ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
げほごほ!! その内治すよ!!! 色々ミスってたら文章もその内直すよ!!!
はい、投稿します。
「ふんふふふーん♪」
マガツが鼻歌を口ずさみながら、僕の一歩先を歩いていく。
「我が考えたデートプランならば、マサヒコも回復間違いなしなのじゃ!」
自信満々に、ボレロにも似たリズムで口ずさみながら進んで行く。
「こぉおおおおっ」
その背中を眺めながら、僕は呼吸法によって集中を極限まで高めていた。
何故か?
マガツは機嫌の良い時ほど、色々やらかす奴だからである!
ソースは温泉街の時!! あいつ、笑顔で『人形遊びしないのかのう?』とか言うからね? 笑顔で凌辱を勧めて来るような奴だからね!?
油断はできない。
僕の予想では、『己が大切な者のために命を賭けて殺し合う孤児たちの姿……心が癒える光景じゃろう?』とか言い出しかねないと思っている。
そんな時、僕は周辺被害が出る前に止めるため、集中力を高めているのだ。
「まずはここじゃ」
「来たか! 相棒の愚行は僕が止め――うん?」
マガツの足が止まった先には、古書店があった。
普通の古書店だ。
探索者が多く集うバルムの街でありながらも、戦闘用の指南書や魔導書に品ぞろえが偏っていない。
普通に多種多様なジャンルの本を扱う古書店だ。
「…………実はここに、正気度を失う人皮の本が隠されていたり?」
「何を言っておるのじゃ、お主は?」
恐る恐る訊ねると、マガツは肩を竦めて苦笑する。
「マサヒコ。お主は召喚されてからずっと、色々と働き過ぎじゃ。たまには、この本に触れて静かな時間を過ごすと良い」
「えっ?」
「我のおすすめは、この歴史書じゃな。我らの世界の歴史をイラスト付きで、大まかに解説してくれる奴じゃ。異世界から召喚されたお主ならば、この世界の歴史も娯楽になるじゃろ?」
「お、え、は???」
的確だった。
マガツの進める本は確かに、僕の娯楽になりうるものだった。
その上、この古書店の雰囲気も中々悪くない。
如何にも普通。如何にも平凡。さりとて品ぞろえは悪くない。
街の喧騒から離れて、のんびりと見て回るには適した場所である。
「ど、どうしたの? マガツ? 何なの? 体調が悪いの?」
「我が体調悪くなることなどあり得ぬわ。ほれ、さっさと見て回るぞ。ああ、何かわからん文字があれば、我に訊ねると良い。召喚勇者に付与される翻訳は、意外と融通の利かない部分もあるからのう」
「いや、この世界の言語は大体理解したから問題ないよ」
「きもっ!」
マガツが露骨に顔を顰める姿で僕は安堵する。
そうそう、このデリカシーの無さがマガツなんだよね! 今回のは何かの間違いというか、たまにはマガツもまぐれ当たりを起こすということで!
「ええと、神話関係の本と、近代史と……へぇ、漫画とかあるんだ、この世界」
「うむ。検閲が凄いぞ」
「そうなの?」
「基本的に『神』を付くものを称賛する本は発禁処分を受ける」
「んー、神という大きな括りでも、邪神に対して信仰の力とかが行くから?」
「大体そうじゃ。後、頭が茹ったカルトが邪神の復活を早めようとすることもあった」
「うわぁ」
「だというのに、何故か我の封印を解こうという者は現れず……」
「流石マガツ! 格が違うぜ!!」
僕とマガツはだらだら雑談しながら、適当に本を取って会計。
値札は見ない。
既に、探索者として稼いだ金が重すぎる資金になっているからだ。
物も金も多すぎると重くなるので、ここら辺で減らしておくのも手だろう。
「ふぅ、買った、買った」
「うむ。有意義な買い物だったのじゃ。では、次は小腹を満たしに行こうか」
「来たか!」
「お主は何故、全身全霊で身構えておるのじゃ?」
マガツは呆れた様子で僕を見るが、油断はできない。
先ほどはまぐれで上手く行ったが、次もそうとは限らない。『飢え苦しむ者の前で喰らう飯こそ、最高の美食じゃ』とか言い出しそうな可能性がある。
そんな邪悪な悪趣味に走る前に、なんとか僕が止めなければ。
「ここじゃ、ここ。この喫茶店、良い雰囲気じゃろう? 中々上手いサンドイッチを出すから、期待してよいぞ? あ、お主には『サンドイッチ』と翻訳されているが、実はこの異世界では、召喚勇者が呼ぶ『サンドイッチ』と、グライドン伯爵が考えた『王殺し』という名前が――」
「正体を見せろ、偽物ぉ!!」
「んんん???」
マガツを装った何者かが、僕をごく普通の喫茶店に招き入れようとしていたので、僕は即座に戦闘態勢に入った。
おのれ! 僕の相棒をどこにやり上がった!?
「落ち着け、阿呆。ほれ、ぱかり」
「うわぁ!? 美少女が縦に裂けた!? この冒涜的な姿! まさしくマガツ!」
「うむ、正気に戻ったようで何より」
うんうん、と頷くマガツに僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
くそっ、いくらあり得ないことが重なったからって、相棒を偽物だと思うなんて! 一生の恥だぜ、ちくしょう!
…………いや待て、マガツが偽物ではないということはつまり?
「ほう、気付いたようじゃな、マサヒコ」
僕の視線に気づいたのか、マガツは「ふふん」と胸を張った。
「ま、まさか!? 習得したの、マガツ!?」
「うむ。中々に苦労はしたがの、きっちりと習得したぞ――――『気遣い』をな!」
「っ!!!?」
マガツの宣言に、僕は目を見開いて驚愕した。
そんな、嘘だろう!? などと頭の中でぐるぐると疑問と驚きが渦巻くが、先ほどの二つの事実がそれを否定する。
マガツは今、間違いなく『気遣い』を取得している。
あの、絆と洗脳の違いもいまいちわかっていない感じのマガツが!
「ううっ! 凄い! 凄いよ、マガツ!」
その事実に、努力に、成長に、僕は思わず涙を流した。
単なる駄目人間が変わった程度では、僕はここまで感激しない。
マガツと超融合したからこそ、僕はマガツが根本的に僕らとは違う次元の存在だと理解している。魂の格も、視座も、価値観も、何もかも。
けれども、そんな超越した邪悪存在が今、僕のために価値観を合わせようとしてくれたのだ。
その歩み寄りに、僕は涙を禁じ得ない。
「今日はお祝いだよ、マガツ! 何か欲しいものあるかい!?」
「ふふふっ、慌てるな、マサヒコ。まずは、我がお主を労うのが先じゃ」
「そっかぁ! 流石、マガツ! 『気遣い』が出来てるぅ!」
「ふふふんっ! だがまぁ、今の内に欲しいものを言っておくと……我、邪神の首が欲しいのじゃよ!」
「わかった! 全身全霊を賭けてぶち殺すね!」
あはははー、と僕はマガツを抱き上げてくるくるとその場で回り始める。
羞恥心を取り戻したのは、喫茶店の店主さんが『頼むから静かにしてください』と泣きながらお金を渡して来た時だった。
うん、流石に反省してマガツと一緒に謝りました。
「そういえば、お主って割と人嫌いじゃよな?」
「…………んー」
古書店で買った本を読みながら、喫茶店でのんびりお茶をしていると、ふとマガツが思い出したように訊ねて来た。
「エリスやウルのように才能のある者には割と好意的じゃが、それ以外の者に対しては結構雑なところがないかのう? いや、別に悪いとは言っておらんぞ? 我も有象無象の人間どもは、いざという時に魔力を搾り取るためのエサだと思っておるし」
「僕はそこまで人が嫌いってわけじゃないよ……というか、人が嫌いとも微妙に違うんだよね」
マガツの質問に、僕は少し悩んだ後、可能な限り分かり易く説明しようとする。
「意外かもしれないけどさ、マガツ。僕って意外と『なんでもできる』人間なんだよ」
「初対面の時からずっと、お主のことを才能の怪物だと思っておるが? 意外でもなんでもないが??」
「怪物は酷い……けどまぁ、自認は大体似ているかな? 『気遣い』が出来るようになったマガツならわかるかもしれないけど、人が苦労してできるようになったことを、その場の勢いでさらっとできちゃう奴って、普通に嫌われるんだよ」
「なるほど、嫉妬という奴か」
「まぁね。でも段々と、僕が色んなことを習得していく内に、嫉妬でもなくなるというか」
「ふむ、畏怖か。人は理解できない強者を見た時、自然と畏怖を抱く」
「…………まぁ、うん。認めたくないけど、そうなんだろうね」
僕は思い出す。
両親から無理やり叩き込まれた剣術道場で、次々と先輩たちの技量を追い越してしまったあの時の気まずい空気を。
最終的に、一週間で師範の人を打ち倒してしまい、ドン引きになってしまった周囲の空気を。
そして、打ち倒した師範の人が『やはり闇に進むべき才覚の持ち主か』などと言って、現代で殺人剣を教えているという、イカレ達人を紹介されてしまった時の恐怖を。
…………いや、早々に人間の極致というか、僕には絶対到達不可能な領域の武術を見られたのはいい経験だったけどさ? そのイカレ達人が、定期的に『人、殺さないか?』と誘ってくるのが本当に嫌だ。あのクソジジイ、事あるごとに僕を後継者にしようと画策しやがる。
「なんて悲しい瞳を……すまない、マサヒコ。もう思い出さんでもいい。嫌いなものは好きに嫌ってもいいのじゃ。好きな者と共に居れれば、それでよかろう」
「マガツ……」
「だが、お主はエリスやウルたちとも、事が終わればさっさと別れるつもりじゃよな?」
「うん、そうだよ」
マガツの質問に、僕は特に迷いなく答える。
「エリスは天才だからね。その内、僕が教えるべきことは無くなる。後は、自由にその力を振るって生きればいいさ。ウルも僕が到達できない分野の天才だからね。新型の偽神機を作れば、自分自身の技術を次の段階へと引き上げられるだろうし。そうなると、僕と一緒に居るメリットよりも、デメリットの方が上回る。ほら、僕たちって指名手配されているでしょ?」
「なるほどのう」
僕の答えに、マガツはにぃと不敵に微笑んだ。
「まるで、事前に用意していたような答えじゃのう?」
「……わかる?」
「言っていることは本音じゃが、それだけではないことぐらいは」
「んんんー」
今度は迷った。
少しだけ迷った。
けれどもまぁ、マガツならいいかと僕は己の過去を吐き出すことにした。
「僕はね、マガツ。過去に失敗したことがある」
「ふむ、失敗とな? お主が?」
「うん。まぁ、割と失敗だらけの人生だよ…………あれは僕が十歳ぐらいの頃。当時、僕は同じクラスに好きな女の子が……この例えでわかる?」
「案ずるな。現代日本のことは大体わかる」
「なんでわかるんだよ、怖いな……じゃあ、普通に話すけど。同じクラスの女の子を好きになってね? その女の子にアプローチするにはどうするかと悩んだわけさ」
「ふんふん、初々しいのう」
「それでね? その子がある日、『将来の夢』を話す授業で、将来はアイドルになりたい。アイドルになるために、専門のスクールにも通っていると言っていたんだよ」
「ふむ」
「僕はさ、『これだ!』と思ったね。アイドルになるっていう夢を叶えてあげれば、この子は僕のことを好きになってくれるって」
「ふむ?」
マガツが『何を言っているんだ、こいつ?』みたいな目で見て来るが、安心して欲しい。今となっては、僕も馬鹿な考えだと反省しているのだ。
「とはいえ、何の伝手も実績もない僕じゃあ、何を言っても説得力が無い。そんなわけで、僕は先んじてアイドル事務所に所属して、アイドルになりました」
「ふむむ???」
「僕は顔がいまいちだから、書類審査が不安だったけど、あれだね。ダンスとボーカルを予め鍛えておいたのが効いたね」
「お主、なぁ、それって――」
「うん。好きな女の子からすれば、噴飯ものの行動なんだけどまぁ、それは置いといて。まだ続きがあるの」
「この先が!?」
マガツの目が段々と興味の色に染まって行く。
多分、この先に待ち受ける愉悦に気づいたのだろう。邪悪だね。
「僕は超頑張った。とても頑張った。それはもう、短期間でちょっとした有名人になるぐらいには頑張った。幸いなことに、一緒にユニットを組んでいた人たちが才能豊かだったからね。その人たちの才能を開花させれば、それはもう、ちょっとしたものだったよ」
「お主の怪物らしさが全開じゃな?」
「こうして、伝手と実績を作った僕は、満を持して好きな女の子に対して、『アイドルにならないか?』と誘って……まぁ、ひと悶着あったけど、無事に勧誘して」
「さらっと言っておるが、結構なことがあった感じがするのう」
「コネだけだと、好きな子が望んでいたアイドルにはなれなさそうだったから、こう、今まで集めたノウハウを全部ぶち込んで」
「あっ」
「…………その結果、僕の好きだった子はアイドルになったよ。物凄いアイドルに。でも、こう、ね? 副作用として、何でもかんでも僕に判断を任せるようになったというか……僕の好きだった女の子の成分が消えたよね」
「お主ってあれじゃな? 我と似た魂してない?」
「困った、否定できない」
何事も頑張ればいいものじゃないって、あの時に学んだよね。
「でも安心して! その後は、なんかこう、アイドルアニメの主人公みたいな女の子が出て来て、僕の好きだった女の子とアイドルバトルを繰り広げて、色々とコミュったり喧嘩したり、競い合ったりした結果、無事に元の性格を取り戻すことになったから! 僕はちょっと、諸悪の根源としてアイドル界を引退することになったけど」
「お主、わざと悪役になったじゃろう?」
「さて、なんのことやら……でもまぁ、その時に気づいたんだよ、僕は」
僕はふっと笑みを浮かべて、マガツに言う。
「僕の望むものは、僕の手から離れた後の混沌から生まれる、人々の可能性なんだって」
幼い頃に会得した、僕なりの心理を。
「だから、僕は好きなものこそ手放す。その方が、より輝きを増すから」
「なるほどのう」
僕の結論に、真理に、マガツは深々と頷くと。
「お主、大馬鹿じゃのうwww」
「なんだとう!?」
物凄く冷笑してきた。
あの、こいつやっぱり邪悪ですわ。
「くははは! お主でも矮小な人間らしいところがあるんじゃのう!」
「こ、こいつ……」
結局、喫茶店を出るまで、マガツは笑っていた。
何なの? 何がそんなに受けたの?
「お主が真理だと思っていることなど、我ならば一言で砕いてやることが可能じゃよ!」
「はぁーん!? 何、問答でもする気なの!? いいよ、やろうか! 屁理屈を重ねて、数々の格上の怪物たちを泣かせてきた僕に勝てるかな!?」
だが、僕も負けては居られない。
ここまで笑われて黙ってなど居られない。
僕らは相棒。同格なのだ。
故に、舐められたらぶちのめす!
さぁ、準備はいいか!? マガツぅ!!!
「我が居る」
などと、威勢が良かったのは、マガツの笑顔を見るまで。
「案ずるな、マサヒコ。我はマガツミカボシ。外なる理を持つ、邪悪な災神じゃぞ?」
それは邪悪で。
「お主がどれだけ怪物であろうとも、我が魂は変えられぬ」
それは傲慢で。
「だから、安心して共に居るがいい。というか、我は頼まれたって離れぬからな? そこのところ、きっちりと覚えておくんじゃぞ?」
けれども、僕の人生の中で見た、誰よりも可憐な笑顔だった。
「ああ、そうだね。ちゃんと覚えておく」
この時、僕がどんな顔をしていたのかは、恥ずかしいので割愛させてもらおう。
――――なーんて、マガツとの心温まるコミュで終われればよかったんだけどね?
『偉大なる太陽神の御名に於いて、愚かなる人間どもに鉄槌を下さん』
僕は街を覆うほどの巨影を見上げ、ため息を吐いた。
どうやら、僕の休暇がただでは終わらないという予感は的中してしまったらしい。
マサヒコが組んだユニットのメンバーは、今でも時々、またアイドルをやらないかと誘っているみたいです。
なお、殺人剣のイカレ達人クソジジイの勧誘の方が、頻度が高いです。