Blue Archive Fam-made Gamebook ゲーム開発部と未完成のゲーム 作:瑠璃色ゲンソウ
ミドリ「もう少し下げて。……あ、そこ!」
アリスは指先の力を少し抜いた。持ち上がった歯車が下がり、ミドリの合わせた小さな歯車と噛み合う。
カチン、と小さな音がした。
アリス「宝箱、開きました!」
モモイ「獲得アイテム、ねじ三本!」
モモイが大げさに宣言する。ユズは笑いながら、動きをもう一度お願いした。
ユズ「強ければいいんじゃなくて、相手に合わせて力を変えるんだね」
扉が開いた瞬間、アリスは中をのぞき込んだ。ねじは確かに三本だった。光る宝石も、次の部屋へ進む鍵もない。
アリス「……本当に、ねじでした」
モモイ「レア素材かもしれないよ!」
ミドリ「勝手に持って帰らないでね」
アリス「はい。でも、宝箱を開けられたのは嬉しいです!」
ミドリも同じだった。大げさな報酬はなくても、自分の合図でアリスの手が動き、そのおかげで歯車が噛み合った感覚が指先に残っている。
ユズに頼まれて、もう一度箱を閉めた。今度はモモイが軽い方の取っ手を持つ。アリスは慣れたつもりで重い取っ手を引いたが、モモイはすぐに声を上げた。
モモイ「待って待って! まだこっちのが噛み合ってない!」
アリス「あっ、すみません! 今度はモモイの合図を待ちます!」
同じ教材でも、相手が違うと当然手を動かすタイミングが変わる。ユズは数字を書く代わりに、モモイがどこで止めてほしいと言ったかを記録した。
二回目に開いた時は、モモイが先に笑った。アリスもつられて笑い、支えていた手をゆっくり離す。
モモイ「こういうの! できたって、すぐ二人とも分かるのがいい!」
ミドリ「音も大事なのかな。さっき、開く音がした時にすぐ分かったし」
ユズ「うん。見てない方にも分かる音があると、遊びやすそう」
アリス「効果音なら、アリスが口で出せます! ガッチャン!」
モモイ「今のどうやったの!? だまされるくらい上手だったけど!」
ミドリは笑いながら、紙に大きな手を描いた。人の手をそのまま写すより、思いきってロボットにした方が力持ちだと伝わる。工具を持つ発明家は、ロボットの腰くらいの背丈にすると、並べた時に面白い。
モモイ「え、それロボット?」
ミドリ「うん。力持ちの方は、人の手より分かりやすいかなって」
アリス「では、小さい方が発明家ですね! 工具を持っています!」
ミドリ「いまはまだ、そう描いてみただけだけどね」
ユズは絵を見て、実物とゲームの違いを一つ付け足した。ゲームでは疲れないから、ロボットが支えるだけならずっと待っていられてしまう。
ユズ「待ってる間も、何かできた方がいいのかな。相手を見るとか、支える場所を変えるとか」
四人は教材を元どおりに戻し、動かした歯車を最初の位置へそろえ直した。ねじもしっかり元のように仕舞った。
ここでの経験は何枚かのメモになった。モモイは破らないよう、珍しく丁寧に鞄へしまった。
ユズは取っ手を引く強さだけでなく、二人が合図した順番も書いていた。モモイが何の記録か尋ねると、あとで同じ遊びを画面にしたいから、と答えた。ミドリはそのメモの横へ、支える手と工具を描き足した。
帰り道、ミドリが描いた二人組は、小さな発明家と大きなロボットになった。
ミドリ「この子が仕掛けを直して、こっちが支えるの。片方だけでは帰れない場所もある」
アリス「今度は発明家が助ける番ですね! ロボットを置いてはいけません!」
アリスが絵の二人を、指で順番にたどった。