英雄と呼ばれた僕は。 作:虎春
中央のゴブリンが棍棒を振りかぶり、真正面から飛びかかる。
ゴブリン「ギシャァァア!」
ルミリアの瞳が鋭く細まる。その瞳の中に、襲い来るゴブリンの姿が映る。
棍棒が振り下ろされる寸前、ルミリアは右へ鋭く踏み出した。攻撃を紙一重でかわしながら、短剣を左下から右上へ跳ね上げる。
ルミリア「はぁっ!!」
ゴブリン「ギャァァア!」
刃はゴブリンの脇腹を深く捉えた。紫色の血を散らし、ゴブリンが地面へ崩れ落ちる。思わず2匹が驚愕の声を上げた。
ドサッ。
ルミリア「……っ!」
ゴブリン二匹目「ギシッ!?」
ゴブリン三匹目「アァ!?」
ルミリアは倒した一匹から視線を切り、二匹目を睨みつける。右足が強く地面を踏みしめた。
ルミリア「ふっ!!」
二匹目が棍棒を振り上げるより早く、ルミリアの短剣が胸を貫く。
ゴブリン二匹目「アギャッ!?」
ゴブリン三匹目「ギィィィッ!」
ルミリアは胸を貫いた剣を引き抜き、そのままゴブリンを蹴り飛ばす。
2匹目の断末魔、そして3匹目の驚愕と恐怖の悲鳴をあげる。
ルミリア「二匹目!」
ゴブリン二匹目「アァ!」
倒した勢いのまま、最後の一匹へ目を向ける。しかし、そこにいるはずの姿がない。
ルミリア「!?」
すでに三匹目は間合いの内側へ潜り込んでいた。恐慌に顔を歪めながらも、手にした刃物をルミリアの柔らかい腹部へ突き出してくる。
ゴブリン三匹目「ギシシッ!」
ルミリア(か細い声で)「うそ……?」
刃先が服へ触れる寸前、ルミリアはぎゅっと目を閉じる。恐怖と悔しさが込み上げ、目尻から涙が滲んだ。
ルミリア(心の声)「死にたくない!」
ザシュ!
暗闇を切り裂くような、あまりにも鋭い一閃。そしてその鈍い中の避けるような不可思議な音。
恐る恐る目を開けると、ゴブリンの動きは止まっていた。
ルミリア「え……?」
ゴブリン三匹目「ギ、ガ……」
次の瞬間、ゴブリンの身体が遅れてずるずると上下に分かれる。断面を剥き出しながら、紫色の血が空中へ弧を描いた。
ゴブリン三匹目「ギガァァア!!」
と最後の断末魔を上げてぜつめいする。
ドサッ!
と重くずっしりとした音が地面に響いた。
地面に倒れたゴブリンを見つめていたルミリアが、我に返って顔を上げる。
ルミリア「ハッ!」
その先には、シルフィの背中があった。
右手に握られているのは、美しい反りを持つ白銀の日本刀。研ぎ澄まされた刃には、乱れ刃重花丁子の刃文が浮かんでいる。切先から、ゴブリンの紫色の血が一滴こぼれ落ちた。
ルミリア「……っ!」