ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
はい、投稿します。
エリスの人生に於いて、大体の人間は『敵』か『消極的な敵』だった。
何故ならば、エリスは混ざり者だからである。
混ざり者を説明するならば当然、この世界の種族について説明しなければならないが、事の本題ではないのでざっくりと話そう。
エルフ。ドワーフ。獣人。その他色々。ファンタジーっぽい種族は大体あると思ってくれて構わない。
ただ、この世界にはハーフが極端に少ないのだ。
異なる種族間で性交は可能であるが、それで子供を授かる可能性がかなり低い。
その理由に関して、遺伝子やらマナやら、詳しい説明が可能な学者はこの世界にいくらでも居るが、結局のところは『そういうデザインの世界』という事実に収束する。
数多存在する異世界群の中で、ここはそういう世界なのだ。
さて、古今東西、『稀である』ことに人類は『幸運』か『不吉』を見出す。
この世界の混ざり者に於いても、幸運の象徴であった時期もあったのだが、人間というのは異なる存在を虐げたがる習性を持つ。動物的な習性だ。この本能から逃れることは難しく、この世界に於いて、混ざり者のほとんどは不吉の象徴となった。もっとも、中には幸運の象徴として大事に扱われる場所もあるだろうが、それも辺境の一地方の話に過ぎない。
更には、どこぞの災神が戯れに『虐げられている存在の逆襲劇って面白いよね!』というノリで、混ざり者に力を与える事件が幾度も起こったので、いつの間にか完全に腫れもの扱いである。
「エリス。貴方の耳と尻尾は隠しなさい。見ている者を不愉快にするのです」
従って、エリスは生まれながらに悪意に晒されながら生きて来た。
生まれは捨て子。
どこぞの探索者が戯れに街の女を孕ませ、その結果、エリスが生まれたらしい。
赤ん坊の頃に縊り殺されず、孤児院に捨てられたのは、慈悲からではなく単に『なんか赤ん坊を殺すのって気分が悪いなぁ』という忌避による感情によるもの。
そして、拾った孤児院がエリスを育てたのも、街の自治体からの支援金を貰うために過ぎない。ある程度、子供の数が揃わなければ、来季の予算が減らされるところで、都合よく赤ん坊のエリスが舞い込んできたのだ。
かくして、エリスは少しの偶然が重なり、赤ん坊の状態では死なずに済んだわけである。
もっとも、死んでいないだけで、日常的に虐待は受けていたのだが。
「ぎゃははははははっ!! 弱い、弱いぃ!! なんだよ、雑魚ばっかりだなぁ!!」
エリスは孤児院の子供たちはもちろん、職員からも嫌われていたが、唯一、悪意を向けて来なかった相手が居る。
と言うよりも、歯牙にもかけなかった相手が。
「やっぱり、この孤児院はアタシが居るには狭すぎるぜ!!」
それがレーナだ。
レーナは元々、どこかの農村で暮らしていたらしいのだが、あまりにも悪童過ぎて、数多の矯正施設を破壊、脱走を繰り返し、その果てにこの孤児院に押し付けられた存在だった。
唯我独尊。
傲慢不遜。
基本的に、他人のことをいつでも蹴り飛ばせる小石のようにしか思っていない。
まさしく歩く災害。関わるだけ損しか生まれない存在。
だからこそ、エリスはレーナと姉妹のように関係を結ぶことになる。
何故か?
互いに手を結ぶに値する存在だったからだ。
「姉様、探索者ギルドへの登録方法を調べて来た」
「いよっし! でかした、エリス! ほら、報酬の肉だ!」
「わぁい」
エリスにとってレーナは、自然災害の如き理不尽な暴力の塊であり、時々、暴力の嵐に巻き込まれることがあるが、それでも自分に悪意を向けて来ない貴重な相手だ。
しかも、馬鹿で戦うこと以外が大体駄目なので、エリスが代わりに諸々の手続きをすることで、報酬という形で食料を得ていたのである。
悪意だらけの世界の中、多少我慢すれば、安定して食料を得られる都合の良い相手だったのだ。
そして、レーナにとってエリスもまた都合の良い存在だった。
有象無象は塵の如く飛ばされていくが、エリスには根性があった。目端も効いた。面倒なことを代わりにやらせることも出来た。
報酬として食料を幾分か渡すことになるが、生まれながらに強いレーナにとって、食料の確保はさほど難しいことではない。
従って、レーナはエリスという妹を受け入れていたのである。
「お世話になりました、くたばれゴミども」
ただ、その関係もレーナが探索者として本腰を入れるまでのものに過ぎない。
レーナが暗黒竜に一目惚れして、本気でダンジョン攻略に挑むようになると、自然と関係は薄れていった。
会えば挨拶も会話もするし、困った時は頼れる相手。
それでも、今までのように日常的に食料のやり取りをするには難しくなった。
そうなれば、ろくに食事も出さない孤児院に所属しているメリットなどは無い。
エリスは速やかに見切りを付けて、孤児院から路地裏へと移り住んだ。
住む場所を変えたところで、エリスに向けられる悪意は変わらなかった。
むしろ、路地裏という生き馬の目を抜くような生存競争の場所では、より苛烈にエリスを排除しようとする者たちが居た。
けれども、エリスは曲がりなりにも、暴威の塊であるレーナと共に居たのだ。
「もう私に絡んでこないで……次は、もう片方も折るから」
エリスはある程度の暴力を獲得していた。
半分獣人の血が混ざっているおかげか、王国の人間の大半よりエリスは頑強だったのだ。
無論、戦うことを本業にしている探索者に比べれば、雲泥の差ではあるが。
少なくとも、探索者と懇意にしている女や、悪党などと関わらなければ、エリスは問題なく路地裏でも生きて行けた。
相変わらず、周囲は敵だらけだが、それでも敵を利用する方法はいくらでもある。
多少、自分がリスクを背負っても、犯罪行為をするための手足として使う方法はいくらでも。
そうすれば、エリスはとりあえず、飢えを癒し、目の前の数日を生きていくことは出来た。
安定とは程遠いが、それでも、死から遠ざかった。
――――いつまで、こんな生活をすればいい?
だからこそ、僅かに生まれた余裕は、エリス自身を苛む結果となった。
野良犬のような人生。
誰からも疎まれる環境。
辛うじて生きていけるだけの日々。
こんなものを続けたところで、何か意味があるのだろうか?
「駄目だ。私みたいなのは、生きる意味とか、幸せとか、そういうのは考えたらいけない」
喉元に触れた陰鬱な死の刃は、腹の底から湧き上がる怒りで吹き飛ばす。
そういう風に、エリスは己の絶望を誤魔化して生きて来た。
そして、これからもそういう風に生きていく。
恐らくは、他の誰かと同じように。
誰かにとっては日常のように。
いつか、薄汚い路上でくたばる時まで。
「なれるさ! 君は、強くて凄い、誇り高いヴィランになれる!」
そういう生き方をするはずだったのだ。
災神を伴った異邦人が、エリスに救済の手を差し伸べなければ。
●●●
エリスにとって、佐藤雅彦という人物の印象は、ころころと変わるものだった。
最初は分かり易いカモ。
卑屈な態度に、美形で上品な連れ合い。
何かの旅行でこちらに来た、初々しい素人。ちょっと脅かせば、金銭を巻き上げらえる。そういう美味しい相手に見えたのだ。
次は、圧倒的強者。
エリスが持つ手札を、笑いながら切って捨てる。
身体能力も。
逃げるための技術も。
相手に許しを乞うための演技も。
全て、何もかも通じない絶対強者。
その次は、訳が分からないけれども、とりあえず利用できる相手。
探索者ギルドの場所を教えたり、質の良い宿に紹介などしたりと、それなりにコストを賭けた分だけ――否、それを補って余りあるものを与えて来る相手だった。
何せ、エリスは自らのことなのに知らなかった。
質の良い、滋養のある物をたらふく食べるだけで、こんなにも力が漲るなんて。
雅彦から数時間、ちょっとものを習うだけで、こんなにも強くなれるなんて。
エリスは今まで、数多の詐欺師を見てきたが、雅彦は本物の中の本物だった。
まるで、魔法のように何もかもを与えてくれる万能者だった。
だが、しばらくするとエリスは雅彦が人間であることを知った。
レーナを気絶させるほどの強さを持っている癖に、妙に理性的というか、良識のようなものを持っている。
宿を紹介したエリスが、元の路地裏に戻ろうとすれば、『いや、普通に使えば?』と宿の別の部屋に住みつく許可を与えて。
けれども、『こいつに情を抱かせて、離れられないようにしよう』とエリスが夜這いに向かえば、真面目な態度で拒否されて。
その癖、エリスが年相応の子供のように甘えれば、兄のように構ってくれる。
――――まるで、とびっきりの善人。
エリスはついうっかり、そのように思ってしまうこともあるのだが、その度にマガツを見て思い直す。
マガツはよくよく観察してみれば、邪悪極まりないオーラを纏う、途轍もなく怖い存在だった。普通に傍に居るだけで、ぞわりと尻尾の毛が全て逆立つぐらいの悪寒を抱かせるのだ。
正直、長時間ずっと同じ空間に居たのならば、エリスは気がおかしくなってしまうだろう。
そんなマガツと、雅彦は四六時中共に居るのだ。
ただの善人にはそんな真似は出来ない。
ならば、佐藤雅彦とはどういう人物なのだろうか?
その疑問の答えを知る者は恐らく、この世界には居ないのだとエリスは直感していた。
謎の異邦人で、万能者。
災神マガツミカボシの契約者。
六枚翼のテンシから、街を守った影の英雄。
どれだけ肩書きを並べても、エリスは雅彦のことを推し量ることなんて出来ない。
故に、エリスはそういうことを考えるのを止めた。
どれだけ目を凝らしたところで、海の底なんて見えるわけが無い。
ならば、とエリスは考え方を変える。
雅彦が何者なのか? ではなく。今、エリス自身がどうしたいのかを。
力は手に入った。
不足はない。
探索の仕方は教えられた。
不足はない。
暗黒竜の討伐も、逃げて良いと言われた。
正しい判断。
エリスは今、何一つ困っていない。
その気になれば、とっとと街から離れて安全圏へと逃げることも可能だろう。
逃げた後、どこかの街で、のんびりと新しい生活圏を築くことも可能だ。
何せ、既に力はある。
いくらエリスが混ざり者とはいえ、既に手に入った力を活用すれば、雅彦と出会う前のような生活をする必要はない。
そう、生存だけを考えるのならば、ダンジョンになんて向かわず、様々な責任を投げ捨てて、この街から逃げることが最善なのだ。
「任せて! だって私は、強くて凄い、誇り高いヴィランになるんだから!」
それでも、雅彦の頼みを受けてしまった理由は一つ。
格好つけたいと思ってしまったのだ。
生まれて初めて、格好いいと思われたいという人からの頼みだったのだ。
恋や愛なんて、そういう高尚なもので動けるほど、エリスの情緒は育ってはいないが。
つまりは意地。
子供の我儘と何も変わらないような意地一つで。
――――エリスは、竜殺しに挑むのだ。
●●●
「かはっ!? けほっ、えほっ!!」
走馬灯から帰還した直後、エリスは己の状況を思い出す。
『ひゃはははははははぁっ!!』
『中々に苛烈。ですが、削り合いで有利なのは小生の方です』
現在地はダンジョン最深部。
地下深くにどこまでも広く開かれた、暗黒の巨大空間。
相対するのは、このダンジョンの管理者にして、災神の一部――暗黒竜グレイブである。
『吹き飛びなさい』
暗闇の中、破壊の前兆を示す黄金の光が弾ける。
「――疑似権能、全開っ!!」
そして、黄金の光が空気を叩き割るような音と共に招来するよりも前に、エリスはとっさにグラムの機能を発動させた。
アクパーラのコアを使っているが故に、再現可能な権能。
絶対防御を。
『ふむ。相変わらず、もう一人の反応が良い』
黄金の奔流を防ぎ切った後、賞賛するような言葉が、暗黒の中から投げかけられるが、エリスは応える余裕などない。
つい先ほどまで、戦闘の負荷に耐えかねて気絶していたのだ。
走馬灯が脳裏を過るほどのダメージを心身に受けているのだ。
あと少しだけ、エリスの意識が戻るのが遅かった場合、グラムは――レーナとエリスは共に敗北していただろう。
『ははははっ! つれねぇなぁ! もっとアタシを見ろよ! 暗黒竜!!』
『さて。お前の腕前は見事だが、独りよがりのダンスに付き合うほどの器量を、小生は持ち合わせてはおらぬ』
レーナはグラムを高速で動かし、暗闇の中へと何度も挑みかかる。
その度に、エリスには見えない何かが弾け、火花が散る。
そして、火花が散った一瞬だけ、暗闇の中から暗黒竜の巨体が見えるのだ。
かつて、街を守った時と寸分違わず、雄々しく圧倒的な存在感を放つ、絶対強者としての威容が。
『だったら! 引きずってでも躍らせてやるよぉ!!』
レーナの腕前は凄まじい。
幾度もグレイブの爪と尻尾を掻い潜り、何度も頑強な鱗を切り裂いている。
だが、それでも致命傷までは遠い。
このままでは順当に行けば、耐久が足りず、敗北は必至。
最善を尽くしても、相打ちの結末しか待っていない。
『ははははぁ! 最高だぜ! 夢が叶う気分ってのはなぁ!!』
問題は、レーナがそれでも構わないと思っていること。
レーナは強すぎるが故に、格上との戦い方が分かっていない。
正面から戦い過ぎるのだ。
何故ならば、相手を打ち倒すことよりも、相手との戦いを楽しむことに重きを置いているが故に。
「兄様の推測が正しすぎる」
コクピットの中、エリスは状況を整理する。
現状の勝率は悪い。
一応、切り札はあるが、今の段階では使えない。
レーナは強いが著しく協調性に欠け、エリスが合わせるしかない。
エリスが無理やり機体の主導権を奪うことは可能だが、その場合、レーナは気絶して全ての操縦負荷がエリスに集中する。
その状態でまともにグラムを動かせるのは、精々三分が限度だ。
エリスが動かすグラムで、三分間の内に暗黒竜を打ち倒すのは不可能。
「――――本当に?」
コクピットの外側からは、激しい戦闘音が鳴り響いている。
猶予は少ない。
けれども、エリスは焦ることなく勝利への道筋を考える。
「本当に、私には何もできない? 姉様を補助する数合わせに過ぎない?」
一つ一つ、情報を整理して。
自身の経験を用いて、しっかりと精査して。
何より、師匠である雅彦の教えを思い出して。
ついでに、酷過ぎるマガツの過去語りも思い出してしまって。
「馬鹿言わないで。私は、あの人の弟子なんだから」
エリスは決断と同時に行動を起こした。
『姉様』
『ああん!? なんだ、エリス! 切り札の使用はまだ早い――』
『邪魔だから眠っていて』
『んぎゅわぁ!!?』
まずは、機体の魔力的負荷を思いっきりレーナに押し付けて、その意識を奪う。
グラムの操縦権限を手にする。
『む? 何のつもりですかな?』
意識を集中するとコクピット内から通じる視界が開けて、グラムの暗視機能で暗黒に潜む竜の姿が見えた。
相対すべき敵の姿が見えた。
そして、理解する。
――――マガツ様よりも怖くない。
あれは殺せる生物であると。
『生憎、私は急いでいるの。兄様のために、早く貴方を殺さないといけないから』
『ほほう。忠義の心ですか、悪くはない。ですが、容易くこの小生を倒せるとでも?』
『倒してみせる。これから』
エリスは黒い刀身の剣を捨て、腰に携えた二本の短刀を両手で構える。
本人も知らぬ内に、その構えが雅彦のものと似通っていることにも気づかずに。
『良いのですか? その短剣は見たところ、武具というよりは権能を発動させるための媒体。その刀身では、我が命に届きませんぞ?』
『出来るわ。だって、私は兄様の弟子だから』
『ふむ。あの方ですか……確かに凄いお方でしょうが』
グレイブは少しの沈黙の後、憐れむように言葉を紡いだ。
『組んだ相手が最悪過ぎます。小生の創造主にして、最悪を越えた災厄。マガツミカボシ様と関わった者は誰しも破滅します。たとえ、彼の超勇者の如き心意気があるお方だろうとも、その宿命からは逃れられませぬ』
確信を持った言葉だった。
五百年前、離反を決意するに至るだけの経験を持っているが故の言葉だった。
『そんなことない! 兄様は凄い! マガツ様と本当の意味で絆を結べている人だから!』
エリスによって誘導されている言葉だった。
『幼子よ。貴方はマガツミカボシ様のことを知らなさ過ぎる。あの方が真の意味で他者と絆を交わすことなど無い。小生は知っているのだ。あの方の心は、根本的に我らと違うのだと』
『だとしても! 私は知っているわ! 二人が仲良しだって!!』
『ふっ。幼子よ、可哀そうではあるが、それは――――』
『だってこの間、いちゃいちゃだいしゅきホールドでセックスをしてたもん!!!』
『!!!??!?!??』
暗黒竜の精神に差し込まれたのは、エリスが仕掛けた虚言。
強者であるが故に持つ、余裕の隙間を差し込む言葉の刃。
更には、その言葉の刃には、マガツという特大の毒が込められていて。
『――――今!』
グレイブに特大の隙が生まれた瞬間、エリスは人生最高の踏み込みで駆けだした。
『権能反転』
携える短剣には、アクパーラが持つ絶対防御を反転させた、絶対攻撃を付与。
狙うは暗黒竜の頭部。
首を落し、頭蓋を貫くことにより、僅かな時間での必殺を実現させんとする。
『ぐっ!? 虚言か!? 虚言であってくれ!!』
とっさにグレイブはグラムを尻尾で叩き落とそうとするが、既に遅い。
致命に至る刃は、もう懐に入り込んでいる。
『ならば!!』
ざんっ! とグラムの短剣がグレイブの首と顎に突き刺さる。
刃が半分ほど入り込む。
だが、命を奪いには足りない。首を落し、頭蓋を貫くには足りていない。
何故か?
『忌まわしき力でも! 全力の戦いならば!!』
グレイブが浸食の権能――その模造品を解放し、絶対攻撃の権能を蝕んだからだ。
与えられたものとは別に、グレイブ自体がマガツの一部であるからこそ可能な荒業だった。
『ぬぅおおおおおっ!! まだ、小生は負けては――』
『マガツ様は最初、触手プレイで行こうとしたんだけど、段々と純愛系のプレイにはまって、毎晩語尾にハートマークが付く感じのセックスをしてる!』
『うヴぉえ!? やめろぉおおおおっ!! 虚言でも小生に想像させるなぁ!!』
つまりは、虚言だろうが何だろうとも、集中力を削がせてやれば、その権能は解れる。
絶対攻撃の権能は息を吹き返し、刃は進む。
『ぐぬぅ! 幼子よ! 恥は!? そんな戦い方で恥は無いのですか!?』
『無い!! 私の経験からも! 兄様からの経験からも! そんなものはない!! 勝たないといけない時! 死力を尽くすことは何も恥ではない!!』
『ぬぅ!? それは確かに……っ! だが、それでも小生は――』
『ちなみに、マガツ様が時々、熟睡している兄様の頭を撫でてニコニコしているのはガチオブガチだから』
『マジですか!? って、しまっ』
ざんっ!!!
どれだけ汚かろうとも、卑怯であろうとも、その刃は正しく勝敗を切り分けた。
『はぁ、はぁっ、はぁっ! 残心! 忘れず…………ヨシ! 勝った!!』
エリスは最後の最後まで油断なく、グレイブの死亡を確認すると、ようやく大きく息を吐く。
『兄様……マガツ様……私、やったからね……』
雅彦とマガツの尊厳を切り売りした結果の勝利であるが、紛れもなく勝利は勝利。
先のことは考えず、今だけは成し遂げたジャイアントキリングの余韻に浸るエリスなのだった。
・グレイブの敗因 → マガツ関係の精神攻撃が特攻弱点だった所為。