ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど? 作:げげるげ
はい、投稿します。
猿が居る。
真っ白な体毛な猿だ。
しかし、その大きさは怪獣のそれ。
容易くビルをなぎ倒しそうなほどの大きさの猿。
背中に二枚の翼を生やした猿――――テンシ。
その数は七体。
それぞれの手には、捻じれた鉄柱の如き槍が携えられて。
『神罰を』
『神に仇為す愚か者に』
『串刺しを』
『神罰を』
『邪悪なる者に、神罰を!!』
ビリビリと大気が震えるような殺意をこちらに向けて来る。
マガツオーと融合してもなお、肌が泡立つような殺意。
どうにも、テンシは是が非でも僕たちを殺したいらしい。
だけど、お生憎。
『来い、ソウル・リッパー』
僕の手には武器がある。
マガツが『二回目の戦闘だし、初期装備はこれじゃ』と使用可能になった武器がある。
正確に言えば、短剣を暗黒オーラから創造するという、マガツオーの機能の一部が解放されたのだ。
これにより、僕は念願の攻撃力を手に入れた。
『来るぞ』
魂に響くマガツの警告。
けれども、心配は無用。
何故って?
『行くぜ、行くぜ、行くぜぇええええええええっ!!』
今の僕は昨日とは違う、絶好調の状態だからである。
『しゃあ!』
僕は猿テンシの群れの中に飛び込み、まずはすれ違い様に一体。右の短剣で、首を掻き切って倒す。
『神罰を!』
『神罰を!』
慌てて突き出された二体の槍を、両手の短剣で受け流す。
『『ぎょっ!!?』』
ついでに、槍の先を他の二体の頭部に行くように調整。
はい、これで合計三体。
『はい、油断してた感じのそことそこぉ!』
仲間の壁に隠れていた二体の猿テンシも、短剣を二本投げて頭部を貫いて倒す。
合計五体。
『愚かなるものに!』
『邪悪なるものに!』
『『死の鉄槌を!!』』
僕が短剣を手放したことを馬鹿にしつつ、最後の二体が連携を取って僕を串刺しにしようとする。
だが、解放された機能は武器の創造なのだ。
手放したところで、瞬き一つの間にもう一度両手の内に生み出すことは可能。
ついでに、この猿の動きは人間の武術の猿真似って感じで、洗練されてない。
だからまぁ、ね?
『はい、終わり』
普通に槍を掻い潜って、間合いに入って、ざしゅっと切り裂けば終わりなんだよね。
…………なんだか、大目玉のテンシと比べてパッとしない奴らだったなぁ。
武器を持っているのは驚いたけど、それだけって感じ。
『ふっ、流石じゃ、マサヒコ。我が契約者よ。我とお主、互いに絆が深まったからこそ、七体ものテンシを一蹴出来たのじゃろう』
『ん? ああ、うん……そうだね! 絆の勝利だ!!』
なお、僕が絶好調なのは、きちんと食事と睡眠を取ったからである。
昨日の戦いはメンタル的にもギリギリだったのだが、今は覚悟も決まり、異世界の和食を食べて元気溌剌。異世界の旅館のふかふか布団のおかげで、ぐっすり熟睡。
結果、僕の体調が絶好調に戻ったというわけである。
『ふふっ、素晴らしいぞ! 昨日乗ったばかりの素人が……素人か? ごほん! ともかく、昨日初めて機体に乗ったばかりの者が、翌日にここまで成長するなんて! これが絆の力……素晴らしい。やはり絆は素晴らしいのじゃ!』
ただ、マガツが嬉しそうなので、それは口には出さないということで。
実際、マガツとの関係がある程度落ち着いたからこそ、ここまでしっかりとマガツオーを動かせたというのはあるからね。
『さぁ、この調子で次のテンシもぶち殺してゆくぞ!』
『うん? 次の…………って、うわぁ』
嫌な気配がしたので視線を上げてみると、空が割れて、そこから追加のテンシが……結構沢山! しかも、今度はその全てが空を飛んでいる。なんだろう? 鷲と獅子の合体? ああ、あれか。グリフォンかな? グリフォンテンシの群れが、口から魔力ビームみたいなものを、こっちに連射してきまーす!
『なるほど。接近戦は不利だからってことかな…………安直!!』
僕はテンシ側の判断を嘲笑い、マガツオーを大きく飛び立たせた。
『知ってる? 物凄く早く飛ぶと、ソニックブームって現象が起きるんだって! というわけで、一丁やってみようか! 異世界で科学実験!!』
そして、僕はマガツオーで音速の向こう側に飛び込むつもりで、グリフォンテンシの群れに突っ込んだのだった。
あ、ちなみに、Gとかの問題は、マガツオーと融合しているので問題ないそうです、はい。
温泉街で英気を養った僕たちは、いざ邪神討伐に向けて、次なる街に行こうとしていた。
その道中でこれである。
露骨なほど僕たちを狙い撃つ形でテンシが登場。
何故か、殺意全開で僕たちを襲っているという現状だ。
うん、本当に何で? バティンの時は、二体だけだったよね? いくら何でも数が多くない? 次から次に増援が来て、合計で五十七体ぐらいは倒したんだけど!?
『テンシの死骸は、我が回収して処理しておくのじゃ。色々と使いどころのある素材だからのう』
『邪神も素材。邪神が生み出すテンシも素材。ひょっとして、邪神の復活って、人類に対するボーナスタイムなの?』
『大体そうじゃ』
『肯定しちゃった!?』
『ただまぁ、普通の魔神機ならば、いくら下級とはいえ、ここまでテンシに集られれば当たり前に死ぬのじゃが…………動きが上達し過ぎてきもいのう』
『さっきまで絆の力とか言って、はしゃいでいた癖に!?』
ファンタジーロボでなければ、燃料の問題で動けなくなるぐらいの戦闘である。
ただ、僕たちはマガツオーの権能で、テンシを浸食し、その魔力を奪い取ることも出来るので、こうやって雑魚が出て来る分には割といくらでも戦えるというわけだ。
『いや、流石にここまで強くなると、こう……喜びよりも気持ち悪さがな?』
『相棒に向かってなんて言い様だよ!?』
『す、すまん! でも、頼りにしているのは本当じゃから!』
『まったくもう……っと、また新手?』
『ふむ。そのようだが、今度の奴は質が上がっているようじゃな』
テンシの死体を回収していると、若干、あちら側のやけくそ感が溢れる追加がやって来た。
雑魚で駄目なら、次は質を強化する。
そう言わんばかりに、次のテンシ四体は明らかに気配も姿も違っていた。
『見るがいい、マサヒコ。あれが『四枚翼』のテンシ。お主の世界で言うところの、中ボスみたいな存在じゃ』
『群れているんだけど、中ボスが』
四枚翼のテンシは、二枚翼のテンシとは異なり、怪物の如き形をしていなかった。
人型であり、造形は量産型の巨大ロボットみたいなものに近い。
でもね? なんか不気味な形。甲虫みたいな装甲に、面構えはやたら口がでかくて、目玉は四つもある。人型だけれども、人間からは程遠い外見だ。
『恐らく、邪神側が殺しに来ておるな。ふぅむ、よほど我の復活が気に食わないらしい』
『え? それって大丈夫?』
『問題ない。ここでリソースを使えば使うほど、邪神側は不利になるからのう。我らを本気で殺しにかかったとて、その後に王国側の魔神機に討伐されては意味が無い。よほどの馬鹿で無い限り、ここで重要戦力の投入は…………だが、王国に封印されていた邪神は馬鹿なんじゃよなぁ』
『おいおいおい』
最初からクライマックスなの?
『戦神の御名に於いて』
『邪悪なる者に神罰を与えん』
などと考えている内に、四枚翼が僕の方へと突撃して来た。
しかも、武装済み。前衛の剣士タイプが二体。後衛の弓使いタイプが一体。残りの一体が杖を構えて、何やらブツブツと詠唱をしている。
『ああもう! 難易度ハードは伊達じゃないってこと!?』
僕は剣士タイプ二体の剣技を捌き、すれ違い様に切り裂く――のだが、上手く急所を逃れられた。それどころか、装甲が堅すぎて、装甲しか切り裂けなかった。相手の肉まで刃が届いていない、おのれ。
『くっ! 短剣の練習がしたいからって、浸食を抑えるんじゃなかったよ!』
『お主、実戦で手加減してたの???』
『手加減じゃなくて練習! 次はしない――っと!』
次に、降り注いでくる弓矢を切り裁く。
『吹き飛べ! 邪悪の眷属!』
何やら失礼なことを抜かすテンシが発動した魔術? っぽい風の刃を、思いっきり短剣を振り回して斬り、消し飛ばす。
『くそっ! こいつら強いし、連携しているよ!』
『それに初見で対応できるお主は何なのじゃ?』
『エリートボッチさ!』
流石は中ボスと言ったところか、中々にしんどい相手だ。
とはいえ、倒せない相手ではない。
きっちり短剣に浸食を纏わせて、きっちりと斬り殺す―――そのように決意して、踏み込む寸前のことだった。
『まさか、貴方が復活するとは思いませんでしたよ、マガツミカボシ』
再び空が割れ、追加のテンシ――否、先ほどまでの襲撃を仕切っていただろうボスエネミーが君臨した。
燃える炎の如き三対の翼を持つ、赤い人型の巨大ロボットが。
そう、鳳凰の如き可憐さを携えた、『六枚翼』のテンシが。
…………というか、え? マガツの知り合い? なんか、本名っぽい名前で呼んでたけど?
『悍ましき外なる神よ。貴方が懐柔した勇者ごと、ここで滅ぼします』
あ、でも、全然会話できる感じではないのね?
『来たれ、戦神から賜った我が恩寵! 我が魔剣!』
そして、油断出来る感じでもない、と。
『再び長い時を眠りなさい、悍ましき災神よ』
六枚翼のテンシの右手に、炎が集まったかと思うと、真っ赤な剣が一振り出来上がった。
何の事情も知らない僕でも、一目見ただけで怖気が走るほどの『何か』がある剣だ。
『我らが炎の援護を!』
『おう! 我らが薪になろうとも!』
『必ず、奴らを止めて見せる!』
しかも、中ボスの四枚翼が足止め要員、と。
試しに両手の短剣を投げ、六枚翼を奇襲で仕留めてみようと思ったけど、当たる前に『じゅっ!』とか音を立てて消し飛ばされたし。
うーむ、これは本格的にまずいかもしれないね?
『マサヒコ』
『なに? マガツ』
『いかにお前が戦闘の申し子であっても、流石に相手が悪すぎる。我に代われ』
ほら、この通り、スーパーロボット系のロジックに従って動くマガツでさえも、こんな風に言うぐらいだからね。
そりゃあもう、大変にまずい状況なのだろう。
――――だけどさ。
『マガツ。お前の信じる主人公って奴は、相手が強いからって尻尾を巻いて逃げるのかな?』
『っつ! 馬鹿を言え! マサヒコよ、そんなことを言っている暇では――』
『僕を信じろよ、相棒』
僕は最強勇者マガツオーのパイロットだから。
『勝つよ。マガツに代わるまでも無く』
この通り、虚勢を張って頑張ってみるのさ。
『マサヒコ……』
『あ、でも、本当に死にそうな時は変わって――っとぉ!』
ごうっ!!
空から矢の如く炎が落ちて来る。
最後に一つ、茶化してから戦い始めようと思っていたのに、どうにも相手はせっかちらしい。
『燃え尽きなさい、我が魔剣の灼熱で』
六枚翼のテンシは、こちらを焼き尽くさんと、天上に届くほどの紅蓮の業火を一振りの剣に纏わせて。
『ダークネス・クラッシャー!!!』
――――どぐしゃあ!!!
恐るべき紅蓮の剣が振り下ろされるよりも早く、僕がやけくそ気味に放った必殺技により、他の中ボスと一緒に空間ごと圧壊して死んだ。
……え? 死んだ? マジで???
『し、死んだの? なんで?』
『お主がやったんじゃけど???』
『いや、だって! 強そうだったし! 普通に耐えられるか、最悪、無効化されると思ってたんだもん!! あの新技だって、ほとんどやけくそで生み出した奴だよ!!?』
『やけくそで空間を圧壊させる必殺技を作り出すのではない……というか、どういう原理なのじゃ、あれ?』
いやいやいや、どういう原理とか言われても?
普通よ? 普通に浸食の権能を使ってやっただけだけども?
『僕らの権能ってさ、触れているものを浸食する効果じゃん?』
『うむ』
『じゃあ、僕たちは常に、この空気や空間に触れているってことじゃん?』
『う、うむ。まぁ、そういう解釈も無きにしも非ず』
『だから、二枚翼のテンシを殺し続けている間に、ここら辺一帯の空間を全て浸食して、掌握し終えていたんだよ。もっと多数の増援が来た時、あの新技でまとめて潰そうと思って』
『…………そういうこと出来たんじゃな、我の権能って』
『おいこら、権能の本家本元???』
なんで使い方を一番熟知してないといけない奴が、そういう発言しちゃうんだよ! 不安になるだろうが!
『だって、我の本来の戦闘スタイルは力押しというか……相手がどんな能力を持っていようが、それすら消し飛ばす力の奔流さえあれば、基本的に無敵で最強というか……』
『雑! 雑だよ、戦闘スタイルが! そんな戦い方するのって、ラスボスというか、ラスボスが呼び出した破壊神とか、そういう類じゃん!!』
『いや、いやいや、我は破壊神では無いから。過去にヤンチャしていた時も、他の邪神どもとは違って、人類に好意的だったから』
『遊び甲斐のある玩具として?』
『…………さぁて、圧縮されて潰れた六枚翼と四枚翼から、素材を回収っと』
『せめて駄目元でも否定してくれない???』
雑で邪悪な本性が隠しきれてないよ、この相棒。
『ああもう……とりあえず、それは良いとして。マガツ、今回は上手く行ったけど、次も同じように倒せるとは限らないよ。今の僕らの戦力だと』
『うむ、わかっておる』
マガツはじゅるじゅると伸ばした触手で、テンシたちの死体を漁りながら言う。
『今回の相手は、マサヒコが初見殺しで仕留めなければ、我らとて消耗は避けられなかっただろう。最強勇者マガツオーは、ある程度の損傷は自動で修復されるが、流石に大きな損傷を受ければ、どこかの施設で修理せねばいけないからのう』
『ああ、だからテンシの素材を回収してたんだ?』
『その通り。テンシの素材は、我ら巨神兵器や魔神機を修理する時に使えたり、強化できたりするのじゃ』
『なるほど……あっ! それじゃあ、今回、六枚翼って強敵を倒したから、ひょっとしてマガツオーを強化――』
『万が一の生存の可能性も摘み取る感じに圧壊していたので、あまり使える素材が無いのじゃ』
『…………ごめん』
『構わん。強化の当ては別にある』
ぎゅいん、と僕の視界に一つのマップが展開される。
それは此処から二百キロほど離れた場所に存在する、大都市のマップだった。
『本来ならば、もっと時間をかけて機体の操縦に慣らしてから行こうとしていたのじゃが、思いの外、マサヒコの操縦技術が向上し過ぎているので、行っても問題ないじゃろう。どの道、馬鹿な邪神に目を付けられた以上は、決戦に備えて早めに強化はしておく必要がある』
マガツは思いがけない不運と幸運が一緒に来たような声で、今後の予定を告げる。
『迷宮都市バルムへ行くぞ、マサヒコ。そこで『暗黒竜』を喰らい、我の権能の一つを取り戻す』
実にファンタジー世界らしい、竜殺しの予定を。
Q:なんか強そうな六枚翼のテンシの敗因は?
A:超必殺ゲージが溜まっている相手の前に出たから。浸食を焼き払う炎の権能があったのにね!