英雄と呼ばれた僕は。   作:虎春

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第七話 保護者の英雄(笑)

中立国リベリア、冒険者ギルド。依頼を求める冒険者たちの声で、広い受付ホールは今日も賑わっている。

 

受付カウンターの前では、ルミリアが一人の白髪の少年を勢いよく指さしていた。突然絡まれたシルフィは、眠たげな目で彼女を見返している。

 

その背後で、受付嬢のアイリスは呆れたように眉間を揉んだ。

 

ルミリア「なによあんた!」

 

アイリス(小声で)「なんでよりによって、その人に絡むの……」

 

コホン。

 

アイリスは咳払いを一つして、いつもの冷静な表情に戻る。

 

アイリス「本日登録された、シルフィ・ストラウス様です」

 

ルミリア「シルフィ・ストラウス……って、御伽話の英雄?」

 

ルミリアの顔から、見る見る血の気が引いていく。名を聞いただけで震える彼女に、シルフィは困ったように笑った。

 

シルフィ「シルフィ・ストラウス。今はただのシルフィさ」

 

アイリス「そういうことです。下手な詮索はしない。冒険者の基本です」

 

釘を刺され、ルミリアは一瞬言葉を詰まらせる。それでも、すぐに強気な態度を取り戻した。

 

ルミリア「そ、そうよね! あんたが誰だろうと、あたしは依頼を受けに来たんだから!」

 

ルミリアはアイリスへ向き直り、今度は受付嬢を指さす。

 

ルミリア「ていうか! あたしが受けるって言ってんの! 文句言わないで受注しなさいよ!」

 

アイリス(ため息交じりに)「ですから、あなたにはまだ早いと……」

 

シルフィは言い争う二人を眺め、やれやれと苦笑した。

 

平行線をたどるやり取りの中、シルフィがそっと右手を挙げる。

 

シルフィ「なら、僕が見守りで同行しましょうか?」

 

ルミリア「なっ!?」

 

ルミリアは目を見開き、すぐさまシルフィへ指を突きつけた。

 

ルミリア「な、なななんで新米のあんたなんかに、見守りされなきゃならないのよ!」

 

アイリスは冷めた目でルミリアを見る。

 

アイリス「確かに新米ですが、あなたよりはるか上のアダマンタイト級ですよ?」

 

ルミリア「えっ?」

 

冷や汗を流すルミリアの前で、アイリスの口元がわずかに吊り上がる。

 

アイリス「なにしろ、この方の経歴が経歴ですので」

 

ルミリア「ぐぬぬ……」

 

シルフィ(両手を上げて)「そこまで言わなくても」

 

涙目で食い下がるルミリアを見て、シルフィは申し訳なさそうに笑った。

ルミリアは悔しさを噛み殺しながら、シルフィを指さす。

 

ルミリア「わかったわよ! ただし、手出し無用だからね!」

 

シルフィ(優しく微笑んで)「もちろん。約束するよ」

 

アイリスは小さく息を吐き、依頼書へ手を伸ばした。

 

アイリス「はぁ……」

 

ドン――。

 

『ゴブリン二十体討伐』と記された依頼書に、赤い受注印が押される。

 

アイリス「では今回は、ストラウス様がご同行されるということで、特例として認めます」

 

ルミリア(腕を組み、そっぽを向いて)「わかったわよ!」

 

シルフィは苦笑しながらルミリアへ右手を差し出す。

 

シルフィ「改めてよろしく。ルミリア」

 

ルミリア(むくれながら、その手を握って)「仕方ないわね」

 

二人の握手を、アイリスはどこか心配そうに見守っていた。

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