ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
これも読者の皆のおかげなんだぜ! ありがとう!!!
はい、そんなわけで投稿します。
「はぁー、死ぬかと思った」
「中々の死闘じゃったのう」
決闘の後。
僕とマガツはとりあえず、負った負傷を回復させた。
まぁ、僕のレベルの回復魔術だと、ちょっと後遺症が残るぐらいのダメージだったから、マガツ経由で回復というか再生みたいな感じになったけど。
少し肉体に触手をぶち込んで、ぐちゃぐちゃって感じになったけれども!
この通り、完全に復活したので問題は無いよ!
「……あー、完敗って感じだぜ」
そして、敗者である大和は決闘場の地面に仰向けで倒れている。
「妙に清々しいけど、めっちゃ悔しい」
大和らしい爽やかな表情で。
けれども、その手は悔しさに振るわせて。
どこまでも広がる蒼穹を見上げていた。
「…………う、うううっ。生き恥、生き恥なのです……」
すぐ隣で、体を丸めたままぐすぐすと涙を流す金髪幼女――アレスが居る状態で。
「うむ、流石マサヒコじゃ! 大和はもちろん、アレスの奴も生き残らせるとは! 我だったら絶対、一旦全部潰してからの蘇生になるからのう!」
「アレスに関しては特に意識したつもりはないんだけどね? こう、上手く僕の意識が最後の一撃に影響を及ぼして、活人剣として機能したみたいだよ」
そう、僕らは本気の全力で戦ったわけなのだが、上手いこと何かが噛み合ったおかげで、アレスの格たる部分を機体から切り離すことが出来たのである。
もちろん、期待に残っていた魔力とか、権能とか、そういうものは全部きっちりと浸食。マガツオーの糧にしているので、僕らの本来の目的はきちんと果たされたわけだ。
つまり、今のアレスはちょっと……いや、かなり強いだけの金髪幼女である。
――――これならば、異世界に大和と一緒に転移させても問題ない。
僕はほっと安堵の息を吐くと、微笑みながらアレスに語り掛けた。
「ともあれ、僕らが勝ったわけだし。その生き恥は思いっきり飲み込んでね!」
「うう、うううっ……」
「後さ。大和をこっちの事情に引き込んだのは君なんだし、そこら辺、最後まで責任を持った方が良いんじゃない?」
「ううう…………そ、それはそうなのです!」
僕の言葉に生きる意味を見つけたのか、アレスの顔がぱぁと明るくなる。
「ちなみに、あっちの世界でやらかし過ぎた場合、今度は僕らが確実に潰すからね? 生き恥ってレベルじゃない有様にするからね?」
「むっ! 失礼な! ワタシが恨むのはこの世界の人間だけなのです! そんなことになるぐらいならば、ワタシは自分で腹を切って恥を雪ぐ道を選ぶのです!」
「アレスの相方としての意見だけどぉ! 俺は出来れば死なないでくれると嬉しいんだけどぉ!」
そして、生き生きと武士道みたいなことを言うので、寝っ転がっていた大和は慌ててアレスの方へと向き直って叫んでいる。
うん。元の世界に行っても、あの様子ならば大丈夫だろう。
願わくば、大和の家族が無事に蘇生できますように。
――――さて、それじゃあ、残り一つの問題を片づけるとするか。
「あのさ、二人とも」
「「うん?」」
「君たちの異世界追放の旅に、道連れをもう一人用意させてもらうから、これから文句は絶対に禁止ね? 勝者の権限として」
「「えっ?」」
今頃、街の中で物凄く凹んでいるだろう、仲間の問題を。
「わたくしはカスですわ……」
街から決闘場へと召喚したミレーヌだけども、案の定、泣き腫らした顔だった。
「大和様の前に出る価値も無い女ですわ……」
そして、自尊心が最低レベルまでに落ち込んでいた。
無理も無い。
自分の世界の人間がやらかした挙句、大和と同郷である僕を割と酷い感じで殺そうとしていたことがバレたのだから。
最後の最後、大和がこの世界の人間を信じる一糸を断ち切ったのは、ミレーヌ自身だったのだから。
恥というものを知っているのならば、大和の前に顔を出したくないと思うのは当然のことだろう。
「はい。それじゃあ、この自尊心クソカスになっているミレーヌも一緒に、異世界に追放します! いいですね! 答えは不要! やれ!!!」
「「「!!!?」」」
だけど! そんなのは関係ないねぇ!!!
はっはぁ!! ミレーヌぅ!! 今こそ! 召喚当時! ひっどい扱いされたことに対する仕返しをさせてもらうぜぇ!!
「ま、待ちなさい、マサヒコ! 貴方に慈悲の心があるのならば! わたくしを素直に死なせてくださいませ!?」
「慈悲の心はあるよ? だけど断る」
「どうして!? ひょ、ひょっとしてあれなのですか!? 仕返し!? わたくしがやらかしたことに関する仕返しなのですわ!?」
「それもあるよ!」
「ひぃっ!」
こういうのは遠慮とか容赦をしたら駄目だからね。
きっちりと――――大和がドン引きするぐらいに、やらないと意味が無いんだ。
「ミレーヌ! 今、君が辛いことと! 責任を取ることはまるで別!」
「そ、それは、そうですけれども!」
「本当に大和に悪いと思っているのなら! 僕に悪いと思っているのなら! どれだけ気まずくても! 君が二人と一緒について行って! ちゃんと大和の家族を蘇生させる手助けをするべきじゃないかな!?」
「――っ!!」
僕の指摘に、ミレーヌは電撃でも受けたかのように目を見開いた。
まったく、やっと気づいたようだね。
「アスモデウスの権能なら、そこら辺の魔術師や錬金術よりも遥かに、家族を蘇生させることが出来るでしょ? マガツほど自由自在じゃないにしても、魂さえ見つけられれば、ほぼ確実に蘇生できるほどに」
「…………即座に魂を輪廻に押し込まれていなければ、という条件がつきますわ」
「ん? ああ、なるほどね。それなら大丈夫。やっているなら徹底的に。それこそ、レライエが君のところの魔神機を倒した時みたいにやるでしょ? そうじゃないなら望みはある」
ミレーヌの表情が引き締まる。
恋に破れた愚者ではなくて、一人の魔女としての矜持を感じさせる顔になる。
「辛くても、苦しくても、みっともなくても――――為すべきことを為せ。それが、責任を取るってことじゃないかな? ミレーヌ」
「ええ、その通りですわ」
よし、ミレーヌはこれで大丈夫だね。
それじゃあ、後の二人はどうかな?
「ミレーヌが一緒に……だが、それで家族が……」
予想通り、大和は複雑そうな表情だ。
ミレーヌに対して残っている愛情や、裏切られた悲しさや怒り。それとは別に、家族を助ける可能性が上がるメリットと、色々織り交ざって訳が分からなくなっているんだろうね。
さて、このまま悩み続けるなら、僕の方から更に一押しするけれども。
「なーにを悩んでいるのです! 大和!!」
「いったぁい!?」
どうやら、その必要は無かったらしい。
「家族の! ため! なのでしょう!? 何を! 悩むのですか!!」
「いった!? 痛い!! マジで痛いんだけど!?」
ばしばしと結構な勢いで、大和の背中を叩くアレス。
その姿は、先ほどまで凹んでいたとは思えないほどに凛々しく、強い。
「女一人の情念ぐらい! ぐっと受け入れるぐらいの度量を持つのです!!」
「そ、そうは言うけど、アレス! アレスはそれでいいのか!? だって、ミレーヌはこの世界の人間で! しかも魔女だぞ!?」
「いや、我々は人類単位で憎みはするものの、個人単位になると逆に割り切れるのです」
「そうなの!?」
「これが国レベルになればまぁ、許せない感情が湧き出るのですが……あの子は魔女であっても、ただの恋する乙女なのでしょう?」
「…………そっか」
流石、戦神らしくアレスの態度はさっぱりとしている。
けれどもやはり、理を納得しつつあっても、大和の感情はまだそれを飲み込むのには抵抗があるようで。
「だが、アレス。俺は選んだんだ。ミレーヌよりも、お前を選んだんだ。だから、今更、相手の弱みに付け込んで一緒に付いて来て欲しいなんて頼みこむのは非道じゃないか?」
「ふむ?」
「え? なにそのきょとんとした顔??」
「いや、ヤマト…………別に、ワタシ一人だけではなく、ミレーヌも一緒に囲い込めばいいだけなのでは? それで解決なのですよ?」
「んんん???」
そうこうしている間に、アレスによる追撃を受けた。
うん、あれだね。大和はあまりにもアレスのことを同格の人間として扱い過ぎたね。
…………見た目は金髪幼女でも、神話から存在しているからなぁ。
「だ、だって、そんなのは浮気で不誠実――」
「神話では珍しくも無いのです」
「神話レベルの話!?」
その後、アレスに押し切られた大和は、渋々ながらもミレーヌの同行を許可したのだった。
「マガツミカボシの名に於いて命ずる――――開け、異界の門。この世ならざる場所とこの場を繋げ」
ヴォン、と空間が歪み、目の前に漆黒のゲートが形成される。
……なんだろうね? どうしてマガツが転移のゲートを作ると、物語の悪役が使うようなビジュアルになるんだろうね? 見なよ、どろどろとした漆黒のよくわからない何か。無害であることは確かだと保障したのに、これから異世界へと追放される三人が微妙な顔をしているよ。
まぁ、こういう時は勢いで誤魔化すのだ、うん。
「じゃあ、大和。先に僕らの世界に帰っていなよ。僕も世界を救ったら、普通に戻ってくるからさ」
「…………災神を連れて戻ってくるのは、普通の範疇に入るのか?」
「僕にとってはそうだね。でもまぁ、案外さ、マガツのことが珍しくも無いぐらいの厄ネタが隠れているかもよ? 僕らの世界」
「嫌なことを言うのは止めてくれ」
露骨に顔を顰める大和へ、僕はけらけらとご機嫌に微笑みかける。
いやぁ、主人公みたいな奴に勝てるのは気分が良いことこの上ないね!
「安心するのです、ヤマト! どんな強敵が来ようとも、ワタシが何とかしてみせるのです!」
「くはっ、我に負けた直後に戯言かぁ?」
「敗者を叩き過ぎると、相棒に呆れられるのですよ?」
「それは……ちぃっ! 馬鹿の癖に小賢しい知恵を!」
「ははははっ! 戦神だって成長するのですよ! 成長!」
なお、きゃんきゃんと戦神と災神が姦しい小競り合いをしているのはそっとしておく。
会話の内容が小学生で外見もそれぐらいのやり取りなのに、下手に口を挟むと不毛な戦いが発生するからね。スルーしておこうね。
「マサヒコ」
「うん?」
などと、僕がそっと目を逸らすと、そこには神妙な表情のミレーヌが居た。
「今のわたくしが何を言っても、きっと空々しいことこの上ないでしょう」
「まぁ、だよね」
今更涙ながらにお礼を言われても、謝罪を聞かされても、僕は白けただろうね。
でも、まぁ、白けてもいいのさ、別に。
「だけど、短い間だったけれども、仲間だからね。それぐらいは受け入れるさ」
「……いえ、そのご厚意に甘えるわけにはいきませんわ」
僕は、今まで色んな人間を助けて来た。
地元で割と、結構な人を助けて、色々と誰かの人生を立て直して来た。
だけど、僕を助けてくれるという人間は本当に少なかったからね。
その点だけでも、僕はミレーヌのことを揺るぎなく仲間だと思っているよ。
「故に、誓いを此処に」
「誓い?」
「はい、わたくしは――――ミレーヌ・アルバートは、必ず貴方の窮地に駆け付けます。貴方の命を守りに行きます。たとえ、世界の壁が隔てていようとも」
…………まったく。
そんなに真剣に誓わなくてもいいのに。
「折角、好きな人と一緒に居られるのに、難儀な気質だね、君も」
「生憎、恩義を返さぬまま生きられるほど図太くはありませんの」
「ふふふっ、そっか」
僕は割と大体何でもできる。
だからなのか、他人に期待することは少ない。
他人を動かす時は大体、全てが予想の範疇になるように動かすからだ。
だけど、ミレーヌが真剣な表情で告げた言葉は、僕にとっての予想外で――――期待に値するだけの言葉だった。
「じゃあ、期待して待っているよ」
「ええ、必ず」
かくして、僕たちの決闘は終わる。
ガォン! と空間は閉じる。
元邪神と、元勇者、そして恋する乙女は揃って異世界に追放される。
決闘場に残ったのは、僕とマガツと、あと一人。
「いいのかよ?」
今の今まで、決闘場の上で戦いの成り行きを傍観していたソロモンが、今更になって降りて来る。
「テメェらはほぼ全ての王国民を敵に回したぜ?」
中々に物騒な忠告を携えて。
「確かに、テメェらの戦いは見事だった。あの戦神アレスを――いいや、過去最高に強かった邪神機アレスを倒したんだ。見事と言うしかねぇ……だが、テメェらはそのパイロットとアレスさえも見逃した。その行為を、王国民はどう思うだろうなぁ?」
嫌らしい笑みを浮かべながらも、一欠けらの心配を交えさせて。
「何か釈明するなら今の内だぜ? 何せ、テメェらは今、ギリギリの死闘を終えたばかりだ。倒すなら今だって、戦略級の魔術師どもは考えているだろうよ」
「うーん、そうだねぇ」
ソロモンはこう言っているのだ。
上手くやれ、と。
良い感じに事実と虚構を織り交ぜて、王国全土の民を騙して納得させるような話をこじつけろと。
うん。確かに、やろうと思えば僕なら出来ると思う。
ちょっとマガツのオーラが邪悪過ぎるけど、そこら辺は上手く誤魔化して、今のタイミングなら、王国の大体の人間を納得させる演説も可能だ。
その上で、僕はこう言おう。
「かかって来いよ、雑魚どもぉ!!!」
地元の流儀で、躊躇うことなく右の指を立てて。
祭りを始めるための言葉を。
「言っておくけどぉ! 僕らは勝手に邪神を倒して世界を救うけどさぁ!! 別に、君たちを助けたいわけじゃないからぁ!! 大体、国家単位で助けるとか、助けないとか馬鹿らしくない? 僕は、僕が助けたいと思う人間だけを勝手に助ける!! 邪魔する奴が居たら、テンシや邪神じゃなくても容赦はしない! 殴り倒して! 洗脳して! 改造して! 世界を愉快に出来るようにして、盛大に送り出してやるよぉ!!!」
僕の宣戦布告に、ソロモンは馬鹿を見るような笑みを浮かべて。
「くはははっ! やはりお主は最高だ、マサヒコ!!」
マガツは邪悪な笑みと共に、思いっきりサムズアップを決めていた。
「故に、行くぞ、マサヒコ! 待っているなど、我らの性に合わぬ! これから、我らの敵になる者を先んじて叩き潰しに行こう!」
「おうともさ! あっ! ついでに王都で王様を殴りに行かない?」
「くははは! よいぞ! 最高の提案だ! 奥歯をガタガタ言わせてやろう!!」
疲労困憊?
満身創痍?
そんなのはさっきまでの話だ。
だって今、僕らの中にはこんなにも力が溢れていて。
「僕らの!」
「我らの!」
「「戦いはこれからだ!!!」」
盛大に暴れ回るにはちょうど良い日だったのだ。
「…………弱くない?」
「…………ま、まぁ、所詮は権能に届かぬ連中だから」
なお、僕らの盛大な馬鹿騒ぎは、大体三日ぐらいで終わった。
三日ぐらいで王国全土から白旗を上げられてしまったからである。
えー、はい。じゃあ、帝国に行く準備を始めまーす。
【王国編・完全勝利!!】
【帝国編へ続く】
まだまだ続くぜ!!
行くぞ、帝国編!!!
その前に幕間が入るけど。