スターウォーズ世界に転生したので一旗上げたらあっという間に巨大勢力に成長した! 作:アキラ7
五年という時間が過ぎ、サムとエミリアがそれぞれの道へ進み始めてから、少しずつ俺の生活も変わっていた。
サムは惑星防衛軍へ入るための訓練に本格的に取り組み、エミリアは宇宙港で両親の仕事を手伝い始めている。
二人と顔を合わせる機会は以前より減った。
それでも、俺自身の目標は変わっていない。
――宇宙へ行く。
そのために勉強を続け、身体も鍛えている。
そんなある日の夕方だった。
「カイル、今日はお客様が来るから、夕食は少し遅くなるわよ」
母さんにそう言われた。
「お客さん?」
「お父さんの仕事関係の方よ。デイビットさんっていう人」
「ああ……」
名前を聞いて、以前父さんの仕事場で見かけたことを思い出した。
デイビットは父さんと同じ金融関係の仕事をしている人だ。
その程度の認識だった。
夕食の時間になると、デイビットが家へやって来た。
「久しぶりだな、カイル」
「こんばんは、デイビットさん」
「大きくなったな。もう十三歳か」
「はい」
デイビットは笑いながら俺の頭を軽く撫でた。
夕食の間は、特に変わった話はなかった。
学校のことや最近の生活のこと。
そして、俺が今でも宇宙へ行くための勉強を続けていること。
「まだ宇宙へ行きたいと思っているのか?」
「もちろんです」
「変わらないな」
デイビットは楽しそうに笑った。
俺も笑って返した。
そのときは、それだけだった。
夕食が終わると、俺は自分の部屋へ戻った。
しばらくして、水を飲もうと廊下へ出たときだった。
リビングのほうから、父さんとデイビットの声が聞こえてきた。
「最近は大きな案件が続いているな」
「ああ。特に例の産業機械メーカーの件は、金額が大きい」
「申し込みの内容は?」
「運転資金だ。工場の稼働や材料の仕入れに使うという話になっている」
「審査は?」
「まだ途中だ。提出された資料を確認しているところだよ」
「融資の実行は?」
「審査が終わってからだな。問題がなければ、その後に手続きを進める」
「分かった」
そこで話題は別の案件へ移った。
俺は廊下で少し立ち止まったものの、それ以上聞くことはしなかった。
父さんの仕事の話だ。
俺が口を挟むようなことではない。
そのときの俺には、特に気になることもなかった。
運転資金。
融資。
審査。
どれも父さんから以前聞いたことのある言葉だった。
俺はそのまま部屋へ戻った。
数日後。
母さんと街へ出た帰り、俺は大きな工場の前を通った。
「あれ?」
俺は足を止めた。
「どうしたの?」
「……ここって、前に父さんが話していた会社じゃない?」
工場の看板を見る。
確か、あのとき聞いた産業機械メーカーの名前と同じだった。
「そうね。大きな会社よ」
母さんはそう答えた。
俺は工場のほうを見た。
何台もの輸送用車両が出入りしている。
作業員たちが荷物を運び、工場の奥では大型の機械が動いていた。
特に珍しい光景ではない。
大きな工場なら、これくらい普通だろう。
そのときだった。
近くを通った作業員たちの会話が耳に入った。
「今日の分はもう終わったのか?」
「ああ。あとは積み込むだけだ」
「また外に出すんだろ?」
「そうらしい。明日の便だってさ」
「最近、多いよな」
「仕方ないだろ。上から言われてるんだから」
二人は歩きながら話を続けていた。
「しかし、あれを作るのも大変だよな。うちの本来の製品じゃないのに」
「知らねえよ。注文が来てるんだから作るだけだ」
そのまま二人は工場の中へ入っていった。
俺はしばらくその場に立っていた。
「カイル?」
「あ、ごめん」
母さんに呼ばれて、俺は歩き出した。
その途中で、ふと思い出した。
数日前に聞いた父さんとデイビットの会話。
あの会社は、工場の稼働や材料の仕入れなどに使うための運転資金として融資を申し込んでいる。
でも――。
「本来の製品じゃないもの……」
小さく呟いた。
もちろん、それだけなら何もおかしくない。
新しい製品を作ることだってある。
他社から注文を受けて、普段とは違うものを作ることだってあるだろう。
それに、惑星外へ荷物を送ることも珍しい話ではない。
ライロスには宇宙港がある。
企業が商品を他の惑星へ出荷するのは、ごく普通の商取引だ。
だから、この時点では何が問題なのか俺には分からなかった。
ただ――。
少しだけ気になった。
家に帰ると、俺は机に座った。
そして、いつも使っているノートを開いた。
そこへ今日見たことを書き込む。
『産業機械メーカー』
『運転資金として融資を申請中』
『通常とは違う製品を作っているらしい』
『惑星外へ出荷する予定がある?』
そこまで書いて、ペンを止めた。
「……これだけじゃ、何も分からないな」
俺はノートを閉じた。
今の俺には、推測しかない。
証拠もない。
それでも、頭の片隅に小さな疑問が残った。
その会社が何を作っているのか。
なぜ、それを惑星外へ運ぶのか。
そして――。
運転資金として申請している融資と、何か関係があるのか。
まだ何も分からない。
だから俺は、しばらく様子を見ることにした。
このときの俺は、それが後になって父さんの仕事と繋がっていくなんて、考えてもいなかった。
数週間後。
その会社への融資が正式に実行される日が来る。
エドワードは、いつものように最終的な記録を確認していた。
融資額。
契約内容。
資金用途。
そして、関連する記録。
「……ん?」
そこで、エドワードの手が止まった。
画面に表示された記録と、手元の資料。
同じ案件を示しているはずなのに、一部の情報が一致していない。
「これは……どういうことだ?」
エドワードはもう一度、記録を確認した。
見間違いではない。
融資実行直前になって、記録の一部に不自然な違いが生じている。
エドワードは画面を閉じなかった。
そして、静かにもう一度最初から記録を確認し始めた。
その頃の俺は、そんなことが起きているとは知らなかった。
俺が抱いた小さな違和感と、父さんが融資実行の日に見つけた不自然な記録。
それぞれ別の場所で生まれた二つの疑問が、やがて一つの事件へと繋がっていくことになる。