第一世界に派遣された王、隼人、ウィリアム。
その一人である王は蒼龍想と皇龍と対戦。
彼は自身の持つベイ「バーンジラーガ」で2人を迎え撃とうとしたが、龍の「ナイトメアドラゴ」による策と想の「サイバードラグニル」の裁きのもとに敗れる。
その後、Dr.カインの「滅ぶか滅ぼすか」の言葉通りに身体が透けていき、最終的に消失。
「生きるか死ぬか」のベイバトルが開始された――。
――根尾第一研究所――
「Dr.カイン。王が『消失』しました」
「やはり消失したか……。この戦いは『滅ぶか滅ぼす』のみで全てが決まる」
「『失われた』ものを取り戻せるのなら、私は何を『失っても』構わない」
「……アベル、必ずお前を『無から造られた存在』から『一人の生命』として蘇らせる……。必ず……!」
吉良からの報告に対し、Dr.カインは部下の消失を嘆くこともなく淡々と返事をする。
更にはアベルが眠るカプセルに手を当て、彼に向かって何かを約束。
「冷徹な科学者の顔」と「歪んだ親愛を持つ兄の顔」が一つになった瞬間だった。
――根尾中ベイブレード部部室(翌日)――
「そういえばなんだけどさ、想は大丈夫かなぁ?」
「一応、この世界に刺客が来たっていう情報はないし……」
「確かにそうだが、いつここへ来ても可笑しくはない」
「ましてや刺客達を倒されて、黙っているはずもないだろう」
ソウタがパラレルワールドのことを案じる中、ヒカルが更に用心するように言う。
その時、彼らの会話に割って入るように部室のドアが開く。
「やはりここに居たか」
「お前は……!」
部室に入ってきたのは……。
「龍!!」
「フン……」
皇龍だった。
神世学園のリーダーにして絶対王者、更にはソウタにとっての永遠のライバルだ。
「久しぶりだな!! もしかして俺とバトルを!?」
「生憎だが、今回は貴様らに伝えたいことがあってここへ来た」
「伝えたいこと……?」
龍の登場にソウタはすぐ瞳を輝かせ、ドラグニルを手に取る。
しかし、彼からはソウタ達に伝えたいことがあると言われ、バトルをパスされてしまった。
それでも肩を落とすことなく、真剣な表情で話を聞く態勢に入った。
「この世界に侵入者が現れた」
「えっ……!?」
「それってまさか……」
「ああ、貴様らが倒したブレーダーがこの世界に侵攻して来た」
「そ、そんな……! でも何でお前がそのことを知ってるんだ……?」
「俺のもとに王と名乗る奴が現れた。この俺を始末しにな」
「王が……! それでお前は無事だったのか……?」
「蒼龍想という別世界の貴様を名乗る小娘が扉を通って現れた。最終的に俺は、想とともに奴を倒した」
龍にとっては昨日の出来事だったが、ソウタ達は当然そのことを知らない。
パラレルワールドで戦った相手が自分たちの世界にまで侵攻してきたとは夢にも思わなかった。
「おぉ! 流石だな、龍!!」
「……だが、一つ忠告しておこう。王は俺達に敗れた後、身体が透けて……最終的には『消失』した。敗者はこの世界から消える……そういう『運命《さだめ》』なのだろう」
「な……何だって!?」
(負けたやつはこの世界から消える……! つまり……「死」ってことかよ……!)
敗者はこの世界から消失……つまり、一人の生命としての「死」が待ち受けているのに等しい。
ベイブレード部全員が不安になる中、ソウタは特に冷や汗が顔中を伝い、呼吸が荒くなっていた。
「……ソウタ、貴様は何を恐れている?」
「龍……お前は怖くないのか? 負けていたらお前はこの世界からいなくなるところだった。俺は耐えられねえよ、『俺自身がいなくなる』より『お前と戦えなくなる』ってことに」
「……敗北し、存在ごとこの世界から消えようが、俺は泣き喚くような真似はしない。だが、神世学園として再起を誓い、お前のような好敵手と出会ったんだ。死に急ぐ理由など見当たらん……」
「龍……!!」
敗者への重い代償にソウタは自身の本音を吐露。
自身の死より彼の死を気にする様はブレーダーとしての純粋な思いを映し出していた。
それに対する龍の答えは「死への恐怖」ではなく「生きるという意思」。
彼の答えを聞いた瞬間、ソウタは瞳を潤ませた。
「まだ貴様らには仕事が残っている。先ずはそれを片付けてこい」
「ああ! 行ってくるぜ……龍!」
龍の無骨さは相変わらずだったが、ソウタ達に可能性を感じていることもまた確かであった。
龍に見送られながら、彼らは学校を出た後、根尾の竹藪の方に向かっていく。
「蒼龍ソウタ、貴様のその純粋さが俺をここまで楽しませた……。やはり貴様は面白い……」
――根尾の竹藪――
「着いたな」
竹藪に行き着き、小屋のロックを解除。
いつも通り、中の扉を開き、光が差し込んだ後にパラレルワールドへ到着した。
――根尾通り(パラレルワールド)――
「来たぜ、想」
「良かった……無事に来れたのね」
パラレルワールドの根尾通りには丁度、想がいた。
「龍から聞いたぜ、お前と一緒に王を倒したこと。そして、あいつが消えたのも……」
「そうよ。あなた達の方に被害がなくて良かったけど、もはや『命懸け』のベイバトルへと突入してしまったわ……」
「それと、王が消える直前に言っていたの。Dr.カインは『滅ぶか滅ぼすか』ってね。恐らくヤツは部下が犠牲になろうともあなた達の世界を手に入れるつもりだわ」
「………!」
想の言う通り、勝ち負けなど生温い、生死をかけたベイバトルが幕を開けた。
事実とはいえ、事態がここまで膨れ上がったことへの驚き、動揺、敗北に対する恐怖がベイブレード部を包み込む。
そんな中、早速……。
「!!」
「警告音が……まさか!」
不安を煽るような警告音が探知機から鳴り、刺客が侵攻し始めたことを知らせる。
「想、王以外に俺達の世界に侵攻してきた刺客は?」
「恐らく、隼人とウィリアム……。彼らである可能性が高いわ」
(ウィリアム……!)
ヒカルが想に第一世界に侵攻して来た刺客は他にいるかを聞くと「隼人」と「ウィリアム」の名を上げる。
その中で、ソウタはウィリアムの名が出たことに対し、動揺をしていた。
探知機は根尾駐車場近くの壁を指し示し、禍々しい雰囲気の扉が彼らの目に映り込む。
「一目で分かる、危険な予感がプンプンするぜ……!」
「この扉は刺客とそのターゲットがいる場所に直接繋がっているわ」
「今までの扉とはちょっと変わってるってことか。……けど俺達は既に覚悟を決めたんだ。行こうぜ」
扉を開け、次の刺客が待ち受ける場所へ進む。
――根尾公園(第一世界)――
扉を通った先は第一世界の根尾公園。
嘗て、メイとツバサが隼人とバトルをした場所だ。
「ここは、根尾公園……!」
「あら、またここに来たのね」
「!!」
ソウタ達が公園内を振り返る中、その背後から声がした。
しかし、その声は彼らにとってどこか懐かしいものであった。
「メイ! それに瀬際刑事と杏子さん……!」
声の正体は嘗て行動を共にした少女・瀬際メイ。
更には瀬際夫妻も彼女の後ろに並び立っていた。
「お久しぶりです。根尾中ベイブレード部の皆さん」
「久しぶりだな、君達!」
「あなた達も大変ね。ソラナキを倒したと思えば、別世界を行き来してるなんて」
「まぁな……」
「けど、メイ達が何事もなくて本当良かったよ」
夕日を背に語り合う中、遂に恐れていたことが起きる。
「随分と楽しそうにしてるじゃねえか」
「!!」
「お前は……!」
「神代隼人!!」
案の定、Dr.カインの刺客の一人・神代隼人が根尾公園に襲来。
ほのぼのとした空気が一気にピリッとした空気へと変化した。
「久しぶりだなァ……根尾中ベイブレード部。そして、瀬際家」
「あなた、今度は何しにここへ……?」
「何って……戦いに来たんだよ」
「瀬際メイ、お前とな!」
「私と……」
「お前を倒し、エネルギーをいただくぜ!」
(エネルギー……!?)
隼人はDr.カインからメイを迎え撃ち、エネルギーを奪い取るよう指示されている。
任務の遂行と彼女への復讐を同時に達成できるのは彼にとって非常に嬉しいことであった。
「その前に……あのガキどもはいないようだな。いたらそいつらで準備運動をしたかったが、まぁいい。お前のベイを切り刻めばいい話だ」
辺りを見渡し、子どもたちがいないことを確認すると、多少がっかりした様子を見せる。
それでもすぐに気持ちを切り替え、ランチャーを構える。
「…………」
それに対し、メイは沈黙を貫いていた。
復讐心に囚われている隼人と集中力を高めるメイ……勝利の女神はどちらに微笑むのか。
3・2・1 ゴーシュート!
先にスタジアム中央を陣取ったのはテンペストガルーダ。
それに対し、デミスハデスはフリー回転モードでシュートされ、ガルーダと中央を取り合う。
「1VS1のベイバトル……前回のように弱点を補う奴はいねえぜ? さあ、どうする瀬際メイ?」
スタミナタイプのガルーダとディフェンスタイプのハデス。
タイプ相性はスタミナタイプのガルーダが有利だ。
自分が有利な状況に持ち込めたからか、隼人はメイを挑発。
髪をかき上げ、見下すような笑みを観戦者にも見せる。
「……」
「どうしたんだ……? メイ」
「妙だわ……。何故かガルーダに近づけない」
「え……!?」
そんな中、メイが今の状況をどこか妙だと言い、何故かガルーダに近づけないと述べる。
「ハーッハッハッハ! そこに気づくとは、流石だな」
「そうだ。お前に負けて以来、俺は血の滲むような努力をしてきた。そして、今のお前の目に映っているのがその完成形だッ!!」
「お前のベイをよく見てみろ」
「傷が……!」
ハデスのブレードの側面がいつの間にか傷つけられていた。
それも引っかかれたような傷が幾つもそこに……。
「これが俺の新技……『テンペストシールド』だ!」
「テンペストシールド……!?」
「テンペストシールドはガルーダのブレード周囲に風の壁を発生させ、ベイを守りながら近づいたやつを切りつけていく。お前のベイがどう足掻こうがガルーダに近づくことは決してねぇ!!」
「そのまま何も出来ずに止まりなッ!!」
空力を活かした新たな斬撃が迫る中、思わぬ助っ人がやって来るのを彼らはまだ知らなかった。
「……!!」
公園内の様子を見ていた2人の少年。
彼らは互いの顔を見て頷いた後……。
「ゴー……シュート!」
その場に乱入してベイをシュートした。
「!!」
「あなた達……!」
「お前らは……!」
「お姉さん達、久しぶり!!」
その少年達は嘗て、ガルーダにベイを傷つけられたあの2人組だった。
「久しぶりね、けど……どうしてここに?」
「またあいつが現れたのを見て、お姉さん達が大変なことになるんじゃないかって……」
彼らは先程のバトルを目撃しており、メイ達に迫る危機を見過ごせなかった。
「テメェら……! さっさとそこをどきやがれ!」
予想外の事態に流石の隼人も苛つくが……。
「どくもんか!!」
「!!」
「お前にやられて泣いていた僕達なんかじゃない……!
今度は僕達がお姉さん達を守る番だ!!」
一人の少年は涙を流し、震えながら彼に向かって啖呵を切る。
ガルーダに近づき、風の刃にブレードが切りつけられるも、スタジアム中央へ向かっていくのをやめない。
その姿勢にソウタ達は思わず、固唾を呑んで見守る。
その直後、事態は急変することとなった。
「!!」
ガルーダが鋭い激突音を立てた後、スタジアム中央から突き動かされ、テンペストシールドが遂に破られた。
「何だと……ッ!?」
「ありがとう……あなた達。さあ、反撃開始よ」
「行くぞ!!」
高い金属音が反響した後、ハデスはギミックブレードを壁に当てながら加速。
子どもたちのベイもそれを追うようにして加速していき、ガルーダの方へ集まっていく。
(そんな……この俺が、こんなヤツラに……!!)
「ジャスティバレッツ!!」
3方向からの攻撃を喰らい、テンペストガルーダは派手にパーツが弾け飛んで、バーストフィニッシュ。
見事、隼人に勝利した。
「や……やったぞーーーッ!! メイ達の勝ちだ!!」
「バカなっ……! 2度も負けるなんてあり得ねぇ……!」
「それで、少しいいかしら? 隼人。あなたはメイに勝ってエネルギーをもらうって話していた。Dr.カインはそのエネルギーで何をしようとしていたの?」
「ぐっ……! お前らに教えたところで――」
想が彼にDr.カインの目的に迫るも、このバトルの敗者に対する残酷な結末が隼人に訪れようとしていた。
「!!」
「身体が透けて……!? まさか……!」
「『滅ぶか滅ぼす』……。俺はもう、滅ぶのか……!?」
敗者は滅ぶというルール通り、隼人の身体はどんどん透けていく。
「ふざけるな……滅ぶべきはお前らで……お前らであるはずなんだーーーッ!!」
「……俺は、消えたくない……消えたくない……!!」
最後の悪あがきと言わんばかりにガルーダをランチャーにセットし、ソウタ達に打ち込もうとするが、それも叶わず。
シュートする直前に、泣き言を言いながら消失。
彼が散ったと同時にガルーダは勢いよく、ランチャーとともに落下した。
「消えた……!?」
「これが今の戦いのルール……。敗者は容赦なくこの世界から消されるわ」
「この世界から消される……か。敗者に訪れる結末はどの世界も変わらないのね……」
想からルールを聞かされ、メイはどこか複雑そうな表情をする。
カイやハルトを轟によって吸収され、轟もまたルシフェルに吸収されたことを覚えている彼女にとって、敗者の結末がどれほど恐ろしいものか想像するのは言うまでもなかった。
根尾公園にて隼人を撃破したメイ。
しかし、彼もまたこの世界から消失。
残る刺客はウィリアムのみ。
2度目の戦いを通じて、彼らが得て、失うものとは――。
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ:小林千晃
門守バン:梶裕貴
一角ヒカル:小野賢章
焔ツバサ:榎木淳弥
蒼龍想:高橋李依
皇龍:諏訪部順一
瀬際勝:玄田哲章
瀬際杏子:三石琴乃
瀬際メイ:竹達彩奈
神代隼人:木村良平
Dr.カイン:加瀬康之
吉良賢司:戸谷菊之介
ナレーション:森川智之