卍解までは転生者の嗜み。 作:点差惨敗
貴をて私気い
臓搔出世をえ
よ変界しき腑
て付にる見方
まずですねぇ、と少年が指を立てる。
「良いですかぁ? 斬魄刀というのは死神の固有の能力、みたいに扱われがちですけ、ど。実は、斬魄刀にできることは浦原さんにもできるしぃ、浦原さんにできることは斬魄刀にもできるべきなんです、ね」
「僕にも……?」
「はぁい。斬魄刀というのは己の写し鏡。つまるところ、斬魄刀という鏡を使って自分が二人に分身している状態にすぎないわけです。ならば、どれほど理不尽な能力を有する斬魄刀があってもぉ、それはその死神が元から成し得ることの範疇。だっておかしいでしょう? 斬魄刀を呼び起こすだけで、人が人の範疇を超える、だなんて」
「……」
「つまりぃ、斬魄刀戦闘というのはぁ、己を如何に理解し、己の全能力を如何に使いこなせるか、という話なんですねぇ。とはいえ死神と斬魄刀では形式が違いますからぁ、戦闘中に頼るのは当然というべきかぁ」
「形式……スか」
「はぁい。型番、でもいいですよぉ? 僕たち死神は次の世代に"嗣ぐ"ための形式で、生存するためのカタチに整えられていま、す。斬魄刀は敵と"戦う"ための形式で、戦闘するためのカタチに整えられているんでぇす。だから、最初の頃は斬魄刀より戦い方を学ぶべきです、し。学び終わればまるで共闘するかのように互いの長所を引き出し合い、短所を補い合うべきでぇ、そして最終的には、手足を動かすように、言葉を発する程度の感覚で斬魄刀を操れるようになるべき、ですねぇ」
鬼道の教えを乞う、という話だったはずであるが、浦原喜助はその鬼道の話をたったの三日で完遂してみせた。
教えられたことの全てを覚え、応用法まで思いつき、その状態の浦原に対し、滑川は教育方針を悩むことなく全てを明け透けに教えてくれる。
これ以上は自分で考えても答えは出ない、というところで、必ず先を教えてくれる。教師という意味でこれ以上ない存在。息をのむほど、はっとさせられる霊子理解は、三日間で彼に「己で鬼道を改造する」というところまで手を伸ばさせた。
となれば、別の事をお教えしましょうねぇ、なんて言って始まったのが、斬拳走鬼における講義だ。
滑川平良には攻撃力と呼べるものが欠如している。だが、知識がないわけではない、というのまでは、「聞き込み」でわかっていたことだった。
だが、その理解が浅かったことを浦原は思い知る。
知識が無いわけではない、ではない。
深く深く、深くまで知っている。
「その……たとえば卍解と呼ばれるモノが、世界というものを改変したり構築したりするものだったとしても、それは死神にできることなんスか?」
「そうですよぉ。──お手本を見せましょうかぁ」
──結界が張られる。
直後、浦原は、超高空より──落下していた。
「へ──」
「その空間はぁ、たった今僕が作り出した、一辺六尺*1立方の空間ですよぉ」
「いや、嘘だ、だって今僕落ち続けて──明らかに一丈、いや十丈以上あって! というかどこから話しかけて──」
「先程の場所から、ですよぉ。──教えた通りです。君、実はもう卍解修行しているでしょう? 霊圧で分かりますから、ね」
「そ、そんなことより、霊子を固めて立つことすらできないんスけど!?」
「浦原さんの始解にできることは、浦原さんにもできます。卍解にできることも、浦原さんはできるんですよぉ。あ、斬魄刀は今僕の手元にありますから、使えませんので、ね。ではその状態から抜け出してみてくださいねぇ。一応言っておくと、僕の斬魄刀にこういう能力はないですよぉ」
では、なんて声と共に足音が遠くなっていく。
落ちる、落ちる落ちる落ちる。
既に落下を始めてから三十秒は経過した。自由落下の速度。既に四十町*2には達しているということだ。この思考時間も加えれば、さらに、さらに。
一向に地面が見えてこないことだけは救いか。否、それこそが猶予であるのだろう。
浦原は思考を回す。
空間転移などの禁術を行使するはずがない。そして滑川は言っていた。一辺六尺立方の空間である、と。
つまるところ、どういうことか。
「……この結界の内部のものは、落ち続けるという法則に改変された……いや。……
回道の結界と同じだ、やっていることは。否、すべての結界と。
内部のものを癒す結界。裡と卦とを隔てる結界。
外の世界の変化に対し、内側のものを変化させない結界とはつまり、内側のものを変動させない法則を敷いている、ということであると言える。
なればこの世界は、たったそれだけだ。
外の世界が地に足つく世界であるところを、内側の存在にはそれを適用させじとしただけ。
どうすればいいか。霊子を固めることはできない。外側に手を伸ばしても空を切る。「地面に着かない」というより、「何に触れることもできない」と言った方が正確か。
斬魄刀無しでこれを突破するには。
「結界を……ってあれ、霊力を練るのが上手くいかないんスけど……!? こ、ここまでされちゃ、鬼道の理解だって意味無いんじゃあ……!?」
己で結界を作り出し、同じように新たな法則を設定すればいい。そう考えた浦原。
しかし、霊力を練ることができない。
霊力にすら触れることができない世界だというのか。
「いや。それならまず、僕が分解していておかしくないはず……」
死神の身体とて霊子で構成されているものなれば。
──そこまで考えて、浦原は……ある理解に、辿り着く。
一度、大きく深呼吸をして──自己に埋没する。
己の身体の輪郭を、体表を意識し──それを
肉体が分解していないということは、浦原の肉体内部には結界の法則が作用していないということ。つまり人体とはそれだけで結界であるのだ。己の霊力が、魂魄が支配する、小さな小さな結界。
何物にも脅かされぬ結界を作ることができたのならば、あとはこれを、反転させるだけでいい。
内側の設定を、外側にも適用する。
それだけで──この空間は、無効化できる。
──足が畳に着く。重力と反作用が肉体に帰ってくる。
目を開ければ、そこは。
「良いですねぇ。とーっても早い理解です。何かわかりました、か?」
「……結界の深奥を。空間や支配領域を形成する卍解は、この術で全て……打ち破れるんスね」
「霊圧次第ですけどねぇ。自身という"何物にも脅かされぬ結界"さえ無事ならぁ、あとはそれを、己の霊圧で無理矢理に外側へ付与するだけ。そしてこれを応用すればぁ」
「好きな設定の結界を構築できる。……今のは、中にあるものが何物とも結びつかなくなる結界、というところッスか?」
「はぁい。己からくみ上げた霊力さえ、己とは結びつかなくなります。でも、体内には干渉できません。面白かったでしょぉ?」
「……この先の訓練がこれと同じかこれ以上になるんだろうなぁ、と思うと、気が気でない半分……楽しみな自分もいます」
「そして、今それが、こんなにも早く、そして感覚的に行えたのはぁ」
「僕の……斬魄刀に、できること。ってわけッスね?」
「その通ぉりぃ。だって本来、僕の霊圧はあなたを凌駕していますから、ね。……今のところは、ですけど」
世界を構築する。理解し、改変する。
感覚的にそれをやる。確かに言われてみれば、理論ではなく、感覚を使った。
卍解にできることを、己の可能性として開拓したのだ。
世界が広がる。知覚していた世界が別の色になる。
世界とは、思っている以上に広い。生まれに任せて上からの指示に粛々と従っていた四日前の自身をもう思い出せない。
そんな狭い世界にいて、どうして満足できていたのか、と。
「うーん。もう少し飛ばしてもいいですけ、ど。疲れてませんかぁ? 結構霊力使ったでしょぉ」
「え? いいえ、全然ス。あと三千回くらい同じことやっても大丈夫スよ」
「……。……そうですかぁ。……じゃあ、次、ちょーっとびっくりするかもですけどぉ、呼吸を止めないことを強く意識してくださいねぇ。できてなかったら強制解除するのでぇ」
若干ショックを受けた、という表情の滑川。
とはいえそれで何かを苛烈にする、ということはなく、次なる段階を示す。
「呼吸……スか。……わかりました。絶対に呼吸を止めません」
「それじゃあ、僕がとん、と額を弾くように触れますからぁ、その後から、呼吸を止めないでくださいねぇ」
「はい」
滑川の人差し指が──浦原の額に、触れる。
──直後、彼は、暗闇だった。
「……──!? ……!」
呼吸をする。慌てて。思い出したかのように。
何十秒止めていたのかわからないくらい、ぜぇぜぇと。
否、ぜぇぜぇとしているはずなのに、その感覚がない。
これは……無間の闇にいるかのような。
だからつまり。
「五感の全てが機能しなくなった……ってことスか」
言葉を正しく紡げたかはわからない。骨を伝う音さえ聞こえない。あるいは赤子のように、顎の動かし方を知らない発音になっていたやもしれない。
滑川の声は聞こえない。ただ、今までと同じならば──まずは人体結界を意識すればいい。
それをしようとして、けれど、できなかった。
「僕……は。……どういう、カタチ……でした、っけ」
何も無い。暗闇そのものになったかのように、己の輪郭が知覚できない。
浦原喜助という存在のカタチは、果たして、どのようなものだったか。
──パチン、と。
暗闇が弾けた。そしてその瞬間、余りに苦しくて咽て、大きく息を吸う。
「はぁい、やっぱりダメでしたねぇ。呼吸、忘れてました、よ」
「ぜぇ……はぁ……考えることに集中して……忘れてた、ッスね……」
「それができないと死んじゃいますからねぇ。……まぁ、何が起きたのかは、わかりましたかぁ?」
「はい。……基点……僕という結界が、認識できなかった。意識はあるのに、それを構築する脳髄の感覚を知覚できなかった」
「霊魂……貴族は違いますけ、ど。現世の人間が、器子の肉体より出でてぇ、霊子の存在へとなる、その瞬間。その知覚にほど近い感覚のはずですよぉ。そのせいか、流魂街出身の死神は、この訓練で呼吸を保ちやすいんですよねぇ。まぁこの訓練を受けたのは浦原さんで四人目なんですけ、ど」
「……他の三人は、どなたなんスかね」
「んー、今の段階のあなたには、申し訳ありませんが明かせないですねぇ。ここを乗り越えた後に教えます、よ」
呼吸を止めない。肉体の感覚が無くとも、呼吸を続けなければならない。
今は簡単だ。無意識がそれを支えている。
けれどそれが無いだけで、なんと難しいことか。
「これ、危険なのでぇ、今は未だ自分で再現しようとしないでください、ね。そうだなぁ、明日一日、呼吸に意識を向け続けてみてくださいねぇ。途中で忘れていて思い出した場合は、思い出すに至るまでにかかった時間を記録しておいてください、ね。あ、一番大事なのは授業ですからぁ、集中力は、そっちにやりましょぉ、ね」
「……わかりました、ス」
「もうわかってると思いますけどぉ、これは、己の無意識を鍛える……というかぁ、無意識を意識的に作り替える訓練ですよぉ。これができるようになるとですねぇ、以前お教えした鬼併装を、こうやって」
滑川の周囲に、幾何学模様を描いて反射を続ける白雷、円盤状を描く赤火砲、それらの間を通り抜ける竜のような挙動をする這縄、伏火と吊星が駆け回り、その他無数の鬼道が配置されていく。
十や二十ではない。同じ鬼道でも改良版や仕様変更版を含む、既に鬼道・縛道合わせて二百を超えるものが、それぞれ競合することなく在り続けている。
「当然ですけどぉ、この量の鬼道を並列に演算するのは、無理ですねぇ。どれかは打ち消し合ったり、ぶつかっておかしくなったりしておかしくないです。けどぉ、無意識領域を意識的に使えるようになるとぉ、単純な軌道を持つもの、前方判断などの検知を持つもの、霊力の流れに沿うものなどをそれぞれに分類で分けて、無意識下に走らせておけるんですねぇ?」
「じゃあ……その鬼道のほとんどは、無意識に使ってる、ってことスか」
「無意識で使ってるんですよぉ。……僕たち研究者は、人智の及ばぬところへ人智を届かせることが使命ですからねぇ? 外ではなく、己の中に人智の及ばぬ領域があるのを、本当は許してはいけないんですよぉ。……なんて言って、僕もまだ"脳に関する回帰"は上手くできてないんですけ、ど」
無意識に使う、ではなく。
無意識を使う。無意識で使う。
意識的に無意識を支配下に置く。
「僕はもう、無意識で滑歩を発動できます。無意識で『緩衝霊子』を使い、不意の一撃さえも躱し得ますよぉ。無意識で結界の設定を構築し、無意識で死神の始解を分析、対抗策まで思いついてぇ、それを無効化する手段まで考えつけるんです。──頭脳を使うのは、ここからでいいんですよぉ。そこからそれをどうするか、です。世界を改変する能力にいちいち驚いていたら、身が持ちませんからねぇ」
「……必ず、習得してみせるッス」
「はぁい、頑張ってくださいねぇ」
面白い。やりがいがある。挑戦しがいのあることばかりだ。
これが──あと六日で終わる、というのには、到底耐えられそうにない。
ただ……この指南が、途中で終わってしまう、ということだけは避けなければならない。
捕らぬ狸の皮算用。長く続ける算段は立てるにしても──まずは、これを究めなければ。
*
翌日、昼。彼が院に通っている時間帯。
授業聞いて板書を取って……いつの間にか忘れていた呼吸への意識にガンガンと頭を小突いて。
そんな様子を少し離れたところから眺めるは僕らである。
「ふむ。成程、中々の見込みだな。まぁオマエの気持ちは理解できたよ、極三。やりかたはちょっと悪かったが」
「千日様のお手を煩わせて申し訳ございません……」
「まぁまぁ、四楓院家に汚職なんてなかったんですからぁ、良かったじゃないです、か」
というわけで、極三さんが児童虐待をしていた、とかではなかったらしい。
浦原喜助。頭脳聡明であるだけではなく、斬拳走鬼に優れ、霊圧感知も非常に優れた少年。
通常の訓練を常に最高水準でこなすために、極三さんも夜一さんの幼馴染としてこれ以上ないと……期待しすぎてしまった、と。
どこまでできるのか。どこまでいけるのかを試したくて……試しすぎてしまった、と。
「極限状態の訓練はもうちっと身体が出来上がって、あと霊術院を卒院してからだな」
「はい。育成予定を組み直すつもりです。……そして、ご相談なのですが……彼を……一年か二年ほど、滑川様のところへ預けさせてはいただけないでしょうか」
「へ。……僕ですかぁ? というか滑川様って……」
「ま、合ってる感じはするよなぁ。とはいえ飯の世話までってのはちょいとあれだからよ、住まわせるんじゃなく……なんだ、私塾みてーな形で色々教えてやってほしいんだ」
「ああ……まぁ、それならぁ」
新しい『全力部屋』の構築など、やりたいことは多いから、四六時中面倒を、というのは無理だけど……私塾の形ならまぁ、一番隊でやっている勉強会みたいなものと考えれば。
差し詰め松下村塾……滑下村塾? いやまぁ松下村塾の松は別に吉田松陰の松じゃないんだけども。松本村でもないし。……滑川廷塾? なんか瀞霊廷乗っ取ったみたいじゃん僕が。
「山本か鋸歯文を通して正式に依頼するかもしれねえ。アイツほどの才能が無くとも、オマエの授業を欲する奴は多いだろう。オマエの教える能力は高いし、内容も有益だ。つーかもう真央霊術院に出張してもらいたいくらいなんだけどなー」
「……まぁ、午前中なら……良いですよぉ。あんまり拘束が長いとちょーっと厳しいですけど……もうすぐで八十九番までの鬼道改良が終わります、し。九十番以降はかなり気長にやる必要があるのでぇ、時間は取れますし、ね」
「昔に比べて霊術院生の鬼道に関する学習意欲は高い。そこにオマエや、あるいは鬼道衆の常駐が一人いるだけで話も変わるだろうし」
「それなら……常駐五人程を回転させて、その中でも突出した子だけを僕が見た方が効率良いかもですけどねぇ」
「おー、……鬼道衆って五人も……教師役できるやついんの?」
「正直な話をするとぉ、いないですねぇ」
みんな青春コンプレクサーだから。
でも……鬼道衆もいつまでも内々でやっているわけにはいかない時代になってくるだろう。
あと、ちょっと危ない考えかもだけど、大鬼道長の匿い場所に良いんじゃないか真央霊術院。『訓練部屋』のアクセスも良いし、院生たちは予防の舐溶飴を舐めている可能性が高い。つまり催眠が効いていない可能性が高いんだ。
大鬼道長が強いことは知っているけれど、普段から気を張り詰めすぎればいくら彼だって崩れてしまうだろう。
週二、三回くらい気を休められる日として霊術院の出向があっても良いと思う。
「んじゃそういう感じで話を通しておく。極三、浦原喜助と夜一の育成周りは、改めてしっかりやれよ」
「はい。再度機会を与えてくださり感謝申し上げます。──それでは」
瞬歩で消える極三さん。
……しかし。
「次の当主候補の割にはしっかりしてますねぇ」
「どういう意味だコラ。……オマエが知らねーだけで、オレだって時と場合によればああなるんだぜ?」
「極三さんも、じゃあ普段は野生児なんですかぁ?」
「別にオレそこまで野生児じゃねーだろーが」
「そうですねえ。あなたは野良猫ですからねえ」
久しぶりに言ったな、これ。
懐かしい話だ。
そういえば……野良猫といえば。
簡易の乱流結界を張る。
「ん……なんだよ」
「瞬閧については、知っていますよね。当然」
「……ああ。オマエが知ってることにゃ今更驚かねーが」
「あれのさらに先があるっていうのは、知っていますか?」
「……暴走状態のことか? 知っちゃいるが、アレは」
「いいえ、完全支配下の形態です。……四楓院家で瞬閧がどういう扱いなのかは知りませんし、僕が知っていていいことかどうかもわかりませんが──非常に簡単に言うと、死神と鬼道の境界線をあやふやにする形態を指します」
どうして雷獣戦形を浦原喜助がコントロールできたのか。
そして「中途半端で気色悪い姿」とはどういう意味か。
……恐らくは、こういうことだと思う。
浦原喜助の望んだ『崩玉』。望みに応えた『崩玉』が崩した、死神と虚の境界線以外の場所。
死神と鬼道の中間点。鬼道化……鬼化とでも言うべき現象。
そしてこれができるということは恐らく、鬼道から死神、というのも多分できる。制御できる気がしないのでやらないけど。
瞬閧とはその前段階……第一歩目に入ることを言うんだと思う。
鹿取さんも言ってたし、イッチーも感じていたかな。霊子の世界って轟音なんだよ。霊絡を辿ろうとすると理解できる。
閧とは騒がしいことの意味なれば。
「……そいつは、つまり……オマエがオレに教える、って言ってんのか?」
「はい。形だけならできますからね、僕も。相変わらず攻撃力は欠如していますが」
「刑軍の……隠密機動総司令官のみに代々伝わる奥義を……いとも簡単に言ってくれる。なんだオマエ、鋸歯文のあれで、ちょいと吹っ切れたか?」
「かもしれません。件の物質無しで虚が斬魄刀を有しているなんて……二件の例外を除いてあり得ないと思っていましたが、敵の戦力をもう一度高めに見積もる必要があります。その際、斬魄刀戦闘を頼りにしない隠密機動は些か戦力不足ですので、まずは千日さんから強くなってもらうべきかな、と」
仮に劣化模倣の老いを操るのだとしても、そう易々と人体が両断されるような戦場で今まで通り、というのはちょっと無理だ。
強化しなければならない。そう感じる。今までは耐性とかばっかりだったけど、攻撃手段も、だ。
「オマエが瀞霊廷を導くとでも?」
「引っ張ることは無理でしょうね。けれど、先頭に立って灯を掲げるくらいはできますよ」
「良いのかよ、お上の云々は」
「庇ってくれるんでしょう? 自分で思いついたってことにしてくださいね」
「へん、良い図々しさになってきたじゃねーか。……そうだな。よし……その訓練とやら、受けるか。ちなみにオレが暴走した場合は?」
「僕の卍解で瞬閧を強制解除した上で、白打で気絶させます」
「暴走したオレの体術を受け止めて気絶まで持っていける、ってか」
「ええ。意思を以て殺しに来ているなら無理ですけど、意思のない千日さん程度片腕だけでも余裕ですよ」
「よーし最速で暴走を支配下において暴走したフリしてぶちのめしてやる」
「はい、その意気です」
色々動かさないと。
準備を励起させて、対策を作る。
藍染惣右介とザエルアポロ・グランツが同盟を結んでいるにせよ支配下においているにせよ、あるいは敵対しつつも死神を目の仇にしているにせよ、だ。
天才対策はいくらでもやらなければ追いつかない。僕自身が天才でないのであれば。
だから──この程度のことを、珍しがらないでくださいね。和尚さん。
*
そういう対策をいくつも講じていっていたある日。
……あの日と同じ、大時化の……轟々と唸り声を上げているのに肌を打ち付ける雨粒は強さを持たない、という日がやってきた。
よって──僕は一つのリスクを負う。
「──こんにちはぁ、虚さん」
「ア?」
瀞霊廷外縁。外壁内部。空き地。
その条件を満たす、以前のものとは違う場所。
そこにいた。
サメみたいな頭で、筋骨隆々の身体の虚。その手には……斬艦刀みたいな巨大な斬魄刀が握られている。
「……ゴミミテぇナ、霊圧ダナ。お呼びジャネェよ。マエの、オレサマのマエのヤツをブチコロしたタイチョウカクを呼んでコイ」
「はぁ。でもぉ、あなた程度僕一人で充分だと思いますけどぉ」
「安いチョウハツダナ。ジャマなんだよ、ゾウヒョウ」
眼前に迫るは、拳。それを、ぐにゃん、と避ける。
「ア?」
「なんだか不思議な感じの虚さんですねぇ。様々な虚が混ぜ合わせられていてぇ、その上で斬魄刀……それを持っている腕は、死神のものっぽくあります。……だから、虚が斬魄刀を持っているというより──斬魄刀ごと、死神を取り込んだ、というべきですねぇ」
「イミのわからねェことを言ってんじゃ、ネェ!」
大振りの拳をまたもぐにゃりと避ける。当たらない当たらない。
可哀想だけど、この死神はもう助からない。虚化とかそういう話じゃない。キメラみたいに融合させられている。死神と虚の境界線を失くしたんじゃなくて、恐らく邪淫妃の産卵のように、体内からあふれ出た虚が右腕と魄睡以外を残して虚に飲み込まれたって感じだ。
……破面じゃない。言うなれば虚に寄生された死神か。成程、破面の前段階としては妥当な思考ルートだな。
「アア、面倒くせェ! ぶち撒けろ、
ああほら、確定だ。帰刃じゃない。これは始解だ。
……虚に乗っ取られて斬魄刀ごと操られてる、って……でもそれ、志波都じゃない? あるいはカイエンドノでもあるんじゃ。
そこまで前倒しになっているとすると、本当にイッチー生まれない可能性あるんじゃ?
あ、いやまぁ、志波一心と黒崎真咲そのものに関係があるわけではない、か?
だから、イッチーの中に虚が入らなくなる可能性は……いや、イッチーが生まれている時点で、つまり一心が現世に留まる理由ができてること確定だから、イッチーが生まれている時点で虚入りは確定、か? ホワイトじゃないかも、ってだけで。
「ナンダ、ナンデ──当タラネえ!」
「いえ、当たっていますよぉ? 攻撃範囲が広いですねェ羨ましい。ただまぁ、こんな細かい針、強度もないなら当たったところで、というかぁ。非協力的な斬魄刀とか、お笑い種というか、ですねぇ」
「ワケのわからねェことを──」
詠唱破棄の斬華輪で握りの甘い死神の腕の腱を切る。
形状変化で穴の空いた斬魄刀を受け取り、結界に封印。……従順だな。こんなになってしまった持ち主への無念も感じられる。
「テメェ──」
「よし、もう大体調べ終わりました。お付き合いいただきありがとうございました」
「あァ!? そんな言葉で逃げられると──」
「では、縛道の六十番台・全部」
ガチィ、と固まる虚。
びっくりしたかな。丸ごと全乗せ鬼道ですよ。
そして……取り出すは、その刃物。
「
霊力を込め、形が変わり……そのまま腕……右腕の肩にまで巻き付く数珠と、そして刀身を失くした刃物は、その鍔だけを残した形に変化する。
それで以て、虚の肉体に対し──ぺたん、と。鍔を押し当てて、退避。
「……ア? なンだ……大層なカイゴウだから身構えたが、刀身が無くなっただけか! ヒャハハハ! そんなんじゃオレサマは倒せねえぞ死神! こんな拘束も……ほら、カンタンに解ける!!」
「それはぁ、恐ろしいですねぇ」
「わからねぇのか? テメェはもう終わりナンダヨ!! 潰れろ!!」
巨大な拳が迫る。今度こそ直撃コース。
けれど……。
ヌ゛ンッ、と。
おかしな挙動で、拳が止まる。
「ハ……?」
「見えますかねぇ、あなたの胸のところ。死神でいう鎖結と呼ばれている場所ですねぇ。そこに、ぺたんと、判子みたいなのが押されているんですけ、ど」
「知るか! ソンナコト!」
「それね、
「ハ──?」
柄しかないそれを見せながら語る。
「五百璽剣。これの本質は五百璽。つまり五百津御統之玉を剣の形に拵え直したもの。知っていますかぁ、五百津御統之玉。八尺瓊勾玉の別の呼び名なんて言われることもあるものでぇ、調和と慈愛、そして授けることを司りまぁす」
「ソレガ……ナンダト……」
連撃。その全てが、ヌ゜ンッという奇妙な感覚と共に止まる。
「虚さん。あなたは今ね、僕を獲得したんですよぅ。僕になったというか、僕という能力を会得しましたぁ。だから霊子知覚能力は上がったかもしれません、ね」
「だから、ソレガナンダ! テメェを獲得したことで、ナンデオレサマの拳が止まる!!」
「知らないんですかぁ? ──僕ねぇ、攻撃力が欠如しているんですよぉ。何をどうやっても攻撃として実らない。いくら手数を増やしてもダメ。──君は、そんな僕を、手に入れましたぁ」
つまり、攻撃力デバフ1000000%。
「つ……付き合ってられルカ! オレサマはあのタイチョウカクを探しに──ぎゃああっ!?」
「あーあー。ダメですよぉそんなどたどた歩いちゃあ。僕の脚、そんなに丈夫じゃないんですか、ら。折れちゃったでしょう?」
「こんな、テイド、超速再生──が、働かない……ダト?」
「だって僕超速再生持ってませんしぃ。あなたは僕なんですからぁ、もっと気を使って動かないとぉ」
床をだんと叩いた腕が。
しっかりと地面を踏みしめた足が。
握りしめた拳の指までもが。
脆く。柔く。パキポキ折れて、ぐちゃぐちゃになる。
「──どんな、どれだけ脆いカラダで生きてやがる……!」
「虚の皆さんが硬いだけですよぉ。──それじゃ、さようならぁ」
その首を抱くようにして持って。
ぽき、と。軽く捻るだけで。
その虚は、絶命した。あ、仮面はちゃんとこっそり斬ってあげますよ。
*
さて、リニューアルした『全力部屋』の最初の使用者は千日さんである。
「さっきのは、オマエの斬魄刀への偽装、だよな」
「はい。千日さんに頂いた、霊力を込めることで形状を変える満願利剣の形状変化先を判子及び数珠に変え、王途川さんより頂いた罔象御鍬で恐らく敵の術と思われる雨の中に、この雨を降らせ、結界を確保。そして"狼の長"より頂いた、綱彌代家の神具『大円鏡典』による"鏡に映った複数人の人物における最も弱者であるものに周囲を強制的に合わせさせる"、という効果を張って、これを成し遂げました」
大円鏡典。斬魄刀『艶羅鏡典』と同じく綱彌代家に伝わってきた鏡だ。こっちは鏡典と言いながら一枚の鏡……『姿見』よりも精度の良い鏡。
これに映った者は、さっき述べた通り、その場にいる最も弱い者に強制的に合わせられる。鏡の映る範囲から出てしまえば関係ないし、割られたら今の僕じゃ修復できないので隠蔽させてもらったけど、果たしてどうかな。
周囲には誰もいなかった。助けに来ることのできる距離にいないでほしいとお願いしていた。
だから僕は、誰もいないのを良いことに、死にゆく虚に対してわざわざ情報を語った──典型的なこの世界の人物になれていただろうか。
ちなみに判子は唯の判子である。満願利剣の無くなった刀身部分に印褥をちょちょっと入れて、ぺたりとしただけ。紋章には一切の意味がない。そんな簡単にあんな強力なデバフをかけられてたまるか。
「よくもまぁ解号だの斬魄刀の名だの、本物じゃねえのがそうぽんぽんと出てくるもんだよ。尊敬するって」
……まぁそれっぽい解号とそれっぽい斬魄刀名を思いつくのは転生者の嗜みというか。
鰤ファンの嗜みかもしれない。鰤を思春期前後に読んでオリジナル斬魄刀作らなかった人いない説。
「少しでも僕の能力から目を背けさせます。催眠が効かなかったのは舐溶飴や霊圧差のせいであると思い込ませたいんです」
「でもそいつ、とんでもねえ霊圧持ちなんだろ、本来は」
「はい。ですから、僕の方が霊圧が上であると鼻を鳴らしているところを思い知らせて鼻を明かす、くらいの気概でいてもらいたくて」
「……成程。霊圧で漂白すりゃ催眠も効くと思わせるわけか。あくどいねー、本当に」
ここから先は一生化かし合いだ。どっちがどっちに引っかかるか。どっちがどっちを信じるか。
今回の工作が上手く行く可能性は20%もない。けどやる価値自体はあった。
そういうものを積み重ね、散りばめ、本当の姿を掻き消していく。
……なお、この鏡で山本総隊長にハンデを課す、というのも考えたけど、最悪彼の卍解の余波で鏡が壊れかねないので要検討中。離れすぎると映った判定にならないんだよねぇ。
「っし、準備完了! んじゃまずは手本を見せてくれ。真似する」
「はい。──瞬閧」
僕の瞬閧にはアレンジを加えてある。
布が弾け飛ぶことはなく、背に渦を巻くような形で巻き起こる。
その状態の霊子を──己に呑み込ませる。
僕の霊力の性質は霊力型。元素ではない。
それを理解しながら暴れ狂う霊力を絶対の意思で抑えつけ、目を開ける。
「これが、瞬閧・霊装戦形です。この時点で既に、個人差があります。千日さんは水ですよね、霊力の性質」
「オウ。よく知ってんな」
「恐らくは水を纏って戦う形に落ち着くと思います。その時点で止まれたら、それを維持する訓練を二時間ほどします。ただし止まれなかった場合、そのまま暴走するでしょうね」
「一度やったことはあるんだ。霊鳥、とかって呼ばれたっけな。鶴だのなんだの妄言を吐く刑軍に呆れかえったものだけど、まさか本当だったとは」
そして、今纏っている霊力の渦を……己の中にしまい込んでいく。
ただでさえ溢れたが故に出てきていたものを、だ。
それをすると、肉体を構成する霊子までもが瞬閧の霊子と混じり合い、溶けあっていく。
「……瞬閧・霊装戦形【
霊子との同化。
この状態の僕は始解を使うことができない。より正確に言うと、始解は問答無用でこの状態を解除させにかかるだろう。
なんせこれは、死を目前としているに等しい状態だから。
「……オマエ、今……ヒトか? それとも霊圧か?」
「どちらでもあり、どちらでもない中途半端な状態です。皆さんが普段感じている霊圧。あの圧力そのものを僕から感じると思います。これこそが同化です」
特に僕の場合霊力が元素を持たないから……こういうことができる。
遠くの岩に向けて手を伸ばし、グーからパーにすれば。
その岩が、パーの形に変わった。
道羽根アウラの霊子使役とほとんど同じかな。
「……おっし、やり方は理解した。解除して、卍解に備えてくれ。ちょいとオマエ舐めすぎだからさ。オレ一応まだ四楓院家の歴代最速なんだぜ?」
「夜一さんに抜かされますよ、それ」
「うっせ。オマエのいた未来じゃそうだったかもしれねーが、その時のオレは死んでたんだろ。じゃあまだわからねーじゃねーか」
瞬閧を解除する。
霊子が魂魄の棺に納まる。
「夜一はオレの従姉妹にあたる。オレの母親の姉妹が産んだ子だ。つまり、潜在能力で言えばオレと同等のはずなんだよ。あとは本人の努力となれば、負けるわけにはいかねーって」
「……六百……いえ、七百歳差の従姉妹ですか? 四楓院家って……」
「ハハハ、怖いだろうオレも血筋を聞いた時ぞっとした。ま、仕えの奴らも霊圧だけは高いんでな。老いるのが遅いのさ」
ぱぁん、と左掌に拳を当てる千日さん。
「行くぜ。瞬閧」
刑軍装束に身を包んだ彼の──その背から、鬼道の光が噴出する。
……僕とは比べ物にならない出力だ。どこかに掴まっていないと弾き飛ばされそう。
「んで……これを、体内に、ね。……ちょい、きもちわりーな。体内が……霊子で侵略されて行くような」
「五感封印修行を思い出してくださいね。ご自身のカタチを忘れないように」
「おう。……ああ、だが、これは」
今浦原さんが頑張っている修行。それを受けた一人が千日さんだ。
その千日さんは──。
──突然、著しい……虚圏での水柱を思い出すほどの霊力を吐き出し始める。
待機時間は瞬く間で充分だった。
直後砂塵やら何やらが吹き飛ばされ──そこに、青き霊力で形作られた……確かに鶴らしきシルエットのそれが降り立つ。
「はいぐにゃぁり」
好戦的に口角を上げた千日さん。その顔面狙いの横薙ぎかかと落としをぐにゃありと避ける。
続けざまの蹴り上げも、『緩衝霊子』で滑って避ける。
「聞こえますか、千日さん。はいぐにゃーり。あと十秒で抑えきれなかったら卍解しますよ。はいいち、にぃー」
この状態の彼に「気まぐれ」要素はないらしい。
代わりに、一秒ごとに霊圧がどんどん高まっていっている。「1秒間に48段階上がる霊圧」かな? だとしたら短期決戦すぎるけど。
「ガ──ァアアア!!」
「はいだめでーす。当たりませーん。千日さんの攻撃程度僕には届きませーん」
なんて風に煽っているのは趣味で、ではない。千日さんの意識を呼び覚ますための行動だ。決して僕が舐めプの煽りカスというわけではない。
「アァアアア!」
「おおクリーンヒットですねー。けどぬるっとしててノゥダメィジデェス!」
「ァアアァァアア!!」
「はい顔面をすべーる蹴り上げー」
七。八。きゅーぅ。
「十。と、やっぱり千日さんでも無理でしたね。じゃあ、卍か──」
「ガ──あ、ぁあっ……待、テヨ……」
突然己の顔に手を当て、立ち止まった千日さん。
お。……一発目で成功するのか。本気で?
振っておいてなんだけど、これとんでもないことしてるからね?
虚化の感覚こそ知らないけど、難度感で言えば『魂魄消失事件』で虚をゴパァして暴れ回った直後に内なる虚を調伏している、くらいのことだ。
それを……え、本気で?
「平良、ダナ、オマエ……敵、ジャナイ。恩人ダ。飲み干せ」
「……喋れてる時点で、とぉんでもないですけ、ど」
「……霊子に意識まで、くれて……やるほど、オレの身体は容易くねーんだよ。──出ていけ」
静かに……そして、素早く。
そう、正しい。この暴走は、一気に魄睡付近まで食われるがゆえにおきること。
ゆっくりやって胸の下あたりまでに霊子を追いやって調伏すれば、抑えられる力だ。
「……へっ。どうだよ。……意識、取り戻したぞ」
「はい、お見事で──」
「だから殴らせろ。褒美だろ、オレへの」
「イヤデース」
よたよたのパンチを避けて、と。
「……なんか名前つけてくれよ。瞬閧・水鶴戦形のあと」
「んー。じゃあ、【
「いや。……ねだったのはオレだけど、ほんとに……出てくるの早すぎだろ。普段からこういうこと考えてんのか?」
ぐさ。
……まぁ、鬼道の言霊探りもこういう面あるからね……。捨てなくてよかった厨二心。
いーんだよこういうのはちゃんと強い人が使えばちゃんと格好良くなるから。
「つか……この状態で、二時間、っつったか? ……流石のオレでも霊力もたねえよ、これ」
「ああいえ、その前の段階で止めなきゃです。そして、使用霊力の削減は地道にやっていきましょう。これも五感封印修行でやった無意識領域への
「……オウ、頼む。しばらく面倒見てくれ」
「もちろんですよ」
……死神に虚を寄生させた、恐らく試作段階にも満たない虚。
けれど……あっちには無限に時間があるに等しい。
虚や滅却師との戦いで死神を失い、回収できなかった場合は、そのままあっちの戦力や知恵を増やす結果になると考えるべきだ。刑軍の死体回収班常勤かも。
とすれば……ルールチェンジを気にせずに、全体の防御力や生存力を底上げした霊鎧は、一応正解だったのかも。
瞬閧が解除され……うつ伏せに倒れる千日さん。
「だぁ、っはぁ。……平良、そろそろ霊力回復のなんか作ってくれー」
「曳舟隊長に期待するしかないですねぇ。僕じゃ製法すらわかりませんし」
「曳舟~……たのむ~……」
実際彼女がどうやって命を生んでいるかわからない。あれが始解の能力なのか、生来の力なのかさえも。
だから手のつけようが無いんだよなぁ。早く発明してくれることを祈るしかないよ、本当に。
……こうやって、一人一人でも……その開花を手伝おう。
最悪の想定──虚圏と藍染惣右介が、尸魂界に攻め入ってくる、みたいなのが起きても大丈夫なように。
あるいは知らぬ間に空座町制圧、とかあり得なくも無い話だから。……僕らも頑張るから、この時代のカラクライザーも頑張ってくれ。多分陰陽師的な人たちだろう。
……色々、やんないとなぁ。