ウマ娘の脳を焼いたらいつか逃げられなくなるらしい   作:mashiyu

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かわいいね シーザリオ

 

 

「なあシーザリオ、人間は火曜日が最も集中できるって言うが、俺は絶対嘘だと思う」

「ええと、どうしてですか?」

「だって、火星はちっちぇだろ?太陽の劣化版じゃねぇか。それに、火曜日にはなんの個性もない。燃え尽きてんだよ」

「集中できることが嘘であるという主張の因果関係が見られませんが…じゃあ、水曜日はどうなんですか?」

「水曜日?ありゃだめだ。だって、悪魔が召喚されるんだぜ?もうその時点でだめだろ。それに知ってるか?水星が一番ちいせぇんだぜ。もうわかっただろ?」

「理屈はわかりました。では、木曜日はどうでしょう?木星は大きいですよ」

「木曜日?だめだめ。終わりが見えるようで届かない一番うざいラインだ。それに、太陽系には太陽が含まれるから木星は太陽系で2番目に大きい。2番だぜ?そりゃだめだ」

「確かに、木曜日は疲労が溜まっているため金曜日のようにはいかないかもしれませんね」

「金曜日だって?なにいってんだ。休日じゃねぇだろ。あんなもんが特別扱いされてたまるか。それに、金星は地表温度が460℃で気圧が地球の約90倍だぜ?フレネミーだろ」

「トレーナーが一方的に敵視してるだけかと思うんですが…では、土曜日はどうでしょう?トレーナーが好きな休日です」

「土曜日?まあ、今までのよりかはマシだが、土星じゃ太陽には勝てねぇ。なにより振替休日がない。クソオブクソだ。休日として最低だよ。土曜日のほうがいいって言ってるやつは全員土星人の手先だね」

「振替休日は年に平均して2回程度ですのでそう心配されることもないと私は思いますよ。では本命の、日曜日は?」

「日曜日?そりゃあもう最高だ。日曜日の俺は法律だって、勅命だって縛れねぇ。何より太陽系No.1。教会に行くのだって日曜日だ。日曜日は全ての頂点、俺に相応しい。どの神を信じるかは人それぞれだが、日曜神は俺たちに寄り添ってくれる。土曜は振替休日にならねぇが、日曜日はなる。なんて親切なんだろうか?それに、日常からじを抜いたら日曜だ。ほら、もうわかっただろ?日曜最高と言え!日曜最高!日曜バンザイ!日曜日は我らと共にある!貴公らに日曜日の加護があらんことを」

「ここには私とトレーナー以外にいませんよ?でも、確かに私も日曜日は好きです」

「だろ?やっぱりお前はわかってくれると思ってたぜ!」

さてさて、迷える子羊を導くことができた。日曜神は信じる者に救済を与え、安らぎをくれる。ああ、なんて素晴らしい。日曜日は全であり1なのだ。さあ、彼女たちに与えよう。日曜日の名のもとに救済を!

 

______

 

「月曜日は陰鬱ながらも誠実に。火曜日は紅蓮のように熱く。水曜日は水のように流麗に。木曜日は根を張る木のように強かに。金曜日は輝く黄金のように眩く、土曜日は母なる大地のように慈しむ」

「珍しいですね。日曜日はどうしたんですか?」

「決まってんだろバッキャロー!日曜日の俺は誰にも止められねぇ!太陽が如く魂を燃やす。七曜表を全て日曜日に変える準備はできたな?今から国会議事堂占拠するぞ!安保闘争の再来だ!日曜聖戦じゃオラァ!」

「今日は月曜日です。トレーナーも疲れていらっしゃるでしょうし、それはまた今度にしましょう」

「うーん…確かにそれもそうだな。なんか喉渇いてきたわ」

「近くに自販機がありますからそこで飲み物を買いましょうか」

「いいねぇ!俺は辛口ジンジャーエールが飲みたい」

 

_______

 

「……ねぇな」

 

なんだこのふざけた自販機は?許せねぇ…

 

「辛口ジンジャーエールですか?ないなら仕方ないですね。では別のものを…」

「呆れた自販機だ。生かしておけぬ」

「トレーナー?」

「売られた喧嘩は買わなければならない。それが我が名誉を守る唯一の手段」

「なぜそうなるんですか…?」

「極められた我が剣に斬れないものなどあんまりない。我が剣の錆にしてくれよう。喰らえ、射殺いてくれるわ」

「剣術はどこにいかれたのですか?」

「弓バ槍剣、一体化された剣術なので問題ない」

「そして追撃の炸裂弾だ。帝国の力を思い知るがいいわ」

「急に和から蒙に…」

「トドメに世界最大の戦艦から繰り出される46センチ主砲を喰らえ!」

「急に文明が進み過ぎだと思います」

 

______

 

「あのあとたづなさんが凄い形相で追ってきたが、四次元ポケットに入ることで難を逃れた」

「それがあるのならジンジャーエールくらいは手にはいりませんか?」

「そして、私は思った。やはり信じられるのは己の肉体。そして肉体とは魂であり魂は肉体である。私は日曜同盟の盟友と同質の肉体を手に入れることに成功した」

「いったいどういうことですか…?というか誰です?それ」

「この至高の肉体から繰り出される連打は貴様も耐え難いだろう、自販機」

「オラァ!オラオラオラオラオラオラオラオラ!オラァ!」

「トレーナー。傷一つついてませんよ」

「まだ焦るときではない。いかに自販機といえども俺の使役する電気鼠から繰り出される最大10億ボルトの電撃は耐えられまい」

「喰らえ超電磁砲(レールガン)

「電気鼠に対しても電磁砲使用者に対しても失礼では?」

「両者とも電気を扱うのだからそう変わりはない」

 

 

あの後結局自販機から辛口ジンジャーエールを手に入れることはできなかった。

そのため、俺は辛口ジンジャーエールを手に入れるための修行をした。津波に乗ることさえできるようになり、異星からの技術提供も受けた。そこら辺にある別の自販機で練習もした。

 

「スパモンと契約を結んだ。悪魔に魂を売った。4大元素すら身につけた。神格すら凌駕するこの力で自販機。お前から必ず辛口ジンジャーエールを手に入れてみせる」

「自販機に対して行う攻撃とは思えません。なせそこまで拘るんですか…」

 

「いくぞ、これが最終決戦だ」

「トレーナー。敷地内の自販機を破壊するのは諦めたほうが効率が宜しいかと。重機を使っても傷一つつかないのは怪異と相違ありません。なにより、法的に問題があります」

「シーザリオ。スペがいいって言ってたぞ」

「スペさん…?なんてことを…いえ、気の迷いでしょうか。いくらなんでもこれを許容するとは…」

 

根回しは必要だ。代わりに俺の財布から金が消え飲食店の食べ物の在庫も消えることになるが。

 

「まずは3マジックポイントと1耐久力を消費し無欠の投擲を使う」

「次にマーシャルアーツにより戦闘力を高める。1D100=8」

「格闘じゃないので意味ないのでは?」

「次に跳躍を行う。1D100=95」

「必要のないロールのためにファンブルを出しかけてますよね」

「クリティカルを出すには必要な儀礼だ。最後に投擲ロールを振る1D100=1これでパクってきたGungnirを投げることができる」

「もう人間ではないのでは…?」

 

「我が必中の槍を喰らえ。刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!」

「Gungnirでもなく刺すのなら今までの工程無駄でしたよね?」

 

「よくぞやったぞ、トレーナー」

「じ、自販機!!」

「ジンジャーエールは来月からだから売ってやれないが、代わりにチェリオをやろう」

「よかったですね、トレーナー」

 

「だが断る」

「え?」

ふざけんなやごらああああ!

「ジンジャーだからってしょうがねぇで済むかよ!くたばれ自販機ぃ!!」

「トレーナー!流石に周辺への被害を考えてください!」

 

塵は塵に、灰は灰に。更なる修行を続けジンジャーエールをあの自販機から手に入れようとしたのだが、限りある人生を浪費しないでくださいとシーザリオお手製のジンジャーエールを貰った。仕方がなく俺は勝負を引き分けとすることにした。

 

_______

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!助けてくれザリオ!いつの間にか俺の戸籍にお前が追加されてるんだ。役所め、適当な仕事しやがって…日曜日じゃないんだから書類手続きを無効化するのは大変なんだぞ!」

「焦っててもいいことはないですよ、トレーナー。今日は水曜日。流麗に、ですよね?」

「そんな定型を気にしてる場合じゃないんだよ。まあ、焦っててもいいことがないのはそうかもしれねぇが」

「トレーナーが落ち着けるように今、コーヒーをいれてきますねっ♪」

「そうか、それは悪いな。助かるぜ」

 

ああクソッマジでどういうことなんだよ。さっき足を叩いたせいで少し赤くなってしまった。力加減ミスりすぎたわ。まあ眠気覚ましにはなったが。

 

最近、カフェからもコーヒーを飲まされてカフェインを摂取しすぎている気がする。タキオンのあの砂糖がジャリジャリするくらいの飲み物を紅茶として判定していいかはわからないが、とにかくカフェインがやばい。そうわかってはいるんだが…ひとまず、気持ちを落ち着かせるために一度深呼吸をする。…一応もう一回だけしておこう。

 

「でも眠いよパトラッシュ…なんだかとっても眠いんだ。疲れちゃった…」

「最近、あまりよく寝られていないようですね。どうかされたんですか?」

「なんか自販機との闘いをやめたから毎晩自販機に勝つために自販機を元にした鉄の塊を抱いて寝てたんだけど捨てちゃって。最初は冷たいけど力を加えていくと熱を持っていくんだよ。犬とか温かそうだしいいよね…」

「犬はトレーナーがお世話をしてあげないといけませんけど、私ならその必要はないですよ。ぜひ、ご一緒にいかがですか?」

「俺、人とは寝られないタイプなんだ」

「一時的とはいえせっかく入籍したんですし、なにもおかしいことではありませんよ?」

「役所のミスなんだからおかしいだろ。あんまり滅多なことを言うもんじゃねぇぞ」

 

人と寝るのって緊張しちゃって中々眠れないんだよな。修学旅行とかずっと友達と話してたらいつの間にか外明るくなってたぜ。

 

「以前お伺いしたときはトレーナーは体温が低い方だとおっしゃっていたので。ウマ娘というのは総じて体温が高い傾向にありますし、ちょうどいいと思います」

「ありがとうシーザリオ。お前のおかげで俺は動物飼えないってことがわかったわ」

 

よくよく考えたら俺忙しいからワンちゃんなんて飼っててもお世話できないし。

 

「む…イジワルしないでくださいよ。私と寝るのがそんなにお嫌ですか?」

「一緒に寝る相手は毛布で十分じゃん。2人は狭いって、シーザリオ」

 

そういえば俺、小さい頃はよく毛布を抱いて寝てたな。中々寂しがり屋だったのかもしれない。

 

「私たちは将来を誓い合った仲でしょう?お慕いしておりますよ、トレーナー」

「お前の目標が走りの後って聞いたからそれを支える約束ってだけだろ?」

「現に今私は貴方の家に居ます。それはつまりそういうことですよね?」

「ううん、全然違うよ。雨が降りそうだったから降られると大変だねって保護してあげたの」

 

寮の人に移しちゃうと大変だしな。シーザリオは中々距離感が近い人間らしい。まあ、クラフトみたいな子といたらそうなるかもしれない。あれは正直で無垢だから、親のような目線になってしまうこともある。それの延長だろう。

 

 

________

 

「俺は魔法(マジックカード)友情 YU-JYOを使用するぜ!これにより、俺はお前に対し握手を申し込むぜ!」

「リバースカードオープン。(トラップ)カード、神の宣告で無効になります」

「なんでそんな酷いことするの; ;」

「ふふっ、冗談です♪どうされたんですか?」

「暇だからなんかしよーぜ」

「いいですね。私もちょうど暇でした」

 

めっちゃいいやつやんこいつ!ちゅき!いい気分だ。やっぱり今日は日曜日だな!

 

「今日は日曜で気分がいい。どっか行くか?」

「ふふっ、トレーナーから誘ってくれて嬉しいです♪ついていきますよ。どこへでも」

 

あ〜優しい^^どうせ付き合うなら俺に優しくしてくれて全肯定してくれる人がいいよね。あ、俺は常に正しいからそんなこと気にする必要なかったわ。

 

「よっしゃ、出かけんで!」

 

_______

 

「ついたぜ!いやあ、なんもねぇな!」

「曇り空なので結構暗い感じですね」

 

誰だよこんな季節に海行こうって言ったのは。

 

「いや、ちょっと感傷に浸りたくなっちゃったんだよ」

「なるほど。ということは、何か思い入れがあるんですか?」

「俺がトレーナーになるって決めたのここだったんだよ」

「ぜひ聞きたいです!教えてくれますか?」

「しょうがないな〜。教えてやろうじゃないか」

 

まあそんな大した話でもないんだが。

 

「ちょっと無気力状態だったとき、同じような奴らと3人でここに来たんだよ。ちょうど今日みたいな天気で、何もすることなくてな。日曜日のことだった」

「私は今トレーナーの原点にいるんですね。素敵ですね♪」

「なんにもやる気起きなかったんだが、やっぱそういう状態でも人間ってのは誰かを自分より下に置くことで安心する生き物でさ。ちょっと揉めたんだよ」

 

まあぶっちゃけ全員が全員こいつらよりはマシって思ってたと思う。たぶん。

 

「そこで一人がじゃあ自分は大企業の社長に、もう一人がパイロットにって言ったんだ。熱くなってそんな荒唐無稽な夢の話するなんて、ガキみてぇだろ?」

「私は、夢を抱くことは素敵だと思います」

「ああ、そうだな。俺は夢なんて、言えなかったよ。先のこと考えんの苦手だったんだ」

 

どうしても、自分の良い未来を想像することができなかった。

 

「そこでまあ、張り合える職業を考えようって話になって、それで出てきたのがトレーナーだったんだ。情熱的な話じゃなくて悪かったな」

「きっかけがなんであれ、私がトレーナーに出会えた事実は変わりません。むしろ、ご友人たちには感謝しなければなりませんね」

 

優しい。優しすぎて涙ちょちょぎれる…

 

「ご友人たちとは今も連絡を取られているんですか?」

「新年の挨拶ぐらいはしてるが、身の上話をすることはねぇな。俺から聞くのは、野暮ってもんだろ?」

 

自分が成功したからといって、相手がそうとは限らない。それに、どうせ聞くならあいつらから言ってもらいたい。

 

「まあそんな俺でもトレーナーとしてなんとかやっていけてるわけだ。必要なのは、一歩踏み出す勇気ときっかけだ。踏み出すことは恐ろしくて、そうできることじゃない。でもやらなきゃ報われるもんも報われないって、思うわけよ」

 

昔から今に至るまで、憧れの自分と本当の自分を継ぎ接いで来た。最近になって、本当の自分はその継ぎ接いで来た自分なのかもしれないって思い始めてきたぜ。

戦わなければ報われない。その考えは今も変わってない。だが、勝たなければ報われないってのは少しだけ間違いだったのかもしれない。

 

「ま、そういうわけだ。他の奴らには秘密にしとけよ?俺が恥ずかしいからな」

「ふふっ、誰にも言いませんよ。私とトレーナーだけの秘密です♪」

 

海より心が広いな。そういえば例の件だが、該当する人間は誰も見つからなかった。プライバシーに配慮した上での調査だったから実際のところはまだわからんが、多分いない。それにしても、9月だというのに今日はなんだか寒い。そんな時こそ火をつけろ!

 

僕はシガレットケースを開けて 火をつけた

おいしいね シーザリオ

 

「トレーナーはタバコをお吸いになられてたんですか?」

「あんまよくないとはわかってるんだが、やっぱり欲しいときがあってね。ケアはしてるから気づいてるやつはそういない。バレたら詰められちゃうから秘密にしといてくれ」

「もちろんです。秘密にしておきますね」

 

どんどん秘密が増えていくな…シーザリオだからまだいいが、あんまり秘密を握られると色々危ない。程々にしなければ。ある程度吸ったあと、灰皿がないことに気付いた。流石に教え子の前でポイーはできない。

 

「うーん…食べるしかないか?」

「急性中毒症状を起こしたら大変ですよ?」

「日曜日の俺ならギリいけるだろ」

「そんな危ない賭けに出なくとも解決できる方法がありますよ。ちょうどペットボトルを持ってたので。どうぞ」

「おお、気が利くな。サンキュー」

 

水が中に残ってる状態で入れるとグロいからちゃんと飲み干してから俺は煙草を入れたんだが、なぜかシーザリオがちょっと驚いた目で見てきた。俺の賢さに驚いてしまったのかもしれない。いやあ、あんまりハイスペックなのも考えものだな。

 

「最近の9月なんて大体暑いのに今日寒いな」

「本当ですね。寒暖差で風邪を引いてしまいそうです」

 

少々思い出に浸る予定だったが、担当が体を冷やしてはいけない。帰ろう。そうだ、それがいい。決して俺が寒くなったからではない。断じて。

 

「…寒いな。帰ろうぜシーザリオ」

「そうですね。帰りましょうか、トレーナー」

 

こんな時期に来るもんじゃねぇな。でも、俺夏は外出たくないから海は一生いけないかもしれん。

 

_______

 

 

 

「おや?これは私の…ぱかプチですかね?」

「ああ、それ?この前あまり寝れないって言ったけど、それの解決策として買ったんだ。中々触り心地が良いんだよ、これ」

「…ここに本物がいるのに、なぜぬいぐるみでないといけないのでしょうか?」

「そりゃあお前はいつでもいるわけじゃないし、人とぬいぐるみは違うからな」

「では、これからは今まで以上にいつでもお側におります」

「気持ちだけ受け取っておくわ」

 

この年齢で介護されるとか情けなくて泣いちゃいそうになるからな。というか、よくよく考えれば成人男性が自分をモチーフにしたぬいぐるみ抱いてねてるって結構コンプラ案件じゃね?

…深呼吸だ。まずは脳に酸素を回す。考えるのはそれからでいい。そう思い、一度息を吸った。

どうすればこの問題を帳消しにできるだろうか?

 

…買収、賄賂による根回しは大切だ。なにより誠意の示し方として手っ取り早い。

 

「よし、シーザリオ。欲しいものなんでも一つ買ってやるよ。なんかない?」

「突然ですね。申し訳ないですし、頂けませんよ。気持ちだけで嬉しいです」

「いや、俺のためと思って受け入れてくれ」

「そこまで言うなら…そうですね。指輪が欲しいですかね」

 

今って学生のうちから婚約アピールするのか?知らなかったぜ。俺はアピールなんてしなくても人が寄ってこないからな; ;

 

「今度買ってくるわ。楽しみにしておけ」

「はい!これから先が楽しみです。トレーナー」

 

う〜ん、人から買ってもらった指輪をつけてるのって相手はどう思うんだろうな?いや、もしかすればまだいないかもしれないが、シーザリオならいてもおかしくないもんな…まあ邪推はよくないか。

 

「トレーナーは指輪、つけないんですか?」

「カモフラージュとしてつけてるトレーナーは結構いるが、俺は別に誰も寄ってこねぇし」

 

世界って不条理だよな。俺モテ期きたこと一回もねぇんだけど。

 

「そうですか。まあ、そういう愛の形もありますよね」

「どういう愛の形?」

 

想ってるなら伝えてくれると俺のテンション上がるのに。と、そんなことを考えていた俺は学生時代の話を少し思い出した。少し状況は違うが、まあ一緒だ。

 

「そういえば、俺が学生の時の話なんだけどよ。ある日女学生が教師に告白したんだよ。教師は立場上の問題で断ったんだが、それを意気地なしとか、自己保身に走ったとか言われててな。お前はどう思う?」

 

「決して間違った回答ではないと思います。でも、相応の思いがあるなら2人で協力して壁を越えていくことが可能だと私は思いますよ?」

「へぇ〜…ま、確かにそうかもな」

 

愛があればどんな苦難だって乗り越えられるっていうやつ結構いるし。実際のところどうかなんて知らねぇけど。

 

「トレーナーはどう思ったんですか?」

「俺はねぇ…正直常識的にも立場的にもそうだし、自己保身に走ったっていいだろって思ったね、人間なんだし。まあ一時の迷いっていうか、学生の内は年上に憧れるとかあるだろ?まあ卒業までに熱が冷めてなかったらそれで証明になるんじゃねぇかとは思うな」

「なるほど…参考になります」

 

この話のどこに参考になる所があるんだ?もしかして、シーザリオは年上が好きなのか?まずいぞ。変な輩だったら非常にまずい。いや、シーザリオに限ってそれはないと思うが、相手がまともな倫理観、恋愛観を持ち合わせてるとは限らない。調査が必要だ。ひとまずこのことはレポートにでもまとめておく。

_______

 

「おや?ふふっ、寝てしまったみたいですね」

 

せっかくコーヒーを淹れたのですが、トレーナーは疲れていたのか、寝てしまわれたみたいです。

 

「トレーナーは、意地悪ですね」

 

起きているトレーナーにそう言ったところで、きっと良い反応は見れないでしょう。ですから、寝ている間だけでも私の思いを知ってほしい。そう思い、つい話しかけてしまう。

 

「皆、私を頼ってくれます。でも、貴方は違う。私に何か頼んでくれることはほとんどない。貴方は、いつも私を子供扱いします」

 

 

「まだ子供だから、なんて貴方は言うけれど。子供だって成長して、大人になるんです」

 

皆どこか、貴方に好意的な目を向けます。それは、トレーナーが積み上げてきたことの証です。貴方が思っている以上に、貴方は評価されているんですよ?

 

「だから、もう少し自分を評価してあげてください」

 

出会いは唐突で、それほど気にしていませんでした。しかし一緒に過ごしていく内に、貴方が私に言ってくれた言葉が、貴方の表情が。鮮明に記憶に残っていきました。

 

『なんで本気で走らない?』

『…どういうことでしょう?』

『お前が何を目指してるのかは聞いた。ウマ娘達の礎に…実に結構なことだ。だが、遠くばかりを見ていれば足元を掬われる。覚えておけ、戦わなければ生き残れない!勝たなきゃ報われない!…後悔を残したくないなら、本気でやれ』

『ティアラは決して譲らない。導く者たる器を見せて差し上げますよ。トレーナー』

『礎は、多いほうがいい。ひとまず3年先までカレンダーに予定を入れておく。お前に付き合うかは、それから決める』

『よろしくお願いします、トレーナー!』

 

貴方は素直には言ってくれなかったけれど。共に歩んでくれると、確かにそう言いました。それが、私にとっては凄く嬉しいことだったんです。

 

 

「私と同じ目線に立ってくれる人がいることが、こんなにも心強いことだったなんて思いませんでした」

 

私と、トレーナーの思い出を。

 

「これからもたくさん、作っていきましょうね♪」

 

きっと、トレーナーは誰かに頼るのは苦手なんでしょう。不器用ですから。私に教えてくれていないこともきっと、まだまだあります。

 

「ですから、貴方が伝えなくとも私が理解できるように頑張ります。ずっと見ていてあげます」

 

トレーナーは不安を感じたとき足を叩きます。切り替えのためでしょうか?

落ち着きたいときは深呼吸を。一度では落ち着かないのか大体2回ほどです。

嘘をつくときには髪を触ります。それが、現時点で私が貴方を見ていて気づいたこと。

 

「少し突拍子もないことをされると驚いてしまうことはありますが、嫌いではないです。むしろ、貴方に付き合うのは私にとって、嬉しいことですから♪」

「貴方は何か勘違いしているのかもしれませんが…私は、貴方の全てが欲しいんです」

「嘘も誤魔化しも、あなたを構成する大切なもの。だから、それ自体に怒りや悲しみを抱くことはありません。私が全てを見通してあげます。だから。全て委ねても、いいんですよ?」

 

誰にも頼らず孤高にだなんて、私は悲しいですから。

 

「今は、貴方が落ち着けるように。私の代わりとは言いたくないですが、このぱかプチを置いておきますね♪」

 

段階は踏むべきだ。少なくとも、自己の認識と相手の認識のズレを自覚している私にとって、それは無視できるものではない。トレーナーはああ見えて、無垢だから。でも、トレーナーがこの前教えてくれた私と貴方だけの秘密。着実に進展している。必要なのは一歩踏み出す勇気ときっかけ。それはもう十分にある。

 

「貴方はこれからも、色んな方達と思い出を作っていくと思います。私はそれでも別に構いませんよ♪最後にこのシーザリオの元に引き戻せば良い」

「ゆっくりと、融かしてあげますね。トレーナー♪」

 

 

________

 

 

 

 

「トレーナーは今日も来ていないんですか?」

「我々も連絡を入れているのだが、見つからず…」

「わかりました、わざわざありがとうございます。トレーナーのことですからきっと、連絡を入れ忘れているだけでしょう」

 

そうに決まっています。

 

「そうだといいのだが…」

「では、私はこれで。失礼しました」

 

私はそれだけ言って理事長室を後にした。

 

 

 

「トレーナー室でコーヒーを淹れていれば案外、帰ってくるかもしれません。では早速…」

 

そう思ったのですが、少し気になるものを見つけました。

 

「なんでしょう、これ。手紙…ですかね?」

「いえ、人のものですし勝手に見るのはよくないですよね…」

 

しかし、トレーナーのこともありどうしても気になってしまった。トレーナーも昔バレなきゃ犯罪じゃないと言っていましたし、少しだけなら…

 

「ごめんなさい、トレーナー」

 

私は思い切ってその中身を開けてみることにした。

 

「……………っ!!」

 

私は、思わず目を疑ってしまった。それでも、目を背けることはできなかった。なんせ、その手紙にはトレーナーについてのことが書かれていたのだから。

 

 

『俺、小さい頃から字が綺麗に書けねぇからちょっと汚いかもしれないが、許してくれ』

 

「………」

 

私は黙々と手紙の内容を読み進めた。

 

『まず、この手紙を読んでいるということは俺はこの世にいない…とまではいかないが、たぶんお前の前からは姿を消してるはずだ。カレンダーには3年先しか書けなくなっちまった』

「いったい、どうして…?」

 

『わざわざ理由を話すのはもしかしたら再会の時があるかもしれねぇし、その時になって恥ずかしいからやめておく』

「そんなの、納得できないですよ…」

 

私はきちんと説明してもらいたいのに、トレーナーはいつもそうやってはぐらかす。

 

『指輪のことだがそれはお前のこれから先会う大切な人から貰ってほしいと思う。買ってやるって言ったのに悪い』

 

 

 

「この先出会う大切な人がトレーナー以上に大切になんてなるはずがない。貴方からじゃないと、意味ないですよ…」

 

『その代わり俺からはお前が成人した時のために机の引き出しに煙草を仕舞っておいた。いるようだったら取っておいてくれ』

「いらないわけ、ないじゃないですか」

 

私は机からそれを引き出し、大切にしまった。

 

 

『このことは本当に、申し訳ないと思ってる。シーザリオ。お前は俺がいなくてもお前だ。だからどうか、夢を諦めないでほしい。それだけは、伝えておく』

「貴方がいないのに、どうすればいいんですか?トレーナーがいたからここまで来れたのに、貴方はどうしてそれをわかってくれないんですか!」

 

ここにはトレーナーはいないのに、思わず大きな声を出してしまった。返してくれる相手がいなくて、どうしようもなく心が虚しくなってしまった。

 

 

_________

 

 

 

「貴方の言う通り、夢を諦めずここまで進んできました。その過程で、私に協力してくれる色んないい方達に出会ったんです。でも結局、貴方以外に一緒になりたいと思える相手はいませんでした。貴方は今、どこにいるんですか?」

 

 

生死すら不明で、いつしか学園も捜索を打ち切りました。

 

「でも、仕方ありません。あなたを諦めきれないのは、私だけでしたから。皆折り合いをちゃんとつけたんです。それをとやかく言うのはあまりにわがままというものです」

「どれだけ時が経とうとも貴方の行方を探し続けましたが、結局見つかることはありませんでした」

 

今はもうわからないですが、私が夢を叶えるまではきっと貴方は生きていたと思います。テレビにだって出たんですよ?

 

「ズルいですよね。私は貴方がどこにいるかわからないのに、貴方は簡単にわかるんですから」

 

本当に意地悪な人です。それに結局、貴方に貰ったこれを吸うことはできませんでした。指輪であれば形に残るのに、これは吸ってしまったらなくなってしまうので。

 

「私、怒ってるんですよ?せめてひと言相談してくれたなら、私にだって何かできたのかもしれないのに。貴方はいつもそうやって抱え込んでいました」

 

あの頃の私に出来ることはそう多くはなかったのかもしれない。それでも頼ってくれたなら…そう思ってしまう。

 

「私の人生で唯一の心残りは、トレーナーだけなんですよ?」

 

私のことは振り回すのに、私には振り回すチャンスすらくれないんですから。本当に不公平だと思います。

 

「ゆっくりだなんて考えていたのは、過ちでした。もう少し早く手を打っておくべきだったんですね…」

 

次に貴方に会えたなら、その時は…

 

「このシーザリオが、必ず手に入れてみせる」

 

________

 

 

 

 

 

「は〜やる気起きん。なんもやる気起きないよ〜」

 

最近はなんだか雨が多いし、暑いし。ナエトルが萎えとる。

 

「おはようございます、トレーナー♪」

「んお?その声は…シーザリオか」

「はい!今日もいい朝ですね。どこかに行きませんか?」

 

うーん、行きたい気持ちは山々なんだが…

 

「俺、一応トレーナーだからさ。業務中にどっか行くわけにはいかねぇんだわ」

「そうですか、残念です」

「にしても、律儀に毎朝挨拶なんてしにこなくてもいいのによ」

「私が好きでやってることなので。気にしないでください」

 

俺にわざわざ毎朝挨拶しに来るとかもう俺のこと好きだろ。いや、流石にそんなわけねぇか。やばいやばい、捕まる。

 

「では、私は一度これで失礼します。また会いに来ますね♪」

「うぃ、おつかれ〜。またな」

 

シーザリオは授業を受けに行った。

 

「あいつ、妙に距離感近いよなぁ。最初に会ったときも変だったし。俺が学生時代の同級生にいたら告ってるかもしれん」

 

いや、そもそもそんなことする気も起きないくらい高嶺の花だわ。まあしたところで玉砕確定だけどな、ガハハ。

 

______

 

 

 

「相変わらずトレーナーは気づいてくれなくて困りますね。いっそ武力行使に出るのも…いえ、無駄ですね」

 

なぜかトレーナーは日曜日になると天気を変えられるようになりますしコンクリートを素手で破れます。

 

「本当は早めに決着をつける予定だったのですが…」

「残念ながらそれは叶いませんでしたね」

 

私があのことを思い出したとき、すぐにトレーナーのことを調べました。しかしまだ幼い私には出来ることは少なく、もどかしい気分を味わいました。

 

「しかし、少しトレーナーも変わっていたようです」

 

2年ほど前、私がふとニュースを見ていたとき、あるウマ娘の話が目に入ってきました。そのウマ娘の名前はサンデーサイレンス。内容が彼女がケンタッキーダービーに勝利したというものでした。

 

「それは素晴らしいことですが、私にとって重要なのはその後、彼女がバラのレイをかけたときのことです」

 

彼女の隣には、トレーナーがいました。あの日礎になると誓った、私のトレーナーが。それを見たとき、歓喜の感情とともに嫉妬の感情も湧いてきました。

 

「しかし、彼女は今ここにはいない。初めての担当になれないのは仕方ないですが、最後に私の手にあればそれでいい」

 

トレーナーに初めて会ったとき、当然彼は私のことを覚えていませんでした。

 

 

『お帰りなさい、トレーナー』

『おん?誰だぁ、お前?わざわざ出迎えてくれるとは優しいじゃねぇか。ちょっと遅いが』

『それは申し訳ないと思っています。少し、用事を済ませていまして、中々会うことができず』

『まあ別にそんなことはいいんだが、何の用だ?』

『トレーナー。私の担当になってください♪』

『…はあ?いくらなんでも急すぎるだろ』

 

彼は少し困惑している様子でしたが、私は一歩も引きませんでした。

 

『私は貴方と共にありたい。貴方も、トレーナーを続ける上では担当ウマ娘の存在は必須でしょう?ですから、私と担当契約を結んで頂きたいのです』

『それはそうだが、俺は生憎損得勘定だけで決めてるわけじゃない。そんなビジネスライクな関係はごめんだね』

『そうですか。かくなるうえは…』

『おぉう、距離近いって。掛かりすぎだろ』

『貴方が首を縦に振れば私も手荒な真似はしません』

 

少し強引でしたが、どうしても逃したくなかったのです。しかし、それは間違いだったようで。

 

 

『落ち着けっての。何をそんなに焦ってるのか知らねぇが、話もせず首を縦に振れってのは無理だね。俺、振り回すのはいいが振り回されるのは得意じゃねんだわ』

『私はふざけてるわけじゃないんですよ?本気です』

『なら、尚更だ。お前は俺のファンなんだろ?』

『ファン…?いえ、まあ広義的に言えばそうですが』

『魚を逃した経験があるのかもしれねえが、段階は踏むべきだ。降りの階段は踏み外しても最悪落ちるだけだが、登りの階段は踏み外すと取り返しがつかねぇ』

『…………』

『お前は凄いやつなんだろうが、俺は日曜日以外に担当契約をする気はないし、そういうのは嫌いだ。常に心にゆとりを持っていったいんでね』

『では、いったいどうすれば?』

『これでもまだ押してくんのか?物好きなやつだ。ま、大事なのは積み重ね。俺から言えるのはそんだけだ』

 

相変わらずトレーナーは曖昧な物言いでした。ですが、そこで諦める選択肢はありません。故に私は…

 

『では、毎日貴方に会いに行きます』

『…マジ?ようわからんな。なんだその根性』

『どうしても、貴方が欲しいので』

『うーん熱烈なラブだ、反応に困る。ま、ガッツがあるのは嫌いじゃない。その言葉が嘘じゃないなら加点ポイントだな。ま、頑張れよ。今日はこれで終わりだ』

 

そう言ってトレーナーは帰りました。もう少し話してくれたってよかったと今でも思っています。

 

「なぜか日曜日になるとどこを探してもいなくなってしまうので未だに担当契約は結べませんが…それでも、手に入れてみせる」

 

根拠のない自信こそが人を動かすと、彼は言いました。ならば私も、その言葉を信じましょう。それに、トレーナーは心に余裕のある女性が好きだとお見受けするので。

 

「だから、今は貴方に付き合いましょう。今の貴方は、あの時よりずっといい状態ですから。カレンダーにいくらでも予定を詰め込む猶予があります」

 

それが彼の相棒であるサンデーサイレンスさんの影響なのか、はたまた違うのかはわかりませんが。

 

「しかし、相棒と人生の伴侶というのは違うものです。着実に関係を深めていきましょう。ゆっくりと…ね♪」

 

 

しかし、もし他の方を選ぶのであれば、その時は…

 

 

「好きですよ。トレーナー♪」

 







MikeShadowのあの動画めっちゃ好き。

それはそれとしてシーザリオのオン・オフのあの落差というか温度差が好き。かわいいね。
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