ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
はい、投稿します。
さて、威勢よく啖呵を切ったもの、現実は映画みたいに都合よくカットは入らない。
編集してくれない。
「…………じゃあ、決闘の日時とか条件とか決めようか」
「あ、はいなのです」
それによって何が発生したかと言えば、絶妙に気まずい時間である。
あれだね! 詳しい条件とか決めてから、啖呵を切ればよかったね! 反省だね!!
「決闘の場所はソロモンに提供してもらう感じでいい? 天空決闘場なんだけど」
「構わないのです!」
「決闘の様子を王国中に公開するけど大丈夫?」
「構わないのです!」
「…………こっちはアスモデウスを出さないから、デバフはそのままでいい?」
「構わないのです!」
「「いや、構えよ」」
なお、決闘の条件を決める際、あまりにもアレスが『不利な条件だろうがどんとこい!』みたいな顔をしていたので、ついつい僕と大和が声を揃えてツッコミを入れるという珍事も起こってしまった。
この戦神は本当に、強い以外はお馬鹿さんだなぁ。
「アレス様、言ったっすよね? デバフ受けている状態はかなり不利だって」
「逆境こそ戦士の本懐!」
「本番は俺も一緒に戦うんっすけど!?」
「ヤマトもワタシが祝福したから戦士なのです!」
「いやいや、だからって不利な条件を飲むと後で他の方々に怒られるっすよ?」
「むぅー」
ふむ。
あくまでも僕の観察眼で見た感じだけれども、あちらのコンビは中々に噛み合っているようだ。
猪突猛進のアレスの足りない部分――慎重さを大和が補っている。
しかも、本番では一緒に戦うという言葉から考えると…………なるほど、強敵になりそうだね。アレス単体でも厄介なのに、更に倍ドンって感じ。
「あばばばばば……」
一方、こちらの仲間の精神的ダメージは深い。
白目を剥きながら泡を吹くミレーヌの姿を見れば、まともに戦うことは無理だと判断するしかないね。
まぁ、元から戦わない条件にするつもりだったから、予定が狂うことは無いけどさ。
「やれやれ、大変だね、君も。あ、言っておくけど、デバフはちゃんと解除するつもりだから。こっちはこれでも愛と正義のロボットで通すつもりだからね。そういうズルはしないようにしているのさ」
「……えっ? あの、マガツミカボシってあれだよな? 五百年前の黒幕で、ラスボスみたいな存在だよな!? あ、あるのか? 正義とか愛とか!?」
「ふふっ、言ってやるんだ、マガツ!」
「我が我のために行う正義に揺るぎはない!」
「なぁ、邪悪な奴が言う台詞だぜ、あれ」
「愛は…………まぁ、うん。これからって感じなのじゃ」
「―――げぇぼっ!!?」
あ、恥じらうマガツの姿を見て、アレスがゲロを吐いてる。
グレイブもそうだったけど、そんなに聞くんだね、マガツが純愛やっている姿。
「お、おぼうぇ……世界が、終わるのです……」
「え!? 何!? ど、毒!? 毒なのか!?」
「落ち着け、大和。アレスが勝手に精神的ダメージを受けているだけだ。マガツから離れれば、その内治る」
「よ、よかった……」
「…………決闘中に使えそう」
「待ってくれ! ぼそっとえぐい手段を考えるのはやめてくれ! ズルはやらないんじゃないのか!? 正義と愛のロボットなんだろ!?」
「ははは、冗談! 冗談!」
流石は、元々勇者として召喚される予定だった大和だ。
僕のような陰キャエリートボッチとは比べ物にならないほどまともである。
…………いや、僕ももう、ボッチとは言えないか。
「決闘の時は正々堂々、真正面からあらゆる手を尽くして倒すさ」
「なんか不安になる笑顔だなぁ!」
俺がぐっと拳を突き出すと、さらりと大和も応じて拳が軽く合わさる。
なるほど、なるほどね?
確かに正気で、洗脳はされていなくて…………だからこそ、って感じか?
まぁ、詳しい事情は決闘の後でもいいか。
「とりあえず、決闘の条件について話を再開したいんだけど……大丈夫そ?」
「う、うごぇおげ……気持ち悪いのです……」
「休憩! 十五分の休憩をお願いします!!」
この後、僕はすっかりグロッキーになったアレスに、概ね、こちらの予定通りの条件を飲ませることに成功したのだった。
●●●
アレスたちと決闘の詳細を決めた後、僕らは街の高級ホテル――その一室で体を休めていた。
いや、正確に言うのならば。
「うう、ぐすっ……ひっく……どうじでぇ……」
酷く傷心状態のミレーヌを慰めていた。
うん、あれだよね。大和が僕の前に姿を現した時から、薄々嫌な予感はしていたけれども、やっぱりこうなっちゃったよね。
「ミレーヌ。泣くな……とは言わないけどさ。泣いてばかりいると心も体も枯れちゃうぜ? せめて、水分と塩分を補給してくれ。ほれ、特製のホットココア」
「…………ありがとうございますわ……ずずずっ」
そして、割と日頃から虚勢を張るミレーヌが、僕からマグカップを躊躇なく受け取るあたり、本当に参っているらしい。
「……ふぅ。わかっては、いるのですわ」
ミレーヌはちびちびホットココアを飲みながら、か細い声で呟く。
「大和様は敵に回った。邪神の味方をしている。理由は分からない。それでも、王国の……いえ、民の守護者であるわたくしは、大和様と戦わなければならないのだと」
自分自身を説得するように、ミレーヌは言葉を重ねる。
「けれども、どうしても……理屈で分かっていても、理性は理解していても、心が、胸が、痛いのです。どれだけ強がろうと思っても、感情が泣き叫ぶのです…………は、ははははっ、情けないですわ。これが、王国の魔神機筆頭の魔女なんて」
その姿はまるで、言葉という透明な刃で、己を傷つけているようだった。
…………軽々と『わかる』などとは言えない。
僕も色々と失恋している身の上だけれども、どちらかと言えば自業自得というか、自分が馬鹿をやらかした結果だから、わりとすんなりと受け入れられた。うん、今でも時々思い出して、凹んでは居るけどね?
だけど、ミレーヌの失恋はあまりにも理不尽だ。
いや、僕が知らないだけで、色々と原因は実はあったりするのかもしれないけどさ。
それでも。
「こんな気持ちになるぐらいなら……最初から恋なんて…………ふ、ふふふっ。無様ですわね、わたくし。まさか、こんな月並みの泣き言を吐いてしまうなんて」
短い間でも、旅を共にした仲間の嘆きをこのまま認めるなんて――――そんなのは御免だ。
「いっそのことマガツさんに、わたくしの心を洗脳してもらった方が――」
「洗脳の必要はないよ」
特大の泣き言と失言を漏らすミレーヌへ、僕は微笑んで告げる。
「そういうのは、思いっきり大和に疑問と文句をぶつけてからにするといい」
「……へ?」
きょとん、とミレーヌの目が丸くなる。
「僕がなんとかなるからさ。せめて、恋を終わらせるなら喧嘩の一つもしてみるのもいいと思うよ?」
「いや、でも――」
戸惑う言葉を遮り、僕は自信満々の声で言った。
「明日の決闘、僕が勝つからさ。きっちり大和も生かした上で、完璧に勝ってみせるから。その後に、思う存分、話し合えばいいよ」
地元に居た頃の――悪役を任じていた僕の言葉ではなく、マガツオーのパイロットとしての言葉を。
あまりにも根拠が薄く、虚勢だらけの勝利宣言を。
「マサヒコ。それはあまりにも馬鹿な行いですわ」
「だろうね」
「余計なお世話ですわ」
「百も承知」
「…………貴方の、命を優先してください。わたくしは、戦えないわたくしは、それ以上のことを言う資格はありません」
「はははっ、お気遣いどうも!」
まるで、地元に居た頃、僕を散々打ち破って来た主人公属性溢れる人たちみたいな発言だけどさ。
うん、言ってみて初めてわかったよ。
「だけど心配は無用さ。何せ、僕らは最強勇者マガツオーだからね!」
仲間の嘆きを少しでも和らげられるのなら、虚勢も案外悪くない。
「うわぁあああああ!! 自分で難易度上げちゃったよぉおおおおおお!! 僕の馬鹿ぁ! 見栄っ張りぃ! でも、元々大和は殺すつもりは無かったし! 結果オーライ! どの道やることは変わらない! でも、正直しんどいよぉ!!」
ようやく呼吸が落ち着いてきたミレーヌを気遣い、僕らはそっとホテルの部屋の外に出た。
そして、防音魔術を発動させながら、思いっきり後悔の言葉を叫んだ。
いや、うん、わかるよ? さっきまで格好つけていた癖に、泣き言満載だよね? でも、辛い者は辛いんだから仕方がない。
「ふんぎぃー! 奥の手に取っておいた魔剣も! 手加減なんてできないぶち殺し専用の奴だし! 本格的にやばいよぉー!?」
「……お主という奴は」
やれやれ、と苦笑しながら肩を竦めるマガツ。
はい、僕の虚勢に付き合わせてごめんなさい。
「虚勢を張っている時は格好良かったのじゃから、最後まで頑張れ」
「ああうん、ごめんね? ついつい、マガツの前だと気が緩んじゃって」
「……ほほう。我の前だと? 信頼する我の前だと? ついつい本音が?」
「そんな感じ」
「むふー!」
マガツは薄い胸を叩いて、自信満々に僕へと言う。
「案ずるな、マサヒコよ! 我が居る! 何も心配することはない!」
「マガツ……」
「思いっきりぶち殺しても、魂が輪廻に還る前にキャッチして、良い感じに蘇生させれば何も問題は無い!!」
「マガツ……」
う、うん。極論、そうなんだけどさ! そうなんだけどさぁ!
「あー、それは最終手段として検討します」
「うむ!」
「だからまぁ、あれだよ、マガツ」
でも、マガツの言葉でショック療法的に覚悟を決められた。
「頼りにしているから」
「任せるがいいのじゃ!」
とりあえず、出来るところまでは正義のパイロットらしくやってみようって。
●●●
翌日の正午。
約束通り、僕らとアレスたちは天空決闘場に立っていた。
『俺は権能の制御に集中する。戦闘は任せるっすよ、アレス様!』
『うむ! 戦闘に限っては我の右に出る者はおらぬ! 多分!!』
『そこは断言してほしかったっすねぇ』
だが、その姿はいつぞやの阿修羅像の如き荘厳さを持った機体とは異なっている。
具体的に言うのならば、より機械っぽさが増していた。
仏像の如き生物的な形から、機械を組み上げて作られたような――文字通りのロボットになっていたのである。
ただ、その脅威に変わりはない。
鈍い金の輝きを持つボディに、四つの機械的なアーム。
アームの先に備え付けられた魔剣も、工作機械の如きブレードへと変わっている。
それでも、その刃には確かに、魔剣としての機能が保持されているように見えた。
『マガツ、わかる?』
『うむ。何を隠そう、あれは邪神機――我が五百年前に好き勝手改造した奴じゃ!』
『なるほど、原因がここに』
『とはいえ、大破させたはずだからのう。再現させるにも、並々ならぬ面倒があったと思うが、なるほど…………それほどの面倒を負ってでもなお、人を乗せることを選んだか、戦神』
マガツの言葉に、アレスはぎゃりぃ! と互いに魔剣を打ち付けて答えた。
『貴方がワタシに教えたことなのですよ、災神。二心一体の極意こそが、神の領域すらも超越するのだと』
『ほう、それで? 貴様たちにはそれが出来ていると? 生憎、我にはそうは見えんが』
『偉そうに言えるほど、人の絆を知っているのですか?』
『知らぬ』
挑発するような問いかけを、マガツは短く切り捨てた。
『知らぬからこそ、それを知るために今、我はここに居る。我が相棒であるマサヒコと共に』
『…………今の情緒の、半分程度でも、貴方にあれば』
だが、マガツの言葉は確かに、因縁を持った相手へと届いたらしい。
『悍ましくも強大な外なる神よ。決闘が始まる前に、頼みがあるのです』
『頼み、だと? 恨み骨髄の貴様が、我に?』
『そうなのです。ワタシが貴方に頼みます――――この戦いが敗北したのならば、貴方とその相棒は、共にこの世界から出て行くと。それを約束して欲しいのです』
『ほう? 死んでくれ、と願わなくていいのか?』
『叶わぬ願いは口にしないのです。それに、神は祈らない』
『ふふふっ、確かに』
へぇ、意外だ。
アレスが妥協案を口に出すのも、マガツがそれを穏やかに聞き入れるのも。
『俺は祈るし、願うっすけどね! 勝ってくださいよ、アレス!』
…………ふーん。なるほどね。やっぱり、大和はそこに居るだけで、周囲の人間を和やかにするような雰囲気があるみたいだ。
だからこそ、どうしてそんな人物が、人類撲滅なんて計画に手を貸しているのやら。
『許しや納得があるわけではないのです。けれども、本体の顕現を見て理解したのです。貴方はどうにもならないと。故に、感情論で動かすしかない。貴方が本当に愛と正義のロボットを謳うのならば、その役割に矜持を持っているのならば! 決闘の勝者には敬意を!』
『んー、まぁ、良いだろう』
そして、意外や意外。
マガツはあっさりとアレスからの提案を受け入れた。
てっきり、『敗北イベントもロボットもののお約束の一つ!』とか言って拒否するかと思っていたのに。
『代わりに、こちらが勝てば、我々の要求も受け入れてもらおう。まさか、否とは言わんよなぁ?』
『…………無論。こちらが絶対に勝つから、要求の内容は言わなくていいのです』
『吠えたな、五百年前の敗者が』
『絶対なる強者よ。貴方の自惚れが敗北に繋がると教えてあげるのです』
ぎらぎらと機体越しに戦意をぶつけ合う二人。
……まぁ、マガツオーを動かすのは僕なんだけどね?
『あまりかかり過ぎないでくださいっすよ、アレス様』
『問題ないのです! 戦いはちょっと、精神が肉体を凌駕する程度でちょうどいいのです』
アレスの機体が、唸り声のように静かに駆動音を響かせる。
さて、そろそろだね。
『マガツ。最初から全力で行こうか』
『うむ! 機体の補助は任せるがいい!』
アレスとマガツオー。
二つの機体は、互いに戦意と駆動音をぶつけ合って。
『いざ』
『尋常に』
『『――――勝負!!』』
今、ここに王国の命運を決める決闘が始まった。
『マガツオー・ライジング』
さぁ、初手必殺の時間だぁ!!
『再起せよ、七十二の権能!』
いや、必殺とか言っているけどね? あくまで殺す気で行く、みたいな?
…………でも、そうしないと相手の奥の手は割れないからね。
『っつ!? ヤマト!!』
『了解!』
間延びした時間の中、僕らは雷と化して浸食した使い捨ての権能を使用。
七十二の権能を全て混ぜ込み、あらゆる手段を使って相手を捕らえ、消し飛ばす暗黒の塊と化したそれを放つ。
『摸造デウス・エクス・マキナぁ!!!』
初手の雷速。
初見殺しの七十二の権能。
そして何より、この攻撃は僕らではなくアレスが苦手とするソロモンの攻撃を再現したもの。
確実に的中し、確実にアレスの機体の上半分は消し飛ばす――――そのはずだった。
『『切り裂けぇ!!!』
アレスと大和が完璧に対応し、絶妙なタイミングで暗黒の攻撃を切り裂かなければ。
『ぜぇ、ぜぇ、ぜぇっ! 死ぬかと思ったんだが!?』
『落ち着くのです、ヤマト。戦闘に集中! さっきのは、こちらの手札を調べるための小手先に過ぎないのです!』
やってくれるね。
そして、言ってくれるね。
僕としては結構、最初の一撃で終わってくれることを期待していたんだけど。
『こちらが使い捨てにした権能を似たようなもの――つまり、『未来を予測する系統』の権能があっちにある、か。こりゃあ、本格的に前回のまま戦っていたら、僕が負けていたかもね』
未来の予知か、予測。
恐らくはそれが、アレスの第二権能だ。
不意打ち出来るはずの一撃が、傷一つ与えられずに切り裂かれたのはその所為だろう。
もっとも、未来を知れる時間というのは、中々にシビアみたいだけどね?
大体、三秒から五秒ぐらいかな?
もうちょっと先の未来を予測しているのならそもそも、僕らに権能を使わせなかっただろうし。窮地では頼りになるし、切り札として使うには十分だけど…………それ、中々に辛そうじゃないか。
『ぐっ……たった一度で、これかよ!?』
『ヤマト! しばらく予知は使ってはいけないのです! 決闘よりも先に、貴方の頭が壊れて死ぬ!』
『ええい! 災神とマサヒコの未来を読むのが、ここまでしんどいなんて!』
どうやら、未来予知の権能は燃費が悪いらしい。
あの時の戦いで、アレスが普段使いしてなかったのも納得だ。
『ヤマトは回復に専念! 代わりに、ワタシがマサヒコを倒す!』
ぎゅいん、と急加速でアレスが僕の間合いに踏み込む。
流石、判断が適切だ。
初手必殺は効果的だけれども、こちらも燃費が悪い。
七十二の権能は全部使い切って。
黄雷の権能を二連続で使えるほど、マガツオーの機体は頑丈ではない。
故に、これ以上変な真似をされる前に、こちらを接近戦で抑えようというのは道理に合っている。実際、僕はアレスの四刀流を捌くのに必死だったからね。
――――前回は、だけど。
『マガツ流・影柳』
必要なのは、ステップと隠蔽の権能。
一瞬だけ隠蔽し、相手の意識から外れる。
音を消して、ぬるりと移動する。
これを繰り返し、さながら柳の影を追うように、相手の刃の流れを散らして行く。
『むぬぅ! これは!?』
『君は一度、僕に技を見せた。時間を与えた。なら当然、攻略法を作っているに決まっているじゃないか』
四つの刃を潜り抜け、黄金の剣を振るう。
最速で渾身の一刀。
されど、アレスもまた神域の剣士。
一歩動くだけで、僕の渾身を回避して――だが、僅かに切っ先が届いた。
『蝕め――』
『ぬぅん!』
そこから機体を浸食してやろうと思ったけれど、判断が早いね。
自身の機体の装甲を切り落とすことにより、こっちの浸食も切り捨てた。
『一度見せた技に対応するということは、初見殺しを続けて倒せばいいのです』
『そうだね。その通りだ。まぁ、こっちも色々策を練っているから、出来るかどうか試すと良いよ』
僕とアレスは互いに剣を構えながら、じりじりと間合いを取り合う。
共通する空想の中で、互いに剣戟を展開する。
より早く、よりシビアに。
少しでも甘く相手を見積もった時点で、即座に刃で代償が払わされる即死の空間。
その空間の中で、あえて僕は問いかける。
『大和! 龍宮寺大和! そっちの時間稼ぎに付き合ってあげるから、答えなよ!』
アレスを相手にしながら、大和の心に言葉の刃を差し込む。
『どうしてそんなに! 人を殺したいんだよ!!?』
ミレーヌの十分の一でも、その痛みが伝わればいいと思いながら。
『…………そんなものは』
アレスと僕がけん制し合う空間の中、ぽつりと大和の言葉が呟かれる。
問いに対して、答えを返してくる。
『とても、くだらなくて、どうしようもない理由しかないぜ? マサヒコ』
水底に沈む岩の如く、冷たく重苦しい声で。
――――一つの絶望を語り始めた。
ちなみに、アスモデウスと一緒に戦えば、判定抜きでアレスには勝てるよ! 戦闘スキップされるよ!