ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
はい、投稿します。
見上げれば、都市の上空には巨大な円盤があった。
都市に大きな影を落とすほどの巨大な円盤が。
何やら、苔むした岩石のような色の円盤であるが、その円盤から伸びる三対の翼が、人類の敵対者である何よりの証拠だ。
『愚かなる人間どもよ。貴様らの末路は圧死だ。我が墜落と共に、貴様らを一匹残らずに圧し潰す。この都市と共に、生ける者全てを圧し潰す。だが、そうなる前に一つ慈悲を与えよう』
そんでもって、その円盤からは厳かな男性の声が降り注いでいる。
『――――死ね』
そう、厳かで、憎悪に満ちた声が。
『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!!! 貴様らゴミ屑に許されるのは! 自害だけだ! その愚かしい命を終わらせる名誉を与えてやる! 大人しく死ねぇ!!』
随分とアレな物言いであるが、邪神の目的は人類の撲滅。
それを考えれば、邪神の走狗であるテンシが、人間に対して憎悪を向けているのは理解できるのだけれども。
「ねぇ、マガツ」
「なんだ?」
「そういえば、邪神ってなんで人類を滅ぼすとしているの? さっき買った本には、『いつの間にか邪神が居て、人類を滅ぼそうとしてきた』みたいな記述だったけど」
「ふむ。市販に出回っている歴史書であれば、そんなものだろう。民衆に向けて、分かり易く、国家の害になりそうな情報は統制する。当然のことじゃ」
「つまり、事実は違うってわけね?」
「うむ」
マガツは頷くと、円盤型のテンシを見上げて言った。
「我が知っている限りだと、元々世界には神々がそれなりの数が居たらしい。だが、人間が悪魔と結託し、神々をほとんど殺し尽くしたのだ。そして、残ったのは最も力が強く、当時の人間たちでは殺し切れなかった三柱の邪神というわけじゃ」
「うわぁ、人類やらかしてるぅ」
そりゃあ、滅ぼそうとするわけだよ、邪神側。
「ただ、神々も神々で好き勝手やっていたわけじゃからのう。殺されて当然の輩が結構居たのだぞ?」
「へぇ、じゃあ、正当な復讐?」
「さて、どうだか。善なる神々も大勢死んだらしいからのう。少なくとも、何度殺されようとも邪神が人類撲滅を諦めぬ程度には、復讐以外の理由もあったのじゃろうよ」
なるほどね。
単純にどちらが善でどちらが悪とか、そういう話ではないと。
…………なんにせよ、この世界の戦いに異世界の人間を巻き込んだ時点で、人類側も大概な事をやっているのだ。
自業自得だ、勝手に滅べ! とまでは行かないけど、大いに反省して欲しいと思う。
というか、この世界から帰還する前に、異世界召喚の方法とか失伝させてやろうかな? マガツの洗脳とかで。
『さて、祈りの時間はここまでだ。今、この時点までに自死を選んだ賢明なる者が居たのならば、我らの神はその魂を祝福するだろう――――では、残りは無惨に死ぬが良い』
あ、そろそろ襲撃が始まりそうだ。
「マガツ。この街の偽神機を総動員すれば、あの六枚翼を倒せると思う?」
「不可能じゃな。この街の偽神機はダンジョン攻略に特化しておる。故に、飛行機能があるものなど皆無。そもそも、絶対的な数が足らん」
「だよねー。レーナも腕前は足りているんだけど、いかんせん、機体がついていけなさそうというか」
頭上で円盤の一部が開き、そこから二枚翼のテンシ――眼球光線タイプのものがうじゃうじゃと現れる。
加えて、円盤そのものは段々と高度を下げて、街の中心に落下しようとしているようだ。
うーん、容赦が欠片も無い戦い方。
「だが、案ずるな、マサヒコ。この街にはグレイブがおる。あの程度、どうとでもなるだろう」
「…………街の被害を考えないのならば?」
「そうじゃな。ただ、街に可能な限り被害を出さずに戦っても、満身創痍ながらもグレイブは勝つじゃろう。そうなれば、後にエリスとレーナの攻略の際、倒しやすくなっているはずじゃ。被害を構わずに戦うかもしれんが、そうなっても当初の予定通り。どう転んでも、我らの振りにはならん」
「なるほどね」
「逆に、ここで我らが打って出れば、我らの損は計り知れぬ。あの円盤型の六枚翼――アクパーラは面倒極まりない相手じゃ。勝てたとしても消耗は避けられん。というか、あのテンシがこの街を襲撃する理由の半分ぐらいは、グレイブの権能を取り戻すために、我らが居ることを予測してのことじゃろうし」
マガツの考え方は冷徹だが合理的だ。
この場で戦えば、不利が重なる。
この場で戦わなければ、有利が重なる。
利益だけを考えるのならば、迷う余地なんてありはしない二択だ。
「加えて、今回の襲撃は不穏じゃ。アクパーラ……奴は、王国担当の部下ではない。共和国担当の邪神の部下じゃ」
「なるほど……復活した邪神が早々に結託していると?」
「さて、それだけならばマシじゃが。どうにも、明らかに釣られているような気配がする」
「ということは、この場で出て行けば、追加で結構な襲撃が来そうな感じ?」
「十中八九そうじゃろう」
あ、そろそろ本当にやばいね。
上空の眼球光線テンシたちが、ビームを放つための準備を終えたみたいだし。
僕らの周りに居た人たちも、必死の形相で逃げ始めているけど、どこに逃げたらいいのかわからずに混乱しているし。
「わかるじゃろう? マサヒコ。我の相棒ならばこんな時、どうするか」
「もちろん! わかっているさ、相棒!」
これにて話し合いはおしまい。
僕とマガツは互いに視線を合わせて、示し合わせるまでも無く笑みを浮かべた。
「「ダークネス・クラッシャー!!!」」
そして、上空をぶんぶんと飛ぶ蠅みてぇなテンシどもを一掃する。
いやぁ、こんな時のために、街の周辺の空間を侵食して支配しておいてよかった!
「むぅ。雑魚は一掃できたが、やはりアクパーラは堅牢じゃのう」
「六枚翼のテンシは伊達じゃないってことかな? 前はなんか一撃で死んだけど」
「相性の問題じゃなー」
上空の空間が圧壊し、無数のテンシたちが塵の如く破壊されて行く。
汚い花火が満載の光景だけれども、まぁ、宣戦布告にはちょうどいい。
「ゆくぞ、マサヒコ」
「おうともさ」
色々とごちゃごちゃ損得勘定してみたけれども、そもそも、損得勘定で動く奴は愛と正義のロボットなんて名乗ろうとしない。
そんな奴に付き合って、世界の敵になろうとはしない。
だからまぁ、本当に今更過ぎる確認だったのだ。
「「超融合」」
本当に損極まりない選択をするけれども、それを選ぶからこその愛と正義のロボットなのだと。これから証明するために、僕らは戦う。
『『最強勇者マガツオー! ここに降臨!!』』
目指すは、街に影を落とす巨大なる円盤。
マガツをして堅牢と称する実力派の六枚翼アクパーラ。
そいつをぶち殺してやるために、僕らは音を越える勢いで飛翔した。
さて、誰しも一度は思ったことは無いだろうか?
戦隊ヒーローや特撮ヒーローで、なんで必殺技があるのに、最初に使わないのか? って。
いや、実際には割と結構使っている場面もあるというか。大抵、最初から必殺技を出す相手というのは、物凄く強いか、何かギミック系の防御を持っていて、こちらの必殺技が効かないことが多いのだ。
逆に、必殺技が効きそうな相手には、最初から必殺技は放たない。
何故だ? と子供の頃は思っていたけど、今は違う。
身も蓋も無いことを言えば、尺の問題だね!
つまりはまぁ。
『一気に決めるよ! ダークネス・イレイサー!!!』
そういう問題が無い現実では、最初から必殺技を決めちゃってもいいよね?
『ぐっ、ぬぉおおおおおおおおおっ!!!??』
だが、流石にこれで終わるほど六枚翼のテンシは甘くないらしい。
マガツオーから放たれた暗黒エネルギー弾はしかし、アクパーラを消滅させない。
アクパーラの巨体が、周囲に不可視のエネルギーフィールドを展開し、暗黒エネルギー弾を防ぎ切って見せたのである。
『こ、この悍ましい気配……容赦の無い攻撃……やはり貴様はここに居たか! 忌まわしき災神! マガツミカボシ!!!』
相変わらずテンシからのヘイトが高いよね、マガツ。
相当、五百年前のやらかしに邪神側はブチ切れているらしい。
『ふん。そういう貴様は珍しいではないか。いつもは共和国の辺りで、復活したての弱々しい主を守るのに精いっぱいだったというのに……ああ、もしかして違う主に鞍替えしたか? それも無理は無い。あの太陽神は戦うことに向いていない、ただの引きこもりだからなぁ!』
『き、貴様ぁ!! 殺す! 我ら主従の絆を侮辱する者は殺す!!』
『くははは――――馬鹿め』
そして、ヘイトを向けられているマガツは、冷徹なほどに容赦が無い。
『その反応で察せたわ。やはり、太陽神は貴様をここに派遣したな? アクパーラ、守りの要である貴様を。ならば当然、それに代わる備えはある……邪神どもが早々に合流できたとなると、三国の封印管理を出し抜いた奴がおるな? ああ、なるほど、外部の協力者でも居たか? 終末思想は厳しく管理していたが故に……異世界側の協力者か?』
『――――っ!!』
アクパーラの強大な機体が、怯えるように震えた。
『ぐっ! 申し訳ございません、我が主……油断していたつもりはなかった! だが、それでも! この災神は口を交わすだけでも害悪! 魂を蝕む邪悪! もう二度と揺るがぬ! 迷わぬ! 我が全身全霊を持って、ここで貴様を滅する!』
『ほう、やれるのか? 防御型である貴様が?』
『やってやるとも!!』
吠えるような宣言と共に、アクパーラの機体が鳴動を始める。
膨大な魔力が嵐のように渦巻き、何かの予備動作を行っている。
これは、このまま悠長に待っていてはいけないなぁ。
『マサヒコよ。このアクパーラの権能は『絶対防御』じゃ。消耗は大きいが、魔力が続く限り、あらゆる干渉を阻む絶対なる防御を実現する。そんな力の持ち主よ!』
『うわぁ、中々に理不尽な力だね?』
『加えて、今の奴には我の知らん力があるようだ……こう、攻撃系の』
『なるほどね』
確かに、大気が鳴動するような気配は、何か凄い攻撃を仕掛けて来る予感がある。
その上、相手は堅牢過ぎる防御性能。
普通に考えれば、散発的な攻撃を繰り返しながら回避行動を続けて、相手の魔力が尽きるのを待つぐらいしか方策が無い。
だけどさぁ。
『つまりは、僕らの前では雑魚ってことだ』
浸食の権能を持つ僕らの前で、悠長に会話し過ぎじゃない?
『蝕め』
『――――がっ!!?』
がしゃんっ!! と大きな音を立てて、不可視の障壁が崩れ去る。
何故か? そんなものは決まっている! マガツが会話して伸ばしてくれた時間の内に、僕が奴の権能を蝕み、機能停止させたのさ!!
『……えっ? あれ? あの、マサヒコ? 今、その、何をした? 相手、絶対防御を展開していたはずなんじゃけど?』
『相手が絶対防御なら、こっちは浸食だ。あらゆるものを蝕む暗黒だ――――相手の権能も、例外じゃあない』
『そうだったの!?』
驚くなよ、本家本元。
それぐらい把握しておいてくれ。
『さぁ、油断のツケを払う時間だ』
『貴様、何者だ!? 災神とも違う――まさか、あの悍ましい邪悪が、取り込んだ勇者を洗脳せずに部下にしているとでも!?』
『相棒だよ、馬鹿』
『なんっぐががぁああああああああああああ!!!?』
ぞるるるるるるっ!! と音を立てて、巨大な円盤を暗黒が蝕む。
この浸食に、相手の巨大さなんて関係ない。
どれだけ相手が巨大だろうが、ほんの僅かでも蝕めたのならば、後は相手の魔力を消費して蝕み続けるので、割合ダメージな感じなのである。しかも、段々と割合が大きくなるタイプの。
その証拠にほら、都市に影を落とすほどの巨体はもう、半分以上が僕らの手の内だ。
『え、こういうこと出来たんだ、我の権能……』
『マガツって本当に力押しだったんだね?』
自分の権能ぐらい、きっちりと把握して欲しいところである。
『な、舐めるなぁ!!!』
ここで終わってくれれば楽だったのだが、流石は六枚翼と言ったところだろう。
アクパーラは巨体のほぼ全てをパージ。
浸食部分を切り離すことにより、コアのある部分を守り抜く選択をしたようだ。
『殺す! 災神――否! 貴様らはここで殺さなければ、必ず、我らが神の障害となる! 例え、我が魂が滅びようとも! ここで滅する!!』
巨大な円盤を切り離して出てきたのは、苔むす岩石の如き装甲を纏う騎士型の機体だ。
その大きさは、マガツオーや他の魔神機と同程度。
なるほど、巨大な円盤はあくまでも外装であり、あれが本体らしい。
『反転せよ、我が権能! 矛すら滅する、我が盾をここに!!』
そして、アクパーラの宣言と共に、機体の前に真っ白な大楯が現れた。
『お、おおぉおおおおおっ!!』
アクパーラはそれを構えたまま、絶叫と共にこちらに突進してくる。
自ら外した外壁を、真っ白な大楯でくり貫くように消し飛ばしながら。
『ふむ。絶対防御が転じて、絶対攻撃の権能となったか。あれに触れれば、我らの浸食と言えども消し飛ぶぞ、マサヒコ』
『まぁ、だろうね。だけどさ』
僕はそんな全身全霊の吶喊を眺めて、思わず苦笑してしまった。
『それって、今は絶対防御を使えないってことだよね?』
防御型の癖に、不慣れなことはするもんじゃないよ、アクパーラ。
『がっ!? な、なんだ!? 動け、ない!? 何だ、これは!!?』
アクパーラの吶喊は途中で止まる。
何故ならば、僕らの支配する空域に入り込んだからだ。
『言っただろう? 僕らの権能は浸食だって。それに、最初に見せただろ? 空間を支配して放つ一撃。だったら当然、戦闘中に僕らがここら辺の空間を掌握済みという想定ぐらいはするべきだよ』
既に支配した空間は、アクパーラの機体を蝕み、その動きを止める。
『更に言えば、その大楯だって物を消し飛ばすほど魔力を消費するタイプだろ?』
そこに雪崩のように、掌握済みの外装――放棄された円盤の大質量をぶつけていく。
『が、がががあぁああああああ!!?』
アクパーラは大楯を持たぬ部分は、直ぐに押し固められるように拘束されて。
消滅の大楯もまた、大質量の暴力に耐えきれず、直ぐに効果を失った。
『結論――――慣れないことはするもんじゃないよね、まったくさ』
僕はアクパーラが悪あがきをする前に、高速で接近。
その機体の胸部を穿ち、内側にある脈動するコアを掴み、浸食する。
『マガツ』
『な、なんだ? 我、ちょっとお主のことを改めてヤバいなって思っておるところじゃが』
『敵だし、相手がテンシだし、街の人間を皆殺しにしようとしたし――――洗脳を許可します』
『マジで!?』
『マジマジ』
『本人の口から、絶対に言いたくない情報を吐かせるのも!?』
『吐かせればよろしい』
『本人の人格を可能な限り残しながら、主君に反旗を翻させるのも!?』
『やればよろしい』
『ほっほーう! 正義の名の下に、相手の尊厳を蹂躙するのは楽しいのじゃあああ!!』
急にいきいきするじゃん、マガツ。
でも、これは無意味な非道では無いからね。
今、僕らは情報戦ではかなり不利な状況にある。可能な限り相手の情報は欲しいし、使い捨てに出来る手駒はいくらでも欲しいんだ。
というか、相手も復讐とは言え、人間を皆殺しにしようとする奴らだし。
別に洗脳して使いしてもいいよね?
駄目? いや、駄目だとしてもさ、これは正義の洗脳だから……明日の未来を守るための洗脳だから。
『ぐ、がががっ! させぬ! させぬとも!! ああ、彼の者の言うとおりだった! 準備して良かったわ――――自爆装置を!!』
だけど、どうやら相手もそこは対策済みらしい。
どぉん! と小規模な爆発がアクパーラの頭部で炸裂。それにより、アクパーラの記憶、人格、その他のあらゆるデータが吹き飛んでしまった。
『ああっ! 我の玩具が!!』
『発言、発言……まぁ、囮だったんだろうしね。僕らと相対することを想定するのなら、この程度のことは準備するか』
もっとも、コアだけはしっかりと浸食し、掌握済みだったので自爆の効果も及ばない。
これを使えば、ウルが難儀している燃料問題も解決するだろう。
うん、なんだかんだ悪くない戦果だ。
『それで、マガツ――この戦闘を察知した増援はどれくらいで来そう?』
『さてな? 相手に転移持ちが居れば、明日にでも来るだろうが……長くても四日はかからずにこの地に戦力が終結するじゃろう』
『そっかぁ』
ただ、この勝利はあくまでも、邪神側が用意した盤面の上でのことでしかない。
僕らが勝利するためには、この盤面をひっくり返すぐらいの力が必要だ。
『新型偽神機の開発と、エリスの操縦技術の向上を急がないとね』
『我は、出来得る限りで街の周辺に仕込みをしておこう。所詮は小手先だが、やらぬよりはマシじゃ』
六枚翼のテンシを倒しても、まだ相手の全容は不明。
王国の魔神機の活動も不明。
新型偽神機による暗黒竜討伐が上手く行くかも不明。
中々にハードな状況だけどまぁ、そこはマガツと契約を交わした時からわかっていたことだしね。
『じゃあ、世界を救うために頑張ってみようか』
『くははは! 我らの絆パワーで八つ裂きにしてくれる!!』
まだ、正義の味方を名乗れるほど実績があるわけじゃあないけれども――――少なくとも、この街の一つぐらいは守り抜いて見せるさ。
…………まぁ、街の方からは『災神が現れた! もう終わりだぁ!!』とか悲鳴が上がっているけども。
Q:また六枚翼のテンシが負けましたけど?
A:防御型が付け焼刃で攻撃機能なんてつけるから……