転生魔王が召喚されたのはどうやらソシャゲの世界らしい 作:石鹸枠好きの翁
リリステリア王国。
かつて魔王と敵対していた勇者を育て上げたエタニティという世界においての強国の一つ。そんな国の王城の一室にて、一人の少女が書類と顔を見合わせていた。
「……ミュルクヴィズの樹海で古龍が目覚めたの?」
「レイナ様。報告の通りです。周囲の魔物が消えて、森が広がっているので間違いないかと」
報告を受けたのはレイナ・リリステリアというこの国の第三王女だ。
齢十六という若さで騎士団の団長を任されている彼女は、信頼できる副団長からの報告書に目を通し、ミュルクヴィズという森の事を思い返していた。
ミュルクヴィズの樹海。
それは暗き森、もしくは黒い森と呼ばれているあまりにも巨大な森の事。
樹海には数多くの巨狼や大鷲そして巨人などの化け物がいて、人類が未だに攻略が出来ていない不可侵領域ともされる迷宮だ。
単純に生息している魔物が有り得ないほどに強く、何より広すぎるあまりに一度迷えば抜け出すことが出来ない古龍が住むとされるダンジョンともいえもの。
「急行するわ――貴方は騎士団を編成して、後から来てちょうだい」
淡々とした口調で冷静に。
だが、彼女の内心は穏やかではなかった。
かの古龍の住居には人を飲み込める巨狼に羽ばたけば街を飲み込める程の風を起こせる大鷲がいる。相当な距離が離れているとはいえ、それらの存在からすればこの距離は些事。古龍が目覚めたせいで逃げてきて王都まで来て暴れられれば大惨事となり、民に被害が及ぶ。
「一人で行かれるのですか?」
「えぇだから森の外で入り口の封鎖をお願いね」
騎士団の編成にも時間がかり突如として発生したこの異常事態の事を考えると時間がない。独断とも言えるその選択、本来ならば部下として止めなければいけないが、彼女の実力を知っていて、誰よりも信頼している副団長は彼女を見送った。
「流石は邪神を討伐したリリステリア王家の姫……永遠にお供します」
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ミュルクヴィズの樹海に足を踏み入れたレイナは、細剣を腰に差しながらも周りを警戒しつつ歩く。常時ならば魔物に襲われるだろうこの樹海でここまで生き物の気配がないという事はやはり、古龍が目覚めたからだからだろう。
古龍とは龍の上位種。
ただでさえ龍という幻想の頂点である魔物が長い時を生きてより強くなりそう呼ばれるように成った存在。
……そんな存在に出会って勝てるのだろうかと、僅かな不安がレイナの頭を過った――そんな時。
「ワイバーン多過ぎぃ! 流石にきりないって!」
「エト様に抱えられるなんて、わたくし幸せ者でございます」
目の前を高速で少女を脇に抱えた人影が過った。
かろうじて見えたのは切羽詰まった様子の濡羽色の髪をした男性と……その脇に抱えられとても恍惚と幸せそうな顔を浮かべる亜人の少女。
「ちょあんた!? そこいると危険だぞ!?」
どうしてこの森に人がいるのだろうと彼女が思うのも束の間、彼等の後ろから飛竜の群が現れて……彼等がかなりの危機に陥っている事を知った。
「っ加勢するわ」
持っていた剣を構えて、レイナはワイバーンに向き直る。
獲物に対する執着が凄まじいこの魔物、この辺りには生息していないはずの化け物がいる理由を考えなければいけないが、今はこの二人を助けるのが優先だろう。
正義感が強い彼女はそう考え、ワイバーンの群の突貫した。
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「助けてくれてありがとな」
目の前で討伐されたワイバーンの群れ、なんか急に加勢してくれた少女の事を観察しながらも俺は礼を伝えた。
「貴方こそ怪我がなくて良かったわ」
白銀の少女、そんなイメージが出来るようなその髪色の彼女はレイピアを腰に戻し、俺達の安全を確認してくる。
「ねぇ、どうしてこの森に?」
「えっと、田舎から王都に向かう近道だって聞いたから……渡ろうと思ってさ」
一度撒いた時に見たティアが持っていた古い地図にはこの森の出方が書いてあったからそう伝える。嘘ではないがそれを聞いた彼女が本気で心配してるかのような声音でこう告げてきた。
「確かにそだけど命知らず過ぎるわよ。しかもこんな時に渡ろうとするなんて」
何かと思って聞いてみれば、この森に住んでいるという古龍が目覚めているらしく異常事態が起こっているとのこと。そしてその調査に来ていることを聞いた。
あぁだからあんなにワイバーンに襲われたんだなとか呑気に思いながらも、運が悪すぎるだろと心の中で愚痴を吐く。
「仕方ないから私が案内するわ」
「いいのか? ……さっきの聞くに任務かなんかだろ?」
「そうよ、けど民間人を放置して任務を優先するなんて出来ないから」
相当真面目……というかお人好しの少女なんだろう。
今時の基準なんか分からないが、俺が生きていた時代でも見ないぐらいの少女。情報を聞く限り危険なこの森で、素性不明の俺等を案内しようなんてお人好しすぎる。
「あ、とりあえず自己紹介よね、私はレイナ。リリステリア王国の第三王女よ」
「……はい?」
「どうかしたの?」
リリステリア……その名前には心当たりがあった。
それはティナのような感じではなく、まじで知っているというか因縁深いというか、なんなら俺が生きていた時代の幼馴染の家名というか?
え、あいつ国を作ったのか?
知らんけど、は? 人が死んだ後に何をしてんの? 確かにあいつは傍若無人というか天上天下唯我独尊を地で行く上に自由と傲慢が服着てるような奴だったけどさ、王になってるのは何故? というかその視点で見ると確かに見た目が似てる。
「あの本当に大丈夫?」
「一……応? あ、俺はエトだ」
声が思わず上擦った。思わず変な反応をしてしまったが、あまりの情報に普通に頭が痛いというか、そんな感じ。
「それでそっちの貴方は?」
「……ウルティアです」
そして情報に脳を侵蝕されながらも、レイナさんがティアに名を聞けば彼女はとても素っ気ない態度で名前を返した。
見るからに不機嫌で、取り付く島もない感じに接するティア。
まだ出会って半日ぐらいだが、人懐っこそうな感じだったのにどうして急に?
「ウルティアね、よろしくお願い」
……ぷいっとティアが顔を背ける。
助けてくれた恩人にする態度ではないだろうが、急に変わった態度に違和感を覚えてしまい、俺はツッコむことが出来なかった。
「とりあえず森を出るわよ、外には私の部下が待機してるからそこまで案内するわ」