ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
はい、投稿します。
「うん? 異世界から、本来召喚されるはずだった勇者を呼んで欲しい? 良いよ。世界を救ってくれたし、面白いものも見られたし、お安い御用さ!」
世界の存亡がかかっていた茶番劇が終わった後、マーリンは神域チーズを齧りながら快諾した。
なお、既に意識を取り戻したリリからは二メートルぐらい離れている。
「流石です、マーリンさん! いつも頼りになります!!」
「あははは……リリは、いつも何で私の居るところに現れるのかなぁ!?」
「奇遇ですね!!」
「奇遇だねぇ! おのれ」
あ、更に一メートルほど離れた。
よっぽどリリのことが苦手なんだね、マーリン。
「は、早く! 早く! だけど安全に! 大和様の召喚をお願いしますわ!」
そして、こちらも目を覚ましたミレーヌは、『割と重大な己の変化』もとりあえず棚上げしつつ、龍宮寺大和の召喚を熱望している。
基本、異邦人に対する扱い――というか僕に対する扱いがゴミカスのミレーヌであるが、自らのパートナーである大和だけは例外扱いらしい。
まるで……いや、事実その通り、恋する乙女の瞳で龍宮寺大和の召喚を待ち望んでいた。
「はいはい、ちょっと待ってね。場所よーし。魔力よーし。私の気分、よーし」
ああ、そうそう。
今更ながらだけれども、現在地は享楽都市にあるマーリンの拠点――地下魔術工房だ。
流石にあれだけの騒ぎを起こしたら、街全てから指名手配を受けちゃっているからね。
まぁ、それはどうとでもなるんだけど、召喚する予定の人を巻き添えにするわけにはいかない。そんなわけで、僕らは地下に潜り、マーリンに匿って貰っているわけだ。
「じゃあ、やろうか。ほほいのほいっと」
だが、それも龍宮寺大和が召喚されるまでのこと。
新しい戦力を確保したのならば、さっさとこの街からおさらばさせてもらおう。
マガツの本体を顕現させちゃった所為で、多分、邪神陣営を物凄く混乱させてしまっただろうし。今、やけくそ気味にアレスに特攻されても困るのだ。
あの手のタイプはデバフを重ねられた状態でも、順調に負けるという状況でも、ワンチャンを狙って、それを通してしまうような恐ろしさがあるから。
しかし、今日、その恐怖は払拭される。
龍宮寺大和が召喚され、ミレーヌとコンビを組んで戦力となってくれるのであれば、アレスを確実に葬り去ることは可能だ。少なくとも、今、僕が予測している戦力の範疇では。
…………でも、なんか嫌な予感がするんだよなぁ。
「あー、うん。あれだね。結論から言うと――――龍宮寺大和は異世界に居ないね。該当なしだよ」
「???????」
はい、的中ぅー。
的中して欲しくなかったけど、なんだろうね? リリに触られてから、妙に勘が鋭くなっているような気がするよ…………強化? 幸運の方? いや、どうだろう。油断は禁物だ。
「いな? え? 居ない? 大和様が居ない??? んんん????」
「おっと危ない」
などと僕が思案していると、ミレーヌが泡を吹いて倒れそうだったので、その背中を支える。
凄いな、リアルでこんなショックの受け方する人、初めて見たよ。
「魔力を潤沢に提供してもらったからねぇ。あっちの世界を隅々まで探査したけど、やっぱり居ないねぇ」
「あばばばばばばば」
おっと、ミレーヌがショックのあまり心臓を止めかけている。
まったく、世話が焼けるなぁ……はい、電気ショック。
「みぎゃん!!? はっ! わたくしとしたことが、大和様が異世界にいらっしゃらないと告げられた夢を見てしまいましたわ!」
「現実だよー」
「うっ!」
「あの、マーリン? 面白半分に精神的ショックを与えるのは止めてくれる? 蘇生させるのも大変なんだからね?」
「ふふふっ。ごめんね? ついつい、反応が面白い若者を見るとね?」
「…………」
「はい、わかった! わかったよー! 真面目にやるよー! だから、リリを私に近づけさせるなぁ!!」
本当にマーリンの弱点なんだね、リリ。
まぁ、リリの方は「マーリンさんってば、相変わらず照れ屋さんですね!」と満面の笑みなのだが……善意と奇運が合わさった結果、地獄みたいなことになっているね!
「龍宮寺大和は異世界には居ない。これは確定だよ。だけどね? 何故居ないのか? とっくに死んで、魂が輪廻に還っているわけでもないのならば、一つの仮説が生まれる」
「か、かかか、仮説ですか?」
ミレーヌはぷるぷると震えながらマーリンに先を促す。
「龍宮寺大和は既に、何らかの要因によってこの世界に召喚されているのではないか?」
「――っ! それは!」
「そして、その仮説はもう検証済みさ。『何らかの妨害』によって、詳しい居場所は分からないけれども…………龍宮寺大和がこの世界に居ることは確定した」
マーリンの断言に、ミレーヌの目が限界まで見開かれる。
「…………なるほど」
一方、僕といえば龍宮寺大和の所在に関して、嫌な予想を巡らせていた。
魔術を権能の域まで極めた大魔術師、マーリンの探査を妨害する?
それだけの妨害が可能な存在が果たして、この世界にどれだけいるのか?
順当に考えれば帝国に拉致されているのが妥当だろうが…………いや、止そう。今の段階では、推測に推測を重ねるような仮説しか生まれない。
何にせよ、これではっきりとした。
――――戦神アレスとの戦いで、僕らは龍宮寺大和を頼れない。
新しい戦力の当ては無くなった…………そのはずだったんだよね。
リリのあれが無ければ。
「ミレーヌ」
「大丈夫ですわ、マサヒコ。わたくしは冷静よ」
「冷静な人間は、唐突に足踏みを始めない」
「…………こほん」
ミレーヌは己を恥じるように咳払いした後、改めて僕と向き直る。
「大和様がこの世界に召喚されている。この時点で、帝国か、あるいは別の勢力による介入があると考えられますわ」
「うん、順当な考えだね」
「本来ならば、王国側から圧力をかけ、政治的な手腕で大和様を助け出したいところですが、今の王国の戦力はカスです」
「そうだね」
アレスと僕にやられて、ぼっこぼこだね。
「故に、マサヒコ……そして、マガツ様。お願いがありますわ」
災神たるマガツに敬称まで付けた上で、ミレーヌは頭を深々と下げた。
「わたくしの全身全霊をもって、貴方たちの協力をします。だから、大和様を探すことに協力してください」
かつて、僕を殺そうとした相手が、今、僕たちに向かって頭を下げている。
これはあれかな? ネット小説で言うところの『ざまぁ』展開なのか?
だけど生憎、これで良い気分に浸るには、僕はミレーヌと関わり過ぎた。
ミレーヌが龍宮寺大和に対して、本気で恋する乙女をやっていることも。
割とクソカスな面もあるけれども、それだけじゃないことも知っているのだ。
故に、答えは考えるまでも無く決まっている。
「いいよ。世界を救うついでに、君のパートナーも探しにいこうか」
「――っ! ありがとうございますわ!!」
勢いよく頭を上げたミレーヌは、ぱぁと輝くような笑顔を浮かべた。
…………うん、感動のシーンだろう。
「これでわたくしも、アスモデウスの力を思いっきり振るうことができますわ!」
アレスとの戦いに、自分の力が必要不可欠だとミレーヌが最初から確信を持っていなければ。
はい! それじゃあ、マガツの中から出て来た、びっくりどっきり美少女たちの変化を報告するよー! 大丈夫だよー! 今まで話していた二人が、実は不定形の怪物になっていたとか、そういう感じではないからねー!
「ミレーヌ。一応訊くけど、君に新造された魔力生成器官の方は馴染みそう?」
「不思議なことに。まるで、生まれた時から共にあったかのように馴染んでおりますわ。拒絶反応とかも皆無ですの」
エントリーナンバーワン! なんか魔力生成器官が増えていたミレーヌ!
これにより、ミレーヌの魔力生成能力は一般的な召喚勇者の約二倍! 単独で魔神機を扱っても、全然余裕があるラインに入ったよ! やったね!!
…………やっちゃったね!! えっと、これ大丈夫なのかな? 今のところ、健康被害は確認されていないというか、むしろ元気そうなんだけど。
「とはいえ、魔神機の本質は二心一体の精神ですわ。わたくし単独でも動かせますが、大和様が居た方が強くなることは、予め言っておきます」
「そこは安心してよ、ミレーヌ。君が魔神機で戦えるようになったからと言って、龍宮寺大和の捜索を打ち切るわけじゃない……というか、正義のパイロットとしては見過ごせないからね。同郷の仲間が異世界に拉致された可能性があるのは」
「……まぁ、わたくしたちの召喚も、洗脳と拉致みたいなものですが」
「自分で言っちゃうんだ、それ」
「今だからこそ、言うのですわ」
バツが悪そうにそっぽを向くミレーヌ。
その様子に、健康に異常は感じられない。
「ねぇ、マガツ。本当にミレーヌの体、大丈夫そう?」
「案じるな、マサヒコ」
けれども、やはり心配なので何度もマガツに確認する。
さっきの会話中……というか、地下魔術工房に来てからずっと、僕の体にコアラの如くしがみ付いているマガツに。
…………正直恥ずかしいので離して欲しいのだが、まぁ、僕も盛大に恥ずかしい台詞を言ったばかりなので、しばらくはお互い様としておこう。
「魂のラインは我と紐づけているから、仮に問題が起こったとしても直ぐに魂はサルベージが可能じゃ」
「それは大丈夫じゃない前提の奴じゃない!?」
やっぱり、今すぐ引き剥がそうかな?
「いや、いやいやいや! 大丈夫だけれども! そうだけれども! 仲間になるというのだから! 万が一にも備えて、安全対策を行うのは当然のことじゃろう!?」
「ん、まぁ、それは、そうだね?」
「ほれ、その証拠に! ミレーヌ本人はとても元気! そうじゃな!?」
「力……ふふふっ、そう、力……力が満ちるのはとても素晴らしい感覚ですわ……」
元気過ぎない? 本当に大丈夫?
明らかに、力に溺れる前のエリスみたいな顔をしているんだけど、こいつ。
「力! そう、素晴らしいですよね、新しい力! 私もお気に入りです!!」
「ぴゃあ!?」
あ、大丈夫だ。ミレーヌは大丈夫。
だって、リリの接近に対してきちんと恐怖を覚えているんだもの。
君は過信に溺れていない。生命の危機に警戒できる人間だ。
…………さぁて。
「ほら、見てください、ミレーヌ様! これ! 私のこれ! 凄い動きます!!」
ばっさばっさばっさ。
翼がはためく音と共に、良い感じの風が僕らの間をすり抜ける。
「怖すぎますわ」
なお、その動きにミレーヌは恐怖を覚えていた。
だが、それも無理は無い。
――――今、リリの背中には、明らかにマガツに格納される前には無かった、灰色の翼が生えているのだから!!!
「ちなみにこれ、使わない時は触手に戻して背中に仕舞えるんですよー! えへへー、便利ですね!!」
はぁい!! エントリーナンバーツー!!! 魔力量とは全然変わってないのに!! 明らかに背中から変なのが生えているリリ!!!
いや、マジで何なの、あれ? 灰色の翼にもなるし、触手にも変化するんだけど。
「ねぇ、マガツ?」
「わからん。我には何もわからん」
「お前の内部から出てきて! お前の眷属みたいな感じになっているのに!?」
「知らんわ! 我の内部にはそういう効果はありませんんんん!!」
じゃあ、なんで???
「ふふふっ」
僕とマガツは恐怖を覚えながら首を傾げるのだが、何故か、その様子を見てリリが笑っている。
「やはり、お二人は仲が良いですね! 内部に格納されている時も、感じましたよ! マサヒコ様の声と、それを受けて熱くなるマガツ様の想いが!」
「え、そうなのかのう?」
「(無言で首を横に振るミレーヌ)」
「じゃあ、なんで???」
「多分きっと、愛の力ですよ!!!」
「そ、そうなのかのう? うむ、そうかも……?」
「お二人が両想いのラブラブで! 私も嬉しいですし! 初恋の想いも吹っ切れました!」
え? 待って。
今さっき、何かリリが初恋がどうとか恐ろしいことを言っていた気がするんですけど?
「本当は恩返しをしたかったのですけれども……ただの村娘の私が居ても、きっと足手まといだと思うのです」
「「「ただの村娘???」」」
「なので、大人しく村に帰ることにします。この日の思い出と、翼と触手をもって」
僕とマガツ、ミレーヌは一瞬でアイコンタクトを済ませた。
「ん、そっか。じゃあ、帰りまできっちり送るよ」
「また人攫いに遭っても大変ですわ」
「帰り道もきっちり送るのが、出来る仕事人という奴じゃ」
そして、如何にも別れを惜しみつつも、無力な少女の安全を喜ぶ態度を取った。
知られてはならない!! 僕たちが内心、叫びたいほどに歓喜に染まっていることを! 恐怖からの解放に、涙が出てしまいそうなことを!!!
「ひゃあ! 帰れ! 帰れ! さっさと村に帰れぇ! この特異点娘め!!!」
マーリン? 君は馬鹿なの???
「あ、帰りはマーリンさんにお願いします!!」
「なんでぇ!!? どうじでだよぉおおおおおお!!?」
「え? だってマーリンさん、以前言ってましたよね? 転移魔術に於いて、この世界で右に出る者は居ないって。だから、私を村に転移させるなんて簡単なものかと」
「んああああああ!! 過去の私が、今の私を殺しに来るよぉおおおおおお!!」
馬鹿だったね。
とりあえず、マーリンに頼み込む用事は終わったので、三人揃ってマーリンを生贄に、リリという脅威を村に戻すことにした。
願わくば、二度と彼女の平和を乱す者が現れないように。
…………まぁ、後々、ララと村人の方から苦情は来そうなので、まだ関わりそうな予感はするのだけれども。
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「いよぉ、世界を滅ぼしかけた気分はどうだよ? マガツミカボシ」
「え? 自虐なのかのう? ソロモン」
「テメェ!!?」
当然のことだけれども、マーリンが近くに居ない状態で、マーリンの地下工房の外に出たのならば、街の管理者には発見されてしまうよね!
まぁ、転移魔術でこの街から脱出しても良かったんだけど……そうなると、この街の管理者が僕らの痕跡を探して、あのカジノの話を聞くわけだ。そうなると最悪、折角解放された人たちがまた捕まってしまう可能性があることに気づいたわけである。
うん、ついさっきね。
だからこうして、わざわざ分かり易い形で街を出歩いて――――この通り、街の管理者である魔王ソロモンと周りを固める悪魔一行に来てもらったのだ。
「そもそも、貴様が我にちょっかいを出してこなければ、こんなことにはならなかっただろうに。あれか? 貴様は実は、世界を滅ぼしたい系の魔王なのか?」
「うるせぇ! そっちこそ何で捕縛魔術で、本体を顕現させてんだよ!?」
「知らん。全てはリリという少女の形をした特異点がもたらした奇運よ。疑うのならば、貴様がもう一度、あの子に会ってくるがいい」
「それは…………くそっ! それは置いておく!」
「相変わらず、外見に似合わず賢明な判断をする。安全圏を見極める。まぁ、それ故に世界を滅ぼしかけたことはどうやら、貴様の胸に重くのしかかっているようじゃな?」
「言っておくが、原因はお前にもあるんだからな!?」
出来れば話し合いで解決したいのだけれども……うーん、マガツと口喧嘩しているところを見ると、全く交渉が通じないわけじゃないけど、頑固なところもありそうだしなぁ。
どう転がるにせよ、少し話した後に、あっさりと解放! とはいかなそうだ。
「ほう? ならばどうする? 魔王ソロモン。本来、貴様ら悪魔は、人間の契約が無ければろくに動かんだろ?」
「テメェは例外だよ、マガツミカボシ。世界を滅ぼすような害悪なんざ、野放しに出来るわけねぇだろうが。ここで俺の全身全霊を振り絞っても封印してやる――――と言いたいところだが、生憎、今の俺は満身創痍でね」
「だろうなぁ。貴様が無様に助けを乞う姿は見ものだったぞ?」
「はー、死ね」
ソロモンは疲れ切ったため息を吐いた後、僕の方へと視線を向けて来た。
「おい、そこのガキ」
「ん? 僕に何か用かな?」
「テメェはマガツミカボシの『何』だ? ああいう形で顕現したマガツミカボシを押し留められる奴を、俺は超勇者しか知らねぇ」
「……んー、何だと言われてもね?」
向けられる視線には、敵意も害意も混ざっていない。
ただ、純粋なる疑問だけがあった。
「僕はマガツの相棒で、最強勇者マガツオーのパイロットさ! ただそれだけだよ」
だからこそ、僕は偽りなく答える。
たとえ、馬鹿にしていると思われても、これが今の僕だと自信満々に。
「…………そうか」
ソロモンは何やら複雑そうに何度も表情を変えた後、再度ため息を一つ。
「ガキ。テメェは世界を救った。テメェとマガツミカボシがどんな関係だろうとも、それだけは揺るぎない事実だ。そして、俺はその事実――功績を無視することはできない。マガツミカボシの脅威を無視できないのと同じように」
だから、と言葉を繋いで、ソロモンは僕に告げた。
「決闘だ。テメェが負ければ、マガツミカボシと一緒に元の世界に帰れ。俺が負ければ、契約一つ分、テメェの願いを叶えてやるよ」
勇者に試練を課すように。
悪魔の元締めだというのに、どこまでも真正面から。
僕と戦いたいと――僕のことを知りたいのだと、決闘を持ちかけたのだった。
「何か偉そうにしておるが、こやつ、内心では自分のヘマを引きずっておるぞ」
「テメェはもうちょっと自分のヘマを反省しろやぁ!!」
ただ、マガツとソロモンの相性は本当に良くないみたいなので、決闘が始まる前は引き離しておこうと思う。
リリはあれです。石仮面を被って、スタンドがレクイエムった程度の変化です。