スターウォーズ世界に転生したので一旗上げたらあっという間に巨大勢力に成長した! 作:アキラ7
ストーリーの展開についてコメント頂けると嬉しいです。
目を覚ましてから、何度目の朝だろう。
俺は窓の外を眺めていた。
最初に感じたのは、光だった。
眩しい。
前世の日本で見ていた朝日とは違う。
窓の向こうには、太陽があった。
空の高い場所から大地を照らしている。
その光を受けて、遠くの大地が黄金色に輝いていた。
乾いている。
それが、この惑星に対する最初の印象だった。
地平線まで続く大地には、ところどころに低い草が生えている。緑というよりは黄土色に近い植物だ。
さらにその先には、巨大な岩山が連なっている。
風に削られた岩肌は赤茶色をしていて、場所によっては巨大な柱のようにそそり立っていた。
空は驚くほど澄んでいる。
雲は少ない。
青い空の下、二つの太陽が大地を容赦なく照らしている。
前世の地球なら、暑い日には「今日は暑いな」と思う程度だっただろう。
だが、この惑星の暑さは違った。
乾いている。
肌にまとわりつく湿気がない。
窓が開けば、熱を含んだ風が吹き込んでくる。
それでも、不思議と嫌ではなかった。
遠くから風の音が聞こえる。
時折、鳥とも動物ともつかない生き物の声が聞こえる。
そして――。
ゴォォォォ……。
空の彼方から低い音が響いてきた。
俺は反射的に顔を上げた。
一隻の宇宙船が飛んでいた。
細長い船体。
左右に張り出したエンジン。
機体の後方から白い航跡を引きながら、まるで当たり前のように空を横切っていく。
飛行機ではない。
俺には、それが一目で分かった。
宇宙船だ。
しかも、映画で見たようなものが、本当に空を飛んでいる。
「……」
俺は言葉を失った。
少し離れた場所では、建物の間を小型のスピーダーが走っている。
タイヤはない。
地面から少し浮いた状態で滑るように進んでいく。
道路の端を歩いている人々の中には、俺と同じような人型の者もいれば、肌の色や顔立ちが明らかに異なる者もいる。
頭から二本の長い突起物を垂らした女性が、買い物袋を抱えて歩いている。
トゥイレック。
その姿を見た瞬間、背筋に妙なものが走った。
知っている。
前世の記憶にある。
映画やゲームの中で何度も見た種族だ。
だが、目の前にいる。
作り物ではない。
特殊メイクでもない。
彼女は普通に歩いている。
近くでは小型のドロイドが荷物を運んでいた。
別の場所では、露店の店主らしいトゥイレックが客と話している。
会話。
笑い声。
商品の呼び込み。
スピーダーの駆動音。
遠くを飛ぶ宇宙船の轟音。
それらが混ざり合い、一つの街の音になっていた。
俺は窓に近づいた。
もちろん、赤ん坊の身体では自分で歩くことなどできない。
だから母親に抱き上げてもらい、窓の外を見せてもらった。
そこから見える景色は、さらに現実感を増していった。
俺たちの家があるのは、都市の中でも比較的裕福な区画らしい。
建物は白い石材と金属を組み合わせたような造りになっている。
壁には幾何学的な装飾が施され、屋根には太陽光を遮るための大きな庇がある。
庭には、この惑星の乾燥した気候に適応した植物が植えられていた。
葉は厚く、濃い緑色をしている。
中央には浅い水盤まである。
こんな乾いた惑星で水を庭に使えるということは、それだけでも家の経済力を示しているのだろう。
俺は庭を見ながら考えた。
――金持ちなのか?
どうやら、そのようだった。
家の中には家事を手伝うドロイドがいる。
食事を運ぶ設備もある。
室内の温度は常に一定に保たれている。
窓から見える街にも、一般的な住宅とは明らかに違う大きな建物が並んでいた。
ただし、少し離れた場所に目を向ければ景色は変わる。
建物は小さくなり、道路は混雑している。
市場には大量の人が集まり、様々な種族が行き交っている。
商人たちが声を張り上げ、輸送用のドロイドが荷物を運ぶ。
空には小型船が何隻も飛び交っている。
その光景を見ていると、不思議な感覚になる。
この世界では、それが日常なのだ。
宇宙船を見ることも。
異星人を見ることも。
ドロイドと会話することも。
それらは特別な出来事ではない。
俺にとってだけが、特別なのだ。
なぜなら――。
俺は、この世界を知っている。
正確には、「知っていると思っていた」。
前世の記憶にある世界と、今ここにある世界が同じだという保証などない。
映画で描かれた歴史がそのまま起こるとも限らない。
それでも。
あの二つの太陽。
トゥイレック。
ドロイド。
宇宙船。
そして――。
ライロス。
これだけ揃えば、さすがに偶然とは思えなかった。
「……スター・ウォーズ、か」
小さく呟いた。
母親が不思議そうに俺を見る。
俺は慌てて笑った。
もちろん、赤ん坊らしい笑顔にしか見えなかっただろう。
けれど俺の頭の中では、全く違うことを考えていた。
映画の中の世界。
空想の世界。
遠い銀河の物語。
子供の頃から何度も見た世界。
それが今、俺の目の前にある。
しかも俺は、それを画面の向こうから眺めているわけではない。
ここで生きている。
この惑星で。
この家で。
この身体で。
そして、この銀河で。
「……本当に、転生ってあるんだな」
口から出た声は、自分でも驚くほど静かだった。
空の彼方で、また一隻の宇宙船が飛んでいく。
その船は二つの太陽を横切り、やがて遠くの岩山の向こうへ消えていった。
俺は、その姿をいつまでも目で追っていた。
――いつか。
いつか俺も、あの船に乗る。
そのときは、映画な気分ではなく。
自分自身の目で、この銀河を見てみたい。
その思いだけが、幼い身体の中に生まれた最初の「夢」だった。