「テン?…てーん!」
「ん……はい…おはようございます…」
私は新入社員である、テンを起こした。
現在テンは家を持たないため、事務所に寝泊まりと言った形で住んでいる。
最初はかなり遠慮していたが、1度受け入れたら申し訳なさそうな顔はされるが、それなりに無遠慮に使えていて安心だ。
「さーて、テンっ!今日は何するか、分かっているわねっ!」
「っ!はいっ!今日は……!なんでしたっけ?」
「そう今日はっ!てっ…えぇ!?ショッピングよ!新人歓迎会よ!!服とか買わないとでしょ!」
まぁ昨晩のテンはかなり疲れていて、ウトウトしている時に話した内容なので半ば分かってはいた為言葉ほどの驚愕はない。
何故ショッピングなのかは単純で、いつまでもボロ布一つ着させるわけにはいかないし、新人歓迎会ということで今日という一日を楽しんで欲しかったからだ。
「多分もう少ししたらあの子達も来ると思うから、先に朝食でも取っちゃいましょうか!」
「っ!!!はいっ!!!!」
「ふふ、本当に食べるのが好きね」
「…あはは」
照れ隠しをするかのように、はにかんで笑うテンを連れて、昨晩座らせたソファの上に座らせた。
昨日の今日で治るわけがないとは思っていたが、テンの体調はあまり良くないように思える。
目の下にクマのようなものが薄っすら見えるし、元気な様子ではあるがどこか無理をしているのが分かる。
その他にも体調が悪そうな動きを見せる時が度々見受けられるため、今はとりあえず沢山食べさせて沢山栄養を取らせるべきだと思う。
「ほら、用意できたわよ」
「…ゴクン」
唾を飲み込む音が聞こえる。
そこまで喜んで貰えるのなら作る甲斐が有るというものだ。
「い、いただきます!!」
テンは昨日ほど勢いよく食べはしなかったが、素早く箸を動かし丁寧に食べている。
しっかり味わってくれているようだ。
「美味しいかしら?」
「ふぉいひいです!!」
……ふむ、恐らくなのだが甘い匂いが濃くなっているような気がする。
シャワーを浴びたあとからなのか、朝起きてからなのかは分からないが、甘い匂いが漂ってくる。
「ご馳走様でした!」
「相変わらず早いわね…お粗末さまでした」
思案する時間すらもないうちに食べ終わったテン。
この子がいる時は退屈はしなさそうだなとどうでもいいことを考えていると、扉が開く音がする。
「てんちゃーん!」
「んわぁ!!」
飛び入ってきたのはムツキであった。
走った勢いそのままにテンの方に飛び込むムツキ、それを支えるように振り返り抱きしめ返すが勢いを殺しきれなかったテンはソフォに倒れた。
「わわっ、ごめんね、少し勢いつけすぎちゃった」
「こーら、ムツキ、まだテンは病み上がりみたいなもんなのよ?」
「はーい…ん、昨日より少しは体調良さそうだね?」
「そう…ですか?」
「うん、まぁでも、その状態がデフォルトなのかな?」
「病弱みたいじゃないですか」
「あはっ、あながちそうなのかもね?…すんすん、相変わらず甘い匂いするねぇ〜少し濃くなった?」
ムツキも同じことを思っているらしい。
ボディーソープだとかそういう外付けのものではなく、体質的なものなのかもしれない。
「カヨコ達は?」
「外で待ってるよ」
「あら、もう来てたのね。一緒に来ればよかったのに」
「少し準備するんだって」
「準備?まぁ、いいわ、それじゃあ行きましょうか」
私はテンの手を取り外へと歩き出す。
少しだけぎこちなく歩いているが、その表情はとても楽しげでこちらも嬉しくなるほどだ。
そして扉の先にあったのは…
「き、キャンピングカー…!?!?」
「くふふ、びっくりしたでしょ」
「な、なんでキャンピングカーが…か、買ったの!?」
「な訳ないでしょ」
その疑問に答えたのはカヨコであった。
「先生に電話してみたら、知人からキャンピングカーを貸してあげるって言われてね、断る理由もなかったから、借りてきちゃった」
「か、借りてきちゃったって…」
「いいじゃん、帰りにでも焼肉パーティーでもしちゃう?」
「そ、そんなお金ないわよっ!?」
「そんなこともあろうかと」
「そうなこともあろうかと!?」
「昨日帰りに使ってた戦車売って高いお肉買ってきたよ」
「な、な、な、なんですってぇぇぇ!?」
う、売ったって…確かに昨日外に出た時に戦車無くなってたけど、売りにいってたの!?
「ちなみにこれでお金は使い切っちゃった」
「ど、どんだけ高いお肉なのよぉ…ま、まぁいいわ!新人祝いよ!!いくらでも奮発してやるわっ!!」
「さ、流石です!アル様っ!!」
キャンピングカーの中からハルカが出てきた。
「て、テンさんこれをどうぞ」
「これは…服?」
手渡されたのは白い洋服と黒いスカート、洋服の方はかなり大きく、スカートの方はかなり短かった。
「す、すみません、スカートの方は急遽用意した私のモノで…洋服の方はキャンピングカーの中にしまってあったものです。」
「失念していたわ。このまま行かせるところだったわ」
テンの服は以前のようなぼろ布では無いものの大きめのシャツと黒いズボンと言った簡素的に見繕い着合わせが合わない不揃いな服装だった。
「じゃあ、少し着替えて来ますね」
「ええ、行ってらっしゃい」
テンは着替えるため駆け足で事務所に戻って行った。
「それで、どうだった?テンちゃんは」
「…少しだけおかしいかもしれないわね」
「お、おかしい…ですか?」
「ええ、体調が悪そうなところは昨日の今日だからそう簡単には治らないのは当然だと思うけれど…」
「甘い匂い?」
「そうね、時間が経つにつれて甘い匂いが濃くなっているように感じるのよ。」
「明らかに不自然、少なくとも一週間以上はあの町外れの廃墟にいたのなら、体を清めれるはずがない。体質だとしても、それ以上の何かがあると思う」
「そ、それに変な気分にさせてきます。」
「くふふ、悪くない感覚だよねぇあれ」
「本人は気づいていないようだし、悪い子じゃないことはすぐに分かる子だから、危険な物ではないと信じたいけど…」
しばらく皆で悩んでいるとガチャリと扉が開く。
テンが先程の服装を着ていたのだが、思った以上に洋服の方が大きく膝上まで垂れ下がっていて手のある部分は本来肘あたりの所に位置していた。
「えと、その、や、やっぱ、おかしい…ですよね?」
「……まぁいっか、甘い匂いだのなんだのって」
「そうね、分からないものは分からないっ!テンは私達の社員それだけでいいわねっ!」
「え?え?」
「可愛いってことだよテン」
「…はい?」
私達の顔を往復して見るテンの手を再び取り、キャンピングカーに乗り込む。
甘い匂いとかより先ずはテンの私生活での必需品の方が大事だった。
「本当にちっちゃいよね〜私と同じぐらい?」
「あはは、ほんのちょっとだけ気にしてるんですけどね」
「えと、き、気にすることないと思います。とても可愛らしいですから」
大きめなキャンピングカーを持ってしても流石に5人入るとなるとかなりぎゅうぎゅうだ。
「今回はよろしくお願いするわ、カヨコ」
「うん、任せて」
今回運転はカヨコさんがやってくれるようだ。
運転免許証があるのかどうか疑問なのだが、この世界では学生は運転できるものだと思いあまり考えないでおく。
「それじゃあ出発しよっか」
「はぁい!それじゃあテンちゃんはここに座ってね!」
「え?あっ、はいっ!」
そして座らされたのはハルカさんとムツキさんの間の席であった。
未だにこの顔面偏差値の高さに慣れておらず、内心あたわたしているが、便利屋に所属するのであれば慣れるしかないだろう。
そしてキャンピングカーは出発する。
「す、少し狭いですね…」
「座席は…まぁしょうがないね。元々3人用の中型キャンピングカーだったみたいだし」
「くふふ、じゃあこうしよっか」
「わっ!」
するとムツキさんが股の間に座ってきた。
確かにスペースは空くだろうが自分の心が持たないから是非ともやめていただきたい所存である。
「えっ…と」
「…嫌だった?」
「そ、そんなことはないですっ!」
座席のスペースが空くので是非ともやって欲しい所存である。
全く、少しでも困ったような表情を見せた自分に嫌気がさすこの頃であった。
前世に友達からムツキさんの話をしてもらったことがあるのだが、「メスガキみたいだね?」って言ったらムツキはムツガキだとバチボコに怒られた記憶が蘇る。
いつぞやの友達よごめん、今なら少しわかる気がするよ。
「……私…も」
「…え?」
「ハルカちゃん意外と大胆だよねぇ〜」
ボクを隅にまで引き寄せ手を握りながら密着してくる。
それを見たムツキさんはくふふと言った形で笑いながらとても愉快そうだ。
これ以上スペースを開ける必要はないし、自分の心の平穏が脅かされてしまうので是非ともやめて欲しい所存である。
「えと…ご、ごめんなさい…少しこのままで…」
「……フゥ…はいっ!もちろんこのままで大丈夫ですよ!!」
スペースが空けるだけいいので是非ともやって欲しい所存である。
いやはや、とても困ったような表情を見せた自分にとても嫌気がさすこの頃であった。
なんなんだろうこの可愛い生き物は…
「何やってるのよあなたたちは」
「あ!アルちゃん!」
「す、すみませんアル様」
「あれ?カヨコ…さ…ん?」
そこに居たのはアル社長と運転手であるはずのカヨコさんの姿だった。
「え!?運転は!?」
「あーそれがね。この車自動運転だったみたいでさ」
「じ、自動運転…?」
「運転し始めてすぐに自動運転に切り替わってさ、最初ハンドルが勝手に動くもんだからびっくりしたよ。」
きゃ、キャンピングカーに自動運転ってなに?
話では聞いてたけどブルーアーカイブってボクが思っている以上にかなり文明が進んでいるのかな?
「それじゃあお邪魔してもらうね。テン…立って」
「え、あ、はい」
カヨコさんに立たされる。
「よいしょっと、ほらテン座っていいよ」
「?…はい、失礼します」
普通に座席に座ろうとする。
「そっちじゃないよこっち」
指を刺されたところはカヨコさんの股の間だった。
「…冗談ですよね?」
「そう見える?」
「………座らせていただきます」
あの、なんでこんなに心開いてるのかな?
まだ出会って一日だけだと言うのに、何故だか皆体をくっつけに来る。
こちらの心臓が持たないので本当にやめて欲しい限りだが、カヨコさん達は先輩で自分は後輩なので断れるものも断ることができないので、大人しく座ることにする。
「これで社長も座れるね」
「貴方達はほんとにもう…テン、嫌じゃない?」
「いえ!そんなことは…ないですけど、少し恥ずかしいです」
「アルちゃんも来たらー?」
「せっかく空けて貰ったしね、それじゃあここに…」
右隣にアル社長が座る。
これで左にハルカさん下にカヨコさん前にこちらを向いきながら座っているムツキさん右隣にアル社長と言った布陣となった。
「くふふ、ハーレムみたいだねぇ」
「……」
「て、テン…さん?」
「…」
「て、テーン?」
「……」
「き、気絶してる…!?」
「はっ…!?」
「あ、起きた」
気絶してからしばらくすると飛び上がるように目が覚めるテン。
皆して親睦を深めようとしたつもりだったのだが、流石に私たちも反省して、カヨコと私は運転席側と助手席に座り直して、テンを横にしていた。
「えっと、もう着いちゃいました?」
「うん、ほんのついさっきね」
「えっと…もう大丈夫そうかしら?」
「え、あっ!はいっ!幸せすぎて飛んでただけですからっ!」
「なら…よかった?」
やけに自信満々に言い張るテンを尻目に外を見る。
今日は休日という事もあり学生達が大勢いるようだ。
なにかトラブルが起きなければいいなと思いながら、きっとそんなことは無いんだろうなという気持ちがあるのは流石キヴォトスだなと思ってしまう。
「じゃあテン、行こうか」
出発を呼びかけたのはカヨコだった。
テンの手を取り立ち上がらせキャンピングカーから降りていく。
少し遠くからテンを見る。
昨日の今日での判断だがテンはかなり不思議な存在に思える。
カヨコやハルカ、ムツキ達は初対面に対して邪険にするタイプでは無いが、簡単には心を許さないような子達だ。
ましてや便利屋に入れようなんて言葉はそうそう出ることはないというのに、会って間もなくすぐに向かい入れられた。
かと言う私もかなり心を許していることを認識している。
どこか惹き付けられてしまうのはどう言う事なのだろうか、見た目はかなり神秘的でこのキヴォトスでも屈指なのも認めるし、その性格もどこか放っておけないのも分かるが…
「アル様?」
「!…ど、どうしたの?」
「行かないのですか?」
「もちろん行くわよ、にしても、久しぶりに来たわね」
ここは、このキヴォトスで有名になるほどのショッピングモールでここら辺の知識が無い者も名前ぐらいは聞いたことがあるぐらいだ。
今回の目的はテンの歓迎会というのもあるが、1番の目的はテンの日用品を買うためである。
服なんてテンはボロ布一枚しか持ってないないし、ましてや下着などもないため早急に調達しなければいけない。
「っ…あ」
「て、テン…さん?」
目の前でテンがよろける。
まるでお酒を飲んだ酒飲みのような感じだった。
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫です、人混みに…慣れてなくて」
私の配慮が足りなかった。
そりゃあそうだ、あんな廃墟に一人でいた子にいきなりこんな所に連れ込むのだからふらつきもするだろう。
「なら、少しだけ…手繋ぎます…か?あ、い、嫌なら…いいんですけど…」
「え?だいじょ………いえ、少しだけ握ってもいいですか?」
「っ!はいっ!」
いきなりこんな所に連れてきたのは不正解だっただろうか。
ゆっくり人混みに慣れさせる為に近所で買い物をするべきだっただろうか。
「アル社長、気にしないでください。ここに来れて本当に嬉しいんです」
「え?」
顔に出ていたのだろう、心を見透かされていたようだ。
「久しぶりに…外の世界を知れましたから…」
「それ…ってどういう」
「あるちゃーーん!こっちこっち!!」
「そんなに声出さなくても聞こえるよムツキ」
すこし奥からムツキの声がする。
その方向を見ると高級ブランドで有名な所だった。
まさかと思い、少しばかり覚悟をしてムツキたちの所へ合流する。
「な、なんか高そうじゃないですか!?」
「え、ええ、この店はゲヘナ有数のお店だと聞いているわ。…値段も…」
「くふふ、アルちゃんにこれを見せてあげよう」
ムツキが出してきたのは1つのチケットだった。
「な、なにこれ?」
「くふふ…」
「クーポン券だよ、しかも数量限定のやつで4つ同時で買ったら90パーセントOFFなんだって」
「あー!私が言いたかったのにー!」
「な、な、なんですってぇぇ!!」
「本日二回目だ…」
誰しも驚きもするだろう。
どんな安物だろうと数万はする有名ブランド、それが90パーセントOFF、9割だ9割なのだ。
「ど、どこからそんなものを…」
「またまた先生なんだよねこれが」
「え?」
「先生が偶然貰うことになっちゃって使い所もないから使ってってさ」
「ふ、太っ腹の域を超えてないかしら先生…」
今度必ずお礼しに行かなければ行けないなと心に決めた。
キャンピングカーの件もこのクーポンの件も私達は本当に先生に助けられてばかりだ。
「皆さんならなんでも似合いそうですよね…」
隣にいたテンが突拍子もなく言う。
「いきなりどうしたの?」
「んえ?皆さんの服買うんですよね?」
「ん?テンちゃんの服だよ?」
「………え!?ボクの服なんですか!?」
ハッと気づいたように慌てふためくテン。
どうやら、私たち用だと思ったようで、4つ同時に買うという点で私たちだけで一品づつ分けると思ったらしく、その4つともテン用だとは夢にも思っていなかったようだ。
「で、でも本当に悪いですよ…」
「それじゃあテン、これから恩返しして貰えないかしら?」
「な、なにをすればっ!」
「元気な姿で居続けることよ」
「えっと…それは…」
「あなたが幸せなら私たちも幸せってことよ、約束できる?」
「…はいわか…りました」
どこか不安そうで納得がいっていないようだが、買ってもらうことには了承してくれた。
私達に負い目があるのか、どこか遠慮しがちだ。
「とりあえず色々見繕おっか」
「あっ、な、なら」
「まって!ハルカちゃん!…くふふ、いいこと思いついちゃったんだ私」
「嫌な予感が…」
「そんなんじゃないって!思いついたこと…それはね、テンちゃん着せ替え人形大会を開きますっ!」
「な、なんかテンで遊んでるみたいな名称になってない?」
「要は一番似合うやつを見つけたいってことでしょ」
「ぼ、ボクでいいなら…!す、好きにしてくださいっ!」
「なんだか誤解をうみそうなこと言わないで貰えないかしら!?」
という事で急遽開催された着せ替え大会。
テンはもう既に試着室にてスタンバイは済んでいる。
果たしてこの大会はいつ終わるのだろうか、服だけで今日が終わらないことを願う。
そして今大会のトップバッターはハルカであった。
ハルカから受け渡された服を着替える音だけが聞こえる。
「その…着ましたよ?」
「こ、これは…」
「なかなかの…センスだね」
「うん、驚いた」
最初の印象は透明であった。
ハルカが持ってきた服は白ベースの…いや白しか使われていない品々だった。
1番目だったのはXLサイズの白のフード付きのパーカー、そのパーカーは至る所にリボンや紐などで可愛く装飾をしており、首元にはヒートテックのようにぴっちりと肌に沿いながら顎下にまで伸びている。
袖の部分は異様に伸びていてどんな人でも萌え袖ができるし、テンの場合は手が完全に出ないようになっていた。
「ゆ、優勝候補ね…」
「アルちゃんもノリノリじゃん」
「か、可愛いです…」
「す、すごく勿体ないぐらいです。ありがとうございますハルカさん」
照れ隠しのようにシャーっと仕切りを閉じてしまったので次に移るとしよう。
初っ端から優勝候補…というか、テンはなんでも似合うのでどれも優勝候補となりえてしまう。
しばらく服とにらめっこしていたら集合を呼びかけられる。
次走を走るのはムツキであった。
「はいテンちゃん!」
「ありがとうございます、ムツ…っ!?ほ、本気ですか!?」
「絶対似合うからっ!」
「…スゥ…物は試し…物は試し…」
そんな風な会話が聞こえた少し後に仕切りが開く音が聞こえる。
ムツキが選んだ服装は斜め上であった。
「が、学生服!?」
「しかも超ミニスカ…」
「か、カヨコが言えることかしらそれ?」
「や、やっぱりちょっと…恥ずかしすぎかもですこれ」
テンが着ていたのは学生服、しかもゲヘナ生の物だ。
ところどころ改良が加えられていて、黒を基調とするゲヘナの制服を反転し白くなっているが、きっちりとしたゲヘナの軍服のような服装をベースにしており、1番目立つところはそのスカートであった。
白のミニスカ、股下までの丈が驚くほどないスカートであった。
全体的に白を使ってはいるがスカートの折れ目の間や円の先端部分などに赤色を使いお洒落に仕上げている。
「ゆ、優勝候補ね…」
「さっきと一言一句同じだよ社長」
「まけた…かもです…」
「ハルカは落ち込みすぎ」
「くふふ…」
ムツキが胸を張り自信満々な反面ハルカは膝から崩れ落ちていてなかなかカオスな状況を尻目に次に移っていった。
「次は私だね」
第3走者を走るのはカヨコであった。
「はいこれ」
「わぁ、かっこいい…」
「こういうのも似合うんじゃないかなって思ってさ」
「嬉しいですカヨコさんっ!」
仕切りが閉じられ着替える音がが聞こえる。
このままの流れで行くのであれば白ベースの服であろうか、テンの見た目上白で固めるのが無難だ。
「着替えましたよ!」
仕切りが開かれる
「ぱ、パンクだっ!」
「か、かっこかわいいですっ!」
カヨコが選んだのは黒を基調としたパンク衣装であった。
テンの白い見た目と黒の服の合い方は尋常ではなく前回までの衣装と負けず劣らずの最高の出来であった。
その特筆すべき点はあえてシンプルにしたであろう靴であった。
口まで隠すようにした襟の部分やゴテゴテとした装飾品が目立つため、塩梅を考えてのシンプルな黒の靴を選択したカヨコに驚愕を隠せない。
「ま、まけた…」
「ムツキ…!?」
「ま、負けました…」
「は、ハルカまで!?」
「にしても、本当になんでも似合うねテンは」
「そうですか?えへへ」
カヨコに頭を撫でられて嬉しそうにするテンと私以外が膝から崩れ落ちている。
色々と凄いことになってしまったが、遂に私の番が来てしまった。
ムツキやハルカ、カヨコ達が選んで発表してる間に頑張って考えていたのだが中々にいい案が出てこない。
「アル様…?」
「もしかしてアルちゃん…思いつかなかったりする?」
「そ、そ、そんな事ないわよ!ちょっと待ってないねっ!」
「図星だったんだね、社長…」
半ばやけくそ気味に、それでもって似合うやつを選びテンに渡す。
なんでも似合うってのがこんなにも困るとは思わなかった。
「着替えましたー!」
「どうぞー!」
シャッと仕切りが開く。
「こ、これは…」
「ご、ゴスロリファッションっ!?」
「さすがアル様です…これは…すごい」
私が選んだのはゴスロリと言われるロリータ服だ。
至る所にフリルやリボン、装飾品がないところを探す方が難しいほどに飾られてる服だ。
その装飾品に負けないぐらいテンの容姿は整っているので上手く調和できたと思う。
特徴はミニサイズの黒のバックである。
肩にかけて使うバックを手に持ち持ち運ぶというスタイルがゴスロリの良さを引き立てていた。
「こ、これは優勝者決められないね…」
「ここまで決められないのは初めてよ」
「似合いすぎるのが悪い」
「あ、頭が痛いです…」
「………あの、全員優勝じゃ…ダメですか?」
私たちが優勝者を決めようとしていると突如そんなことを言われる。
「えっと皆さんの特色を活かした服ってことです。それぞれから1着ずつ頂けないかなと…」
「テンちゃん…!」
「え?はいっ!」
「天才だよっ!」
ムツキが近づき手を握ってそう言う。
「というか人によっては4着超えてたしね」
「あっ、忘れてたわ」
「わ、私も…です…」
「ですので、ハルカさんから白のパーカー、ムツキさんから少し恥ずかしいですけどスカート、カヨコさんからは靴、アル社長からはバックを、買わせていただきたいです。」
私たちに異論はなかった。
その後テンに言われた服を試着室に持っていき着替えさせたのだが、とんでもなく似合っていた。
会計をする時に店員から少し騒ぎすぎだというお小言を貰ってしまったが、テンはとても気に入っているみたいなので本当に良かった。
その後は時間が押していたのでちゃっちゃと日用品を買い。
足りない分は近くのお店で買えばいいとなって、現在私達はキャンピングカーに戻ってきていた。
「ふぅ疲れたぁ」
「そうですね…人が多すぎました…」
「賑やかなのはいい事だけど、さすがに疲れるよね」
「あとは…焼肉…ですか?」
「あっ!そうだ!焼肉!バーベキューだよ!!」
「そうね。もうお昼だしどこかの川沿いにでも行ってバーベキューにでもしましょうかっ!」
「こんだけ奮発できるのは今日だけだしね」
「うっ…明日のことは明日考えればいいのよ!」
「だからずっと貧乏なんじゃないの?」
「アル様はそれでもずっとかっこいいですからっ!」
「励ましになってないわよ……ま、まぁいいわ!それより出発進行よっ!」
号令をかけ、自動運転を起動する。
これで勝手に川辺まで移動してくれるだろう。
「本当にすごいわね」
「うん、ミレニアムの技術を使ったものなんだって」
「確か…エンジニア部…だったかな?」
「エンジニア部…そんないい噂を聞かないけれど、製品は本物ね」
車は正常に動いている。
「焼肉楽しみだねテン」
「はいっ!楽しみです!」
「食べるの本当に好きだよねぇ〜太っちゃうよ?」
「…や、野菜食べますっ!」
「余計にじゃない?」
「テンさんはいつでも美しいです…!」
車は正常に加速する。
「おっもうそろそろ川辺だね」
「楽しみー!」
「じゅ、準備は出来てますっ!」
「もう纏めてる」
車は正常に更に加速する。
「ん?なんだか早くない?」
「気のせいじゃない?」
「いや、明らかに早いっ!?」
車は『正常』に加速する
「か、カヨコ!ブレーキブレーキ!!」
「もう押してる!!」
「まぁ、ショッピングモールで何も起きないなって思ってたけど…」
「ま、待ってくださいまだ加速してませんかこれ!?」
車は至って『正常』に加速する
「な、なんか手紙ある。」
「えーと…周囲に車や障害物がない時はロマンを求めてMAXスピードを出して止まります?」
「ロマンって何!?と、止まるってこのスピードで!?!?」
「も、目的地着きますっ!!」
車は至って『正常』に急停止をしようとしたが、止まり切れるはずもなく。
便利屋達は各々車外に放り投げ捨てられ宙を舞う。
今日は晴天だった、とても綺麗な青空と五人の美少女達。
かなり高く打ち上げられた彼女達は以外にも冷静、いや諦観していたのかもしれない。
「こうなることはわかってたけど…」
「あ、お肉川に落ちてる。」
「な、なんであなたたちはそんなに冷静なのよ!!!着地着地の準備ー!!!」
「アル様、また来世でもお仕えさせて下さいね」
「今世も随分と早かったなぁ」
「諦めないでぇぇぇ!?!?」
こうして新人歓迎会は幕を閉じるのであった。