ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど?   作:げげるげ

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好きな雷系の詠唱は! 元農民の天狗が使う奴です!!!

はい、投稿します。


第16話 予定調和に雷鳴は響く

『倒れなさい、災神! 世界全てを嘲笑う者よ!』

 

 白銀の魔神機が、手にした大剣を振るう。

 けれども動きは単調。

 何かの武術は収めている動きだけれども、僕からすれば欠伸が出るほど分かり易い動き。

 ソウル・リッパーで受け流して、そのまま急所に刃を差し込めば、早々に一体を屠ることは可能だろうね。

 

 ――――大剣が、浸食を込めたソウル・リッパーすら容易く切り裂くほどの威力でなければ。

 

『受け流された!? 断ち切られることが前提の動きでしたか!』

 

 ふむ。

 僕は先ほどの大剣の動きとソウル・リッパーの強度を考え、明らかに運動エネルギーも魔力も足りていないと判断する。

 あの程度の力の込め具合で、ソウル・リッパーは切り裂かれない。それだけの威力は出ない。

 ならば当然、答えは権能だろう。

 何らかの権能――恐らく攻撃系のもので、大剣の威力を上乗せしたのだ。

 

『ならば、これならどうです!?』

 

 だが、そんな僕の推理は、白銀の魔神機が三つに分身したことで修正を余儀なくされる。

 攻撃系の権能だと予測していたのだが、何故か、魔神機が三つに増えている。

 大魔術の類? 否、魔法陣や詠唱はおろか、魔力の動きすらなく、そんなことができるとは思えない。

 ならば、これも権能か?

 

『さぁ、我が三つの太刀! 避けられるものならば――』

『ダークネス・クラッシャー』

 

 よくわからないので、まとめて空間ごと圧壊させることにした。

 

 ――――キンッ。

 

 けれども、白銀の魔神機を筆頭に、他の五体も圧壊させるはずの一撃は、澄み切った切断音によって威力を削がれた。

 

『その技は、我らの同胞が受けたが故に。見切っているで御座る』

 

 六枚翼のテンシ――武者型の斬撃だ。

 どうにも、あれは斬撃の範囲を拡張させる権能を持っているらしい。

 しかも、距離だけではなく、切り裂く対象を空間そのものにまで広げているみたいだ。

 

『し、死に! 死にかけましたが!? おのれ! 怖すぎる!!!』

 

 その所為で、白銀の魔神機を吹き飛ばすだけの結果となってしまった。

 やれやれ、未熟――というよりは、相手が多すぎるね、これは。

 

『いや、お主が相手を殺さぬように手加減しているからじゃぞ?』

 

 …………まぁね。それはそう。意識はしていなかったけれども、僕は恐らく、先ほどの一撃もギリギリで殺さないように手加減をしていたんだと思う。

 

『マサヒコ。我はお主の凄さをよく理解している――だが、それでも、この戦力差で殺す気で行かないのは不可能じゃ』

『……だよねぇ』

 

 マガツの指摘に苦笑しながら、僕は跳弾の如く到来した魔力弾を切り払う。

 

『初見殺しに対応しないで……』

 

 目を凝らすと、離れた位置から狙撃銃のようなものを構えている女王型の魔神機の姿が。

 

『ふむ』

 

 更に観察する。

 女王型の周囲と僕の周囲には、不自然に光の屈折が多い。

 透明な『何か』が、展開されていると考えていいだろう。

 そして、跳弾のような動きと合わせて考えると。

 

『感覚を拡大する奴かな? それで、弾丸を反射する武具と組み合わせて、狙撃を死角からぶち込む戦法だね』

 

 中々に厄介な遠距離担当じゃないか。

 

『怖い……何こいつ、たった一撃で見抜いてきた……』

『油断してはいけませんよ、リアン! 災神だけではなく、その契約者も手練れです!』

『別に、ボクはクーみたいに単独で正面から挑んでない……』

『なんですとぉ!?』

 

 白銀の騎士型と女王型は会話をしながらも、こちらに攻撃する手を緩めない。

 中々に良いコンビネーションだ。

 

『しぃやっ!』

 

 更には、少しでも隙を見せれば武者型が『伸びる斬撃』で、こちらの命脈を断とうとしてくる。

 その度に、騎士型は斬撃の邪魔をしない立ち位置へと移動。

 ふむ、連携が取れているね……テンシと魔神機の癖に???

 

『マガツ! こいつら、事前に練習して来てやがるよ!!?』

『まったく。どの面を下げて、散々殺し合った者同士が手を組んで練習なんてしているのやら』

『『『お前の所為だけど!!?』』』

 

 テンシと魔神機の共闘に関して文句を言ったら、倍以上の声量で帰って来た。

 やはり、五百年前のやらかしはかなりマガツを恐怖の対象として、周囲に知らしめているらしい。

 

『拙者たちテンシは、人類を滅ぼす者! だが、貴様は人類を弄ぶ邪悪! いかに幾度も殺し合った仲とは言え! 貴様を討つまでは!!』

『権能解放』

 

 叫びと共に、武者型が斬撃を繰り出す。

 更に、人狼型が武者型に向けて、光の衣のようなものを被せる。

 

『せいぃやあああ!!』

 

 すると、武者型の動きが一段階上がる。

 斬撃の速度も、斬撃の威力も、何もかもが。

 なるほど、人狼型は他者を強化するタイプの権能か。

 

『権能解放』

 

 それで、猿型はこちらに対して、何やら灰色の光を被せて着ようとしたので、ざっくりと切り裂いて浸食。蝕んで解析。

 んー、相手の性能を下げる『衰弱』の権能かー。

 まともにくらうと面倒そうだなぁ、っと。

 

『追撃推奨――ぎっ!?』

 

 猿型がこちらに荒縄――権能を注ぎ込んだ捕縛装置を投げて来るので、それを回避しながらソウル・リッパーを投擲。ただし、隠密の権能で隠した状態でね。

 すると良い感じに胸部に刺さったので、そこから浸食して支配――っと。

 

『させません!』

『集中射撃……』

 

 流石に、武者型と騎士型の前衛二体、そこに遠距離から女王型の援護があると捌くので手一杯だね。

 支配し損ねたよ、おのれ。

 

『ぎ、ぎぎぎぎっ!』

『緊急要請! ハヌマーンの修復を要請!』

 

 人狼型は猿型を庇いながら、前衛から下がる。

 

『はいはーい、回復するよー』

 

 そして、下がったら直ぐに要塞型が鎖を伸ばして、猿型に接触。

 何かの権能らしき眩い光を、鎖を介して注ぎ込むと、ソウル・リッパーごと傷を消し飛ばし、猿型を回復させる。

 

『完全回復』

『回復感謝』

『なんのー。災神を討つまではお仲間だよー!』

 

 魔神機がテンシを回復させるなよぉ!

 ああもう、面倒な回復役も居るとか! 本格的にマガツを倒しに来てるじゃん!

 …………だけど、これで全ての機体の能力は把握した。

 

 

 騎士型:攻撃系と分身の権能。妙な感じがする。

 

 女王型:感覚の拡大。遠距離射撃。跳弾。

 

 要塞型:鎖による回復と浄化。多分、浸食対策。

 

 武者型:斬撃の拡張。六体の中で一番、戦闘技術が高い。

 

 人狼型:他者の強化。そこそこ前衛は出来そう。

 

 猿型:他者の衰弱。前衛は苦手だが、身軽に動く。

 

 

 えー、以上六体がですね。

 事前に練習していたのか、互いの弱点を補い合うように連携を取ってくるわけですよ。

 いやぁ、こうやって考察しながら攻撃をさばいているわけだけど、正直、そろそろ限界が近いというか…………はぁ。

 

『マサヒコ』

『わかっているさ。でも、まずは策を試してみる』

 

 陰鬱な気分になりながらも、僕は用意していた策の一つを発動させる。

 

『出番だ、魔物ども』

 

 隠蔽の権能で隠していた――グレイブから借り受けた、大型の魔物を三体動かし、要塞型へと強襲させる。

 

『んのわぁー!!?』

『ディナ!?』

 

 大型の魔物といえども、魔神機相手では単なる時間稼ぎの囮しかできない。

 だが、逆に言えばそれぐらいはできるというわけだ。

 その上、この通り、あまり戦闘慣れしていない騎士型は、僕から視線を逸らしてくれた。

 

『はい、一つ――』

『させるかぁ!』

 

 んでもって、予想通りに武者型が斬撃で邪魔をしてくるから、それを回避してから、余裕をもってソウル・リッパーを騎士型へ投擲。白銀の鎧を貫通し、右腕を切り落とした。

 

『っづぁあああ!?』

 

 ふむ。

 予想通り、そこまで痛みに強いわけではない、か。

 

『クー!』

 

 迫り来る幾多の狙撃を切り落としながら、僕は騎士型の頭部を掴み、盾にする。

 これで、狙撃と斬撃の拡張に対応が可能というわけだね!

 

『はい、浸食しまぁす』

『ぎぃがああああああああああ!!?』

 

 ここで浸食して、手駒を一つ増やしておくことが出来れば楽なんだけどなー。

 

『我が! 権能は! 万能! 無敵ぃ!!』

 

 ああ、やっぱりこうなったか。

 騎士型は光のバリアを展開。

 僕の浸食を弾き飛ばし、ついでに僕の手も弾いて、更には切り落とした右腕もくっ付いた。

 なるほど、なるほどね?

 

『み、見ましたか!? マガツミカボシ! 私は、貴方の権能だろうとも――』

『君の権能は虚偽、あるいは虚構だろう?』

『――っ!?』

 

 僕がそう告げた瞬間、白銀の鎧から光が失われた。

 くっつけたはずの右腕は再び落ちて、鎧はくすんだ銀色へと変わっている。

 

『大方、虚構だとバレるまでは大体なんでもできる、って奴かな? だけど、看破されたら、それまでの事象のツケが来る、と。初見殺しなら色々出来そうだよね? ああ、でも、相手に『嘘だろ、これ』とか思われたら、それはそれで看破扱いになるのか。予想以上に扱いが面倒な権能だよね、それ』

『……あ、あぁ』

『じゃあ――タネの割れた手品師は退場しろ』

 

 僕は手早く、騎士型を片づけようと四肢を斬り落とそうとして。

 

『させないよーっ!』

 

 予想よりも早く、要塞型が復活して来た。

 僕が騎士型を戦闘不能にするよりも早く、要塞型の鎖が庇い、斬撃を弾く。

 

『回復をせよ! 拙者たちがその間、食い止める! 行くぞ、犬猿コンビ!』

『『委細承知』』

 

 駄目だね、これは。

 武者型と人狼型が前衛で僕の攻撃を受けて、猿型が衰弱の権能で僕の注意を引く。

 今の状況で衰弱の権能がまともに成功すると流石に危ないから、僕も意識をそちらに割かざるを得ない。

 

『よっし! クー、完全回復したよー!』

『……ありがとうございます、ディナ。ですが、私の権能はもう――』

『おバカ! 私は知っているよー! クーが毎日、一生懸命練習してたってことを!』

『ディナ……うん、頑張ります! たとえ権能が無くとも、食いついて見せる!』

 

 はい、そうこうしている間に、騎士型が復活したね。

 権能を無効化した状態なら脅威は半分以下だけど、でも、動ける魔神機がそこにあるだけで割と厄介だから、そこを欠点として咎めることは難しい。

 うん、このままだと攻撃を凌げはするけども、その内、僕の魔力が尽きて負ける流れだね。

 浸食で相手の魔力を奪うことも出来はするけれども、流石に六体が相手だと、どれだけ頑張っても魔力の総量的にこちらが不利だ。

 

『マサヒコ。予め言っておくぞ』

 

 その上、マガツの方からついに警告が来てしまった。

 

『我はお主の生存を最優先にする。お主なら機体が大破しても大丈夫かもしれんが、そうなる可能性が出た場合、我は本体を出現させることを躊躇わぬ』

『…………ちなみに、本体が出て来た場合の周辺被害は?』

『そこの雑魚どもと一緒に、バルムの街が滅びる』

『あー、なるほどね』

 

 つまりはあれだね? 『真面目』にやれ、ってことか。

 

『テンシたち! マガツミカボシがああ言ってますけど!?』

『問題解消』

『対策準備』

『マガツミカボシの情報は、五百年前から保存済みで御座る。案ずるな、我らにも切り札がある』

 

 そして、あちらのテンシ魔神機連合の方は、それに対抗する手段も持ち合わせていると。

 …………うーん、困ったな、そうなると。

 

『――殺すしかなくなっちゃったよ』

『『『『――っ!!?』』』』

 

 僕は冷たくなった心のまま、ソウル・リッパーの切っ先を騎士型に向ける。

 

『残念だよ。君たちは手加減するには強すぎる……殺すしかない』

『は、ははっ! 何を今更! 私たちは最初から、そのつもりで――』

『だから、まずはその要塞型の魔神機を殺す』

 

 けれども殺意は、騎士型を通り越して、用心深くこちらを窺っている要塞型へと向ける。

 

『っつ! な、何かなー? 私、そんなに恨みを――』

『この中で、君が一番厄介だ。君を倒さないと連携を突破できない。だが、逆に言えば、君さえ突破してしまえば、割とどうでもなる』

『それは、過大な評価だねー?』

 

 間延びした声に緊張が混じる。

 肝は太い方だが、歴戦というほどではないな。

 だったら、通じるはず。

 

『だから、僕は何を差し置いても、君を殺す。確実に殺す。この先、僕が負けることになったとしても、君だけは死ぬ。絶対に僕が殺すからだ』

『それ、は――』

『君らだって、僕を倒すのに、誰も死なずに達成できるとは思っていないだろう?』

 

 うん、通じた。

 要塞型は警戒ではなく、恐怖で動きが強張り始めた。

 多分、自分の命じゃなくて、同乗している召喚勇者の命を惜しんでいるんだね。

 

『さ、させないっ! させないですよー! 私も、この子も! 死にませんっ!』

 

 へぇ、なるほど。

 その感じだと、召喚勇者は年下……子供の可能性もあるか。

 いやぁ、後味最悪の殺しになりそうだね、くそったれ。

 

『同盟者たちよ、邪悪な言葉に騙されてはいかん! お前たちが死ぬより前に、我らが死ぬ! その覚悟で我らは此処に来た!』

『て、テンシさん……』

 

 はい、そこでフォローに来るよね、武者型は。

 君が一番、この中で戦いを理解しているからね。

 僕の言葉で連携の要が鈍るのを避けたいのだろうね。

 でも、それは悪手だ。

 

 

『え? 今更命を惜しむの? バルムの街を見殺しにしようとした癖に』

『『『……っ!!』』』

 

 

 テンシに庇われれば庇われるほど、この毒は君たちを蝕むのだから。

 

『その反応、やっぱり当たりだね。道理で、僕らに接触してくるのが早いと思ったんだよ。でも、テンシと共謀していたという話なら納得がいくね……まったく、酷いなぁ。マガツを倒すためとはいえ、街に住む何万人もの人を見殺しなんて! でもまぁ、大神殿は召喚勇者の命も使い捨ての道具ぐらいにしか思ってないだろうし。こうなるのも当然と言えば、当然かなぁ!?』

『そ、そんなことありません! 私は、私たちは!』

 

 僕の言葉から仲間を庇うように、騎士型が前に出るが、駄目だね。

 機体の動きが鈍っているよ?

 

『だって、君が最初に言ったんじゃないか。三人と三体で僕らを倒すって――――僕は、六人と三体で、僕らに戦いを挑んで来ると思っていたのに』

『――――あ』

 

 はい、言葉の毒を更に重ね掛け!

 揚げ足取りは基本!

 レライエもそうだったけど、魔神機は戦闘中、基本的に主導権は魔女の側にある。

 だけど、勇者側の意識が無いってわけでもないと思うんだよねぇ!

 

『ちがっ! 違います! 私は! 貴方を死なせたくは――いや、早く死にたいとか言わないでください!』

『敵の言葉に惑わされないで……』

『大丈夫だよー! 泣かないで! お姉さんが守るからー!』

 

 するとまぁ、御覧の通り。

 いくら召喚する前から事前に関係を深めていた勇者たちでも、実際に死の間際にあれば、魔女との連携が崩れるよね。

 

『あ、悪魔……悪魔を超えた悪魔で御座る、こやつ!』

『脅威判定』

『警戒更新』

 

 テンシが何やら僕の攻撃ならぬ口撃にドン引きしているが、これぐらいは普通だよ、普通!

 つーか、囲んで叩いている側がそういう態度ってどうかと思うんだけどぉ!?

 

『じゃあ、戦いを再開しようか。宣言通り、まずは要塞型を殺す。無惨に殺す。その内側に居る召喚勇者も五体をバラバラにした後、僕らが喰らって魔力炉として活用する。他の魔神機も、倒した傍から喰らって、取り込み、蝕んでやる』

 

 だけど、それは即ち、きちんと僕の言葉がテンシ側にも届いているということ。

 これで魔神機を庇うのも、見捨てるのも良し。

 既に、連携は崩れている。

 魔神機は全員殺さなくてもまぁ、要塞型を殺せば勝手に瓦解するから、最低限の殺人で済む。

 気持ち悪いのは最低限で済む。

 

『いい。それでいいぞ、我が契約者よ』

 

 ほら、マガツも満足。

 流石に殺しは避けられないけれども、これがたった一つの冴えたやり方って奴だろうね。

 さぁ、気分は乗らないけど、異世界で初めの殺しを始めるぞぉ!!

 

 

『なーんてね!!!』

『『『…………は?』』』

 

 

 ――――となるわけが無いだろうが、ボケがぁ!!!

 

『性質の悪い冗談はここまで。まぁ、意趣返しとして、これぐらいは我慢してよ』

 

 仕方がないから殺す?

 相手が強すぎるから殺す?

 確かにね? この世界に来る前の僕なら、そういう判断をしたかもね? 悪辣に、容赦なく、いつか主人公に倒される悪役みたいな判断を。

 ――――だけどさぁ。

 

『だって君たち、ずっと名前を間違えているんだからさ』

『ま、マサヒコ? 一体何を?』

『はい、僕の相棒も悪ノリし過ぎ。そういうところが駄目なんだよ、まったくさぁ』

 

 違うだろ。

 今、ここに居る僕は違うだろ。

 誰にも寄り添えず、誰のことも信じられない怪物じゃあない。

 割り当てられた悪役を演じるマクガフィンでもない。

 

 

『改めて、初めましてだよ、クソ馬鹿ども! 僕らの名は最強勇者マガツオー!! 愛と絆を力に変えて! あらゆる理不尽を蝕み砕く! 正義のスーパーロボットさ!!!』

 

 

 相棒が認めてくれた主人公なんだ。

 降りかかる理不尽なんて、鼻歌交じりに蹴散らして、僕らの正義を実行してやろう。

 

 

 

『さぁて! 全員きっちり手加減して、殺さずに勝つぞぉおおおおおお!! あ、でもテンシは殺します!! 殺して素材として活用するからでぇす!!!』

『貴様ぁ!? 何が何だかわからないぞ、貴様ぁ!!?』

 

 そんなわけで戦いの再開である。

 よぉし、武者型のテンシはぶち殺して、新型偽神機の素材にするぞー。

 

『ま、待て、マサヒコ! お主は――』

『前にも言っただろ? マガツ……僕を信じてくれ』

『…………は、ははははっ! ああ、そうだったなぁ!』

 

 相棒がちょっと戸惑いの声をかけて来たけれども、問題はナッシング!

 絆の力で、マガツも理解してくれたぜ!

 ここに至ってはもう! ハイテンションでぶちかまして行くしかないってよぉ!!

 

『行くぞ! マサヒコ!』

『いいよ! マガツ!』

『『最強勇者マガツオー! ハイパーモード!!』』

 

 説明しよう! ハイパーモードとは、マガツオーの性能を無理やりごり押しで上げて、後先考えずに暴れるスタイルである!

 つまり、その場のテンションで僕らはハイになり、戦術とか戦略を投げ捨てたのだ!

 

『なんっ!? 何故、急に力が――』

『我流・陽炎!!』

『ぬぐわぁ!?』

 

 はい、地元の剣豪が覚えていたなんか変な技をパクって、どーん!

 ゆらりと揺らめく刀身的な剣術で、武者型の右手を落して、蹴飛ばして前衛から排除!

 

『次は君たちだぁあああああああああ!!!』

『うわああぁ!!? こっちに来ました! こ、このぉ!』

 

 さぁ、本命の魔神機たちを倒しに行くぞぉ!

 

『たとえ権能が無くとも! 私は!』

『邪魔ゴミぃ!』

『みぎゃん!?』

 

 騎士型は弱くなったので、思いっきり殴り飛ばして行動不能に!

 

『狙撃――』

『遅い!』

 

 女王型には隠密で隠していたソウル・リッパーの一つを遠隔操作。

 どっすりと刺して、行動不能に。

 

『後ひとぉつ!!』

『させませーん!!』

 

 だけど、残りの一体がつよぉい!

 要塞が浄化の鎖を操り、僕の攻撃に対応してくる!

 ええい、回復型の癖に接近戦も可能だとは! 予想していたけど、やっぱりここで止まってしまうか!

 

『増援推参』

『緊急助力』

 

 そうこうしている間に、人狼型と猿型が支援にやってくる。

 むーん! 相手が浄化系でなければ、このまま高速起動で連れまわして、浸食するまでの時間を稼ぐんだけどね! 流石にここは無理やり突っ張る場面じゃない。

 

『はーい、一時離脱! 下がりまぁす!』

『あいたぁ!?』

 

 僕は去り際に要塞型に内部へ響く感じの打撃を打ち込み、適度にダメージを与えてから離脱。

 前衛としてやってくる二体のテンシと要塞型から距離を取る。

 

『ふぅ…………いやぁ、やっぱりしんどいね、マガツ!』

『はははは! そうだなぁ、マサヒコ! だが、負けたら本体でドーンだからな!? お主の周りを!』

『それじゃあ、頑張らないとね!!』

 

 いくらかダメージを与えて行動不能にしてみたけど、要塞型が居る限り復活する。

 やれやれ、中々生け捕りが厳しい条件だけど、もう頑張るって決めちゃったからね。

 やるだけやってみるさ! スーパーロボット系の主人公らしくさ!!

 

『……何故だ?』

『うん?』

 

 僕が『やっぱりハイパーモードは魔力消費がえぐいなぁ』とか思っていると、復活した武者型が僕らに問いかけて来る。

 

『何故、今更、そのような真似をする!? できるのならば、五百年前のように我らを蹂躙すればいいだろう!? それとも、我らを侮辱しているのか!?』

 

 拙者とか、御座るとか、そういうキャラづくりを投げ捨てての問いかけだった。

 怒りが滲むような問いかけだった。

 本来の僕なら、その怒りを上手く操作して致命的な隙を作るんだけど、今の僕はマガツオーだからね。

 

『君さぁ。一体いつの話をしているの? んでもって、誰の話をしているのさ? 今、ここに居るのは、最強勇者マガツオーだよ? 君たち邪神とその眷属をぶち殺して! ついでに、国家の戦争も止めて! 一切合切をハッピーエンドにぶち込む正義のスーパーロボットさ!!』

『なんだ、なんだそれは!?』

 

 じゃき、と武者型が刀を構える。

 

『全力支援』

『全力妨害』

 

 そこに、人狼型が武者型を強化。猿型が灰色の光を、今まで以上に生み出して、僕への妨害を敢行する。

 

『超勇者の真似事か!? 五百年前、あれほど暴れ回った癖に! 今更、今更改心したとでも!? 馬鹿を言うな! 貴様は変わらぬ! 変わるわけが無い! そもそも、どの面を下げてそんな真似をしているのだ!? 貴様が、どれだけの悪行を敷いたと思っている!?』

 

 怒りと共に刃を振るう武者型。

 ああ、けれども、悲しいかな――――怒りは刃を鈍らせるし。

 

『だーれが、パクりだよ、ボケがぁ!!!』

『ぐわぁ!!?』

 

 鈍った刃に当たるほど、僕は間抜けじゃない。

 

『とことん馬鹿だね、君たちは!』

『何を――』

『いい加減、僕を通り越してマガツに話しかけるのをやめろ、ボケカスぅ!!』

 

 ソウル・リッパーを投げ捨ててからの、無手による迎撃。

 振り下ろされた刃を回避し、すかさず連打。浸食を込めた連打。

 

『マガツの因果なら僕が背負う! マガツへの復讐者なら、僕が殴る! 何故って!? 僕がマガツの相棒で!! マガツオーの最強パイロットだからだぁあああああああ!!!』

『ぐぁあああああああ!!!?』

 

 時代遅れの遺物はくたばれ! という気持ちを込めて連打し、武者型と、ついでに人狼型と猿型もまとめて殴り飛ばす。

 

『倒させはしないよー!』

 

 だが、案の定、要塞型が直ぐに回復してしまうし、その間を復活した魔神機組が防御する。

 ハイパーモードでも押し切ることは難しい、か。

 だったら――――って、ん?

 

『ああ、そうか』

 

 思わぬ出来事――否、予定調和を感じ取り、僕は密かに安堵の言葉を吐いた。

 

『何を、勝ったつもりで居る!?』

 

 すると、何やら武者型が僕の言動を勘違いしたらしい。

 

『我々は負けない! 貴様が、何を名乗ろうとも! 正義の味方を気取ろうとも! マガツミカボシの過去が消えぬように! 我らはここに勝利するために来ている! 絶対に、敗北は無い! 貴様が、貴様らが、そのふざけたお遊びを止めぬ限りは!』

 

 なるほど。

 よほど五百年前にマガツがやらかしていたようだ。

 邪神だけではなく、その眷属にまで憎悪されているとは、流石マガツだよね。

 だけど、だからこそ、君たちは負ける。

 

『残念、僕らは勝つよ。だって、僕らは最強勇者マガツオーだからね!』

『だから! だからなんだというのだ!? まさか、誰かが助けに来るとでも!?』

『――――うん、その通り!』

『……は?』

 

 予定調和に。

 僕らの絆の力によって、君たちは滅びるのさ、古びたテンシでも。

 

 

 ――――どぉおんっ!!!

 

 

 落雷の如く、多大な威力を伴って、眼前の地面に一振りの剣が突き刺さった。

 それは、マガツオーのために誂えた一本の剣。

 頼りになる仲間が成し遂げた、竜殺しの報酬。

 まるで、雷そのものを刀身に変えたような、黄金の剣。

 

『それに触れさせるなぁああああああああ!!!』

 

 武者型が危機を察知して叫ぶが、遅い、遅すぎる。

 

『行くよ、マガツ』

『ああ、必殺の時間だ』

 

 僕らは心を合わせて、その黄金の剣を手に取り、宣言する。

 

『『第二権能発動』』

 

 新たなる力の獲得を。

 

 

『『マガツオー・ライジング』』

 

 

 時間が間延びした世界で、振るう数は六つ。

 テンシに三つ。

 過去の因縁を断ち切るように、命脈を断ち切る。

 魔神機に三つ。

 僕とマガツの技量を合わせた神技により、魔神機を顕現させる核たる部分のみ切り裂く。

 殺して三つ。

 生かして三つ。

 合わせて六つの必殺技。

 その名は。

 

『『マガツ流・六華雷閃(りっからいせん)』』

 

 かくして、敵が瞬く間に、六つの雷鳴が響いて。

 

『……君を信じてよかったよ、エリス』

 

 僕らの絆が、何一つ瑕疵の無い勝利を刻み込んだ。

 

 

 

『ぜぇ、ぜぇ、はぁー、しんどい!!!』

 

 僕は格好良く勝利を決めた後、格好悪く弱音を吐いた。

 

『使いづらい! 使いづらいよ、この『黄雷』の権能! マガツの浸食と水と油だし! 混ぜ合わせて、良い感じにコントロールするの凄く大変だったんだけど!』

『初見でそれが出来るお主はもはや、何なんじゃろうな?』

『決まってる! 愛と正義のスーパーロボットを駆るパイロットさ!』

 

 などと、マガツに強がってみるものの、かなり消耗が激しい。

 雷に近い速度で移動し、必殺の斬撃を六つ繰り出したのだ。

 流石のマガツオーとはいえ、消耗しなければおかしいレベルの攻撃だった。

 

『そんなわけだから、戦いが終わって疲労していても、きちんと倒した魔女と勇者たちを回収するんだよね! 保護しないと危ないだろうし』

『案ずるな、マサヒコ。既に、本日の敗者に格納済みじゃ』

『まさか、あの空間がまた使われる日が来るとは思ってなかったよね……さて、と』

 

 完全無欠の勝利を決めた僕らマガツオーであるが、生憎、ここでエンディングに入るというわけにはいかない。

 何故か?

 まぁ、それはね? 普通に考えてみると当然というか…………これだけ自陣営の六枚翼を出したんだ。僕らをこれだけ消耗させたんだ。

 普通に考えて、邪神が追い打ちしない理由が無い。

 

 

 ――――ざんっ!!!

 

 

 再び空間が割れる――否、違う。

 切り裂かれる。

 空間がまるで紙切れのように切り裂かれ、そこから圧倒的なプレッシャーを伴った機体が姿を現した。

 

『我が眷属たちよ、感謝する』

 

 赤、青、黒、白。

 異なる色の刀身が四つ。

 即ち、四本の魔剣がそこにはあった。

 そう、その機体は四本の魔剣を持つ、四本腕の機体だった。

 

『これでようやく、我が本懐が果たせる』

 

 連想したのは、阿修羅像。

 厳しい修行を積んだ物が、己が心身を全て注ぎ込んで彫り上げた像。

 思わず、そのように感じてしまうほど、その姿は荘厳な気配に満ちていた。

 

『……っ!』

 

 マガツオーと融合してなお、向けられた殺気に後ずさりしてしまうほどに。

 

『マガツミカボシ。外なる理を持つ災神よ。我が名はアレス。古き戦の神。五百年前の恨み、今、ここで晴らしてくれよう』

 

 そして、荘厳なる機体――アレスは四つの魔剣の切っ先を僕らに向けて。

 

 

『んー? 違うよぉ。私たちは王国側の魔神機なの! あの悍ましい災神の姿に変身して、誘き寄せる作戦の真っ最中なの!』

『む? え、えぇ……そ、そっかぁ……いや、じゃあ、すまん。じゃない、ごめんなさい。ワタシ、間違えてしまったのです』

 

 

 物凄く雑なマガツの演技に騙されて、一旦、切り裂いた空間の向こう側に帰ってしまった。

 …………えぇえええ?

 

『――――邪悪! 邪悪! 邪知暴虐!! おのれ、マガツミカボシ!! またワタシを騙したのですね!!? 死ね、バーカ!!!』

『超受けるのじゃ』

 

 なお、三十秒後ぐらいに戻ってきて、半泣きの声で抗議して来た。

 うん、なるほど。

 確かに、以前マガツが言っていた通り……この戦神は割と駄目な感じの馬鹿だ。




捕虜ゲットだぜ!!! なお、邪神との連戦。
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