穏やかな歓談の時間は、突如として響き渡った甲高い警報音と無機質なアナウンスによって破られた。
『警告、レーダーに所属不明艦を感知。駆逐艦シュトーラー1番艦は直ちに確認に向かえ。繰り返す、レーダーに不明艦確認。シュトーラー1番艦は確認に向かえ』
「おっ、お呼びがかかったな! 行ってきまーす!」
さっきまでの退屈そうな顔を一変させ、連はポンッと勢いよく椅子から立ち上がった。その後ろ姿に向けて、ラフがマグカップを片手に「おいおい、俺にも出番くれよ!」と悔しそうに声を張り上げる。
連は走ってドックへと向かい、息を切らせてシュトーラーの艦橋に駆け込んだ。だが、ハッチを開けた瞬間に目に入ってきたのは、すでにそれぞれの定位置に着き、完璧に準備を整えている乗組員たちの姿だった。
「……え、みんなはぇぇよぉー」
呆気にとられる連に向かって、砲雷長がシートにもたれかかりながら軽めの口調で言った。
「はいはい、さっさと指示出してー、かんちょーう」
「う、うん! よーし、機関始動、微速前進!」
びしっと指を突き立てて格好よく命じた連だったが、操舵長は呆れ顔でコンソールを操作しながら告げた。
「艦長、機関はもう始動してあります」
「えぇっ、最初に言ってよー!」
ブリッジ内にどっと軽い笑いが起きる。呆れられつつも信頼されている艦長のもと、シュトーラー1番艦は静かにドックを滑り出し、謎の反応が待つ漆黒の宙域へと加速していった。ドックを離れると、目の前には宙域一面を埋め尽くす広大なデブリ帯が広がっていた。細かな岩石から宇宙ゴミの破片までが漂う危険地帯だ。
「うわぁ……ねえ操舵長、頼むからぶつかるなよー?」
連がシートの背もたれから身を乗り出して釘を刺すと、操舵長は自信満々にニッと笑ってみせた。
「大丈夫ですよ、任せてください。このシュトーラーの機動力なら、こんなハエが飛んでるようなデブリなんて余裕で——」
ゴンッ!
言葉の途中で、艦底からずっしりとした鈍い音が響き渡り、ブリッジ全体がわずかに揺れた。
一瞬で静まり返る艦内。砲雷長をはじめ、全員の冷たい視線が一斉に操舵長へと注がれる。
「……ま、まぁまぁ、挨拶代わりのボディタッチってことで」
滝のような汗を流しながら苦笑いする操舵長に、連が指を突きつけて叫ぶ。
「まあまあじゃないよ! 前方注意、前方——って、デカい!!」
前方のメインモニターいっぱいに、巨大な小惑星級の岩塊がド迫力で迫っていた。
「うわあぁぁっ! 全力回避ぃっ!」
操舵長が悲鳴を上げながら操縦桿を限界まで倒し、シュトーラーのスラスターが逆噴射する。激しい旋回でGが全員を襲い、艦体はギリギリの角度で巨岩の脇をすり抜け——
ゴゴンッ!
「あ」
今度は艦橋のすぐ側面に何かがかすり、先ほどよりさらに重苦しい音が艦内に響いた。
「操舵長ぉぉぉ!」
「か、かすっただけです! 艦長、かすっただけですからぁ!」
読んでいただきありがとうございます。誤字脱字があったらおしえてください。