ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
はい、投稿します。
享楽都市イルヴァ。
それは、大陸中の欲望と悪徳が集まる街。
迷宮都市バルムが、冒険の活気にあふれた混沌都市ならば、享楽都市イルヴァは真っ黒。
それも、タールをかき混ぜたような真っ黒な街だ。
その街の中では、ろくに衛兵も動けない。
王都から派遣された治安維持機構も、最低限の役割しか果たせない。
何故か?
許しているからだ。
イルヴァという街に於ける自由と悪徳を。
街を統べる領主――――魔王ソロモンが。
しかし、だからこそマーリンという大魔術師は、そこを拠点としているらしい。
マガツ曰く、『奴は他者の人生の分岐点を眺めて愉悦する趣味だからのう』とのことだから、人の破滅が集まるイルヴァという街に身を置いているのだろう。
無論、本当にそこに居る確証はない。
何せ、そのマーリンという大魔術師は神出鬼没の上、マガツの情報だって『たまに封印の場に遊びに来て、煽っていた時』の物でしかない。
大体、最新のものがアバウトに二十年とか三十年前の話なのだとか。
――――中々にか細い希望だ。
けれども、僕らは戦神アレスに対抗するため、龍宮寺大和という新たな戦力を得るため、どうしてもマーリンの助力が必要なのだ。
だから、僕らは諦めない。
治安がクソみたいな街にだって乗り込み、絶対にマーリンを……もしくはその手がかりを探し出して見せる!
というわけで。
「うぉおおおおっ!! スプラッシュトルネード! 全開っ!!!」
「なにぃ!!? 水場が無いところで、これほどの水魔術を!!?」
僕は享楽都市イルヴァ――の途中にある、牧歌的な村で、牛舎の掃除をしていた。
いや、ふざけてない。
うん。真面目。超真面目だよ?
何せ、これはマーリンを探し出すために必要なことだからね。
「マーリンという大魔術師を探し出しても、こちらの頼みを聞いてくれるとは限りませんわ。マガツさんの話を聞く限り、地位や富にも頓着し無さそうな性格ですし。ここは一つ、何か好物でも手土産として持っていくのがよろしいかと」
そして、共に享楽都市に行くことになったミレーヌの提案でもあるのだ。
故に、僕らは享楽都市に赴く前に、マーリンの好物を入手しようと頑張っているわけである。
具体的には、かなり広い牛舎の掃除を僕一人でやっているのだ。
マーリンの好物のチーズが、この牧歌的な村で特殊な製法によって作られた超貴重品らしいからね。購入権を確保するために、こうして村の人たちのお仕事を代わりに引き受けているわけだよ。
え? ミレーヌとマガツ?
ミレーヌは根っこからお嬢様なので戦力外。
マガツは論外。
他の仲間たちは、洗脳した三体の魔神機組と一緒に迷宮都市の防衛だからね。
必然と、僕しかやる人が居ないんだよね。
「ううーむ。予約券も無しに、いきなり訪ねて来たものだから半ば無茶ぶりのつもりだったが、凄まじいね、君は。畜産業の申し子みたいな子だよ」
「あははは、ありがとうございます」
まぁ、僕は農家や牧場で職業体験したこともあるからね。
手伝いを頼まれてもこの通り、小一時間で全ての牛舎はぴっかぴかだよ。
「これは、一等良い『神域チーズ』を見繕わなければならないね」
僕の仕事ぶりに気を良くしたのか、村長さんから中々に質の良いチーズを貰えた。
一見するとどこにでもあるただのチェダーチーズなのだが、マガツ曰く、この世界におけるチーズの極致とも呼べる味わいらしい。
しかも、特殊な製法のためか、安定した量を作ることは叶わず、今、僕に渡してくれた分は、本来は村長さんが食べるように取っておいた物なのだとか。
…………なんか、この世界にやって来てから、現地民と心温まる交流をしたのは何気に初めてなような?
「まぁ、いいかぁ! チーズは手に入ったし、早速、牧場で遊んでいる二人を呼びに行かないと…………ん?」
などと、一仕事終えた達成感に浸っていたところ。
「ううっ……ぐすっ……お姉ちゃん、お姉ちゃんがぁ……」
何やら、村の片隅で泣いている幼女を発見。
麦わら帽子を被った、オーバーオール姿の幼女だ。
「…………目の前の子供を救えず、世界が救えるか、ってね」
少し迷ったけれども、今の僕は正義の味方なのだ。
貰ったチーズはマガツの固有空間に入れた後、警戒心を与えないように、第一印象重視の顔で幼女に近づく。
大丈夫。普段は卑屈な笑顔な僕だけど、流石に子供相手には配慮するからね。
「やぁ、君。どうして泣いているんだい?」
「ぐすっ……お兄さん、だぁれ?」
幼女の前まで近づくと、僕はすっとしゃがみ込み、目線を合わせて話し始める。
「僕はマサヒコ! 旅人さ! この村には、美味しいチーズを買いに来たんだよ。お嬢さん、君のお名前は?」
「…………ララ。わたし、ララって言うの」
「なるほど、ララちゃんだね。君は、どうして泣いていたんだい? どこか怪我しているなら、僕は治療魔術を使えるけど?」
僕の問いかけに、幼女――ララはプルプルと首を横に振った。
「ちがうの。わたし、かなしくて、泣いていたの」
「悲しくて? それはまたどうして?」
「…………三日前にね、お姉ちゃんがね、悪い人たちにさらわれてね」
「悪い人かぁ」
盗賊とか山賊とか、そんな感じかな?
確か、調べた限りでは、イルヴァは堂々と人身売買とかもしているらしいし。
となると、『商品』の調達の被害を受けたってことかな?
「たぶん、ね。お姉ちゃん、ね……『幸運の少女』って呼ばれるぐらい、運がすごかったから。それで、えんぎもの? として、大きな街で売られようとしているかも、って……大人たちが……」
「そっか……村の人たちは探しに行ってくれないの?」
「大きな街に売られたら、もうダメだって……兵士さんも、あの街はダメだって……」
「…………」
ボロボロと大粒の涙を零すララ。
その姿は痛ましいことこの上ないが、村の人たちを責めることはできない。
享楽都市イルヴァは、王国の中でも特例中の特例。治安最悪の無法都市だ。
何の伝手も、戦闘力も無い村人が言ったところで、カモにされておしまいだろう。
「わかった」
「ほぇ?」
だからこそ、こういう時のために、正義の味方が居るんだろうね。
まぁ、僕なんだけどさ。
「僕は旅人だからね。その大きな街に行く機会もあるだろう……だから、君のお姉さんを僕が助けてみせるよ」
「ほ、ほんとう!?」
「ああ…………絶対に助けるさ!」
ララの熱い視線に、思わず『可能な限り頑張る』とかちょっと駄目な部分が出そうになったけれども、正義の味方はこういう時、きっちりと断言するもんだろうさ。
実際、どこまでできるかはわからないけれども、とりあえず、死んでないなら助けてこようか……うん、わかっているよ? アレスとの決戦が迫っている時に、こんなサブクエストをしている暇があるのか? とか自問自答はあるよ。
でもさ、仮に僕が世界を救えたとして――――その後に、この時の事を思い出しながら『あれは仕方が無かったんだ』とかさ。変に悟ったことは言いたくない。
そう、結局のところ、これは単なる僕の我儘に過ぎないのだ。
「君のお姉さんの名前と、姿が映っているものとかあるかい?」
「うんっ! まってて、お兄さん!」
ララは涙を拭った後、とてとてと走って行く。
そして、五分後。
「お待たせ、お兄さん!」
「お、おう……」
妙に大きな袋を引きずっているララの姿が、そこにはあった。
「はい、これはお姉ちゃんの姿が映った写真。名前はリリ。正確は物凄く善人で、馬鹿みたいにお人よしで頑固だから、連れて来る時は気を付けてね!」
「うん? うん……わ、わかったよ」
妙にはきはきとした口調で話し出したララの姿に気圧されつつも、僕は写真の中に映った少女――リリの姿を確認する。
妹であるララに似た顔つきに、小麦色の肌。蜂蜜色のショートヘア。
なるほど、これだけ特徴があれば、一目見ればわかるだろう。
「後、これは護符……わたしの手作りだから、肌身離さずに身に着けてね?」
「おお、ありがとう!」
問題があるとすれば、それは。
「そして、これが私の髪の毛を縫い付けた手袋。お姉ちゃんと接触する時は、この手袋越しにしないと危ないからね」
「お、おお?」
「もしも、お姉ちゃんと肉体接触してしまった時は、この丸薬を三分以内に飲むこと。大丈夫、毒でも薬でもないよ。ただ、わたしなりにお姉ちゃんの『特性』を解析して、少しでも打ち消すために作った魔法薬――」
「ちょっと待ってくれる???」
ただの可哀そうな被害者枠だった少女、リリが何やら、こう、触れてはいけない系の怪異みたいな取り扱い受けていることぐらいかな!
え? 因習村なの、ここ? お姉ちゃんって何かの隠喩? 変な神格とか居る???
「まず、確認させてもらっても良い? 君のお姉ちゃん……リリって人は、その、人間?」
「多分」
「断言してほしかったなぁ!」
「お姉ちゃんはね。幸運の少女って村の外では知られているんだけど、それは一面に過ぎないというか…………しいて言うなら『奇運』なの。お姉ちゃんは、奇跡みたいな運を、良くも悪くも周りに振りまく生物なの」
「…………具体的には?」
「村の外から来た商人が、お姉ちゃんにセクハラしようとしたら、何故か、足元に物凄く綺麗な宝石が転がっていて……その商人は宝石を売って一儲けしようとしたらしいんだけど、しばらくして、宝石を目的とした強盗に……」
「殺された?」
「殺されかけて命の危機のところ、通りすがりの魔術師に助けられて、美少女ホムンクルスにTSすることになったって」
「うわぁ」
やばいよー!
多分、そのリリって人、運勢の特異点とかそんな感じだよぉー!!
「恐らく、お姉ちゃんを攫った賊はもう……原型と留めていないか、この世界に居ない」
「怖すぎる!」
「わたしたちは、お姉ちゃんの影響を抑えるため、この村の中で大切に収容してきたのに……いつだって人間は愚か……最悪、明日に世界が滅んでもわたしは何も驚かないから」
あっれー!? 世界の危機って、こんな簡単に発生するものだっけ???
「享楽都市イルヴァに連れていかれた以上、わたしたちにはもう何もできない……世界が、国が滅びる可能性もあるって絶望していた……そんな時に、お兄さんが現れたの!」
「想像以上の重荷!?」
「お願い、お兄さん……お姉ちゃんを……ううん、世界を救って!!」
「えぇ……」
僕は涙ながらに縋るララから目をそらし、すっと周囲の様子を窺う。
「ふっ……もう終わりかと諦めていたが、なんだ、世界に英雄は居たのか」
「これもリリちゃんの奇運のおかげかねぇ?」
「いや、諦めないララちゃんの心が、旅人さんと縁を繋いだんだろうさ」
「なんにせよ、俺たちもタダで旅人さんを送るわけにはいかねぇ……出来る限りの準備はしないとな!」
その反応に、ララの話が嘘ではないことを察した僕は、色々な気持ちを飲み下し、再び視線を合わせた。
ぐっと、力強い笑みを浮かべながら。
「任せて! 何を隠そう、僕は正義の味方! 君のお姉さんも、世界も! まとめて救ってみせるさ!!」
「わぁ! お兄さん、すごーい!!」
流石に世界の危機云々は冗談だと思いたいが、どうやら、僕が引き受けたサブクエストは、思いの外重大そうな案件だったらしい。
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「くはははは! そんな奴、居るわけがなかろう? そんな面白そうな奴がおったら、我ももうちょっと早く復活していたのじゃ!」
なお、その報告をしたところ、マガツは「ぷぷぷー」と嘲笑してまるで信じていない。
大方、運を多少良くする程度の魔術と、その反動でそういう風に扱われているだけだろうと。
「わたくしとしてはいち早くマーリンを見つけるための行動をしてほしいところですが……子供が泣いていたのならば仕方ありませんわ。ここに大和様が居ても、同じように行動したことでしょうから」
一方、文句を言われることを覚悟してミレーヌにも報告したわけだけど、意外にすんなりと認められてしまった。
いや、意外でもないのか? 異邦人にはクソカスな対応だけれども、自国民には優しいといおうか、思いやりがあるタイプなのかもしれない。
まぁ、好きな人と会う前だから、格好つけているだけかもしれないが。
それは別にいい。
僕だって、人のことは言えない程度には格好つけているんだからさ。
「ほう。マーリンから多少は聞いていたが……随分とまぁ、栄えたものじゃのう」
そんなわけで今、僕らは享楽都市イルヴァの内部に入り込んだわけなのだけれども。
…………うん。
昼間だというのに、無駄にぴかぴかする看板が多いし、怒声が聞こえるし、人と悪魔の客引きがごろごろいるし…………歌舞伎町かな?
「金を返せないなら死ねやぁ!!」
「ぎゃぼっ!?」
いや、平然と道端で殺人が行われても、全然通行人が気にも留めていないな。
流石にこれを歌舞伎町扱いは失礼である。
もうちょっとこう、無法な感じの街並みの街に例えた方が良い。流石にこれ以上はヘイトスピーチになるから言わないけど。
「初めて来ましたけれども……下品な街ですわ」
「そうか? 我は嫌いではない……有象無象共が命を張って芸をする様は愛らしいぞ?」
「やはり、貴方は邪悪ですわね、マガツミカボシ」
「くふふふ、こんなものは邪悪ですらなく、悪趣味の範疇じゃよ?」
そして、早くも仲間二人の関係がギスギスして来たので、さっさと本命の場所に向かうことにしよう。
この二人、相性が悪すぎる。
「へへへっ、兄ちゃんに綺麗な姉ちゃんたち! ちょーっと俺たちと話を……あ、すみません。なんでもありません、違うんです、ちがっ……やだ、やだぁああああああっ!!!」
道中、いくらか絡んで来るチンピラが居たのだが、そういう輩は大抵、マガツが玩具にして道端に捨ててしまうので、その内、誰も近寄らなくなった。
うーん、ここまでして衛兵も来ないとか、本当に無法というか末法というか。
何にせよ、さっさと目的を果たしてしまおう。
サブクエストとメインクエスト、両方一気に達成する、一石二鳥の作戦を始めてしまおう。
下調べしたところによると、イルヴァという街の人身売買は全て、街の中央にある巨大なカジノが管理しているらしい。
たまに闇商売するところも出て来るが、直ぐにカジノ関係者に処理されてしまうのだとか。
何故か?
これはあくまでも推測なのだけれども、この街は無法であっても『外法』まで堕ちると困る理由があるのかもしれない。流石に、道端に屋台感覚で人が売られるようになれば、それに伴った外法魔術も横行し、街は街としてまともに機能はしなくなるだろう。
そこら辺の線引きはきちんとしているらしい。
さて、そんな巨大カジノでの人の売買なのだが、目玉商品などはこう、豪華絢爛に飾り付けられて、カジノ側もかなり気を遣って管理するらしいのだけれども。
「駄目です、皆さん!! 人を売り買いすることなんて! 道徳に反することですよ!! 思い直してください!!」
サブクエストの対象であるリリはこう…………なんというか、ね?
――――かなり危険な猛獣扱いで、他の商品からは隔離されていた。
だって、檻だよ? 他の商品と違って、明らかにひと際大きくて頑丈そうな檻に、何枚もの護符とかが張られているんだよ? 闘技場に放つ魔物とかの扱いじゃん、あれ。しかも、凄腕の剣闘士とかが相手にする奴。
「お金で人を買っても! 心は満たせません! 心が満たされたと感じるのは! 単なる空虚な幻想です! お願いです! 皆さん! この子たちを解放してください!!」
なお、そんな扱いをされているリリの方は、悲劇の中でも善性を失わない少女のような振る舞いをしていた。
こ、こいつ……自分が異常だと理解していないのか?
「お願いです! 皆さん、どうか話を――」
「うるせぇ!! さっきからうるせぇんだよぉ! なんで一時間もエンドレスで叫べるんだよ、テメェは!? 肺活量と喉が怪物かこらぁ!?」
そんなリリの叫び声に痺れを切らしたのか、商品を管理する黒服の一人が荒々しい声と共に檻に蹴りを叩き込んで。
「頼むから静かにげぇほっ!? 気管に唾液がぁ!? げほげほっ――ごきゃ!?」
突如としてむせて前後不覚になり、足をもつれさせて檻に頭部を強打させた。
え? 何? もう『攻撃』は始まっているの!!?
「だ、大丈夫ですか!? 大丈夫ですか、そこの人!!」
一方、リリは檻の中だというのに頭部を強打した黒服のことを心配している。
何も知らなければ心底お人よしの少女に見えるだろうが、今の僕には得体のしれない怪物の擬態に見えてしまう。いや、うん、本当にお人よしではありそうなんだけどね!?
「う、ぐぐぐ……い、たたた……」
「よかった! 意識が戻ったんですね!? 頭の怪我は大丈夫なんですか!?」
「ああ……大丈夫だ……それどころか意識がすっきりしている……そうだ……世界とは……俺が本当に為すべきことはこんなことじゃない……けん玉の神が俺を呼んでいる……行こう、けん玉バトラーたちが集う世界へ……」
そして、やけに澄んだ瞳で妄言を吐きながら、この場から立ち去って行った。
「んー? よくわからないですけど! でも、本当にやりたいことを見つけられたのなら、それは素晴らしいことです!」
リリの反応は戸惑いながらも、まるで我が事のように他人の幸運を喜んでいる。
…………うん! ララと村人たちの警告は間違っていないな、これ!!
「ほら! 他の人たちも! 人身売買の手伝いなんてしてないで! もっと自分のやるべきことあるはずですよ!!」
「……き、聞こえない……俺たちは何も聞こえない……」
「やめろ、やめてくれぇ……もう、話しかけないでくれぇ……」
「三日前には十人居たのに……もう、俺たち三人しか……だ、誰か……誰かこいつをこの場から連れて行ってくれ……くそう! 何でワンコイン価格まで下げたのに、誰も買わねぇんだよ?! そうだな! こんなことが目の前で起こっているからだな! くそぉ!!」
うわぁ、そこで話しかけているだけで人身売買の人員を全滅させようとしている。
本当に何なんだろうね、この子。
そんな気持ちを込めて、そっとマガツの方を向くと「???」と物凄く不可解そうな顔で首を傾げていた。
そっかぁ、マガツでもよくわからない何かなのかぁ。
「マサヒコ。わたくしたちが来るまでも無く、その内、この子は村に送還されたのではなくて? というか、絶対にそうでしょう?」
ちなみに、ミレーヌは危機感知能力が高いのか、リリ対策を持っている僕を遮蔽に使って隠れている。
うん、気持ちはわかるけど、こいつぅ。
「そうだね。その前にこの街が滅びなければ、そうなっていたかもね」
「…………笑えない冗談ですわ」
「冗談にしたかったなぁ」
僕は苦笑しながらも一歩踏み出し、狂気に沈みつつあるリリの檻の前へと進んで行く。
なぁに、妨害用の弾として召喚されたとしても――勇者は勇者だ。
未知の奇運少女が相手でも、勇気を振り絞って助けに行こうじゃないか。
「「「誰か助けてぇ!!!」」」
まぁ、結果的に助けることになるのは、ノイローゼ寸前の黒服たちになりそうだけど。
魔神機に乗ってなくたって! この世界の人間は無力じゃないんだ!!!
なお、リリに関してはマガツはマジで何も知らない。