ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど?   作:げげるげ

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時は加速する!! 年を取れば取るほど!! 加速は続く!!! だから、精一杯生きるんだよ、閃光のように!!! 

だけど、ショート動画を見る手は止められない。それが人生さ!!!

はい、投稿します。


第14話 時は待たない

 銀閃の如く駆け抜ける機体があった。

 その動きは縦横無尽。

 足場は地面だけではなく、岩の壁、天井。更には、魔力の噴出によって虚空すらも足場にして加速する。

 まさしく速度特化。

 僕が知るどの機体よりも、それは――――新型偽神機『グラム』は速かった。

 

『はははははっ! 最高だぁ! こいつはまさしく最高だぜ、ウルぅうううう!!』

 

 グラムから発せられるパイロットの音声すらも、置き去りにするほどに。

 今、グラムという機体は、レーナという最高峰のパイロットを乗せることにより、魔神機ですら到達できないほどの速度で駆けまわっていた。

 ダンジョンの深層を、まるでアトラクションのように。

 

『あ、魔物発見! はい、即殺ぅ!!』

 

 時折、グレイブから『練習相手でもどうぞ』と言わんばかりに大型の魔物が差し向けられるが、それもまるで相手になっていない。

 銀色の閃光が迸ったかと思うと、次の瞬間には、魔物は肉体を切り裂かれ、絶命しているのだ。最低でも、グラムの速度を目で追える魔物でなければ、この絶対的優位は覆らない。

 まさしく、先手必殺の機体だ。

 ただ、問題が無いわけでもない。

 

『姉様、動き過ぎ。私がそろそろ気持ち悪い』

 

 まず、レーナは頑強過ぎるので特に気にしなくていいが、共に乗っているエリスはあまり長い間、この速度による負荷に耐えきれない。いくら天才であるエリスと言えども、レーナという規格外の頑強さにはついていけない。

 仮に、戦闘中にエリスが失神すれば、グラムの性能は半分以下まで落ちるだろうね。

 

『ああん!? 我慢しろ!!!』

『…………』

『がぁあああああ!!? 魔力負荷をコアからアタシに集中させたぁ!? や、やるじゃねーか、エリス!!』

『ちっ。仕留めそこなった』

 

 後、姉妹のコンビネーションがゴミ。

 一応、一緒の孤児院出身なだけで、血は繋がっていないらしいのだが、それでも義理の姉妹関係を名乗るぐらいには仲が良いのだが、御覧の通り、共闘するには二人の性格が合っていない。もっと具体的に言うなら、レーナの協調性がゴミカスだ。

 だが、それでも、グラムという新型偽神機は、二人で乗らなければまともに動かない。

 

『姉様、真面目にやって』

『わかった、わかった! 今度から、お前に負担がかからない移動法にすればいいんだろ!?』

『それが出来るなら最初からやって』

 

 高速移動を終えたことにより、銀閃にしか見えなかったグラムの全容が見えた。

 一言で表現するなら、それは『刀身の擬人化』だ。

 機体の色は銀。剣の柄から伸びる刀身の如く、光沢を持つ銀色だ。

 そして、何よりも細い。

 装甲というものを限りなく削り、可能な限りの軽量化に成功している。

 それでいて、レライエの如き節足動物の細さではなく、鋭く研ぎ澄まされた刃の如き細さだ。

 右の手に携えるのは、黒い刀身の剣。斬ることに特化した片手剣だ。

 だが、それとは別に、腰の左右に二本、短剣をホルスターに仕舞い込んでいる。

 無駄を省き、可能な限りの軽量化を目指すコンセプトに反する短剣二本だが、その重さ以上の役割はあるのだ。むしろ、あれがあるからこその複座式の偽神機と言えるだろう。

 

『二人とも、試運転はそこまで。次は僕らとの模擬戦だぞー。はい。位置について』

『しゃあ! 殺す!!!』

『兄様、御覧の有様なんだけど?』

『……エリスは頑張って』

 

 そんなわけで、新型偽神機グラムと最強勇者マガツオーの模擬戦である。

 なお、ウルはこの新型をアクパーラのコアを手に入れてから、二日で機体を仕上げて死んでいるので、絶対にすぐに直せないレベルの損傷を与えてはいけない。

 何せ、偽神機は魔神機とは異なり、自然回復しないのだから。

 

『マガツ。最初は権能無しでやるから、抑えておいて。僕は最近、権能の使い過ぎで無意識に出しちゃうから』

『もはや呼吸レベルになっておるからのう……まぁ、わかった』

『ありがとうね。大丈夫、その内、無意識でも完全に権能を使いこなして見せる』

『現時点で我よりも使えているのに???』

 

 そんなわけで、全力でやるわけにはいかないので、この通りの制限を掛けているのである。

 仕方ないね。ついうっかり壊したら、今までの苦労が台無しだからね。

 

『ひゃあ! 舐められすぎて、逆に快感になって来たぜぇ!! 行くぜ、エリスぅ!!』

『ああもう、効率的に動ける癖に無駄な動き』

 

 ただ、そうなると当然、レーナの方は模擬戦なんて関係ねぇ! とばかりにガチで襲い掛かってくるわけで。

 まったく、こんな本能だけで生きているような知性なのに、どうしようもないほどに強いなんて理不尽だ。

 ――――だけど、それはあくまでもレーナ自身の強さに過ぎない。

 

『甘い』

 

 僕は閃光の如き勢いで迫り来るグラムの腕を掴み、柔道の要領で投げ飛ばす。

 

『『???』』

 

 グラムのパイロット二人から困惑が伝わってくるが、何、難しいことじゃない。

 

『確かに、グラムの性能は高いよ? ウルは素晴らしい機体を作った、だけどね?』

 

 僕はソウル・リッパーを両手に持ち、悠々と構える。

 

『僕らのマガツオーよりは弱いに決まっているだろう?』

 

 以前のレーナとの相対とは逆に、今度は僕が強者側として。

 

『さぁ。たっぷり手加減しながら、君たちをきっちり教導してあげるから。無理なく、動作確認しながら挑んで来ると良い』

『……っ! これが、マガツミカボシ! 最悪の災神っ!!』

『マガツオーだからね?』

『へっ! 面白れぇ! 一度は挑んでみたかったんだよ! 五百年前! 全ての敵対者だったマガツミカボシに! やっぱり、お前の提案に乗って正解だぜ! なぁ、エリス!』

『姉様。早く訂正しないと、多分、攻撃が――』

『マガツ、浸食を解放』

『よし来た』

『ぎぃあああああああああ!!!?』

 

 …………まぁ、それはそれで苦労しそうだけどね?

 

 

●●●

 

 

 アクパーラを撃退した後、迷宮都市バルムは混乱に陥った。

 それもそのはず。

 何せ、六枚翼のテンシが襲って来たかと思えば、何故か、災神であるマガツが街を守り抜いたのだ。しかも、街に被害が及ばぬような戦い方で。

 これには街の有力者たちも、悩ませたらしい。

 

「罠だ! 我らを守護し、贔屓することによって王国との分断を謀っている!」

「だが、守護を受けたのは事実! これに報いなければ、災神以前に共同体としての信頼が損なわれる!」

「しかも、守護した後、全く姿を見せない……っ! 要求は何一つせず、こちらがどう出るかを見ているのだ! おのれ! なんたる邪知!」

「単なる悪行ではなく、善行でここまで我らを苦しめる! 五百年前の記録は、やはり真実だったか!」

 

 とまぁ、このような感じで。

 マガツとしては『そんな意図はないのじゃが???』と不服そうだったが、残念ながら当然の反応である。

 五百年前、好き勝手に暴れ過ぎたため、誰しも愛とか正義の心に目覚めたと思わないのだ。

 というか、思う奴が居たら、『お前、疲れてるんだよ』と生暖かい目を向けられてしまうこと請け合いだ。

 それほどまでに、五百年前の爪痕は大きい。

 

「とりあえず! 祭りの準備をしろ! 五百年前に多くの地で行われた、災神に『我らは恭順します』という意図の奴だ!」

「ですが、それでは王都に言い訳が!」

「いや、王都や大神殿の動きは怪しい……どうにも信用できん。六枚翼のテンシが襲撃する前、王都からの出向組が一気に引き上げた……流石に邪神側との結託はありえんと思うが……」

 

 なお、街の対応としては『へへっ! マガツ君に逆らうわけないじゃないっすかぁ!』となるらしい。

 とりあえず、実際に支配下に置かれるかはさておき、自分たちは敵対しませんよ、というスタンスを取るのだとか。

 問題はその話し合いの中で、何やら不穏な情報が手に入ったことだけれども……え? どうして、こんな情報が手に入ったのか、だって?

 

『我が主に、その相棒の方。我らが街を守っていただき、感謝します』

 

 小さな黒ドラゴン形態のグレイブが、色々と報告にやって来たからである。

 律儀だね、この人……もとい、ドラゴンも。

 

『つきましては、感謝の意思として、小生からいくらか物資や魔力に関しては融通させていただきます。来るべき決戦の際、お二人が十全に戦えるように』

 

 ちなみに、グレイブの報告に対して、マガツは『じゃあ、さっさと権能かそれに代わる力を寄越すのじゃ』と塩対応だったが、流石にそれには応じられないらしい。

 

『正直、今となっては力をお渡ししても構わないと思っているのですが、何せ、お二人はあれだけの探索者を用意してくださったのです。ここで契約を違えるのは違うでしょう?』

 

 自分の命と街の存亡がかかっている癖に、浪漫を優先させるところは流石、マガツから生み出された存在と言えるだろう。

 

『とはいえ、このまま襲い来るテンシへの対処をお二人に任せるというのはあまりにも不義理。こちらもコストを支払い、相応の対応をしましょう』

 

 逆に言えば、その浪漫に支障が出ない範囲ならばこの通り、色々と融通を利かせる程度のことはしてくれるようだが。

 何にせよ、これでテンシの増援に対して、ある程度の対策は練ることが出来そうだ。

 ウルも気合を入れて新型偽神機を完成させてくれたことだし。

 後は、レーナとエリスをグレイブに勝てるように鍛えるだけである。

 …………まぁ、その『だけ』が難しいのだけれどもね?

 

 

 

 というわけで現在。

 僕らは深層での試運転を終えて、拠点である宿まで帰って来ていた。

 

「うきゅう」

 

 パイロットへの負荷が大きいグラムに乗っていた所為か、エリスの疲労は決して軽くない。

 あるいは、唯我独尊極まるレーナに合わせて動いていた精神的疲労も合わさっているのか。

 グラムから降りた途端、エリスは動けなくなってしまったのだ。

 

「ほら、宿に戻って来たよ、エリス。たっぷり休みな……この栄養補給ゼリーを飲んだ後にね! 休息の前に、適度な補給を忘れずに!」

「兄様……食べさせて……」

「はいはい」

 

 だからまぁ、僕がこうして介護しているわけである。

 

「ちゅうちゅう」

「こら、赤ん坊じゃないんだから、せめて立って食べなさい」

「あぶー」

「こらこら」

 

 そして、わかったことなのだが、エリスは割と甘えん坊だ。

 力を求める欲求が落ち着くと、今度は子供らしく誰かに甘えて見たいという願望が生まれたらしい。

 やれやれ、そういうのはもっと信頼できる誰かを見つけてやるもんだけどね。

 

「マサヒコ……お主、そういうプレイが好きなのかのう? じゃあ、今度敵を鹵獲したら、知能を吸い取る感じを試そうではないか!」

「マガツ。色々言いたいところはあるけど、部下に叛逆されるのはそういうところだよ?」

「善意なのに!!?」

 

 少なくとも、邪悪な災神と契約している相手にやるもんじゃあないさ。

 

「エリス」

「うん?」

 

 だけど、向けられた信頼の分ぐらいは、しっかり師匠らしく動くべきだよね。

 

「最下層で暗黒竜と戦う時、本当に危なくなった時、君は躊躇わず逃げるように」

「えっ?」

「そのための転移魔道具も用意してあるから。『危ない!』と思う三段階前ぐらいに、躊躇いなく発動してね?」

「???」

 

 ゼリー飲料を口にくわえたまま、困惑の目をするエリス。

 大丈夫、これからしっかりと説明するから。

 

「レーナは恐らく、暗黒竜の戦いに没頭すると自他を省みなくなる。最悪、その戦いで死んでも構わないスタイルで戦おうとするだろう。これは、ああいう強すぎる人間の特徴だから、いくら口で何を言ってもどうしようもない」

「……まぁ、姉様はそういうところがある」

「だけど、君はその戦いに巻き込まれなくていい。君の目的は強くなることだけど、強くなるためにはまず、生き延びなければいけないんだ。だから、僕からの頼み事であっても、命の危険を感じるまで頑張る必要はない」

「…………」

 

 何せ、時間が少ない。

 時間があれば、万全の準備を施すのだが、今回にはそれが無い。

 自分の本懐に従って動くレーナならともかく、エリスは僕の要請に従って動いているだけだ。

 死なないように、予防線を引くのは当然のことだろう。

 

「最善は君たちが暗黒竜を倒すことだけれども、最悪は君が死ぬことだ。だから、君はまず、死なないように立ち回るように――」

「違う」

「へ?」

 

 けれども、エリスは何故か急に起き上がり、きっと睨むように僕を見つめて来る。

 

「違うわ、兄様」

「ええと?」

「私が欲しい言葉は違う」

「…………あー」

 

 どうやら、僕はまた何か間違えたらしい。

 ああもう、こういうところだよね、本当に。僕がボッチなのはさ。

 

「ごめん、エリス。君を侮っていた」

 

 こういう性分は中々変えられるものじゃない。

 だけど今、エリスが求めていることぐらいには応えてみせよう。

 

「君たちが暗黒竜を倒してくれると、僕らとしては物凄く助かる。だけど正直、レーナは自分が強すぎる所為で、新型の偽神機を使いこなせるとは思えない。暗黒竜との殺し合いの最中、壊して『また駄目だった』となる可能性が結構ある……だから」

「うん」

「君が頼りだ、エリス」

「うん!」

「僕たちを助けて欲しい」

 

 真面目に、真剣に、本気で。

 僕の本音を、エリスに告げる。

 

 

「任せて! だって私は、強くて凄い、誇り高いヴィランになるんだから!」

 

 

 そして、返って来た言葉に、その得意げな意味に、僕は思わず笑みを浮かべてしまった。

 まったく。師弟関係を結んだのは短い時間だったというのに、随分とまぁ立派になったものだよ。

 早くも免許皆伝をあげたい気分さ。

 

「ほうほう、あれが絆か……勉強になるのう」

 

 あとさ、僕らのやり取りを好奇心全開の顔で見ているそこのマガツ。

 本当にそういうところだからね???

 

 

●●●

 

 

 時は待たない。

 どれだけ進んでほしくなくても、等しく残酷に刻んでいく。

 それは、あらゆるものを浸食する権能を持つ僕らでも変わりはない。

 

「マガツミカボシ様と、お連れの召喚勇者様ですね?」

 

 エリスとレーナをダンジョンの深層へと送り出してから一時間後。

 僕らが泊まっている宿に、如何にもな魔女スタイルの服装で、一人の少女が現れた。

 大きなツバありの帽子。

 真っ黒なセミロング。

 様々な色が混ざった末に生まれたような、黒色の外套。

 僕らみたいな現代日本人が想像する『魔女の姿』を具現化したような姿で、その少女は現れた。

 

「私は王国からの使いで、クーと申します」

 

 その魔女スタイルの少女――クーは生真面目な表情で僕らに告げる。

 

「ただいまから、貴方様たちをぶち殺しますので、是非とも私たちについて来てください。その方が無駄に死ぬ人間が減りますので」

 

 実にまぁなんともな、脅しの言葉を。

 …………しかし、意外だね。てっきり、王国よりもテンシの増援の方が先に来ると思っていたんだけど?

 

「ほほう。面白い冗談だ――よかろう、まず貴様を殺して開戦の狼煙と――」

「はいはい。あんな見え見えの挑発に反応しなーい」

「むぅ」

 

 僕はとりあえず、血の気の多いマガツの頭を叩いて冷静さを戻す。

 そして、改めてクーを名乗った少女を観察した。

 表情――堅い。この場で死ぬ覚悟がある。

 魔力――仕込みがあり。多分、何か権能の罠が仕掛けられているね。

 周囲――他にも気配が多数。完全に囲まれている。

 

「わかった。君たちの望むところについて行こう。ただし、僕らの周囲の人間に手出ししないこと。約束してくれるかい?」

「…………上司から確認が取れました。了承します。では、そういうことで――」

「あ、ガチで契約魔術を噛ませたから、これを裏切ったら君と君の上司は死ぬからね?」

「えっ???」

 

 もちろん、冗談だよ! 死なない、死なない!

 ただちょっと、魔力とか魂を僕らが一時的に徴収する感じにするだけだから!

 

「は、はったりを! 貴方は召喚勇者! つい最近、こちら側の世界に――」

「炎よ、巨人の腕を象れ」

「…………うわぁ。なんで普通に魔術を……き、気持ち悪い……」

「じゃあ、次は君がどんどん衰弱する呪詛をぶち込むね!」

「や、やめてください! わかりましたから、もう!」

 

 うん、やっぱりある程度魔術は覚えておいて正解だったね。

 実のところ、流石にこのクーに―――魔神機を展開できる魔女に対して、有効な呪詛とか扱えるわけが無いし。

 さっきみたいに互いの了承のある契約魔術ならともかくさ。

 

「というか、何故、貴方はマガツミカボシと契約しているのに、普通に自由意思があるのですか!?」

「そりゃあもちろん、対等な契約を交わし合った相棒だからね!」

「わけがわかりません……ああもう、さっさとついて来てください!」

「もちろん」

 

 どの道、クーと戦いになりそうな感じだし。

 目的地に着くまでに、こっそりクーに浸食でも流しておこう。

 

「あっ!? 干渉!? 干渉しましたね!? 権能使いましたね!? 護符が反応しています! おのれ、油断なりません!」

 

 ちぇっ、失敗。

 

「殺します! 場所に付いたら絶対に殺しますから!!」

 

 僕は仕方がなく、大人しくクーの背中を追っていくことにした。

 …………まぁ、最低限の仕込みは出来たから、後は本番のタイミング次第だろう。

 

 

 

『はい、着いた! 着いたので殺します! 機体の展開も待ちましたし、今すぐ殺します! いいですね!?』

『落ち着いて、クー。作戦と違う……』

『クーちゃん、落ち着いてー、落ち着いてー。お茶でも飲むー?』

『これから戦闘ですよ!!?』

 

 えー、はい。

 着いていったところ、街の外にある荒野に辿り着いたわけですけども。

 あのね、ちょっと信じがたいんだけどね?

 …………魔神機が三体待ち構えていました。

 

『皆さん、相手はガチの災神です! 油断は禁物!』

 

 クーが展開した、白銀の装甲を持つ、騎士の如き姿の魔神機。

 

『油断なんて最初からしてない……むしろ、クーが肩に力入り過ぎ……』

 

 他の二体と比べて、明らかに僕から離れた位置で陣取っている、御伽噺の女王にも似たドレススカート型の装甲を持つ魔神機。

 

『まぁまぁ。皆、戦闘前だから食事を抜いて、ぴりぴりしているんだよー』

 

 最後の一体は、アクパーラほどではないが巨体だった。

 マガツオーの三倍ほどの大きさの機体であり、全体的に『歩く要塞』みたいな重装甲だ。

 その上、巨大な両の手からは、じゃらじゃらと音を立てて鉛色の鎖が蠢いている。

 

 ―――都合三体。

 

 王国が持つ魔神機の約半数――否、既に破壊された物と、ミレーヌの分を考えれば、一体を除いて、ほぼ全ての戦力がここに集結していることになる。

 えっ? 馬鹿なの???

 

『あのさ、君たち……マジで大丈夫? え? 王都とかの守護は? 他の場所は? テンシの襲撃はどうしているの? かなりヤバいんじゃない?』

『うっさいですよ!! こっちだって知ってんですよ、そんなことは!! でも、貴方たちが物凄く強いのが悪いんでしょうが!!』

 

 思わず心配の声を掛けたら、ブチ切れたクーの声が返って来た。

 なるほど。ここで確実に僕らを倒すため、無理を重ねていると。

 まぁ、それならそれで、こちらも都合がいい。

 

『魔神機三体だけど、やれる? マガツ』

『はっ、愚問だ! マサヒコ!!』

 

 ここで三体倒して、浸食して、僕らの手駒とする。

 欲しかった王国側の情報も手に入って、対テンシ用の戦力も手に入って一石二鳥だ。

 

 

 ――――がおんっ!!!

 

 

 などと考えていたら、唐突に空が割れた。

 強引な空間転移の弊害。

 テンシがやってくる前兆。

 

『あのさ、そこの三人。どうやら、僕らが戦っている場合じゃないらしいよ?』

 

 だからこそ、僕は三体の魔神機に向かって声をかけたわけだけれども。

 

『『『…………』』』

 

 何故か無言だ。

 それどころか、その場から動こうとしない。なんの反応も示さない。

 ――――予定調和?

 

『やはり居たか、世界の歪み』

『殺害推奨』

『殺害許可』

 

 思い浮かんだ疑問を探る暇すらも無い。

 空間転移によって現れたテンシは三体。

 そのどれもが六枚翼。

 

『拙者の太刀の錆びにしてくれよう』

 

 何故か、武者っぽい姿形の機体。

 

『全力推奨』

 

 人狼の如く前かがみの姿勢で、鋭い爪を持つ機体。

 

『全力許可』

 

 猿を連想させる身軽な姿形に、巨大な縄の如き武装を持つ機体。

 

 これもまた、都合三体。

 一体ですら厄介な六枚翼が三体。

 

『ああもう、本気だなぁ、あっちも!』

 

 僕は素早くソウル・リッパーを創造。

 魔神機よりも最優先に、六枚翼のテンシとの戦いに挑もうとして。

 

『ん?』

 

 ふと気づく。

 あまりにも魔神機側に動きが無いことに。

 いや、そればかりか。

 

『間に合ったようで何より』

『集合完了』

『集合締切』

 

 何かの見間違えだろうか?

 三体の六枚翼が、魔神機側と合流して……そのままフォーメンションを取った。

 まるで、仲間のように。

 

『言いましたよね? マガツミカボシとその勇者……私は、貴方たちをぶち殺すと。それはつまり、こういうことです』

『…………うわぁ、呉越同舟が過ぎるよ、それは』

 

 つまりは、三対三対一の三つ巴ですらなく。

 王国側は僕の思った以上に、思い切った作戦を立てたらしい。

 

『我々三人と三体が、今度こそ悍ましき災神を滅ぼします』

 

 思わぬ絶体絶命の危機に、僕は全身が強張るような緊張を得て。

 

『マガツ。五百年前の黒幕として、王国側の作戦に関して一言どうぞ』

『バーカ!!!』

『だよねぇ?』

 

 けれども、それ以上に僕らは、王国側の取った作戦の馬鹿らしさにドン引きしてしまった。

 なんで同じ人類の帝国とは戦争していて、人類撲滅を狙っている邪神側と共闘するんだよ、クソボケが。




新型偽神機  :一体。
魔神機    :三体。
六枚翼のテンシ:三体。


合計七体!! 一話で一気に出す奴は馬鹿だぜ!!!(実際にやった馬鹿の感想
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