ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
はい、投稿します。
えー、中々に酷い情報がソロモンから入って来たので、作戦会議です。
三人寄れば文殊の知恵と言うからね。
一旦、地上に戻ってミレーヌと合流してから、マガツも合わせて三人での作戦会議だよ!
なお、会議の場はソロモンの提供で、ホテルの一等地を用意してもらいました。
やったね! 豪勢な食べ物を摘まみながら会議が出来るよ!!
「…………正直、信じたくないというのが本音ですわ。あの王がわたくしに告げた馬鹿げた契約ですら、民を煽って虐殺を起こさせるための虚偽……本当の目的は戦神アレスを倒すために、何度も魔神機を作り直せるだけの準備…………こんな、こんなの……」
まぁ、とてもじゃないけど飯を食べながら会議できる雰囲気じゃないけどね。
ソロモンからの情報を全部教えた時、ミレーヌってば明らかに失望と絶望が織り交ざった顔をしていたからね。
……魔神機を駆る魔女として、国家の守護者である自負があったミレーヌだからこそ、ここまでショックなんだろうさ。
「一体、どうすれば……どうすればいいのですか? もう既に、情報は広まってしまった。仮に、ここで王を暗殺しに戻っても……いえ、ここまでなさる方ならば、死後の予備プランもあるはず。そもそも、王を殺したところで邪神が全盛期の性能を取り戻し、王国を滅ぼそうとしているのは事実……テンシが出現し、状況が劣勢になれば、民の中で虐殺による魔神機の製造が選択肢に入ってしまいますわ……」
ミレーヌの懸念は正しい。
既に情報は王国全土に広まってしまっている。
一応、僕が願いの権利を使って、ソロモンに王国全土に流布した情報の削除を求めることも可能ではあるが。
「何より、この情報が! 魔神機の製造方法が! 王国の戦略級魔術師たちの耳に入ったのが致命的過ぎますわ!」
流石のソロモンも、かなり強い魔術師たちの記憶まで改ざんするのは『願い一つ分』だけでは足りないらしい。
「あの者たちはやります! 自分たちの大切な者を守るために! 他の大多数を踏みつけるだけの覚悟と冷徹さがある者たちばかりなのです!」
そうなると、一般ピープルの記憶だけ改ざんしても問題は解決しない。
多くの民による虐殺が、一部の強者による虐殺に塗り替わるだけだ。
そう、その願いでは誰も救われない。
「今はまだ……もうしばらくの間は、事実確認のために猶予はあるでしょう……でも、王の虚偽情報であれ、邪神の強さであれ、王国が滅ぶ可能性を知ってしまえば、虐殺が始まってしまうのですわ! 一度、どこかで始まってしまえば、もう取り返しがつかない…………そうなる前に、止めなければならないのに……一体、どうすれば……っ!」
頭を抱え、綺麗な緑髪をかき乱しながら苦悩するミレーヌ。
出会ったばかりの頃ならば、『ざまぁみろ』とでも言ったかもしれないけれども。
多少なりとも一緒に行動した今では、その姿は痛ましく感じるだけだ。
「ミレーヌ」
だからこそ、僕は言葉を紡ぐ。
「方法はある」
正義のパイロットらしく、希望の言葉を。
「……っ!? 何を! 既に情報は――」
「惑わされないでよ、ミレーヌ。色々と情報が出てきたが、事の本質は何も変わってはいないのさ」
不敵に、無敵のヒーローの笑みを浮かべて。
「僕らが邪神に――アレスに勝てばいい。ただそれだけで、虐殺は抑制できる」
「それは……確かに、そう、かもしれないですわ」
ミレーヌは一瞬困惑の表情を浮かべたが、即座に僕の意図を理解した。
「元々、わたくしたちはそのつもりで行動していた……戦神アレスを最速で倒して、王に契約を破棄させるために! そして、王が流した情報が虚偽であったとしても! 話の流れは変わらないですわ! わたくしたちが勝利して! その勝利を王に……王国中に伝えれば! 人々が虐殺などという短慮に走る可能性はかなり下がる!」
そう、何も変わってはいないのだ。
前提が変わろうとも、僕らの為すべきことは変わらない。
戦神アレスを倒す。
それさえできれば、虐殺の問題もまとめて解決が可能だ。
「ただ、最速でアレスを倒して虐殺を止めるために、ソロモンへの願いの権利を使わないといけないけどね」
「具体的には何をなさるつもりなので?」
だから、どうせならド派手に、正々堂々と行こうじゃないか。
「アレスを呼び出して決闘する。そして、その様子を王国全土に中継する。これぐらいなら、ソロモンは願い一つ分で叶えてくれるってさ!」
「……アレスは決闘に応じますの?」
「アスモデウスのデバフを解除するって言えば、乗ってくると思うよ。多分、あっちも早いところマガツオーを倒して、王国との同盟関係を終了させたいだろうし」
なんだかんだ、王様の一手で苦しめられているのは僕らだけじゃない。
邪神側だって嫌がっているんだと思う。
だからこそ、僕らの提案を受けざるを得ない。
絶好の機会を逃がすわけが無い。
ましてや、決闘の相手として呼び出しているのが、邪神最強のアレスなんだ。
断るわけが無い。
――――あの時、アレスの中には多分、勝利の確信があったはずだから。
「責任重大ですわね」
「まぁね! でも、僕ら三人なら意外と何とかなると思わない?」
「…………ふふっ」
ミレーヌは先ほどまでの焦燥が嘘のように、綺麗に微笑んで。
「いえ、多分。わたくしの出場は認められず、貴方たちとアレスの一騎打ちになるかと」
「ああ、うん。だよねー!」
今度は僕が、焦燥が混じったやけくその笑みを浮かべる番だった。
……さぁて、どうやって勝てばいいんだろうねぇ?
●●●
いや、まぁ、勝てる方法はあるのだ、割と。
アレスの強みはあくまでも、接近戦による卓越した剣術。
遠距離での戦いは、観察した結果、そこまで得意ではない。
更に、マガツの情報で、『アレスはソロモンには相性が悪い』という情報を手に入れた。
つまりは、四本の剣で捌ききれないほどの攻撃――それも、権能級の攻撃を行えばいいのだ。それが遠距離攻撃ならば、猶更効果的になるだろう。
え? そんな攻撃を都合よく用意できるのかって?
結論から言おう。可能だ。何故ならば。
――――僕らは既に、七十二柱分の権能を浸食済みだからだ。
ソロモンとの決闘を思い出して欲しい。
マガツオーは浸食の権能で、レメゲトンの端末を浸食した。
その際、権能を蝕み、その力を獲得することに成功していたのである。
ただ、隠蔽の権能を浸食した時とは異なり、今回の場合はあくまでも端末。使えても、それぞれの権能を一回分程度だし、そこまで長い間、保持することはできない。
従って、今回の決闘で使い切る勢いで消費して、アレスの接近戦をどうにか捌きつつ、七十二の権能を組み合わせて、強力な遠距離攻撃を用意しておく。
これだけで、ほぼアレスには勝てる。
アレスの奥の手があろうとも、千回戦って千回確実に勝てる。
――――などと安心するのは雑魚の思考だぁ!!!
はーい、大体わかって来たよねー!? これが! 僕の! 敗北フラグだぁ!! よくあるパターンの奴だよ!! 地元では大体くらってたもん、この前振り!!
確実に勝利できる状況を整えて! 実際に勝てる! と思っていても、土壇場で新しい力とかに覚醒されて負ける時の流れだよ、これはぁ!!!
そして、アレスはそういうことをしてくるタイプの敵だ!
こっちの道理を超えるだけの力――いいや、意思を見せて、逆転してくる奴だ!
僕にはわかる……このままでは、僕は負けるか、敗北よりも最悪な勝利を作り出してしまうことだろう。
必要なのは勝利。
それも、ただの勝利ではない。
王国全土に希望を届けるような、正義のパイロットとしての勝利だ。
だけど、それは多分――――大体何でもできる僕が、自信を持てない分野なのだ。
「はぁ、どうしたものかなぁ」
僕は今、享楽都市をぶらぶらと歩いている。
作戦会議が終わった後、『一人で考えたいことがあるから』とマガツとミレーヌを置いて、ちょっと気分転換――否、軽く現実逃避をしながら歩いていたのだ。
「おっ、兄ちゃん。ちょっと…………ひぃ!?」
「うわぁあああ!!? ソロモンを倒した怪物だぁ!?」
「た、助けてっ! 私まだ、死にたくないっ!!」
街道をのんびり歩いていると、何故か街の人たちが悲鳴を上げながら逃げ去って行く。
ああ、うん。なんかね? 天空決闘場での戦いの一部が、下の街でも公開されていたわけで。
今の僕らはこうして、魔王すら瞬殺する怪物扱いになっているんだよね!
その前に、マガツの本体が出たことと合わさって、この街の住人のほとんどが、心をへし折られている感じかな!
まぁ、この街の住人、ほとんどが悪党だから別にいいよね! むしろ、これを機に改心しろよと言いたい。
「……むぅ。守るべき者たちの姿を目に焼き付けて戦う作戦は早くも頓挫だ。というか元々、僕はそういう他人のために奮起するタイプじゃあないし」
やれやれ、と僕はため息を吐いて踵を返す。
まだ、さっきまで作戦会議していた高級趣向の区画の方がマシだ。あっちならば、辛うじて僕らの正体を知りつつも対応してくれるからね。
「よっ! どうしたんだ、お前。なんか元気無さそうだけど?」
「うん?」
などと考えている僕の前に、一人の青年……いや、同世代っぽい男子が姿を現した。
「通りすがりの俺でよければ、話を聞くけど?」
如何にも『街に入ったばかりですよ』と言わんばかりの旅装の男子だった。
短い黒髪に、精悍な顔つき。僕よりも背丈が上回る偉丈夫。
何だろうね? あれだよ。バスケットボール選手みたいな体つきだよ。そんな感じの、うん、まぁ、あれだね。如何にも僕と同郷って感じの男子が、声をかけて来た。
しかも、なんかよくあるナンパネットミームみたいな言葉で。
「え? ナンパ?」
「いや、ちがっ……違うが!!??」
「声の掛け方が如何にも過ぎたからね」
「ちがっ! 違うからな!? そういう下心は持ってないからな!!」
まぁ、物凄く爽やかな感じの態度だったからね。
そこは疑わない。
「いや! でも、あれだから!! それはそれとして! 男女の性別関係なく! 人と人は愛し合って良いと俺は思っているから! そういうことには偏見はないから!!!」
「別に、そんな訂正をしなくても…………どうせ、この街ではそんなレベルではない人権問題が蔓延っているし」
「マジで!?」
「うん。何を隠そう、つい最近、奴隷になって売り飛ばされている人を助けたばかり」
「マジかよ、すげぇ!!」
僕が「ふふん」と胸を張ると、男子は媚び無しの純粋な声で賞賛してくる。
うん。まぁ、そこは別にいいんだけどね……僕は良いんだけど、君はそれでいいのかな? 明らかに僕と同郷の上に、何らかの目的を持って僕に接触して来たっぽいのに。
一応、周囲に僕へと敵意を向ける気配が無いから、こうして応対しているけどさ。
「多分、同郷っぽいけど、君はどちら様? 帝国あたりの召喚勇者?」
「ん? まぁ、そんな感じ!」
「そっかぁ……じゃあ、ちょっと捕縛してから、衛兵に突き出すね?」
「待って???」
男子は慌てた様子で口を動かし、何か言い訳を紡ぎ出そうとするが。
「俺は、その! そう! 抜け忍みたいな!? 帝国から逃げて来た召喚勇者だから!」
「なるほどね。じゃあ、そのあたりをしっかり調べるためにも捕縛しないと」
「えっ!?」
「いや、敵国の人間。しかも、重要人物だったら、たとえ亡命希望の相手だったとしても、とりあえず捕縛して調査が入るよね?」
「…………確かに!」
御覧の通り、結構馬鹿である、こいつ。
というか、反応的に帝国の勇者ではないな。
見た感じ、この男子は運動部系の部活に所属していそうな、しっかりと動ける人間だ。だけど、武術とか、人を害するための身の振る舞いをしていない。
完全な素人だ。
そして、完全な素人を逃がすほど、帝国は甘くないだろう。
何せ、レライエで奇襲を仕掛けて、王国の魔神機を一機屠るほどだからね。召喚勇者を逃がすぐらいなら、きっちりと殺すことを選ぶだろう。
だから、この男子は帝国の勇者などではなく――――うん、そういうことか。
「一応、拷問と自白剤の二つのコースがあるらしいけど、どっちがいい?」
「うわぁあああ!! どっちも嫌だぁ!! やめてくれぇ!!」
「わかった。じゃあ、僕が口利きして、優しく記憶を抽出する感じの魔術で……まぁ、副作用でちょっと記憶がぱーんってなるかもだけど」
「ぱーん!?」
僕はじりじりと逃げ出そうと後退を始めている男子へ、肩を竦めて微笑みかけた。
「――――冗談だよ」
「へっ?」
「ただの冗談さ。君が素性を隠したいのと同様に、僕も中々にお尋ね者でね? 君を衛兵に突き出すような真似はしないさ」
「そ、そっかぁ」
あからさまにほっとした様子の男子へ、僕は笑みを保ったまま手を差し伸べる。
「後、純粋に心配してくれて嬉しかったよ、ありがとう」
「い、いや、俺は……」
「話を聞いてくれるんだったよね? ご飯を食べながらでもいい? 奢るよ?」
「……おう! 俺は割と人の相談事を聞くのは得意だからな! 彼女の愚痴とか! 彼女と喧嘩して悩んでいるとか! そういうのは大得意だぜ!」
「何でそういう色恋沙汰限定? やっぱりナンパなの? ネットミーム的なNTR漫画の導入でもやる気なの?」
「違うっ!!」
がしり、と力強く男子は握り返してくれた。
ああよかった、これで――――思う存分、話し合いができる。
「あー、じゃあ、彼女さんとは特に問題無いんだな? むしろ、絶好調と」
「そうそう。あ、一応言っておくけど、彼女ではなくて相棒」
「違うのか?」
「微妙に違う。好意があるのは否定しないけど、今は寄り添い合う関係ではなくて、共に背中を預け合う関係で居たいから」
「…………そっか。マサヒコは凄いな」
「え? 何が?」
「自分の好意に溺れないこと」
「別に、普通のことだろう?」
「かもなぁ。でも、俺はその普通のことが出来なくて……」
場所は適当な飲食店。
適度に騒がしく、けれども、会話を邪魔されない程度に治安が良い。
そんな場所で今、僕らは話し合いをしていた。
「なぁに、落ち込むことは無いさ。所詮、僕の考える普通に過ぎないからね。そもそも、別に普通以上でなければいけないなんてルールは無いだろ?」
「ああ、そうだよな……」
「それとも君は、何か後悔していることでもあるのかな? その『普通』が出来なかった所為で?」
「…………あるさ。嫌というほどに」
爽やかな愛想笑いの中に、色濃く陰が混じる。
なるほど。どうにも、外見通りの陽キャとはいかない理由があるらしい。
「そっか。それは取り返しがつく?」
「つかない。絶対に……何もかもが、もうどうにもならない」
「じゃあ、それを忘れて過ごすことは? どうにもならないことをずっと抱えたままだと、単なる自虐にしかならないよ?」
「わかっているさ。だけど、そう簡単に割り切れるほど――」
「軽い後悔ではない?」
「……ああ」
僕は話術を駆使して、目の前の男子の情報を引き出している。
召喚勇者と言えども、相手は訓練された軍人でもなければエージェントでもない。
最初に僕が相談に乗ってもらう風に話し始めて、その立場を逆転させるのは決して難しいことではなかった。
「へぇ。じゃあ、しばらくはずっと引きずっておく感じかな?」
「…………どう、だろうなぁ? 引きずらないために? いや、吹っ切れるために、こんなことをしているのかも?」
「そうだね。周りからビビられて敬遠されている人物に話しかける必要があることだもん。そりゃあ、『こんなこと』だ」
「あ、いや、それは――」
ふっと、男子の顔から陰が引く。
今更になってようやく、自分の状態に思い至ったような顔だ。
男子はその端正な顔を焦燥で歪めて、何かを言おうと口を開いて。
「大和様? 龍宮寺、大和様?」
僕は密かに発動しようとしていた黄雷を握り潰し、大きくため息を吐いた。
うん、そうだね。これは僕の失策だ。ついつい、地元の癖で、一人だと仲間の行動の予測を忘れがちになる。
「…………っ! ミレーヌ!? それに、災神!?」
たとえば、いつまでも帰って来ない僕を心配して、マガツとミレーヌが探しに来るとか。
そういうことも、きちんと考慮していなかった僕が悪い。
だから男子――龍宮寺大和とミレーヌが鉢合わせするという、中々によろしくない事態が起こってしまったのだ。
「大和様、どうしてここに!? いえ、そんなことはどうでもいいですわ! わたくし、貴方様に会いたくて――みぎゃんっ!?」
「待てい、ミレーヌ」
だけど不幸中の幸いだ。
マガツの方は、僕からのアイコンタクトですぐさま意図を理解し、ミレーヌを触手で拘束してくれている。
大和の方に近づけないために。
「貴様の想い人だけではない――もう一人、否、もう一柱、居るぞ?」
そして何より、もう一つの脅威に。
僕と大和の会話中に、密かに後ろの席に座り、今まで気配を消していた人影の『間合い』に入らせないために。
「やはり見事なのです。早々にワタシの気配に気づいていましたね? マサヒコ」
その人影は椅子から立ち上がり、守るように大和の隣に立った。
外見だけならば、金髪ツインテールの和装幼女なのだが――――その気配、その手にある魔剣の脅威を僕らは見間違えない。
「随分な姿だね、戦神アレス。君の趣味かな? あるいは、アスモデウスのデバフがそんなに辛かったり?」
「はいなのです!!」
「元気良く答えちゃった」
僕が大和の方に視線を移すと、大和は「あちゃあ」と声に出してアレスの肩を掴む。
「駄目っすよ、アレス様。そういうのは虚勢を張って誤魔化さないと」
「そうなのですか? でも、ワタシは劣勢でも負けないのです!」
「いや、それはそうなんっすけど。こう、情報の駆け引きというか……いや、相手に会話で情報を抜かれまくった俺が言える立場じゃないんっすけど」
「気にすることは無いのです! ヤマトが駄目だった分、ワタシが頑張るのです!」
「ああ、うん。ありがとうっす、アレス様」
そして、親しげに言葉を交わしていた。
精神干渉の魔術や権能でもなく、条件付けの洗脳ですらなく、正気のまま、人類を滅ぼす邪神の側に、大和は立っていた。
「なん……え? なんで、大和様が、邪神と……え?」
一方、ミレーヌは完全に前後不覚の状態だ。
目をきょろきょろとせわしなく動かし、呼吸も荒い。
マガツが触手で掴んでいなければ、そのまま倒れこんでもおかしくないほどに。
「あー、マサヒコ。お前はいつ頃わかったんだよ?」
「割と最初から。帝国の勇者じゃないってわかったら、後はまぁ、勘と推理」
「うわぁ、流石は災神の相方。俺なんかとは格の違う優秀さだよなぁ」
「…………それで、大和はミレーヌに何か言うことは無いのかな?」
僕の問いかけに、ちらりと大和がミレーヌに視線を向けるが。
「無い。俺があの子に言えることは何も無い。もう、そういう立場なんだよ、俺は」
直ぐに僕へと視線を戻し、どこか苛立ちが混じった声で告げる。
「俺は勇者じゃねぇ。この世界の人類を滅ぼす、邪神の使徒だ」
僕らの敵であると。
覚悟の込められた言葉で、律儀に告げて来た。
「そん、な…………」
よほどショックだったのだろう。
大和の敵対宣言に、ミレーヌは目をいっぱいに見開いた後、がくんと意識を失う。
やれやれ、まったく――――君もつくづく不憫な奴だね、ミレーヌ。
「そっか。そういうことなら、邪神の使徒としての君と、戦神アレスへ提案がある」
だから、とりあえずは君の代わりに、邪神に抗う者として言っておいてあげようか。
「そっちのデバフは解いてあげるから、正々堂々と決闘しよう。お互い、時間を賭けたくない立場だろう?」
王国を守る者として。
虐殺を防ぐために。
「アレス、君の土俵で戦って、その上で倒してやる。まさか、逃げないよね?」
「――――はっ!! 上等なのです!!」
僕は邪神最強の戦神へと決闘を申し込んだ。
不本意ながらも、こちらが挑戦者として。
Q:なんで大和がここに!?
A:マガツの本体が顕現した所為。具体的には偵察。