転生魔王が召喚されたのはどうやらソシャゲの世界らしい 作:石鹸枠好きの翁
レイナという少女に先導されながらも、俺とティアは樹海を歩く。
今分かってることと言えば、彼女が勇者様……もといかつての幼馴染の子孫? の可能性があることと、今なんか古龍が目覚めていて危険だという事。
異種族を率いた魔王としての俺の名が何処まで残っているか分からないが、勇者であったあいつとは結構敵対していたしどう伝わってるか分からない。だからこそ、名前は名乗るにしてもこいつの前で魔法を使うのは止めた方がいいだろう。
「それでエトとウルティアだったかしら? 貴方達はどういう関係なの?」
「答える必要がありますか?」
「別にいいけど、気になったの。エルフと人間のコンビなんて珍しいでしょ? それにかなり仲が良さそうだもの」
「……ガイド役そしてエト様の従者です」
相変わらず不機嫌そうだが、その言葉で雰囲気を微かに和らげたティアが答えればレイナは何かを察したかのように微笑んだ。
「へぇ、だから機嫌悪いのね」
「何が分かるんですか?」
「要は案内役とられて不服なんでしょ? 無表情でじっと見てるから何かと思ったけど、可愛い理由で安心したわ」
あ、そんな理由だったんだ……とか思って横を歩く彼女を見れば、目を丸くしたあとすぐに相手を威嚇するように睨むティア。
「エト様、わたくしこの方が嫌いです」
「役目をとって申し訳ないけど、流石に今の状況で二人だけなんて出来ないわ」
「むぅー……ほんと嫌いです」
「どうどうティア、一理あるし受け入れようぜ?」
宥めながらも、俺はそういえばとどの古龍が目覚めたのかを聞くことにした。
古龍と呼ばれる存在ならば俺が生きて時代にも生きてた可能性があるし、可能性として俺の知り合いの説がある。
今の世界の事を知るためにも、情報はあるに越したことがないし知っておきたかったから。
「なぁレイナ、ここにいる古龍ってどんなのなんだ?」
「……それも知らずに入ったわけ? まぁいいわ、ここにいるのは樹海の主である森の龍王シルヴァレウスよ」
「へぇー、そんなのいるんだー」
なんかめっちゃくちゃ知り合いだった。
というかそいつ部下で笑えない……へぇーあいつまだ生きてるんだ。古龍って呼ばれるまでに成長したというのはなんか嬉しいし、元気にやってそうでよかった。
眠るのが好きで花が好きで、皆と笑い合うのが誰よりも好きだったそんな優しい龍であったあいつが、こうして自分の住処の森を作ったのなら喜ぶべきだろう。
「田舎って聞いてたけど、かなり世間知らずなのね。シルヴァレウスと言えば神話の時代から生きる龍で御伽噺でも良く聞きでしょう?」
「……まあ殆ど知らないな、とにかく話してくれて助かったわ」
これ、挨拶しに行った方がいい気がするが彼女と行動してる現状では会いに行けそうにない。まぁそもそもこの森阿呆ほど広そうだし、見つけるのはムズそうだけど。
「にしても変ね、本当だったらもっと魔物がいるのだけど」
警戒しつつ、レイナは言った。
この森の事は分からないが、確かにさっきから魔物の気配が一切ない。
それこそ不自然な程に生命の気配がなく、魔物以外の動物の気配もゼロ。
……この森を逃げ回っていた時は会ったはずの気配すら感じず、俺が不思議に思っている不意になにかの気配を感じた。
地面を伝うようにしてなにかが集まり、目の前で黒い根が人型を形作る。
それはシルクハットを被った胡散臭い男。見た目は人、だけど顔には鱗が見えて金の瞳は爬虫類の様にも見えた。
「――おや、これはこれはまさか本当に釣れるとは」
「貴方、何者?」
「ふふふ、お初にお目にかかりますリリステリアの姫よ――ワタクシは魔王様率いるエンネアの幹部【森王】シルヴァレウス。僭越ながらにこの森の主を務めさせて貰っているものです」
綺麗に一礼し、とっても胡散臭く気色の悪い笑みを浮かべるそいつは確かに龍種ではあろう……そう思いながらもそんな急に現れそう名乗った男を、俺は無表情というか死んだ目で観察する。
「……この魔力、嘘は言ってないようね」
「えぇ、それよりワタクシと共に来ていただけますか?」
「嫌よ、私ナンパしてくる男嫌いなの」
「そうですか。ですが、この二人がどうなってもいいのですか?」
なんか感情が死んでいると、いつの間にか俺とティアの首元に木の根が向けられていた。それはかなり鋭利で簡単に首を貫けるような代物だ。
「貴女でも私が支配する森の中で、二人の人質がいる状態では戦えないでしょう?」
「……脅してるつもり?」
「いえ、これはお願いですよ。ただ一緒に来てくれるだけでいいのです」
「――わかったわ、その代わりその二人を外に案内してからよ」
「流石は姫君、物わかりが良くて助かります」
そんなやり取りが行われてるのを見終えて飽きた俺は自分でもびっくりするくらいに呆れた声音で話しかけた。
「なぁ、お前誰だよ」
「……急になんですか、いまいいところなんですが」
「いや、答えてくれよマジで誰だよお前」
「もしかして死の恐怖でおかしくなりましたか? 言ったでしょう、ワタクシはシルヴァレウ――!」
「名前騙るならもっとあるだろ、本当に誰だよお前さ」
案内される中で聞いた懐かしい名前。
あいつが生きてるって知って嬉しかったし、会えるかもと楽しみにしてた。で、それから少しして現れたこれに、俺の感情は死んだのだ。
冷たい感情、まじでテンションがだだ下がりだし、それのせいか俺の魔力が少し漏れて、首に突きつけられていた木の根が朽ちていった。
「――はぁ、本当は魔法使ったら駄目だしさ。正直、やり過ごそうとは思ってたんだけど、そこまでお前が頑固に騙るなら仕方ないよな」
「だから、何を――ッ!?」
相手は俺が発していた魔力に気付いたんだろう。すぐに臨戦態勢に入り、足下から無数の根を生やして俺を刺し殺そうとしてくる。
だけど、それじゃあ駄目だ。
近づいた根は一瞬で朽ち果てて、俺に辿り着く前に消えてなくなった。
「おい、龍になってくれ」
「――お前は、何者なのですか!?」
さっきとは逆転した質問。
この男はあいつを騙るなら、それくらい吐き通して貰わなきゃ困る。だから、俺はせめて本来の姿に戻るように促した。
「だから、さっさと龍に戻れよ」
「――ッその選択を後悔しなさい、お望み通り殺してあげましょう!」
相手の躯が膨張する。
周囲から木の根が集まって自身の体を貫いたかと思えば、中から巨大な体躯の龍が姿を現した。数十メートルはある化け物は俺達を見下ろしながらもブレスを吐いてこようとするが。
「【フォールンダウン】」
俺は一言だけ魔法を唱え、その巨体を重力で押し潰すと同時に塵に帰した。