卍解までは転生者の嗜み。 作:点差惨敗
あいつは変わったと そう言えるほどに
あいつをずっと 見ていなかった
あなたは変わったと そう言えるほどに
わたしはずっと 耳を塞いでいた
この光景を見ることができたのは、まぁ……嬉しく思うべきなんだろう。
全隊の隊長を『全力部屋』にお招きして、その話をした。
影の中に住まう者たちのことを。言おうとしていた未来の話はやめた。……これは僕の甘さだ。……まだ、可能性を見てしまっている。それが双方に失礼であることを理解しながら。
けれど、崩玉と融合しない道を選ぶのであれば、その先に待ち受けるのは死罪のみ。彼が無間に放り込まれていたのは殺せなかったからだ。
……その先がどうなるにせよ、彼を死罪に……あるいは「危険思想あり」として特別監理棟に入れてしまうのは、正直好ましくない。
未覚党。四文字。……いいや、ユーハバッハは、次に彼が全てを取り戻したその時における「絶望」を、覆してしまいかねないと思うから……鬼札は、二枚の方が良い。
「成程ねぇ。……ボクらは直接関わったわけじゃないけど……生き残りとはしょっちゅう小競り合いをしてる。普通の滅却師でも結構脅威なのに、さらに強いのが……そんな近くにいたんだねぇ」
「機密情報はほぼ洩れていると考えた方が良いな。この部屋ほどの機密性が保持できている場所は……他に無いんじゃないか?」
「僕の個人的な研究室も、ここまでのことはしてないッスねぇ。……老いの破面だけでもとんでもないのに、これは……技術開発局だけだとどーにもならなそうッスね」
「現在の影の中はどうなっとるんじゃ? 覗くことはできんのか」
「一応、霊圧配置だけなら出せます。……今、こんな感じだと思います」
床のコンパネを操作して、三界観測局と同じモニタを出す。
そこに僕の霊子知覚を噛ませて表示する。これは直接見ているのではなく、尸魂界のあちら側の霊圧配置を外から見ているだけなので、気取られたり利用されたりはしないと思う。
中心部にいる巨大な霊圧がまず一つ。その周囲に三つの巨大霊圧があって、地上は無数の雑兵で埋め尽くされているのがわかる。
各建物にそれぞれ身を寄せ合うようにして霊圧があるので、これが残存滅却師かな。……大分減ったけど、明らかに二十六人以上いるから、星十字騎士団以外も残ったってことか。
「ん……? 待った、どういうことだ? どうやってこれを観測している?」
「尸魂界を構成する空間膜構成霊子の反応だけを除外してるんじゃないスか? あ、僕はできないですよ。そもそも世界の外に知覚を飛ばすのがまず無理ッス」
「術理の話は一旦どーでもえーねん。疑問解消にみんなの時間使うべきやないで」
「おやぁ? 平子隊長、それこの前藍染君に怒られてた内容だねぇ」
「ちゃいますー。オレの意見ですー」
まぁ、詳しい話は後でするので、ごめんなさいね。
「滑川さん。単純な比較が可能ではないとはわかっているのですが、私達十三人の霊圧を比較対象として提示する、ということは可能でしょうか」
「ああはい、できます」
表示すれば、確かに分かりやすいか。
──山本総隊長の、約十倍くらいかな。中心の霊圧は。
「……ホンマかいな」
「これは……恐ろしいな」
「妙ですね。どうしてこの中心の霊圧は場所を移動していないのでしょうか。恐らくはこれが髑髏の破面であると思うのですが、普通に移動が可能であるのでしたよね?」
「……確かに。封印や捕縛を受けていると考えるべきか」
「それで……言うならば。散らばっている霊圧は……滅却師共がよく身に着けている星型の形に……似ている、気がする」
「
本当だ。一切の場所を移動していない。
……何かしらの術で、バラガン・ルイゼンバーンの行動が封じられているのだとすれば……それができるものは、なんだろうな。
滅却師の技は基本的に敵を撃滅せんとするものばかりで、防御技は数が限られている。……それっぽいもので言えば
あるいは……ここまで来たのに? という疑問はつき纏うものの、従属官に狩りを任せて自分は座っている、という可能性もなくはない。
「こちらから直接影の世界へ赴く手段を構築する、というのは推奨しません。直接探知を行った僕の操作霊子を伝って老いの効果を伝播させてくる芸当を確認しています。僕がかの存在を認知してから、たった三秒のことでした」
「やるなら虚圏から黒腔を通っていくべき、か。……刑軍を送り込むのはありじゃが、流石に釣り合いが取れておらぬな」
「特演訓練の擬虚は遠隔操作できないのか?」
「無理とは言いませんが厳しいです。あれは周囲が特殊な結界の役割をする空間であればこそ機能するもので、それがないと木偶の坊もいいところ。稼働させるにはその結界ごと虚圏、影の世界へと送り込む必要があります」
「それは、ちょっと手間がかかりすぎるねぇ。……でも、何も手が無いってわけじゃないって顔をしているみたいだけど」
「はい。……これがあります」
言いながら出すのは、綱彌代家の僧兵。その外側。
翼のついた鎧。いや、やっぱり僧兵という言葉が一番合ってるかな。
「綱彌代家の紋……否、流石に懐かしいであるな。此方とも関わりの深いものか」
「正式名称を『
「神具は別に悪意で生贄を必要とするわけではない場合が多いはずじゃが、改造程度でその損益を踏み倒し得るものなのか?」
「要するに動力があればいいということですからね。義魂技術で予め霊力を封じ込めておけば、一年は余裕で稼働できるものになりますよ。ただ、操作できるわけではありませんから、不測の事態には弱いです。そこは本家本元よろしく数でカバーするしかないですかね」
「事前に設定した霊圧にしか追随できねぇんだろ? だとすりゃやっぱ、誰かがいかなきゃならねえんじゃねえか?」
「いえ、虚圏に設置してある黒腔の基点頂点のようなものを飛ばすつもりです。監視や操作のできないものですが、強い霊圧を察知して避けるという性質を持ちます。これをこの『空洞倶象』に追いかけさせて、空間内の様子を確認するつもりです。……ただ、その場合でもやはり、虚圏には行かなければならないわけですから」
「虚圏にいるっちゅーその破面の組織とがっちゃんこするわけやな。魂魄均衡の関係から倒してまうのがダメな中で、こっちの意図を気付かせんと派手に戦って、その黒腔にそいつを流すのを隠す」
「派手な戦いをしろ、ってご注文なら、俺や虎姫の独擅場だろう。銀嶺隊長も、先日引退がどうのと言っていたが、退く前にどでかい花を咲かせたっていいだろう?」
「うむ。そのためにつけた力じゃ」
……前向きだ。
僕の暗さとか、全部吹き飛ばしてくれる。特に平子さんと刳屋敷さんがムードメーカーだなぁ、と感じるね。
「できれば早めにやりたい。そうだな、坊主」
「はい。後手に回れば回るほど戦況がわからなくなりますから。黒腔の出口こそ固定していますが、他にどんな手段を思いつくともわかりませんし、現世を経由すれば尸魂界に来ることもできてしまいますから、やはり先手を打ちたいですね」
「なら今ここで決めることを決めちまおう。山本総隊長、構わねえか?」
「良い。じゃが、もう一つだけ話を聞いておけ。……滑川の出生と、未来の、そのまた未来に関わる話じゃ」
……これは。
未来の、そのまた未来の話だけで良い、ということ……かな。……確かに、それならば話せるか。
「滑川サンの出生? 流魂街のお生まれって話だったと思うスけど、違ったりするんスか?」
「なんや、実はどえらい貴族の生まれやいうても驚かんで。やのにごっつ低い霊圧についてはさしものオレも同情はするやもしれへんけど」
「まぁ、僕のことにそこまで気をかけてもらう必要はありませんが、僕は未来人なんです。未来から過去に送り出されて、この時代で再度生を受けました」
「……」
「……? ん、タンマ。……拳西、オレの耳とうとうおかしなったんか? なんかとんでもないことさらっと言い張ったように聞こえてんねんけど」
「安心しろ、平子。お前の耳はおかしい」
「そこちゃうねん。え、いや、拳西オマエまでオレを弄るようになってもうたんか? オレの安住の地はもう無いんか?」
「冗談だ。……未来から来たという話は俄かには信じ難いが、作戦立案を遮ってまで聞かされるべき話ではないように感じる。他に言うべきことがあるからこの話を持ち出したとみるから、話を続けてほしい」
れ、冷静……! 六車さんほんと……冷静で真面目で、そして効率的。
僕ちょっと好きになりかけてる。いや元々好きな性格だったなぁとは思ってたけど、史実は描写が少なすぎてね……。
「そうですね。僕のパーソナルな話は、後で良いです。ともかく未来において……護廷は細い細い糸を掴み、辛くも勝利を掴み取りました。多大なる犠牲を払った上で、です。……ここにいる方々で言えば、夜一さん、平子さん、銀嶺さん、京楽さん、六車さん、浦原さん以外は、お亡くなりになっていました。夜一さんも当主を退かれ、銀嶺さんもまた同じです」
「ちょ……ちょっと、山爺もかい?」
「はい。敵の首魁に敗北していました。……その後の総隊長は、あなたでしたよ、京楽さん」
「ぅぇえ!? ぼ……ぼ、ボク……?」
「ほう? そこまでは儂も聞いておらなんだが、そうか。適任じゃの」
「いやいやいやムリ、ムリだって絶対……」
「つまり平子隊長、京楽、六車隊長、浦原隊長以外いなかったというのなら、妥当じゃないか? お前しか年長者がいないじゃないか」
「厳原隊長や王途川隊長まで亡くなられていた、というのは信じ難いが……総隊長の口ぶりからして、滑川の妄言じゃないのは確定しているんだな」
「うむ。こやつは正しく未来から来た者じゃ」
山本総隊長の言い切りに、ようやく呑み込んだ、という顔の隊長さんたち。
「そんで、その敵言うんが滅却師って話でエエか?」
「はい。といっても敵の首魁が封印状態から目覚めていないため、その力は半減……いえ、十分の一も無いと思われますが、それでも気を付けてほしかったんです。今破面によって脅かされている者達が、僕らの首を取る直前まで僕らを追い詰めていた、ということですから」
「……ああ、わかった。……そんじゃ、改めて戦力配分をしたい。五番隊と九番隊は尸魂界守護のために残す予定だから、それ以外は集まってくれ」
「一瞬ハブんなやって抗議しかけたけど妥当やな。オレの斬魄刀そない味方いる場所で使われへんし」
「ああ、九番隊としても異論は無い」
「ん? 山本総隊長、突っ立ってないで来てくれ。アンタにも動いてもらうつもりがある」
「む……ほう。良い。この老骨、いくらでも好きに使うが良い」
へえ。嬉しそうだね、山本総隊長。こういうの基本ハブられがちだもんね。
……それじゃあ、詰問タイム、かな?
ちょっと離れたところの岩に座って、六車さん、平子さんと話す。
「ほんで未来言うんは、どれくらい先の未来なんや」
「あと……百三十年とか百四十年とか先ですね」
「なんやすぐそこやんけ……って言おう思たけど、生まれたん確か九百年前やったな。……千年前に放り出されたんか。オレならどないせーっちゅーねんって腐りそうやな」
「そもそもどうして送り出されたんだ? 犠牲はあったが、勝利もあったんだろう。その勝利を無きものにしてしまいかねないように感じるんだが」
「犠牲が大きすぎたんです。先程は言いませんでしたが、瀞霊廷は壊滅していました。復興が難しいレベルに。その上で……尚も悪意ある者達が蔓延り、火事場泥棒を、という状況で」
「ほーん。で、オマエなんかさっきからずっとバツの悪そうにしよるけど、何番隊の何席だったんや。実は京楽隊長の副官とかか? 実はごっつ戦えてホンマは前線でばったばった敵斬り倒せたりするんか?」
「いえ、何番隊の何席でもなかったですよ。死神でもなかったです。たまたま過去へ赴くにあたって魂の耐えられる素養があり、全てを覚えていられる力があっただけのこと」
この辺は一応「フレーバーテキスト」にしてあるけど、そこまで意味を持たない。
生前……前世の僕にちょっと付け足したくらいの話だ。
「……せやったら何をそんな縮こまっとるん? フツーに偉業やんけ。もっと堂々としたり」
「だって、未来から来たんですよ。何が起こるかだって……少しは知っていたのに、一瞬で対処した、みたいな評価を受けてて……」
「何が起こるか知ってたって、今までの事件も、今回のことも全部知ってたんか?」
「いえ、そういう細々としたことは知りませんでした。今回のことも……僕の知る限りでは、起きてないですね」
「やったらなおさらなんにも謝ることないで。こっち来てからのオマエがやってきた全部オマエのモンや。未来のモンとちゃう。というかそれフツーに流魂街で生まれてフツーに死神になった奴と何が違うんかわからんし。未来でも鬼道の天才やったわけやないんやろ」
「まぁ、そうですね。幽霊が見えるだけの一般人でした」
「だったら未来から来たというのは本当にどうでもいい情報だな……。……家族や友人は、その戦いで死んでしまったのか?」
「いいえ。元より天涯孤独の身だったので、そういう悲しいお話はありませんね。友人は……まぁ、いるにはいましたが、知り合いでしかなかったですし」
いやまぁ辿ればいたのかもしれないけれど。
そんなの関係なくなったからなぁ。
「いなかったから悲しくない、は……悲しい話に聞こえるけどな」
「なんや……どっかズレとんな、平良。色々隠しとる時の方がまだ人間味……。……すまん、なんでもない。忘れぇ。……あー、それで……何がそんなに引っかかっとるん? 特に……オレに対して負い目があるみたいな態度やけど。もしかしてオレのこと殺したりしたんか? エエで一言謝ってくれたら。それでチャラやチャラ」
「そういうわけじゃないですよ。……その。……」
いやぁ。
……だって。
あなたは……彼と、仲が良いから。
「……ま、エエわ。掘ってほしくなさそうやし。いつか語ったり。……それよか未来の話を聞くか。さっき京楽隊長が総隊長やった言うてたけど、誰かが死んだ言う話やのぅて、新顔の話は無いんか?」
「あんまりお話すると、その人が隊に入ってきた時、どうしても特別視してしまいませんか?」
「……せぇへんけど」
「いや、平子はするな。絶対に目で追うし、特別優しくはしないだろうが、特別厳しくはするだろう」
「せ、せぇへんけど……まぁ若いヤツらの成長を見る楽しみが奪われてしまうわけやし、聞かんとくわ!」
平子さんを見る拳西さんの目がとんでもなく優しいから……なんか、うん。良いね、友達って感じで。
「アッチの話まだ終わらなそうやし、もうちっと掘っておきたい気持ちもある……が、なんか無いんか、オモロそうな話」
「平子、その振り方は最悪だと前に話していなかったか?」
「なんやオモロい話頼む、はサイアクや。けど、オモロそうな話ならエエやろ。別にオモロなくてもエエわけやし」
「そうですねぇ。平子さんが一時期死神を止めて第三陣営になりつつも現世の学校で学生していた話とかですかねぇ」
「なん……なんて? オレもしかしてホンマに裏切り者かなんかやったんか? だから平良と気まずいんか?」
「色々あって追われる身になって、現世で学生ライフを楽しんだあと、色々あって護廷に復帰しましたね」
「色々ありすぎやろオレの人生。……え、むっちゃ楽しみやんけ。いや追われる身になるんは嫌やけど、この先そない波乱万丈が待ち受けとるんか」
「可能性の芽は僕が潰しまくっているので早々ないと思います。あったとしても、百年後……かな」
響河さんがイッチーの虚化修行を担当するのだとしても、そこに平子さんたちの介在の余地は無いだろう。
平子さんが学生ライフを送る瞬間があるとするならば、現世に人員を派遣する必要が出て、そこで、くらいかな。
「俺には何も無いのか? 言える範囲で良いんだが」
「拳西さんとは関わりが薄かったので難しいですが、未来でも平子さんや矢胴丸さん、久南さんらと仲良しでしたよ」
「矢胴丸と? それは……そうか。今も時たまつるむが、面白いな。白はどうでもいいが」
「もしかして羅武もその仲良し組やったか?」
「ええ。平子さん、猿柿さん、愛川さん、鳳橋さん、矢胴丸さん、六車さん、久南さん。……あと、有昭田さんもですね」
「有昭田って……鬼道衆のかいな。……何きっかけやろ」
そう、
あんまり接点が無いんだろうなぁ、とは思う。
「未来で仲良ぅしてた言うんやったら、今でも気ぃ合うんやろか。あんまりこういうの参考にしたらアカン気もするけど」
「別に、良いんじゃないか? そいつの人生を大きく左右する話なら俺も首を振るが、交友の輪を広げる……というか、友人を増やすのに参考にする分には良いと思うが」
「せやったら今度思い切って飲みに誘ってみるか」
「いや飲みは早くないか。酒が苦手なやつだっている」
「やって、いきなり歓楽街行くんはちゃうやろ」
「他にも色々あるだろ……。……そういえば、藍染はいないんだな。……ああ、いや。……居なかったのか?」
……その問いは、まぁ、来るだろう。
それはわかっていたから、用意していた答えを使う。
「はい。僕の知る五番隊の副官は、彼とは似ても似つかない可愛らしい女性で……だから僕も彼に興味を持って近付いて、そのまま話が合った、という次第ですね」
「……そうか。まぁ別にそれでどうするってわけやないけどな。……なんや危ういヤツやと思って近づいたんはオレも同じやけど、……どっかで躓いとったか。まぁアイツほんまに戦わへんしな。いつものらりくらりと躱しよって……未来やと本気で文官やったんとちゃうか」
「そういう差異の部分を聞くのは、面白いかもしれないな。あとは……九番隊は、そっちでも警備隊だったのか?」
「そういう隊の役割はほとんど変わってないですよ。あ、でも九番隊は、瀞霊廷通信という瓦版もやっていましたね。地域の情報を届け、瀞霊廷内の情報を正しく伝える、という」
「……久面井の爺さんが、そういうことをしてみるのも良いだろう、と言っていたな。……しっかり視野に入れるのはアリだ。名前はそのまま使ってもいいか?」
「僕は権利持ちじゃないので……。九番隊にお問い合わせください」
「つまり俺が許可すればいいか。よし、許可する」
「どういう会話やねんそれは。やめや不思議ちゃん同士になるん」
不思議だ。
……こういう……知識のひけらかしみたいな行為、もっと負い目を覚えるかな、とか思ってたんだけど。
全然苦じゃない。……この二人がそういう……聞き手として卓越しているんだろうなぁ。本当に頭が下がる。
「ああ、あと、仲良しグループには入ってませんでしたけど、夜一さんと浦原さんとも関わりがありましたよ、あなたたちは」
「いやそれはホンマにどういう繋がりやねん。喜助はまだわかるけど、四楓院隊長とオレ何があったら仲良ぅなるんやろ……」
「四楓院は、そうだな。……四大貴族か。いや、それについてどうこうということはないが、あまり接点が思い浮かばないな」
「浦原さんと仲良しですからね、彼女は。きっかけは僕にもわかりませんけど、その辺なんじゃないですか?」
「まぁ、そうか。喜助大好きっ娘やしドゴハァ!?」
そこそこ大きな……拳大の岩が飛んできて、平子さんの腰に命中した。
飛んできた方を見れば。
「すまーぬ。話し合いの最中になぜか手が滑ったようじゃー」
「……どういう滑り方やねん。つか、図星突かれて攻撃とか、ほんまに子供みたいなやっ……つと、ちゃうな、ウン」
やっ、のあたりでとんでもない大きさの石が平子さんの鼻先数センチを掠めていった。
危機管理危機管理。
あと夜一さんは会議に集中してくださいね。
「しかし、平子。仲良しの中にひよ里がいることには言及しないんだな。いることは当然だったか?」
「キモい勘繰りすな拳西。……まぁ、気に入らへんけど、そらおるやろな、とも思うねん。おらんかったらそれこそどっかでくたばったんやろ思うほどには……まぁ、仲エエからな」
「妙に素直で気味が悪いな。本当に平子か?」
「どういう意味……なんて聞くまでもないけど、……まぁ、あんましぎゃいのぎゃいの言うわけにもいかへんし、努めて抑えてんねんコッチは。あ、そうや、聞いておきたいんやけど、オレって未来で……一回でも卍解してたか?」
「二回ほどですかねぇ、していたのは。だから僕、知っていますよ。平子さんの卍解がどういうものか」
「もしかしないでもカッコエエ瞬間やったかそれ」
「ええ。絶望的な状況をひっくり返す、非常にかっこいい瞬間でしたね」
「それやそれ。そういうんが欲しいねん。いや別に危機に訪れてほしいとか思うてないけど、戦ってるからにはジブンのカッコイイとこ求めるんはフツーやんな?」
「普段はあまり考えてはいないが、理解はできる」
……そう、だから、本当は僕の始解については……平子さんに教えた方が良いんだよな。
僕は平子さんの近くで戦える存在だから。
「楼十郎とか羅武との付き合いがそない長くなるのも不思議なようで納得のようでやなぁ。もっとガツガツ行ってエエんやろか」
「まぁ、百四十年に亘る絆あってこそなのかもしれない、あんまり急に、というのは微妙なんじゃないか?」
「それは……確かに。そうか、百四十年後の話やったわ」
「僕がいたのが百四十年後なだけで、百年後……つまりあの時点の四十年前くらいからあなたたちは仲良しグループだったって話ですけどね」
「やとしても百年で紡いだ仲の良さか。……あんま先走らんとくのが賢明は、その通りやんなー」
……今、言うべきか。
毎度毎度……言葉を呑み込むのは、僕の悪癖だろう。千日さんにあの時……鎌倉旅行の時、全てを話すのを躊躇ったのだってそうだ。最終的には話したくせに、その時は……本当に体重を預けられるかわからないから、とか言って。
結局信じるって行いができていないのが、僕という存在ならば。
「平子さん。一つだけ。……僕にあなたの始解・卍解は効きません」
「……なんでかは、聞かへんといてやるけど」
「はい。それでお願いします。ですから、僕とあなただけ、という状況になった際には迷わずに使ってください、ということです」
「ほーん。どういう状況かは想定し難いけど、わかった。尸魂界守護の時オマエがオレらン隣いるとは思えへんけどな」
「そうですかね? 僕が実働部隊に入ることはないんじゃないかって思いますけど。あっちに呼ばれていない時点で」
「あっちで話しているのはあくまで部隊編成の話だからな。その上で、アンタが残されることはほぼ無いだろう。どこからでも黒腔が開けることもそうだが、その他あらゆる不測の事態においてアンタを連れていかない理由がない」
「とても高く買ってくださっているようですけど、言うほどのことはできませんよ僕。霊力が乏しいので、基本は温存することになりますし」
それにまだ……この時点では、卍解の方を使うわけにはいかないし。
有用性だけ知っておいてくれたらいい。……とかってちょっと俯いたのが悪かったのかもしれない。平子さんの口角が上がった。
「さては、あの更木を指一本で下したっちゅう噂流れとるの知らんのやな平良」
「……知りませんでしたが、平子さんが面白がってそれを拡散しているのは想像がつきました」
「悲しいなぁ、友達が悲しむのわかっててそないなことするわけないやんか。オレがやっとるんはただその噂を話す奴に、訳知り顔で最近聞いたオマエの鬼道衆での肩書きを添える程度のことや。言いがかりやめぇ」
「安心しろ、滑川。平子の発言は既に信用度が無い。一般隊士でもこいつの言葉を信じる奴はいない」
「うせやん拳西オマエまでオレを腫れ物扱いするんか。やっぱり安住の地は無かったんか」
「最近のお前の動向を見ていると、自ら安住の地を売り払いに行っているとしか思えなくてな。友人として力添えをしようと思っただけだ」
「頼むからそっち行かんといてくれ。拳西とおる時は比較的喉休まるん楽やねん。ひよ里とか藍染で喉酷使しとるからオレ」
「あ、喉飴お売りしますよ」
「それはホンマにありがとうやけど。まずオマエはド外道働いとるオレに怒るかツッコムかせぇ。このままやとオレほんまの腫れ物になるやろがい」
「藍染さんが前に言っていました。"平子隊長がツッコミ待ちで度を越えた発言をした時は、黙って待つ方が得策です。よく言うでしょう。野良犬の餌をやってはいけない、と。一度ツッコミをくれると学習したが最後、彼は一生失礼を働き続けますよ"、と」
「藍染!! オレの飼い方みたいなん広めるのやめ! 恥ず、え、いや恥ずぅ……」
……いけないな。
話が弾む。気を抜いてしまう。
……あ、でも……気を抜くことを頑張ると言ったのだから、これくらいを許すのは……アリなのかな。
「決定じゃ。……滑川、戻ってこい。平子と六車もな」
「っと……話、まとまったみたいやな」
「ああ。行くか」
気を抜く。……まだちょっと、慣れないけれど。
少しずつ実践はしていこう。
決まったことを刳屋敷さんが読み上げる。
「六番隊、七番隊、十番隊、十一番隊で、虚圏の敵陣、虚夜宮の四方で騒ぎを起こす。破面……八刃というの以外なら狩っても大丈夫だろう。己の命が危うければ全力戦闘も辞する必要はない。この作戦の最大目標は黒腔へ人形を送り込むことを悟らせないことであり、撃滅は目標ですらないってのだけ頭に入ってりゃいい。怪我人は二番隊が回収し、四番隊に預ける手筈で組む」
「腕が鳴る、であるな」
「十二番隊、十三番隊は鬼道衆の守護、及び不測の事態に備える係だ。尸魂界にもいくらか人員を残しておいてほしい」
「はい。老いの研究をしている方々はそのまま残すつもりです」
「一番隊、三番隊、八番隊は八刃ってのが出てきた時の対処だ。勢い余って殺さねえようにな。こっちも自分たちの命を優先してくれ」
「良いじゃろう」
「山爺、厳原隊長の並びにボクがいるの、なんだかなぁ。……いや話し合いで納得はしているけれど……うん……」
「そんで、鬼札。坊主は瀞霊廷に待機だ」
「ああ、やっぱりですか」
「ホンマにか、それ。連れていった方がええやろ色々考えて」
「懸念はわかるが、坊主は"どうしても戦いを継続しなければならない場合"に使うのが一番だ。騒ぐだけ騒いで目的を果たしたら逃げ帰るこの作戦じゃ無用の長物と判断した。尸魂界にいても虚圏の霊圧配置がわかる察知能力があれば、危機的状況もなんとなくわかるだろうしな」
不安はある。
けれど……正しい運用だとも思う。
この作戦は、僕向きじゃない。
僕が関わらないのは、怖いと思ってしまうけれど。
信じるべきだ。
「そうと決まればすぐにでも編成を行うべきじゃな。総隊長。決行はいつにする?」
「明後日じゃ。それまでに各隊精鋭を編成せよ。これは布石の作戦なれど、今後の百年を、そして百年後に待ち受けるじゃろう決戦を左右する作戦じゃ。心してかかれ」
その言葉で解散となる。
……大掛かりな作戦。僕が現場にいない作戦。
信じるべきだ、なんて言葉はわかっているけれど、不安もある。
それは多分、成功体験が少ないからなんだろうけど──。
「いちいち暗い顔をするな、滑川。楽観は捨てなければならぬが、悲観ばかりでは前に進めぬ。此度の作戦が……おぬしのこれからの自信を作る。待っておれ。……そして、瀞霊廷の守護は頼むぞ」
「はい。お任せください」
「……今更やけど口調サバサバしてる平良ホンマに違和感やな。オレらにはあのゆっくりした口調の方が馴染み深いねんけど、戻す気はないんやろか」
「緊迫した場面には向かないだろう。そんなに気になるなら直接言えば良かっただろう、さっき」
「いやオレが気になるから口調変えてくれは流石に自分本位すぎるやろ。頼むから標準語で話してくれ言われたかてオレなら対応できひんし。ジブンができんこと誰かに押し付けるのは嫌やねん」
「……平子。まずおぬしはその……厳粛な話をしているところに顔を出して喋り散らかすのをやめぬか」
「うわぁ聞かれとった! 逃げるで拳西!」
「なぜ逃げるんだ? それと、……申し訳ないが、総隊長。ツッコミとボヤきは平子の生き甲斐だから、奪わないでやってほしい」
「そないおかしな生態しとらんけど! 要求と言い分はまさにその通り!!」
「わかった、わかった。もう言わぬから、行け。まったく……騒がしい、良い風じゃな」
「ですねぇ」
どうか、何事もなく。
この作戦を終えられますように、と。
*
現世の暦にして1899年、これが行われる。
作戦名『第二次虚圏偵察作戦』及び『
今日を以て、ようやく終わりを告げることとなる。
待つことの長さを改めて知って。
その上で……各人各隊の報告書を読むことにする。
*
虚夜宮東の砂漠。
一面の砂漠。暗夜。現世や尸魂界とは正反対の形を取る月の輝く白砂の上。
そこで刳屋敷ら十一番隊は、ガラにもなく、ひっそりこっそりと身を伏せている。
刻限まであと少し。これは同時にやるから意味があるのであって、十一番隊だけが先に盛り上がるわけにはいかないのだ。
「しっかし……とんでもねぇ数だな」
「時間稼ぎの雑兵でしかないが、脅威でもある。俺と一之瀬、斑目の隊はあれらを相手取るか」
「んだぁ? 雅忘人、テメェだってそろそろデケェのを食いてえだろう。ガマンすんじゃねぇよ」
「どの道強大な虚は殺してはならないんだ。なら、たくさん殺せるほうを選ぶ。道理だろう」
「流石ですね、狩能三席は。更木六席の扱い方を心得ています」
じっとしていられない……ということは、案外無いようで。
十一番隊はその霊圧を遮断する籠の中で、雑談を交えながら刻限を待っている。
眼下。
虚夜宮と呼ばれる建造物の周囲──恐ろしいほど広大な円形範囲にひしめき合っている、全く同一の骨頭の虚。五万体はかたい。護廷の十倍人数がいることが窺える。それも地表にいる数の話なれば……恐らくはその倍か、三倍はいると見て良いだろう。
「更木。お前的に、一番美味そうなやつはどこにいる」
「……上だ。あの建物の、一番上」
「そうか。それで、作戦は理解しているか?」
「ああ。今が食い時じゃねえってのは理解してる。あるんだろう、ちゃんと。本当に食うべき時ってモンが。それくらいは……待ってやる」
「刳屋敷隊長、そろそろですよ。あ、そうだ。作戦前に呼吸を合わせる音頭やっておきません? そいや、と……そぉれ、だったらどっちが」
「ちょいというのが遅かったな、久面井」
ぴゅぅ~……という気の抜けるような音が響き──次の瞬間、大輪となって爆ぜた。
志波家の特製花火だ。合図以外にも様々な用途のあるそれが爆ぜたということは。
「行くぜ──開戦だ! 今回は死んでいい戦いじゃねえのは覚えておけよ! 死にそうな仲間がいたら、蹴ってでも助けろ! いいな!!」
「っしゃぁ、一番槍は頂くぜぇ!」
「行くぞ、一之瀬。斑目の突撃癖はお前が止めてやってくれ」
「はい!」
次々と飛び出していく十一番隊。
交戦はすぐに始まるが──やはり雑兵。骨頭兵は障害にはならない。
と──誰もが思っていた。
「ガ──」
一番槍として突っ込んだ斑目智久が、腹に孔を開けて飛ばされてくるまでは、だ。
「ッ、縛道の四・這縄!!」
すぐに斑目を縛道で結び、掴んで引っ張り上げる久面井。紗咲も治療に当たる。
「……一匹、いるじゃねえか。一番美味そうなのには劣るが」
「良いぞ、食っても」
「躾けみてぇに言うんじゃねぇよ刳屋敷。まぁ……肩慣らしくらいは、してくるが」
斑目を飛ばした敵の方へ、草鹿を連れて飛び出ていく更木。
残された刳屋敷が思うのは。
「……いや、開戦の瞬間にお前も突っ込めよ。なんで様子見してたんだアイツ」
という至極真っ当なことであったようだけど──戦場に視点を戻そう。
着弾するように戦場入りを果たした更木が見たのは、巨大な戦鎌を操る大男だった。
酷くつまらなそうな顔をしていたソレは、着弾した更木を見て、少しばかり目を細める。
「なんだァ? さっきのゴミより、幾分かマシそうな奴もいるじゃねえか。そォいうのだよそォいうの。最初からテメェみてぇな奴だけを寄越しやがれ。雑兵は雑兵と戦ってろ」
「何を見て判断してるかは知らねぇが、智久は俺より上の席次だ。すまねぇな、がっかりさせちまってよ」
「そりゃ組織の制度が悪ィだろ。──隊長格って奴らにしか見えねえ霊圧しといて、何がすまねぇだ、よ!!」
ぶつかり合うは、巨大な両頭鎌と斬魄刀。
押し合いは。
──更木が、弾かれる。
「ヒャァ──!」
「……へぇ、良い膂力じゃねえか。楽しめそうだ……ああ、そうだ。名はなんだ、破面。強ぇやつの名はちゃんと呼びてぇ」
「
「十一番隊第六席、更木剣八!」
再度のぶつかり合い。
ただし今度は、両頭鎌による一撃を躱した更木に依る一撃が入る。様子見の無い、首を狙った致命の一閃。
しかしノイトラもこれを躱す。首を傾け、そして軸足を使って回転し、両頭鎌の腹で更木を打ち飛ばした。
追撃にと鎖のついたその両頭鎌が吹き飛んだ更木の方へ投擲される。それがどこぞかへ突き刺さる前に大きく上空へ弾き飛ばされ、土煙の中から口角を上げた更木が飛び出してきた。
再度、再度のぶつかり合い。既に斬り、躱し、距離を取り、距離を詰め、追撃し迎撃し、また同じことをする。
片方がトリッキーな形状の刃を使っているにしては、あまりにも真っ当な「斬り合い」がそこにあった。
「オイオイなんだよそりゃァ! つまらねェ気に入らねェクソみてェな役割だと思っちゃいたが、テメェみてェなのと戦えるんなら本望だ!」
「そりゃこっちの台詞だぜノイトラ! 腑抜けた作戦と小難しい理屈を並べ立てるやつらにちぃと呆れてたが、蓋を開けてみればこれだ!」
一合打ちあうだけで、周囲の岩や構造物に罅が入るほどの衝撃。それが、五合、十合、二十合と積み重なっていく。
互いに必殺だ。様子を見ているつもりなどない。手加減などしていない。
その上で──毎回、相手が上回る。
「──ノイトラ」
「ア? ンだよ。戦いの最中にそぉ気安く話しかけてくんじゃねえよ更木」
「このまま斬り合うのも良いんだがよ。──俺にとってこの状態は手加減してるのも同然だ。そいつがちと、気に入らねえ」
「……ハッ、いいぜ。そういうことか。……安心しなァ、テメェら死神は知らねぇだろうが、俺達にもあるんだぜ……この上が」
「なんだ、そいつを食わせてくれるって話か?」
「食うか食われるかはテメェと俺次第だろ」
「違ぇねぇな。……行くぜ。呑め、野晒」
「──祈れ、
解放される。全く同時に、二つが。
現れたるは戦斧と、そして六本腕のノイトラ。
「へェ……カッコイイじゃねェか。細ェ剣よか斧のが強い。道理だな」
「同じ言葉を返すぜ。一つ聞きてぇのは──それはさっきの六倍強ぇって理解であってるか?」
「馬鹿言え──六万倍強ェに決まってんだろ!」
またもぶつかり合い。
四本の鎌と戦斧は──前に出ていた二本が
「……切れ味が上がりやがったか。剣より大きくて重いモンになっただけ、なワケがねぇのは知ってたが……そいつは厄介だな」
「危機察知の上手ぇ野郎だ。変化した霊圧ごと顔を落とすつもりだったんだがな。……斬り方はわかった。そら、霊圧を変えておけよノイトラ。そのままだと次で終わりにしちまうぞ」
「霊圧を変える……だぁ? そんなせせこましいことするかよ。そもそもできねぇよ、俺には、そんな細かいことは」
「できねぇだと? ……チッ、あいつ……これから現れる敵は全員こういうことをしてくると思えとか言ってやがったのは、嘘かよ」
次で終わり。
その言葉を聞いたからには──ノイトラとて、その気で行くことになる。
楽しい斬り合いなど、結局、お互いがどこかで手加減しなければ長続きしないものだ。
相手の殺し方がわかった時点でそれをしないのは、驕りだし、軽視だし……なによりも、己に嘘を吐くことに外ならぬのだから。
「すまねぇな更木剣八。その霊圧を変化させるってのはできねぇからよ。──代わりに、それが必要なくなるよう……俺も次でテメェを殺すぜ。この短い時間は、久しぶりに楽しかったと言っておく」
「……そうだな。終わることを嘆くくらいなら、今を全力で楽しむべきだ」
己が得物を強く握りしめて。
祭りの終わりへの慟哭にも似た叫び声を上げながら両者は、最後の打ち合いをする。
更木の首を獲る気で振った鎌の、その全てが根元から斬り飛ばされる。鋼皮。一人を除いた八刃にも勝る硬度の己の肌に、久しく感じていなかった金属の冷たさが入ってきて。肉を千切り。骨を断ち。
だから。すぐ。もう、いつかの、借りも、誰かの──ああ、ただ、虚しく、満たされて。
「……じゃあな、ノイトラ。良い強さだった」
落ちる。長い黒髪の彼の首が。
残念そうにはしない。敬意を表して名を呼んで。
それを手向けとするのだ。
敵将、
十一番隊第六席、更木剣八が討ち取りて、死亡確認。
*
もう少しばかり、報告書が続く……。