ウマ娘から逃げる?そりゃ無理ティーダービーだろ 作:mashiyu
「クソ眠いわ。毎日起こしに来てくれる優しい人が俺にいたらもうちょい頑張れる気がするんだけどなぁ」
まあ3日目くらいで関係なく爆睡かます自信あるが。
「それでそれで、件の問題児さんはいったいどこにいるのやら…名前しかわかんねぇんだけど、仕事の回し方として不適切じゃねぇの?火曜日に許される所業じゃねぇぞ」
捜索は難航しそうだ。終わったらあいつに煙草3カートンくらい買わせよ。バレそうになったら全部なすりつけられるし。
「探すの面倒くせぇな。よし、あれやるか」
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
そう唱えると眩い光に包まれサイレンススズカが召喚…されなかった。
「ダメだったか…別のでチャレンジするか」
「来たれ 地獄を抜け出しし者 十字路を支配するものよ―――千の形を持つ月の庇護のもとに我と契約を結ばん!」
そう唱えると世界は闇に包まれサイレンススズカが召喚…されなかった。
「やっぱ火曜日はだめだな。水曜じゃないと」
「いや、でも水曜は真面目にやばいのが召喚されちまうか」
「もうめんどくせぇな。なんか適当に出てこい。サモン!サイレンススズカ!」
…ま、こんなもんで来るわけねぇわな。
「はっ、はっ、はっ……!!」
そう思った矢先、俺の目の前を時速2000キロくらいで走り抜けたウマ娘がいた。知らんけど。
「なんかわかんねぇけどあいつな気がする。俺の直感がそう言ってるぜ!」
あんまり離れられるとめんどくせぇな。
「そこの暴走車両止まりなさい!聞いてますか?聞いてるんですよね?止まれやゴラァ!」
「はぁ…はあっ…あら?」
「将軍様よりこのトレセン学園の風紀を乱す輩がいると申しつかって見てみれば、そちは随分大人しそうな見た目ではないか。普通を装って代官の手から逃れようとは小賢しいやつよ。さてこの悪人、いったいどうしてくれようか。しかし、話も聞かずして斬り捨ててしまってはトレ公の名が廃れよう。狼藉者よ、何か申し開きがあれば話してみい」
「えっと…」
ふむ、伝わらなかったらしい。
「単刀直入に聞こう。お前が先頭民族サイレンススズカだな?」
「ウソでしょ…私ってそんな印象なの…?」
「自覚がないとは驚いたな。しかし、自らを俯瞰して見るのは中々に難しい。気に病む必要はない」
「フォローになってないと思うのだけれど…?」
「私がここに来たのは最近になって貴公が休むことも知らず走り続けて心配だと言われて来た。故に何故そこまで走るのかを聞かせてくれないか?」
「コロコロ口調が変わるのね…私が走るのは、先頭を走りたいから。誰もいない景色に、辿り着きたいの」
おーん?思ってたのと違うな。もう少しこう、漠然とした不安を感じているのかと思っていたんだが、気の所為だったか。ま、どちらにせよ掛かってはいるな。
「時は移ろい、季節は巡る。
花は散り、人は老いる。
咲き誇る花が土に還るように。
過ぎた花弁は戻らない。
故に、人生とは。
その先に待つものを受け入れる旅と見たり」
「???」
「散ったか、散っていないかなんて時の前では些細なこと。生命が廻る限り、花は散った後が最も長い。形を変えて生き続けるからだ。今、それらを捨てて全力投球することは美しく見える。だが、お前にそれを受け入れることが果たしてできるか?」
「………」
「スズカ。焦る必要はない。もし枯れてしまったなら、俺が枯れ木に花を咲かせてみせよう。だから、深く息を吸うように。大きく息を吐くように、心を構えておけ」
「トレーナーさん…」
「お前の得意なことをやれ。定型に縛られる必要はない。だが余り変なことはするなよ。お前を心配する奴がいるからな」
やべぇめっちゃ煙草吸いたい。もういいよなこれ?
「じゃあな。あんまり俺の仕事を増やすのは勘弁な!」
それだけ言って俺はその場を離れた。
「ふふっ、あの人も変わらないわね」
何か大切なものを失ってしまったような気がして、漠然とした不安感を解消するために走っていたけれど…
「その必要はなかったのね。むしろ、トレーナーさんの方から来てくれるとは思わなかったわ」
同じ景色を見た彼と、もう一度出会えるなんて。
______
「はー疲れたぜ。火曜日に仕事なんかさせんなよな」
「火曜日なら仕事をして然るべきだと思うが?」
「せっかく受けてやったのになんだぁ?殺すで?」
「お前がアメリカに行ったときに金を貸してやったこと、忘れてないだろうな?」
「ヘヘッ、冗談ですよ。アメリカンジョークでさぁ」
恩というのは金より重い。めんどくせぇ!
「まあこれでチャラだ。そういえば、お前はアグネスタキオンを知ってるか?」
「アグネスタキオン?なんだそれ。アスタキサンチンの親戚か?赤くなりそうだな」
「語感以外何も似てないだろう。ウマ娘だよ、ウマ娘」
ウマ娘ウマ娘って、なんだこいつ。ロリコンか?
「いちいち覚えてるわけねぇだろ?帰ってきたばっかだぞ」
「何かと有名なウマ娘だからな。お前でも知ってると思ったんだが、違ったらしい」
「ほーん?どんなウマ娘なんだ?」
「旧理科準備室でなにやら怪しいことをしてるらしい。そのせいか何かと敬遠されてはいるが、その実力は超高速の末脚とさえ呼ばれていんだが…退学になるって噂でな」
「退学だと?マジかよ、俺が池の水全部抜いた時だって停学で済んだのに。最近は厳しくなったねぇ」
「何をやってんだお前は…?再三言われたレースに出走もせず授業にも出ていないからな。まあ、仕方がないだろう」
むむ、気になるな。さっきのサイレンススズカも中々面白いやつだったし、もしかすればもしかするかもしれん。初回SSR確定的なあれだ。
「俺は正義のトレーナーだから捨て置けねぇな」
「意外だな。自分から首を突っ込みに行くのか?」
「人生受動的に生きるのってよくないと思うんだよね。やっぱチャンスってのは行動するやつにこそ現れるもんだ」
「まあ積極的なことはいいことだ。頑張れよ」
SSR大問題児を確保しに行くぜ!
________
「旧理科準備室はここか…」
なんか雰囲気やばくて草絶対悪魔召喚とかやってるわ。これは取り締まらなければ。
「御用改である!手向かいすれば容赦なく斬り捨ててくれよう。神妙に縄に就け!」
「おや、突然勢いよくドアを開けてくるから誰かと思えば、君か。いったいなんのようかな?」
「将軍様の命によりこのトレ公が参ったぞ!貴様、なにやら怪しい実験をしているようだな?それにこのトレセン学園から去ると聞く。もしや不審なことを考えているのではあるまいな」
「酷い言いようだねぇ。私は大人しく去ろうとしているだけだというのに」
怪しさマックスだな。ドグラ・マグラ読んでるタイプだ。
「ええい、面倒なやつだ!ではトレ公が訳を聞いてやろうではないか。何故貴様はここから去ろうというのだ!」
「なに、簡単な話さ。研究に邪魔だから授業に出ず、研究に邪魔だから担当トレーナーを持たなかっただけのこと。この学園にいる意味も薄いと感じてね」
うーん、わかるようでわからんな。
「授業に出ないのは分かる。俺も学生時代は授業をサボって学校中の時計を弄って時間を支配していたからな」
「それはどういう理由があるんだい?理解できないねぇ…」
「だが担当トレーナーが邪魔というのはわからん。干渉して来ない奴を探せばいいだけだろう」
「それではいないのと一緒さ。わざわざ担当トレーナーを持ってレースに出ないといけないこの場所でなくとも高い実力を持ったウマ娘と会うことはできるからね」
まあ確かにそれはそうかもしれない。
「なら、お前はどんなトレーナーだったらいいんだ?」
「私の研究に付き合ってくれる人物かな。それと、少しばかりの身の回りの世話を」
あ!こいつめんどくせぇわ!
「しかし、君であれば私も受け入れてもいいがね」
「えぇ、俺が嫌だよ。今回はご縁がなかったということで…」
「待ちたまえ!君には目の前の去ろうとするウマ娘を引き留めるような善性はないのかい!?」
「自分から去ろうとしてるなら別に…」
「認めないぞそんなこと!君は私のモルモットだ!」
『悲報』火曜日の俺、人権すらない。
「ほら、わかったならこの薬を飲みたまえ!はーやーくー!」
「わかった、わかったから駄々をこねるんじゃねぇ!」
火曜日はやっぱだめだ。こんな事する羽目になるとはな。
俺はその怪しい液体をグイッと飲んだ。
「Fuck!不味すぎだろこれ!もっと味を何とかしてくれ。飲みづらいったらありゃしねぇ」
「ふぅん…発光していることについて触れないとは、君は相変わらずだねぇ」
「おお、ほんとだな。俺が偉大すぎて光ってしまってるらしいな。ついに神に並んだか?」
これならあの自販機も壊せるやも…というかこいつら全員なんで俺のこと知ってるみたいな言い方するのかねぇ。そんなに俺って有名か?
「用事ができたから俺は帰るぜ。じゃあなマッドサイエンティストアグネスタキオン。今日からお前は大問題三銃士の仲間入りだ!」
「大問題三銃士とは酷いネーミングだねぇ…」
「メンバーはフジキセキとサイレンススズカとお前な。あとこの前知ったがマンハッタンカフェってのがお前と一緒にいるらしいな?よし、四天王に加えておこう」
「彼女は何もしていない気がするが…こればかりは同情するよ、カフェ」
そう言って神に並んだ俺はマッハ11くらいで去った。
「ヒトミミにしては速いねぇ。40キロくらいだろうか?やはり、モルモット君は特別なようだ」
モルモット君はもちろん私のモルモットだ。しかし、それと同時に私の助手でもある。例え彼が忘れようと手放す気はない。
「この現象についても少し調査が必要だねぇ…」
______
「さっさとマンハッタンカフェについて教えろyo!」
「なんでそんなにテンションが高いんだか…」
「はあ?てめぇイカれてんのか!?誰だって強くなりたいだろうが!向上心をなくしたお前はまるでどんぐりだな!」
「どんぐりって、どういうチョイスだ?」
「そりゃあどんぐりはコロコロしてるだけだし、向上心をなくしたやつを表す言葉として適切だろ。あんまりどじょうを困らせんなよな!」
「はぁ…お前の謎発言には付き合うだけ無駄だな」
「さっきからゴチャゴチャ言いやがって、とっとと教えろ!」
「お前のせいなんだが?…多くは知らないが、マンハッタンカフェは普通の人間には見えない何かが見えるらしい。それもあって、周囲の人間からは敬遠されてるって話だ」
うーん、不憫だ…日曜神の加護を得られなかった余りに…
「水曜は悪魔を招来できるらしいからな。最近俺の周りで奇妙なことが起きてるのもきっとそれのせいだ」
「どう考えてもお前のせいだろう?」
解決するためにはマンハッタンカフェに弟子入りするしかない。ペパーミントキャンディをあげれば許可してくれるかな?
「よし、お前もう帰っていいぞ。じゃあな!」
「あまり彼女を困らせないでやってくれよ?」
トレ公が人を困らせるようなことするはずないだろうに。
「デトロ、開けろイト市警だ!霊界探偵様がやってきたぜぇ!悪霊共は除霊してやるからかかってこい!」
最近学内でも変な噂が増えてなにより俺の周囲で不思議なことばかりだ。悪霊でないならいいが悪霊は滅さなければ。
「縺雁燕繧呈ョコ縺?」
「早速出やがったな!この祓串に十字架を乗っけたスペシャル除霊グッズで相手してやる」
効果はたぶん三倍くらいになってるはずだ。
「繝?う繝ャ繧ッ繝医い繧ソ繝?け??」
「クソッ、普通にクソつえぇ!」
あっかん負けそう。やっぱ水曜日はカスや。そもそも曜日的に俺にデバフがかかってあいつにバフがかかるのクソギミックすぎるだろ修正しろ。
「…大丈夫ですか…?」
「お前は…地獄先生マンハッタンカフェ!?」
「…ぬ〜べ〜じゃないです。危ないので離れていてください」
おお、なんか凄そうだ。しかもサンデーに似てるぞ!これで勝つる。後は寝ていても問題ないだろう。
「縺?o縺√=縺√=縺√=」
「…なかなか手強いですね…」
「頑張れマンハッタン先生!」
「…少し、不味いかも知れません…!」
やべぇ負けそうだ!流石にサンデーには及ばなかったらしい。
「お前尺なげぇな。とっとと退場してくれ、テンポが悪い。悪霊退散!悪霊退散!は!か!た!の!しお!」
「縺ッ?√°?√◆?√??√@縺奇シ?」
「お、効いてる効いてる。いけ!マンハッタンカフェ!せいなるほのおだ!」
「…ポケモンじゃないんですから使えませんよ!…」
そうは言いつつもマンハッタンカフェは頑張って悪霊を除霊してくれた。
「ふぅ、中々危なかったな。幽霊が見えるって大変だなマンハッタン先生。尊敬するぜ」
「…なぜ突然こんなことを…?」
「自販機に勝つための修行の一環だ」
「…自販機に対しては必要ないのでは?いえ、前提として自販機と戦うのがまずおかしいですね…」
うーん、残念だ。マンハッタン先生からの理解は得られなかったらしい。
「またなんかあったら頼むわ!グッバイ!」
俺は壁を透過して去っていった。
「…やっぱり変な人ですね…変わらないままです」
やっぱり、彼には私と同じものが見えているようです。
「…またコーヒーを、飲んでもらえますかね…?」
いえ、彼なら飲んでくれるでしょう。もしそうでなくとも飲ませます。きっと気に入ってくれるはず…