英雄と呼ばれた僕は。   作:虎春

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第八話 ゴブリン退治へ。

握手を終えると、ルミリアは迷いなく出口へ向かう。

 

ルミリア「じゃあ行くわよ!」

 

シルフィはその後を追う。奥行きのある受付ホールの向こうで、アイリスが二人の背中へ丁寧に一礼した。

 

アイリス「お気をつけて」

 

王都リベリアの街中。石畳の道を、二人は肩を並べて歩く。

 

シルフィ「初戦闘だけど、剣の扱いは慣れてるの?」

 

シルフィの視線が、ルミリアの腰に吊られた真っすぐな両刃の短剣へ落ちる。

 

ルミリアは気まずそうに目を逸らし、頬をかいた。

 

ルミリア「き、基礎訓練はちゃんとしたわよ」

 

シルフィ「あはは……。まぁ、基礎ができたら大丈夫、多分」

 

二人は王都の大門をくぐる。少しだけコミカルな空気の中、ルミリアがシルフィへ食ってかかる。

 

ルミリア「何よその反応!」

 

シルフィ(子どもをあやすように)「いや、なにも」

 

王都リベリアの北には、広大なリベリア大森林が広がっている。街道沿いには小さな村と農地が点在し、森の入口までは穏やかな田園風景が続いていた。

 

ルミリア(地図を指し示して)「ゴブリンは大体、大森林の入口によく出るのよ」

 

シルフィ(感心したように)「へぇ、情報収集はちゃんとできてるんだね」

 

街道を行く二人の脇で、農夫たちが畑仕事に励んでいる。遠くには王都の尖塔が見えた。

 

シルフィ「この辺りは、のどかで良いね」

 

ルミリア「まぁね。王都がすぐそばだし、冒険者も多いから魔物も出にくいのよ」

 

やがて陽光は木々に遮られ、道の先が薄暗くなる。大森林の入口だ。

 

ルミリア「そろそろよ。ここから先は、魔物がいつ来てもおかしくないの」

 

ルミリアは左手で鞘を押さえ、親指で鍔をわずかに押し上げる。

 

カチン!

 

右手で柄を握ったルミリアは、真っすぐな両刃の短剣を抜き放ち、下段に構えて歩き出す。

 

ルミリア「あんたも気をつけてよね」

 

シルフィ「ありがと。気をつけるよ」

 

薄暗い森の中を、ルミリアが先頭に立って進む。シルフィは少し後ろから、静かに周囲を見渡していた。

 

ガサッ――。

 

茂みが大きく揺れ、三匹のゴブリンが飛び出す。緑色の肌、尖った耳、濁った眼。手には粗末な棍棒と刃物を持っている。

 

ルミリア「……っ!」

 

ルミリアは即座に短剣を正眼に構える。

 

だが、正面のゴブリンは攻撃より先に、下卑た笑みを浮かべた。その視線がルミリアの脚、胸元、顔へと不躾に這う。

 

ルミリア(嫌悪を露わにして)「どこ見てんのよ!」

 

シルフィ(少し後ろから)「ゴブリンは女の人を見ると、繁殖行為の対象として見るから気をつけてね」

 

淡々とした忠告に、ルミリアはさらに眉を吊り上げた。

 

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