ベイブレードNEO Season4   作:マツザキ蓮

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交わる世界編
ベイブレードNEO・4 第8話 宿命


Dr.カイン第五の刺客・ソフィアを撃破したバン。

 

彼女の敗北してもそれを感じない、寧ろ快楽として消費する様はソウタ達に一種の恐怖を植え付けた。 

 

だが、Dr.カインの手は止まることを知らない。

 

彼は再びソウタ達が倒した筈の刺客、王、隼人、ウィリアムを第一世界に送り込む。

 

第一世界に再び送り込まれた刺客達はその世界のブレーダー達と拳を交えた後に何を見るか……。

 

戦いの火蓋が切って落とされた。

 

――根尾通り(パラレルワールド)――

 

夕暮れのパラレルワールドの根尾通り、そこに響き渡るのはカラスの鳴き声だけだった。

 

通りを歩いていくソウタ達の足は完全に疲れ切っていた。

 

「もう夕方か……。そろそろ元の世界に帰らなきゃな……」

 

「そうだな……。想、ここから近くの扉がどこにあるか分かるか?」

 

ソウタ達は時間帯的に、そろそろ元の世界へ帰らなければならなくなり、想に扉の場所を訪ねる。

 

「待ってね」

 

探知機から放たれる少し高めの音が扉の反応を示す。

 

それは通りの壁に強く反応していた。

 

「よしッ……! これで帰れる!」

「ありがとな、想!」

 

「また来るからな」

 

「また明日」

 

「うん……またね」

 

彼女は手順通りに暗証番号を入力し、扉を出現させた後、ソウタ達のことを柔らかい笑顔とともに見送る。

 

その一方で、第一世界に生きる者たちに新たな危機が迫ろうとしていた。

 

――古びた城の跡地(第一世界)――

 

「ゴー……シュート!」

 

神世学園のリーダー・皇龍は根尾町の外れにある古びた城の跡地で練習をしていた。

 

夕日が雲を真っ赤に染め上げる中、彼の後ろに一人の影が近づいていく。

 

「励んでいるようだな」

 

「……貴様、何者だ?」

 

「俺の名は王 明偉」

「皇龍。Dr.カインからの命令でお前を始末しに来た」

 

「ほう……この俺を始末だと? 面白い……!」

 

突如として龍のもとに現れたのはDr.カインの第一の刺客・王だった。

 

城の跡地には早速ピリついた空気が張り詰めていた。

 

――

 

『王、隼人、ウィリアム。お前達を第一世界に派遣する。そこで、私が指定するターゲットからエネルギーを奪い取れ。王、お前は「皇龍」を、隼人は「瀬際メイ」を、最後に……ウィリアムは「天道シオン」を迎え撃つのだ。先程述べた3人からは特に強いエネルギーが秘められている。それこそがこの世界にとっての……私にとっての救いの架け橋となるだろう』

 

『……!!』

 

『…………』

 

Dr.カインからの命令に王と隼人は一瞬だけ戸惑ったが、ウィリアムだけは沈黙をした後、頷いた。

 

『最後に一つ言っておく。この戦いはもはや「勝ち負け」という尺度で測るべきものではない……。「滅ぶ」か「滅ぼす」ただそれだけだ』

 

暫くして……。

 

『これが第一世界へ……そしてターゲットのもとへ繋がる扉……』

 

王はDr.カインから渡された探知機を使い、扉を特定。

 

扉の仕様は通常とは少し異なっていたが、そこから第一世界へと踏み入ったのだ。

 

――蒼龍家(パラレルワールド)――

 

「……ソウタ達は大丈夫かしら?」

「いやいや……だめね、私がいちいちそんなことを心配しては。彼らにあった輝きは確かなものだったし……」

 

想は自宅でため息をつきながら、ソウタ達のことを心配していた。

 

しかし、すぐに気持ちを切り替え、背伸びをした後、町中を眺める。

 

その直後のことだった。

 

「!!」

 

探知機から警報音が鳴り、異常事態であることを察知。

 

不安そうな表情とともにそれを手に取る。

 

「もしかして……!」

 

「その通りだ……」

 

「Dr.カイン……!」

 

「久しぶりだな、蒼龍想。たった今、王を第一世界へ派遣した」

 

「え……!?」

 

再び相見える想とDr.カイン。

 

Dr.カインはソウタ達が最初に倒した刺客・王を第一世界へ派遣した旨を伝える。

 

(嘘……。あいつはヒカルが倒したはずよ……、まさか第一世界にまで侵攻していたなんて)

 

「王を倒したいのなら扉を通れ。黒澤を倒した実力が嘘ではないようだからな」

 

「……!!」

 

「これは『聖戦』だ。私の願いとお前達の意地を賭けてのな」

 

「その『聖戦』受けて立つわ……。先ずは私の意地を遠くで見ていなさい」

 

「その威勢が王に打ち砕かれることがなければいいがな……」

 

想はたった今起こった状況に動揺しつつも、カインの「聖戦」という発現に対し、静かながらも強気に返す。

 

彼女の瞳には再び黒い炎が宿った。

 

「『聖戦』か……、アイツラは本気でもう一つの世界を手に入れようとしているわ……」

「取り敢えず急がなきゃ……!」

 

探知機の反応に従いながら、扉を探す中、彼女はある場所で立ち止まる。

 

公園のトイレの壁に扉があったが、今までのものとは異なる禍々しいオーラを放っていた。

 

「何よ……これ。こんなの見たことがないわ……!」

 

体に緊張感が走るのは当然だった。

 

しかし、世界の均衡を保つためには必要な試練であることも彼女は既に心得ている。

 

固唾を呑んで、扉を開いた瞬間、目を開けることもままならないくらいの光が差し込む。

 

――古びた城の跡地(第一世界)――

 

「!!」

 

「お前は……」

 

「何者だ、小娘? あのソウタにどこか似ているが……あいつの偽者か?」

 

扉を通って出てきたのは古びた城の跡地だった。

 

「偽者だなんて、挨拶代わりにしては随分な言い草ね」

「私は蒼龍想。あなたの知っているソウタとは少し毛色が違うけど……共通の敵を倒すためなら背中は預けられるわ」

 

「三下の相手をするのは俺だけで十分だ。暗くならない内に家へ帰りな」

 

「あら、私もアイツには用事があるのよ? ……二度とこの世界に踏み入れられないように」

 

想の瞳に宿った黒い炎からは「確実に叩きのめす」という意思がひしひしと伝わっていく。

 

「ほう……! その眼、どうやらソウタのような甘さはないようだな。偽者という言い方は撤回しよう」

「想と言ったな? 貴様がどんな戦い方をするのか見せてもらおう……」

 

第一世界の絶対王者、パラレルワールドからの来訪者、交わることはないだろうと思われた2つの龍が交差した。

 

3・2・1 ゴーシュート!

 

悪夢の青龍「ナイトメアドラゴ」と電子の龍「サイバードラグニル」は、燃えるような守護の麒麟「バーンジラーガ」にどんな断罪を行うのか……異なる世界のブレーダー同士のバトルが開始された。

 

左回転のナイトメアドラゴと右回転のサイバードラグニル……2機は両サイドからスタジアム中央で待ち構えるバーンジラーガに近づいていく。

 

「砕け……。ナイトメアドラゴ」

 

「無駄だ」

 

「何ッ……?」

 

サイバードラグニルより僅かに早く、ナイトメアドラゴが先にジラーガへ攻撃を叩き込むが、最大の特徴であるラバー刃がひしゃげ、その攻撃を無効化してしまう。

 

「皇龍、お前に一つ言わせてもらう。お前の『脆さ』は『依存』だ」

 

「『依存』……だと?」

 

「お前のベイについて調べさせてもらった。ナイトメアドラゴはブレードとメタルディスクが一体化したアタックタイプ。確かに攻撃力は申し分ない」

「だが、その真骨頂は龍を模した3枚刃が相手とぶつかることによって発動するもの……。バーンジラーガは一切の攻撃力を持たない分、ナイトメアドラゴのギミックを完封出来る。お前がどんな策を練ろうと、俺を超えることは決してない」

 

王が言う龍の脆さ……「依存」。

 

彼はナイトメアドラゴのギミックを事前に調べ、それに対する弱点を既に見抜いていた。

 

「フッ……」

 

「?」

 

「フハハハ……!」

 

「!」

 

しかし、龍は動じるどころかそのような様子すら見せず、寧ろ高笑いをしていた。

 

共闘している想と相対している王が戸惑う中、彼は言葉を続ける。

 

「俺の脆さが『依存』か……。考えなしにここへ来たわけではないようだな。貴様の分析力に敬意を払ってやる」

「だが……いつから『錯覚』していた? 貴様を倒すのは俺であると……」

 

「何……?」

 

「!!」

 

龍が意味深長な発言をした先には……。

 

(サイバードラグニルに向かって……!?)

 

なんと、ナイトメアドラゴがサイバードラグニルに向かっていく。

 

想が驚きを隠せないまま、瞬く間に両機は激突し、ドラゴのブレードが可動。

 

サイバードラグニルを一気に弾き出して加速させた。

 

「これは……!」

 

「な……何ッ……!?」

(加速しただと……!?)

 

「蒼龍想、貴様に一つ聞こう。俺が貴様のベイを弾き飛ばした理由……それが何か分かるか?」

 

「理由……」

 

「ベイの声をよく聴け。貴様のベイが何をしたいか……理解できるのは貴様自身だ」

 

「……」

 

王の驚きを他所に龍が突然問いかけた先程の行動の理由……。

 

彼の言葉に従い、スタジアムの方に耳を傾け、サイバードラグニルの咆哮を聴く。

 

(…………! 仄かに感じるわ、サイバードラグニルの声を……。私のベイは今……『更なる先へ進みたい……!』とスタジアムの中で轟いている……!)

 

「あなたの言いたいこと……確かに伝わったわ。ナイトメアドラゴのギミックでバーンジラーガを叩かず、あえてサイバードラグニルを弾き飛ばすことで加速させた。

それは、私の『更なる先へ進みたい』という思いを引き出し、奴へのトドメを刺す役割を与えた……ということね」  

 

「フン……。その呑み込みの早さ……ソウタと同じだな。後はどうするか、それは貴様次第だ」

 

「このまま行かせてもらうわ、サイバードラグニル!」

 

龍が一瞬だけ微笑んだ後、想はサイバードラグニルと共鳴を始める。

 

電子空間から現れたドラゴンのオーラはまさに正しき者にとっての光の象徴となり、悪しき者にとっての恐怖の象徴となった。

 

更には加速と同時にレベルギアの中央の軸先が摩耗し、更なる加速を見せる。

 

「ライトニングサイバー!」

 

目で追うこともままならない程のスピードでバーンジラーガに激突。

 

衝撃吸収出来る範囲を超えたのか、たまらずバーストし、スタジアム外までパーツが弾け飛んだ。

 

「バカな……!」

 

「私達の勝ちね。ところで、王」

 

「何だ……?」

 

「Dr.カインは何故、『皇龍』を選んだの? ソウタ達に邪魔されて、彼ら以外のブレーダーに狙いを定めるとは考え辛いわ」

 

「それは……!」

 

「!!」

 

想の鋭い質問に王が言葉を濁す中、彼の身体が突如透け始めた。

 

「何だ!? これは……!?」

(まさか……!!)

 

――

 

『最後に一つ言っておく。この戦いはもはや「勝ち負け」という尺度で測るべきものではない……。「滅ぶ」か「滅ぼす」ただそれだけだ』

 

――

 

「Dr.カインは俺達に『滅ぶ』か『滅ぼす』かと言っていた……。俺は『滅ぶ者』だったというのか……?」

「バカな……『滅ぶ者』はお前達であるはずなのに……こんな……ことが……」

「嫌だ……消えたくない……消え……」

 

王の恨むようで現実を受け入れたくないような声が身体が透けていくのと同時に小さくなる。

 

次第に彼の身体は服ごと消失し、声も聞こえなくなる。

 

王 明偉という一人の人間が『消失』した瞬間だった。

 

「消えた……!?」

 

「……」

「俺は貴様らの事情は知らん。だが、今に至る経緯を少しだけ聞かせてもらおう」

 

「……分かったわ。改めて自己紹介させてもらうわ、私は蒼龍想。別世界の蒼龍ソウタ本人よ」

 

「ほう……」

 

「私のいた世界では19年ぶりに巨大地震が起きたの。そこで根尾町の復興としてDr.カインが名乗りを上げ、この世界との融合を果たすと宣言したわ」 

 

「けど、もしそれが果たされてしまった場合、歴史の混在・アイデンティティの崩壊等が起こりかねないわ」

 

「私はそれを防ぐべく、根尾中ベイブレード部に協力を仰ぎ、彼らとともにヤツラが差し向けてきた刺客と戦ってきたってわけ」

 

「話は聞かせてもらった。……この世界を奪ったところで根本的な解決になるとは思えんがな」

 

「全く持ってその通りよ。それがあるから本当に『復興』が目的なのか怪しいと感じているのよ」

 

想は龍にこれまでのことを話し、龍も世界の融合に対して否定的な意見を述べていた。

 

「ん?」

 

そんな中、2人を覆うように雲がかかる。

 

空を見上げると夜空があっという間に広がっていた。

 

「もうこんな時間……! そろそろ私は元の世界に帰らなきゃ……!」

「またね、龍」

 

「……夜道には気をつけろよ」

 

想は龍に見送られながら扉を通り、元の世界へ帰っていく。

 

「蒼龍想か……。フン……面白いやつだ」

 

第一世界に派遣された3人の刺客。

 

その一人である王を撃破した想と龍だが、王は何故か消滅してしまった。

 

果たして残る者はどちらに振り分けられるのか。

 




__イメージCAST__

蒼龍ソウタ:小林千晃

門守バン:梶裕貴

一角ヒカル:小野賢章

焔ツバサ:榎木淳弥

蒼龍想:高橋李依

皇龍:諏訪部順一

Dr.カイン:加瀬康之

王 明偉:石川界人

ナレーション:森川智之
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