俺ルール発動!日曜日は全てを無効化できる! 作:mashiyu
「なあサンデー、俺はガキの頃ずっと思ってたことがあってな」
「なんだよ突然。お前は相変わらずなんの脈絡もなく話しかけてきやがるな」
「なんで大人ってのは解がないことに拘るんだろうってずっと思ってたんだよ。決めちまえばいいのに」
「ガキの頃からお前は単純な頭してたのか?」
中々ウィットに富んだ返しだな。
「ハハッ、チビ。お前ほどじゃねぇさ」
「ぶっ殺すぞ」
「せっかく解がないなら納得がいくまで話したかったんだがよ。誰も付き合ってくれなかったんだ。まあ面倒だったんだろうな」
「俺様が付き合ってやってることに感謝しろよ」
「ありがとう日曜日。感謝するぜサンデー」
「俺を日曜日のついでにしてんじゃねぇ!」
「でも、別にそれが俺にとって悪影響だったかっていうとそうでもなくてな。そこで正解を決めなかったからこそ俺は色んなことができるようになった」
「周りの大人が示してやれば俺が付き合わされることはなかったのかよ…」
「なんだかんだ言って付き合ってくれて優しいね!」
皆俺のこと面倒くさがって付き合い悪いからな。
「チッ、嫌味が通じねぇのも厄介だな」
「まあ俺の言いたいことは人生に正解なんてない、っていうありきたりなオチじゃなくてな」
「お前独自の理論でまともなものが今まであったか?」
「まともじゃなかったが、上手くいったろ?それに、この結論があるからこそ俺はここまで来た」
「話を戻すと、俺は正解がないんじゃなくて全部が正解だと思うんだよ。俺が公道を時速200キロで走ろうが、その結果誰かを轢き殺しちまおうがな」
「…まさかお前がそこまで倫理観が欠如してるとはな。腐った社会のためにとっとと務所に入ってくれ」
「ハハッ、おもしれぇこと言うなチビ。比喩ってやつだよ。戦争ってのは人を殺しても正当化できる。それを正しいとか正しくないとか言ったって誰も気にしねぇ。皆わからねぇからだ」
「平常時と比較したら話が変わるからだろ?」
「そうだな。でもだからこそ俺は不正解の印を押してくるヤツが大嫌いだ。神でもなんでもないやつが正義ぶるのを見ると吐き気がしそうだ」
「お前に賛同するのは癪だが、それは俺様も同感だ」
「やっぱ俺達相性いいだろ?」
「へっ、つまんねぇジョークだな」
う〜んもっと鍛えないとか…
「だから正解なんて気にすんのはやめた。不正解もな。その時楽しめりゃそれでいいと思ってよ」
「物事を単純化しすぎじゃねぇか?」
「複雑に捉えると脳がエラー起こすんだよ。唯一の正解として組み込んでるのは日曜日が全てってことだ。俺はその理論に基づいてお前に出会った。なら、それはつまり正しかったんだよ」
「イカれてんのか?どんな理屈だ」
「日曜日は休みだ。休みということはストレスがないということ。ストレスがないということは俺は無敵だ」
「それなら土曜でもいいだろうが」
「土曜じゃ日曜には勝てねぇ。土星じゃ太陽には勝てねぇだろ?そういうこった。土星ジョークも程々にしてくれ」
「土星ジョークってなんだよ。いや、気にしたら負けか…」
なぜか知らないがサンデーが気落ちしてるな。
「まあつまり、日曜の俺は法律でも縛れねぇってことだ」
「…お前は俺様が見てねぇとすぐさま務所入りしそうだな」
「おっ、流石だぜサンデー。そういうってことは俺のブレーキになってくれんのか?」
「ブレーキだぁ?バカ言うんじゃねぇ。お前は言っても止まらねぇだろ?だったらアクセル踏んでトップスピードでぶつからせたほうが早い」
「やっぱりお前は最高だなチビ!」
「仏の顔も三度まで。てめぇの国の言葉だったな?てめぇがこれで俺様をチビって呼ぶのは三度目だ。最後の言葉くらいは聞いておいてやるよ」
「サンデー、今日は日曜日だ。最後にはならねぇさ」
「そんなジンクスぶっ壊してやんよ!くたばりやがれ!」
チビはやっぱり威勢がいい。ただ一つの正解は、こいつを選んだことだったな。
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俺は懐から煙草を取り出し火をつけた。
「吸うのも結構久しぶりな気がすんな」
煙を肺に入れ、吐き出す。銘柄はアメスピのオーガニックミント。たばこ葉がギッチリと詰め込まれており、助燃剤も含まれていない。燃焼時間が長くゆっくり落ち着いて吸える。
「メンソールが強すぎなくて程よいのがいいよな」
「ミントの香り…おい、タバコ吸ってんのか?」
いつの間にサンデーが来ていたらしい。気づかなかったぜ。
「おっと、悪いな。お前も吸ってみるか?」
そう冗談を言ってみたものの、サンデーはどこか悩んでいる様子に見えた。流石にチビに喫煙はさせられない。
「冗談だ。ミントが気に入ったんならそうだな…」
確か、ペパーミントキャンディを買ってあったはずだ。それを取り出し、サンデーに渡した。
「…悪くねぇな。サンキュー」
どうやら気に入ったらしい。ミントが好きとは、チビも案外大人なのかもしれない。色んなことがあったなぁ…
「サンデー、そういえば俺そろそろビザが切れるから日本に帰国しないといけねぇわ」
「あ?なんで今んなこと言うんだよ」
「前々から話してたろ?そもそも俺理由つけてこっちに来ただけだから所属はトレセン学園なんだよ」
「…どうにかなんねぇのか?」
まさかサンデーの方から引き留めてくるとは思わなんだ。う〜ん…チビからのお願いとは。
「いっそのこと不法滞在しちまうか?米2冠の日本人トレーナーが犯罪者になる。名実ともに俺は伝説だな!」
日曜日から祝日に変わっちまうかもしれねぇな。
「チッ、とっとと帰れ」
サンデーが冷たい; ;
「ま、あと少しすりゃお前もこっちに来ることになるかもな。そのときゃ偉大なる先輩の俺が迎え入れてやるよ」
「ああ、すぐに追いついてやるから待ってろよ。相棒」
「期待してるぜ、サンデー」
あれ、先輩っつったのに相棒は対等な存在として扱われてね?ま、いいか。日曜日だしな。
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「Japan as No.1!ついに帰ってきたぜ!あれ?日経平均株価が…ま、いいか」
アメリカの七曜表を全て日曜日にした俺は日本に帰ってきた。
「だが今日は月曜日。悪い予感がするぜ…」
サンデーがいない月曜日は日曜日でなく月曜日なのだ。
「にしても、相変わらず活気があっていいね。あっちも中々喧騒に包まれてたが、こっちは平和だ。ギャングとの抗争に巻き込まれてたときが懐かしいぜ」
日曜日の俺には銃なんて効かなかったが、あれは中々スリルがあった。
「そういやアメリカにいた頃、自販機に金吸い取られたからぶっ壊そうとしたら職質されたんだよな」
日曜日だったから新作のダンスの練習って言ったら見逃してもらえたが、後でサンデーにボコボコにされたぜ。チビも飲まれたとき自販機蹴ってたのに…
結構自信あったんだが、結局壊せなかったんだよな。2つの刃と2丁の銃を使った我が舞は見れば貴公らの心に響いたことだろう。
「まあサンデーに全部処分されたからもうできないが。やはり信じられるのは己の肉体。次はニンポでも習得してくるか…」
さて、そんなことを考えていれば理事長室についた。さて、最初のセリフは…そうだな。
「Celebrate Japan!!俺が帰ってきたぜ!」
俺は勢いよく入室した。
「歓迎ッ!!と言いたいところだが、ドアを蹴破ってくるのは勘弁してもらいたいところだ。トレーナー」
理事長は随分驚いた様子だ。ううむ、どうやらお気に召さなかったらしい。たづなさんはプルプル震えてるぞ。もしかしたら俺は殺されるかもしれない。助けてくれサンデー。
「まあ、多少のことは大目に見よう。我々トレセン学園一同は君の帰還を歓迎するぞ!よく帰ってきてくれた」
耐えたわ。流石理事長、身長の割に器がでけぇな。
「見てくださいよ理事長、このブラックアイドスーザンでできたレイ。中々イカしてるでしょ?」
バラのレイはサンデーに、ホワイトカーネーションはライバルに渡しちまったから、俺はこれしか持ってねぇが。
「感激ッ!しかし、そう易々と手に入るものではない。それは大切にしまっておいてほしい」
何回でも取ってやると言いてぇが、それはちょっと無理だな。サンデーは2人もいねぇし、理事長はやはり聡明だ。
「はぁ…トレーナーさんは相変わらずですね。理事長、そろそろ本題に入ったほうがいいかと」
「その通りだたづな。では改めて本題に入ろう。アメリカで2冠を取った君にはこれからもぜひ多くのウマ娘たちを導いてほしいと思っている」
なんか話長そうだなぁ…
「わかりました理事長!あざっす!失礼しやっす!」
「トレーナーさん!?もう少し話を…」
「しゃーす!しゃすしゃす!しゃっす!」
月曜日の俺は長話が聞けない。故に理事長室から出ていった。
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「おーん、暇だなぁ」
何しよっかな。あれ?あのウマ娘は!
「メージロさん!あーそびーましょ!」
「おや?あなたはサンデーさんの…」
チビと1回来たことがあったが、その時にメジロマックイーンと会ったんだよな。チビがガンつけてたらどつかれてたんだよ。それを見て俺とサンデーはマックちゃんを一気に気に入ったね。
「帰っていらしたのですね。歓迎しますわ」
う〜んこれは淑女ですわ。
「本当はもっと話したいところだけど色々やらないといけねぇからまた今度自販機狩りいこうな!」
「自販機狩りってなんですの!?」
そう困惑してるマックちゃんを横目に俺は次の目的地へ向かった。
「う〜んこんなもんか。よし、終わり!」
久々に帰ってきたトレーナー室は、想像以上に綺麗だった。どうやら誰かが掃除してくれてたらしい。今荷物を置き終えたのだが、なぜか足の踏み場がない。誰のせいだ?
「ま、別にいいか。よ〜し遊ぼ」
なにして遊ぼう。チンチロ?麻雀?丁半?それともルーレットか…う〜ん悩ましい。
「あぁ、そういえば日本だと違法賭博なんだった。Holy shit!これじゃあレイシストから巻き上げられねぇじゃねぇか」
巻き上げた金で吸う煙草が世界で一番美味かったのに。
「う〜ん…自販機狩りするか?」
いやしかし、流石にトレセン学園内の自販機はまずいか?
「いや!今日は月曜日!気が動転してたでいけるな!ヨシッ!そうと決まれば決行や!お前ら丸太は持ったか!時代はカラテよカラテ!バクシンバクシンバクシン!」
自販機に向かって爆進中…
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「ふぅ、走ったら疲れたぜ…お!こんなところに自販機があるな。何を飲もうかね…う〜んチェリオ?いや、辛口ジンジャーエールを飲もう。そうだ、それがいい。あ?んだよこれ…」
お金を入れたのに飲み物が出てこない。しかし、返金しようとしても金が出てこない。
「ザッケンナコラー スッゾコラー」
しかし、どれだけ呼び掛けても目の前の相手は返事をしない。
「シカト決め込んでんじゃねぇぞチンピラぁ!!」
絶対にこの邪智暴虐の自販機を許してはいけない。俺は何としてでもこれを破壊し、ジンジャーエールを手に入れるのだ。
「オラァ!!オラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
連打を浴びせたが、自販機はびくともしない。
「チッ、中々やるじゃねぇか…」
それからも攻撃を続けたが、ジンジャーエールが出ることはなかった。なぜだ、何が悪い…?まさか、俺が弱いってのか?そう思い始めたとき、俺は悟った。
「肉体?究極の武だと?バカを言え!そうだ時代は魔法だ!」
「ニンポだ、雷のニンポを喰らえ!サンダーボルト!」
しかし、自販機からジンジャーエールは出てこない。この自販機は電流が効かないらしい。オリハルコンでできてるのか?
「クソッ、MP切れだ…」
駆逐してやる…!!この世から、一匹残らず!
「どうしたんだい、トレーナーさん」
「この自販機が俺に喧嘩売ってきたんだよ!」
金を呑み込んだ挙句シカトを決め込むとは救えないやつだ。
「自販機が喧嘩を…?要するに、飲み物が出てこないってことかな?」
「ちょっとちげぇがまあそれでもいいや」
「うーん…他の飲み物ではダメなのかな?」
「俺は辛口ジンジャーエールが飲みたいんだよ」
あれ?そういえばこいつ、よく俺がトレーナーだってわかったな。てか、誰?
「誰だお前は!?」
「おや、自己紹介が遅れたね。私はフジキセキ」
「へぇ、フジキセキね…」
う〜ん聞いたことある気がするけどわっかんねぇや。
「トレーナーさんは随分気が立ってる様子だ。私には辛口ジンジャーエールを出すことはできないが、面白いものを見せてあげることはできるよ?」
「ほーん…どんなもん?」
「私の手元には今なにもないよね?ほら、手ぶらだ。でも?私がひとたび、指を鳴らせば―――3、2、1!」
「おお!すげぇ!!どうやったんだ?」
いつの間にかフジキセキの手にはチェリオがあった。
「あはっ、それは教えられないな。だって、これは魔法だからね。タネも仕掛けもないんだ」
「え?なんだよ魔法かぁ…魔法だったら俺も使えるぜ。はい今俺の手元には何もございません。しかし、俺がこの自販機を蹴ると―――3、2、1!」
「…おや?いつの間にか私の手にあったチェリオが辛口ジンジャーエールに…いったいどうやってやったんだい?」
「うわ!辛口ジンジャーエール!ありがとうフジキセキ!」
「えぇ…?ま、まあ喜んでくれたならいいのかな?」
辛口ジンジャーエールを一口飲んでみたが、チェリオのほうが良かったかもしれない。
「それで、なんでフジキセキは俺のことトレーナーだってわかったんだ?俺、今トレーナーバッジつけてねぇけど」
「そうだね…君が私の夢に出てきたから、かな?」
「わーお、ロマンチックだな。で、本当は?」
「おやおや、信じていないね?」
そりゃあそうだ。俺が信じているのは日曜日と自分の相棒だけ。他は全部虚構だもの。
「うーん、君からはなんだかミントの…いや、煙草かな?メンソールの香りがするね」
ウマ娘ってのは元々匂いに敏感だが、こいつは普通以上に鼻が効くらしい。ちゃんとケアしてるんだがな。
「やめてくださいそれゲノハラですよ!?」
そう言えばフジキセキは驚き硬直した。
「ま、もしそれが本当ならまた会うかもな。それじゃ!」
都合が悪くなった俺はクールに走り去った。
「行っちゃった…まだ話したかったんだけどな」
取り残されたフジキセキは1人揺蕩う。
「彼がいったい何者なのか、もう少し確かめてみないとね」
先程は夢と言ったが、厳密に言えば少し違う。夢にしては鮮明で、どちらかといえば記憶に近い。しかし、現状夢とする以外に説明のしようはない。
「聞き覚えのある声に、あの匂い。どうも夢には思えないんだよね。本当に不思議な人だな」
「にしても…ふふっ、ゲノハラか。夢の中の彼も、そんなことを言っていたっけな」
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「人は人生の大半を労働や学習に費やす。要するに、人は自由を得るために不自由を選んでいる。なんと愚かしいことだろう。お前もそう思うだろ?」
「あーはいはい。なるほどね」
「お前から呼び出しておいて随分冷たい対応じゃねぇか。アイスブレイクは大事だぜ」
「生憎そんなことしてる場合じゃなくてな」
「ふぅん。それで、何の用だ?」
わざわざ俺を呼び出しておいて大したことじゃなかったら次の自販機狩りの獲物にしてやろう。
「お前はサイレンススズカってわかるか?」
「うーん…わからんな。サイレンスねぇ…」
サンデーの親戚…いや、近縁種か何かか?
「普段は大人しいんだが、一度火がつくと中々止まらなくてな。今までに門限を何度も破っていてな」
「へぇ、ヤンチャじゃねぇか。普段大人しくしてるやつが実は一番やべぇってよくあるからな」
今までいったい何人を沈めてきたんだろうか?
「そういうわけじゃない。ただ拘りが強いだけだ」
「冗談だ。それで、今回の件とそいつがどう関係すんだよ?」
「元々そういう側面はあったが、最近は輪をかけて危なっかしくなった。1週間くらい前から夜になっても走り続けてる。あれでは体が保たない。どうにかならないか?」
どうにかならないかって、何言ってんだこいつ?
「はあ?俺はトレーナーで、お前は教官。先公が匙投げてどうすんだよ。職務放棄か?」
「無理を言ってるのはわかってる。だが、教官は職業上1人だけを見ていてあげることはできない。変な輩には任せられないし、優秀なトレーナーは皆忙しい。現状頼れるのがお前くらいしかいなくてな」
苦肉の策ってわけか。腹立たしいぜ。
「あんま言いたくねぇが、中央じゃ自己管理くらいできないと厳しいだろ。俺もわざわざ見捨てるほど鬼じゃねぇが、そこまで長くは見てやれねぇぞ」
「誰が見たってあれには才能がある。お前も見ればわかるさ」
「そんなゴロゴロ宝石が転がってるわけねぇだろ」
「そう言うな。あの子はお前からすれば面白い子だ。きっとお前なら気に入るだろう」
「月曜日にんなもん期待してねぇよ。はー、権利が義務にすり替わると途端に気分下がるぜ」
月曜日の大問題児ガチャは期待値低いんだよな…