ソフィアが実験室の上から降りてきた。
「天野ソフィア……!」
「ボクのこと覚えてくれてて嬉しいなぁ……!」
「そういえば……君達に見せたいものがあるんだ」
ソフィアはウキウキでハーフパンツのポケットからスマホを取り出した後、写真アプリから動画を開く。
「何だ……?」
『あぁ……! 言ってやる……! 言ってやるぞォォ……!』
『ド……ドクタ……ド……』
『ド……ド……! アッ……!』
『…………ァ……ァ……!』
そこには黒澤が廃人と化した瞬間がきっちりと撮られていた。
「やっぱり黒澤は凄いなぁ……。顔の引きつり具合まで完璧だよ。ボクも何回見返したか分かんないや」
「お前……! 自分のパートナーなのによくそんなことが……!」
「パートナーかー……。ボクは黒澤のことは『機材』だと思ってたけど」
(やっぱりこいつ『何か』が欠けている……!)
ソウタが戸惑いを含めた怒りを滲ませるが、ソフィアはそれに対し、キョトンとするだけだった。
苦しみに対する感情の欠落にソウタは「不気味」だと感じる外なかった。
「それよりさ、ボクと遊んでよ! そうだなぁ……マスクドブレーダー達とのバトルの中で色んなベイを使ってたよね?」
(そんなとこまで見てたのか……!)
「ボクも他のベイとバトルしてみたいなぁ。だから、まだ使ってないベイがあるなら、それを使ってくれるかな?」
「随分と自由な奴だな……」
(……そういえばまだ使っていないベイがあったな……)
彼女の自由奔放ぶりにソウタが呆れ返る中、バンが思い当たる節がある様子を見せる。
「例えば……君、怪しそうだなぁ」
「……正解だ。確かに俺にはまだ使っていないベイが一つある」
「この『バーニングスザク』がな……」
ソフィアが彼のことを指差すと、バンは正解だと述べ、ネオマートで購入した「バーニングスザク」を取り出す。
「おっ……! やっぱり……! じゃあ……君、ボクとバトルしよっか」
「『イェーガーグリフォン』が君のベイと遊びたがってるよ……!」
無邪気さと残酷さを併せ持つ少女、ソフィア。
彼女が挑戦状を叩きつけたのは門守バン。
実験室に響く声はもはや一種の狂気だった。
「お前のその歪みきった心は変わらないだろうな……。だが、やることは一つ」
「お前を倒し、先に進む」
「いいね……! その自信……!」
「その自信が崩れ去る瞬間をボクに撮らせて……!」
歪んだ笑みを浮かべ、スマホのカメラ機能で動画撮影を開始。
バトルの結果というより、面白い映像が撮れるか否かが彼女にとっての何よりの最優先事項であることが伺える。
「!?」
(何だこのプレッシャー……。何か……何か奇妙だ……)
(そして……あのギア。ディスク一体型だがあのスイッチのようなものは一体……!?)
ソフィアからバンは謎のプレッシャーを感じ取る。
それだけでなく彼女の使うベイ、「イェーガーグリフォン」のブレード下のパーツはディスク一体型ギアだったが側面にはスイッチのようなものがついていた。
「あぁ……ワクワクが止まらないよ……!」
3・2・1 ゴーシュート!
シュートと同時にグリフォンのブレードの4枚刃が展開。
攻撃的な形状へ変化した。
「開いたッ……!?」
イェーガーグリフォンの4枚刃がバーニングスザクのブレードに激しい攻撃を加えていく。
ブレード自体、まだ耐え切っているがそれでも攻撃をやめない。
「切り裂くような……痛みを感じさせるような攻撃……! 耐え切ってくれ……!」
暫くして、グリフォンの展開した4枚刃が引っ込む。
「耐えた……! 勝機は掴んだ……畳み掛ける!」
今のうちに反撃に転じていき、それを受けたグリフォンはふらついていく。
「あははっ…!! お楽しみはこれからだよ……!」
「何だと……?」
しかし、ソフィアは焦るどころか笑いを交えながら意味深長な言葉をかける。
「!?」
光を発した後、イェーガーグリフォンが回転をどんどん取り戻していく。
それを見て、ソウタ達全員が驚かずにはいられなかった。
「あはははは……!! 最高の撮れ高だよ……!」
「回転が戻った……!?」
「当たりー。ボクのグリフォンは電動機能搭載……その搭載範囲はブレードとギアにまで及ぶ」
「バトル前半は自動で展開するブレードでのアタック、そして後半はギアの電動アシストによる回転の回復……まさに2つの顔を持っているよ」
なんとイェーガーグリフォンには電動機能が搭載されており、先程の攻撃・回転の回復もそれによるものだという。
「……そして君の熱意に溢れた顔が歪む瞬間が合わさってボクの映像は出来上がりつつあるッ!」
「イェーガードリフト!!」
「……!!」
イェーガーグリフォンが勢いよく激突し、回転が一気に削られ、スピンフィニッシュ。
相手に先制点を奪われた。
「何も出来ずに力尽きる……!」
「良い画が撮れた……! けどボク……もっと欲しいなぁ……!!」
それでもソフィアは体を僅かに震わせ、撮影に対する欲求を絶やさなかった。
(電動機能搭載だって……!? こんな科学の権化みたいなベイがあっていいのか……?)
(だが……何より許せないのはベイを『撮影のための道具』としか見ていないことだ)
(バン、お前は本当に倒せるのか? あんなイカれた奴を)
(鍵を握るのはグリフォンのギア側面のスイッチ。それを攻略さえ出来れば……!)
(……あの作戦で行くか)
バンは心の中である作戦を立てた後、彼女に話しかける。
「おい」
「?」
「お前、まだ満足していないのか?」
「……? そうだよ?」
「そうか……ならば再戦と行こうじゃないか」
「……! てことはもう一回面白い映像が撮れるってこと!?」
「うん! やろう!」
やはりというべきか、彼女は勝ち負けより映像が撮れることを優先していた。
「……」
バトル前、バンはバーニングスザクのギアを捻り、高さが低くなる「ローモード」にモードチェンジした。
「モードチェンジかー……面白そう!」
「あっ……カメラ起動しなきゃ」
ソフィアは改めてカメラ機能の動画撮影ボタンを押した後、ランチャーを構える。
(あれは斜め打ちのシュートフォーム……!?)
そんな中、ソウタはバンのシュートフォームに注目。
彼がどんな作戦に出るのか固唾を呑んで見守る。
3・2・1 ゴーシュート!
シュート直後、イェーガーグリフォンの4枚刃が展開したのに対し、バーニングスザクは薄い刃で相手のスタミナを削り取っていく。
「潜り込め、バーニングスザク!」
「おぉっ……! 面白くなってきた……! でも……」
「そんなに攻撃して大丈夫? ボクには電動アシストがあるから、君がどうやったって結果は変わらないよ!」
「構わない……。これが俺の勝ち筋だ……!」
ソフィアの挑発にバンは揺らぐことなく、攻撃を続ける。
「あははっ……! 電動アシスト発動!」
「君のベイはかなり傾いている……! そのまま何も出来ずに倒れる様をボクに撮らせてよ!」
早速相手の方は電動アシストを発動させ、持久戦へと持ち込む。
「バン……!」
「俺の作戦は今ここで『完成』した……」
しかし、バンは「作戦が完成した」と言う。
実験室内の空気が張り詰める中、バーニングスザクが動き出す。
「!!」
なんと、スザクの刃がグリフォンのギア側面のスイッチに当たり、瞬く間にそれを奥へ押し込んでいった。
その瞬間、電動アシストは停止し、相手の作戦は阻止された。
「スイッチを停めた!?」
「そうか……!」
「ヒカル!?」
「バンはバーニングスザクをローモードにし……そして斜め打ちすることで奴のベイのスイッチを停止させ、電動アシストの封印を図ったんだ……!」
「マジかよ……!」
「これでお前の戦法は封じられた! この一撃で全てを決める!!」
「火炎旋風斬!!」
バーニングスザクのローモードによるアタックがイェーガーグリフォンのギア側面のスイッチを強引に切り、停止させることに成功。
スタミナを一気に削られた所を畳み掛けてバーストフィニッシュで勝利した。
「……!! 負けた……? ボクが……?」
「……………………」
「?」
「あはっ……! あははっ……! あっはははは……!! すごい……! 胸の奥が焼けるように熱いよ……! これが初めての敗北……なのにスゴくドキドキする……!! 黒澤が見せてくれたどの映像よりもボクの方が最高に『映えてる』じゃん……!!!!」
しかし、ソフィアは敗北したのにも関わらず恍惚とした様子でスマホのカメラを自分に向けその様子を撮影する。
その様子を見て彼らは当然不気味がり……。
「……ソウタ、ヒカル、ツバサ、想」
「逃げるッ!!」
彼女が自分自身を撮影している隙にソウタ達は即刻その場を離れる。
振り返ることはなかった、あるのは出口があることを信じてひたすら走っていくという意志だけだった。
「何でだ……あいつは撮影に夢中になってるはずなのに寒気がする……。怖え……本当に怖え……!!」
「言っている場合じゃないぞ……!」
「あれは最早、人の形をした『異形』だ……!」
5人が必死に走る中、彼らはあるものを見つける。
「!!」
「は……梯子だ…!!」
「うぉぉぉぉぉ……!!」
視線の先には梯子があり、一生懸命それを登っていく。
「ハァハァ……!!」
「な……なんとか脱出出来たね……」
「あんな奴等とは二度と戦いたくないわ……」
「念のため戻しておくぜ」
「にしてもバン、すげぇよ。モードチェンジでギアのスイッチを切るという糸口を掴むなんて……俺には真似出来ねぇぜ」
「よせよ……。さっきのこともお前のこれまでの戦い方から学んだことだ」
(これまでの戦いの中で理解したわ……。根尾中ベイブレード部、あなた達はどんな相手でも決して諦めることのない心……それが様々な困難を乗り越えてきたのね)
幸いにも実験室はマンホールと繋がっており、ソウタ達はパラレルワールドの裏路地の方へ出ることが出来た。
そして、ソウタは念のためということでマンホールを再び閉じた。
――根尾第一研究所――
「兄さん、本当に私は待っていればいいのですか? 私はあなたの『望む』アベルになれるのでしょうか?」
「勿論だ、アベル。お前は私のかわいい『弟』なのだからな。私はお前のために全力を尽くす」
「そして……吉良」
「はい」
「これから王、隼人、ウィリアムを第一世界に派遣する」
「かしこまりました。……『背水の陣』、どうやら私達も覚悟を決めなければならないようですね……」
Dr.カインの第五の刺客・ソフィアを撃破したバン。
だが彼らは知る由もなかった。
打倒した筈のかつての強敵が再び第一世界への侵攻を始めようとしているという事実を……。
第一世界のブレーダーの明日は暗黒に満ちた絶望か一縷の希望か、世界線を超えた戦争の宣告は始まった。
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ:小林千晃
門守バン:梶裕貴
一角ヒカル:小野賢章
焔ツバサ:榎木淳弥
蒼龍想:高橋李依
天野ソフィア:井上麻里奈
黒澤景光:成田剣
Dr.カイン:加瀬康之
吉良賢司:戸谷菊之介
アベル:神谷浩史
(髪型:銀のハネた形状/目の色:青)
ナレーション:森川智之
ベイブレード
新規登場▽
イェーガーグリフォン.Hy
(ハイブリッド)
(グリフォンモチーフのバランスタイプ。)
既存モデル▽
バーニングスザク.O4.T
(オペレートフォー・トランス)
(朱雀モチーフのバランスタイプ。爆転シュートベイブレードのドランザーのオマージュ。)
(初出:ベイブレードNEO 第1話)