ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
はい、投稿します。
『駄目なのですよ! 家族優先! 家族優先!』
『そ、そりゃあ、そうだけど!? でも、今から地元に戻らせてくださいとか! 家族を蘇生させるための伝手をくださいとか! 言えるわけないっすよ!? 決闘中なんっすけど!?』
『言うのですよ!! 家族のためでしょう!!?』
『家族のためだけど! でも、アレス様はどうするんっすか!?』
『ワタシは一人でもなんとかなるのです!』
『嘘だ! 決闘の前に、一人だったら危なかったかもしれない、とか言っていたじゃないっすかぁ!!』
『言ったけれども! 相手は間違いなく強いけれども! だけど! 世界を壊すほどの絶望に浸っているならともかく! 希望を持った相手を地獄に巻き込むことは出来ないのです!!』
『いや、いやいや! 俺だってこの世界の人類には並々ならぬ怒りがあるんっすけどぉ!?』
『だとしても! 人殺しをしたら、蘇生した後に家族が悲しむのです!!』
『それはそうだけど! でも!』
喧々諤々。
けれども、アレスと大和の二人が言い争っているのは主に、互いを思いやっているが故のジレンマという奴だった。
『ふっ、流石じゃのう、マサヒコ。まさか、まともに剣を交える前に、言葉一つで邪神機の二心一体のコンビネーションを破壊するとは』
『違うからね? そんな悪辣な意図は無いからね? マジで純粋な善意だったからね?』
いや、本当に違うんだよ?
大和の話を聞いている内に疑問を覚えて……というか、あれだろ? 話に出て来た謎のおじさんの正体、多分、あれだろうし。
僕もこの世界に来るまでは眉唾物だったけれども、色々と怪しい伝手がある人だし。
だったら…………そうなると…………うん、マジで地元の世界に戻った方がいいよ、大和。
『俺は! アレス様――いいや、アレスの怒りを見なかったことになんて出来ない!!』
『ヤマト……だけど、ワタシはそれでも、ヤマトに人殺しなんてしてほしくないのです』
だけど、やはりというかなんというか、大和は情が深い人間らしい。
本当だったらすぐさま家族の元に駆け付けたいだろうに、この世界で出来た絆を断ち切ることが出来ず、アレスへの想いに尽くそうとしている。
うん、あのミレーヌが惚れるわけだね。
中々の快男子じゃあないか。
『はいはい、そこの二人! いつまで話しているの? 流石にタイムが長いよー?』
『『うぐっ』』
だから、僕の方から助け舟を出してあげようじゃないか。
『要するに、大和はアレスのことが心配で帰れない。アレスは大和に人殺しなんてしてほしくない。そういうことだよね?』
『お、おう』
『その通りなのです』
『じゃあ、答えは簡単だ』
僕はマガツオーの全身を邪悪なオーラで漲らせて、威風堂々と告げる。
『全身全霊でかかって来い――――僕らが容赦なくぶちのめしてやる』
改めて、宿敵である者たちへの宣戦布告を。
『後悔なんて欠片も残さないほどに。怒りの残滓も残さないほどに。全てを込めて、僕らに挑んで来い。僕らはその全てを切り伏せて勝利してやる』
迷いを振り切らせるような挑発を。
『そうすれば、元の世界に帰る言い訳になるだろ? 龍宮寺大和……そして、これで君の怨念を晴らす絶好の場は整えられた。そうだろ? 戦神アレス』
『『…………』』
一人と一柱。
元勇者候補と戦神は、少しの間沈黙した後。
『『――――はははははっ!!!』』
力強い笑い声を響かせた。
『ああ、そうだな、そうだった! 今は決闘をしているんだった! だったら!』
『余計な思考は不要なのです!』
『今はただ! お前たちを倒すことだけに、俺たちの全てを注ぎ込む!』
『そう! 我が怨念すら使い切るほどに!!』
二心一体の呼吸が戻る。
いや、決闘が始まった時よりも、大和とアレスから感じる覇気が増している。
…………やれやれ、これだから主人公属性は。
心意気一つで、驚くほど強くなるんだからさ。
『『いざ! 推して参る!!!』』
閑話休題。
四つの魔剣を構え、堂々と決闘を再開させた邪神機へ、僕らもまた黄金の剣で応じる。
『ごめんね、マガツ。付き合わせて』
『構わん――こちらの方が、正義の味方っぽい。そうだろう?』
『……あはははっ! そうさ その通り!!』
さぁ、決闘の再開だ。
アレスが振るう四本の魔剣は、その動きを変えていた。
軽重。
柔硬。
それぞれを切り替えるものではなく、四本それぞれに異なる属性の魔術を付与した、分かり易い『魔法剣』による攻撃だ。
魔法剣は、この世界の剣士ならば、少し魔術を齧れば誰にでも出来る芸当だ。
けれども、アレスのそれは格が違う。
『っせぇえええええいっ!!』
空気を切り裂くような声と共に振るわれるそれは、一つ一つが必殺。
水。
火。
雷。
風。
四つの属性が、それぞれ異なる魔剣を生み出し、マガツが纏う浸食のオーラを食い破らんとする。
『お見事! だけどぉ! お生憎様ぁ!!』
四つ全てが初見の必殺技。
剣術としての動きの質も、まるで異なるものとして放っている。
故に、僕の学習能力はこの場に於いてはあまり意味を為さない。
だが、それは即ち、僕がこの必殺を避けられないことを意味しない。
『どれだけ凄い魔剣を振るおうが! 扱うのはアレス! 君自身の心だ!!』
観察眼による読心。
もちろん、全てを完璧に読み取れるなんてエスパーじゃあない。
僕が読み取れるのは、相手の感情のなんとなくや、呼吸、タイミングだけ。
だけど、それだけの情報でも、戦闘に於いては中々のアドバンテージとなる。
『君をある程度理解していれば! 対応は可能ぉ!!』
僕は黄金の剣に浸食を乗せ、四つの魔剣を全て捌き切る。
水の如き変幻自在の剣は、それを扱う腕を斬り落として。
火の如き苛烈なる剣は、その剣の強度を浸食で蝕んで。
雷の如き稲光の剣は、その剣の速度を黄雷の権能で越えて。
風の如くすり抜ける剣は、虚偽に満ちた幻影を見切り、本体の剣を叩き折った。
『そして! いくら戦神であっても! 必殺の在庫は早々あるもんじゃない!? そうだろう!?』
四つの魔剣を捌き切るのは至難の業であり、大分僕の精神力をすり減らした。
だが、だからこそ僕は踏み込む。
黄雷の権能を再度発動。
全身が焼き切れるようなフィードバックを得ながら、アレスの機体を切り裂かんと挑む。
『残念! アレスは一人じゃねぇ! 俺が居る!!』
『ちぃっ!』
されど、僕の刃は届かない。
何故ならば、相手は二心一体の機体。
アレスの心を見切っても、今度は大和が居る。
『たとえ脳髄が焼き切れようとも! 俺はお前らの刃を通さねぇ!!』
迷いを振り払い、己の身を焼き尽くすほどの覚悟を決めた大和が。
『心せよ、マサヒコ。あの手の覚悟を決めた人間は面白――もとい、厄介じゃぞ?』
『知っているよ! 地元の時から! 身をもって!!』
黄金の刃と四つの魔剣がぶつかり合い、再び剣戟を開始する。
『ぬぉおおおおっ!! ええい! しぶといなぁ!!』
僕の精神力と。
『ははははっ! お前が激励してくれたからなぁ!!』
大和の脳髄。
『なんか僕が声をかけると! 急に強くなる奴が多すぎるんだけど!!』
『おう、ありがとう!!』
二人分のリソースをすり減らして踊るダンスマカブル。
この意地の張り合いという舞台から振り落とされた方が、恐らく負ける。
『アレスが頑張っているのならば! ワタシだって頑張るのです!!』
『ぬおっ!?』
更に、相方の覚悟に奮起して、アレスの剣筋が鋭さを増した。
『我が怨念! 我が数千年の恨み!! 受け切れるものならば! 受け切ってみるのです!! 少なくとも――――あの超勇者ならば! それが出来たのです!!』
『ああもう! 無茶ぶりって言いたいけど! 僕が言い出しっぺだしなぁ!!』
二心一体の攻撃が拮抗していた戦いの天秤を傾ける。
徐々に、魔剣の刃がこちらの装甲を削ってくる。
少しずつだが、確実にこちらの命に届かんと踏み込んで来る。
『先祖の罪だとはわかっているのです! 現在の世界に生きる人間の罪ではないと! 神話の時代! 我々の大切な仲間を殺したのも! 悪しき神が居た所為だとも! それも理解しているのです! だが、それでも!!』
『っづ!?』
『理解しようとした我々を切り捨てたのも! 今! 他の世界すら巻き込んで、戦争を続けているのも! この愚かなる人類なのです!!』
がぎぃいいいんっ!!
魔剣の刃の一つが、マガツオーの胴体を右肩から左脇にかけて、袈裟に斬った。
深い。
命に届いていないものの、大分痛いし、行動が制限されてしまう。
『挙句の果てには……何も悪くない! 何も悪くないヤマトを巻き込む!? 度し難い! 本当に! 本当に度し難いのです!!!』
『まず――』
行動制限の上に、相手の気合の入った必殺の連続。
これには僕も、うっすらと脳裏に敗北という文字が過った――――のだけれども。
『ほい、再生』
マガツはあっさりと斬られた胴体を修復し、完全に機体の性能を戻した。しかも瞬時に。
『うぉおおおおっ!!? た、助かった! 助かったけど、ええと、マガツ!?』
『ふっ、忘れるのではない、マサヒコ。我らもまた二心一体じゃぞ!?』
『ありがとう! でも、事前に打ち合わせはしよう!?』
『努力する!』
『断言して!?』
ふぅー、危ない危ない!
マガツのおかげで凌ぎ切ったけど、過去の敗北の数々を思い出しちゃったよ。
『……マガツミカボシぃ!!』
『そんな大きな声で言わんでも、聞こえているぞ、アレス!!』
『あの子の! あの子の仇を!! 今こそ!!』
『くははは! 来るがいい! 復讐を遂げてみせろ――じゃが! その前に一つ! 気になっていたことを言うぞ!!』
『今更何を――』
『我、一回は見逃したよな?』
『えっ』
『我さぁ、貴様らが揃って裏切った時にさぁ! 一度は見逃す、ただし次に顔を出した時は潰すって言ってたよなぁ!?』
『…………言ってたけど! 言ってはいたけれども!!』
『ならば、負けて文句を言うなぁ! 女々しいんじゃい!!!』
『う、うわぁあああああああんっ!!』
あ、相手の動きが鈍ってる。
マガツのトラッシュトークはやっぱり効くなぁ。
『アレス! 落ち着けって!!』
『ぐすっ! ううっ、ごめんなさいなのです』
だが、それも時間の問題だ。
大和が居る限り、直ぐにアレスは調子を取り戻して来るだろう。
その時、僕は恐らく負ける。アレスに大和、二人分の想いに負ける。
――――今のままでは。
●●●
過去を思い出す。
あまり楽しくない過去を。
中学生時代、イカレ達人のクソジジイに剣術の鍛錬に付き合わされていた時のことを。
「んー、もうちょいなんだよなぁ」
「何が?」
その時、僕はボロ道場の床に仰向けで転がっていた。
原因は、このクソジジイと何度も木刀をぶつけ合った所為である。
なんで御年九十歳のクソジジイが、こんなに力強いんだか。というか、かなりの高齢である癖に全然ボケてないどころか、普通の中年男性よりも若々しい容姿なのはどうなんだ? 明らかに人間じゃない…………まぁ、異世界転移した後から考えると、本当に人間を辞めて、妖怪とか仙人の領域に踏み込んでいるとはわかるんだけどね?
この時の僕は、このクソジジイは理不尽の塊みたいな奴で。
――――絶対に勝てない極致にあると思っていた。
少なくとも僕は、今に至るまで、試合で一本も取れた試しも無い。
仮に、何でもありの殺し合いになったとしても、勝てる気がしない。
「雅彦、おめーが立派な殺人鬼になる方法だよぉ」
「ならないよ? さっさと老衰でくたばって???」
もう、ね? 剣術の腕が極まっているのもそうなんだけど、倫理観がゴミ屑だった。
戦うとか、勝つとか、そういう次元に存在しない。
自分の剣をどれだけ昇華させるのか? そのためならば、平然と人をダース単位で斬り殺しても眉一つ動かさないような人でなしだった。
ただ、どうにもあのクソジジイであっても、割と相性の悪い相手がそれなりに居るらしく、そういう行動を起こせば、確実に殺されるということが分かっているからやらないだけで。
逆を言えば、自分が死ぬかもしれないリスクに見合った行動ならば、躊躇わず倫理を飛び越える危険性があるのだ。
「おうおう。そこで、俺が一番嫌な死に方を言うたぁ、わかっているじゃねーか」
「老衰じゃないと、ろくでもない手段を取って、最後にひと暴れするだろうしね、貴方は」
「そりゃあなぁ! 折角の死境に入るんだぜ? 折角だから、今まで戦うのを避けていた相手にも挑んでみたいじゃねぇかよぉ」
心底、剣のことしか考えていない。
剣術馬鹿。
戦国時代に生まれていたのならば、日本の歴史は変わっていただろう――悪い方に。
このクソジジイを、人が沢山殺しても良い場所に行かせてはならない。これは、クソジジイを知る者たち全員の考えだった。
仮に、僕ではなくこのクソジジイが異世界に召喚されていた場合、それはもう酷いことになっていただろう。邪神を全部殺した後、最後に人類皆殺しとかやりかねない。
「まぁ、そんな随分と先のことはどうでもいいんだよ」
「早く死ねよー」
「おめーの剣術の話だ、雅彦」
そして、何故かそんなイカレ達人のクソジジイは、僕に対して期待していた。
「おめーは異常だ、雅彦。剣術を教えれば、あっさりと極意まで辿り着く……辿り着いた。この俺の剣術も、ほとんどおめーは修めてある。まさに、才能の怪物だぁ」
「酷い言われ様」
「だが、おめーの剣は軽い。想いが足りてねぇ。余分なものが無くてもあっさりと覚えられるから、おめーの剣は軽いんだよ……まぁ、その軽さが武器になって、ほとんどの相手には勝てるだろうが。それでも、この老いぼれには勝てねぇ」
「ほぼ同時に四つの斬撃を出す技とか使う達人に勝てるわけないんだけど???」
「そこだ、そこだよ、おめーは」
自分を超える剣士に成り得る存在だと。
「お行儀よく常識に収まり過ぎる」
「何が悪いんだよ?」
「悪い。自分で自分の限界を決めてんじゃねぇ。何でもできるつもりでいろ。世界すら、切り伏せると。道理を蹴飛ばして、己の我欲で何もかも覆して見せろ」
「無理」
「こいつはよぉ」
「無理だし、誰がやるもんか。だって、貴方は僕を自分よりも強い剣士に育て上げて――その時、僕を殺すために全身全霊で挑んで来るんでしょう?」
「…………くはっ」
自分の糧に出来る相手だと。
そんな風に、クソジジイは僕を見ていたのだろう。
だから、僕はクソジジイから剣術を習いながらも、限界のラインを超えようとは思っていなかった。
何せ、超えたところで手にするのは、ただの人殺しの技に過ぎないのだから。
――――だけど、異世界でこうして死闘をしていると、ふと思う。
自分が強くなることしか興味の無いクソジジイでも……いや、だからこそ、強くなる方法に関しては、間違っていなかったのだと。
●●●
黄雷の権能で過去を振り返り、僕は加速した時の中で考える。
果たして、今の僕に、あのクソジジイの言うところの『限界を超える技』を放つことが出来るだろうか?
道理を蹴飛ばし、世界の理を踏み越えるような業を持てるだろうか?
――――不可能だ。
何故ならば、僕には足りていない。
渇望が。
世界すら踏み躙る覚悟が。
強烈なる我欲が。
あるいは、主人公のような人間たちが持つ、魂の輝きが。
大体何でも、容易く出来てしまうが故に、僕にはその手のものが一切足りていない。
だから、僕は主人公のような人間たちに負ける。
今、この時も、大和とアレスの絆に負けようとしている。
勝てない。
こういう時の僕は勝てない。
『《マガツ。頼みがあるんだ》』
――――だけどそれは、僕だけならば、の話だ。
『《今、可能な限り、権能の出力を高めて欲しい。もちろん、本体を出さない程度に》』
『《…………可能ではあるが、お主に負担がかかるぞ、マサヒコ》』
加速した思考で、僕らは音もなく思念を交わし合う。
『《構わない。僕はさ、超勇者のように不可能を可能にするような、凄い人じゃあないけどさ。ここで負けるわけにはいかないんだ。だから、足りない分をマガツに補ってもらいたい》』
『《ふむ。絆の力というわけじゃな?》』
『《そうそう、そんな感じ》』
黄雷の権能はいつまでも使えない。
消耗が大きい。
だからこそ、今、このタイミングで使わないといけないんだ。
『《多分、超勇者だったら、こういう時は何かこう、凄い力に覚醒したりとか。過去の戦いで学んだことを活かしたりさ、そういうので勝つんだと思う》』
『《うむ。大体そんな感じだったかもしれぬ》』
『《でも、僕にはそれが出来ない…………悪いね、勇者らしくなくて。だけどさ、それでも、それでも、僕は勝たないといけないんだ》』
『《マサヒコ……》』
『《虐殺を防ぐためとかさ、そういう理由もあるし。大和たちをどうにかしたいって気持ちもある。だけどさ、僕の根底にあるのは意地なんだ……負けたくないって意地》』
わかっている。
僕らがやってきたことは所詮、『正義の味方ごっこ』に過ぎないのだと。
本物に比べれば、偽物で、醜くて、馬鹿らしくて、格好悪い感じなんだって。
だけど、それでもさ…………ここで負けたくない。
悪役とか黒幕とかさ、最後には負ける役回りばかりだった僕だけど。
――――マガツと一緒に居る時だけは、最高の勇者でありたいんだ。
こんなこと、恥ずかしすぎて口には出せないけど。
でも、それでも!
『《マガツ、僕に力を――》』
『《マサヒコ。漏れとる》』
『《えっ?》』
『《思考が漏れておる……うん、我もお主が大好きだぞ? 我が勇者よ》』
んああああああああああああああああっ!!!?
んぎょぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!?
『《恥ずかしすぎて死にそうなんだけど!?》』
『《死ぬな、馬鹿……なぁ、マサヒコ。我はな、別にお主が超勇者に似ているから相棒になったのではない。そりゃあ、最初に契約した時は、超勇者の影を追ってはいたが…………今は、お主だからこそ、共に戦いたいと思っている》』
『《マガツ……》』
『《というわけで――――下手すると本体がぼろっと出るかもしれんほどの出力で行くぞぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!》』
『《なんで???》』
ばちぃんっ!!
黄雷の権能が弾けて解ける。
マガツオーに満ちる、物凄い暗黒オーラによって。
世界すら蝕む、浸食の権能によって。
『え? 何だ!? 世界滅ぼすのか!?』
『わ、ワタシたちが話し合いという名の惚気を言っていたからなのです!?』
『アレス???』
戦神陣営は物凄く混乱しているだろうが、一番混乱しているのは僕だ!!!
『マガツ、マガツ、マガツ! やばいやばいやばい、死ぬというか、滅びる! 世界が!!』
『死なぬ! 滅びぬ!』
『なんで!!? なんで断言できるの!?』
溢れ出る浸食の権能。
下手をすれば、今すぐにでもこの場の何もかもが蝕まれそうな力を、必死に抑えながら僕はマガツに問いかける。
『お主が完璧に制御するからじゃよ、マサヒコ』
『いや、いやいやいや! 無理! 無理無理! 無理だってそんなの――』
『無理ではない』
『だから何で!?』
薄っすら怒りすら覚えながら、僕は叫ぶように再度問いかけて。
『そんなもの、サトウ・マサヒコは最強最高の勇者だからに決まっておる』
その言葉に、色んなものが吹き飛んだ。
戦闘中だというのに、僕の思考は真っ白に染まった。
『ははっ』
そして、残ったのはただ一つ。
『仕方ないなぁ! じゃあ、やってやるよぉおおおおおおおおおっ!!』
好きな奴の前で格好つけたいなんて、馬鹿みたいな想いだけ。
『うるぅううおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
世界すら蝕む力を、僕は殴り飛ばすように制御する。
今までは、上手く、技術的に制御しようとしていたが、そうじゃない。
ようやくわかった。
肝心なのは『これ』だ。
たった一つの格好付けのために、あらゆるものを叩き伏せてやろうと思えるほどの傲慢だ!! だから、僕は!!!
『――――掌握完了』
夜闇よりも更に黒く染まった刀身を握り、今、ここに立っている。
『待たせたね、大和にアレス』
『いいさ、お互い様ってことで』
『ワタシたちも、散々待たせたので』
そして、ようやく僕らは最後の立ち合いへ望む。
黄金の刃を漆黒に染め、僕は今、四つの魔剣を操る邪神機に挑む。
本来の勇者と、最も強き邪神を打倒する。
『いくぜ、アレス!』
『はい! 全てを切り伏せるのです!!』
振るわれる四つの魔剣は、今まで見た中でも最高。
一つ一つが、僕の命に届きそうなほどの冴え渡り。
加えて、これらを凌ぎ切っても、未来予知の権能が待っている。
今の大和ならば、僕らに確実に勝利するための未来を観測し、固定しているだろう。
勝利の未来を掴み取っているだろう。
――――故に。
『マガツ流奥義・弥勒斬り』
その確定した未来を切り伏せる!!!
『…………見事なのです』
四つの魔剣は僕らの胴体を切り裂き、マガツオーは左腕を斬り落とされている。
『ああ、ちくしょう』
だが、僕が放った黒剣による一撃は、確かに確定した未来を蝕み、アレスの機体を確かに切り伏せていた。
まるで、窮地で覚醒する主人公のように。
『ほれ、だから言ったじゃろう?』
得意げに言ってくるマガツへ、僕は小さく『ありがとう』と呟いて。
『…………うぁ』
誰にも見られない、マガツオーの中でボロボロと涙を流した。
これが、王国の存亡を賭けた決闘の――――否、僕らが意地を通すために始めた、決闘の結末である。
ちなみに、この奥義は未来予知を持たない相手には、さほど意味が無いというか、普通に黄雷の権能使って切った方が低燃費で手っ取り早い。