夏目アンアンや他の魔女達を幸せにしたいTS幼女さん 作:雨神 白那
前日譚その1
連れられる前のお話し
ゴスロリ………だっただろうか。そんな服を着た少女が絶望した顔で泣いていたのをたまたま隣の家から見たのが始まりだった。
「~♪」
少女の家のインターホンを鳴らして「少女が泣いていたが何かあったのか?」と聞いた時から、あの少女と両親は変わった………いや、私が変えた。
「………んぅ………起きたぞ。」
「………ん。おはよう。ソファーでゆっくりしてな。」
両親と思われる二人が、パーティーだのアンちゃんだのしか言わない肉人形が出迎えた玄関で、頭トチ狂ってしまったのかと思わず
「………シロナ。」
「どうしたアンアン。」
「……わがはいを【甘やかせ】!」
「………え?いや今料理中だから後でね。」
今生で得た身体と能力。身体はさておき、能力は本来隠すべきと思っていた故に使ってしまった時はやらかしたとも思ったが、二人が呆けたかのような顔をして疑問と困惑の雰囲気を出していたのが気になった。
「………むぅ………」
「………後で膝枕して上げるから。」
「………本当か?」
「二人を起こしてからね。」
それでも絶望する少女を、泣いている女の子を置いたままなのは駄目だろうと中へ入り声を掛けた。
「………良し。」
「終わったか?」
「うん。お二人を起こしてくるね。」
「………待ってるからな。」
少女は泣いていた。来客にも気付かない程の絶望だったのか。声を掛け、心配した少女はその一件から、心落ち着けられるようになったのは確かだ。………最も、その対象が隣に住んでいただけの正体不明の変人で良いのかとは思うが。
「………さて。」
夏目家の階段をゆっくりと上がっていく。向かうはお二人の寝室。
「………」コンコン
「………失礼します。」
「………もう大丈夫ですかね。」
念のため、二人に掛けられたわがまま………【洗脳】を【鎮静化】させる。もう影響は強くないが、影響が無いわけでもない。
「………ん……?」
「………んぅ………。」
「………お二人とも、朝食が出来ました。」
「………ん、ああ。ありがとう、シロナくん。」
「………!おはよう。ありがとうね、シロナちゃん。」
「………もう大分良くなってきましたかね。………それと、私の中身は成人男性なのは知っていらっしゃいますよね?………奥方様?」
「………あはは………」
「え?でも……今は可愛い女の子でしょう?ね?」
「そうですが………いえ。不法侵入した身です。文句を言う程でも無いですしね。」
「ありがとう。………朝食が出来ているんだよね。アンちゃんは起きてるかな?」
「多分起きてるんじゃないかしら?シロナちゃんのこと慕ってるもの。」
「ええ。リビングで待ってますよ。甘やかして欲しいとも言われましたから。」
「………すまない。君にアンちゃんを任せるようで悪いが………」
「………そうね。私達はお願いを聞くことができないから。」
「……いえ。幼い少女を幸せに出来るのですから。しっかり、おまかせください。アンアンちゃんを幸せにするためにも。」
「………あぁ。」
「………そうね。お願い。」
「もちろんです。………着替えたら、お越しください。」
失礼します。とだけ残してリビングまで降りる。………両親として、娘が可愛いのに、願いも聞けないのは悲しく、寂しいものだろう。理解は出来る。
「遅いぞ。」
「すまない。お二人と話をしていてね。」
「まあ、良い。」
「………よいしょ。ほら、おいで。」ポフポフ
「………!……ありがとう。」
「良いよ。別に何かあるわけじゃないから。」
「………わがはいの両親のことも、だ。」
「………そっか。でも、たまたま良くなったことだから。気にしなくて良いよ。」
「それでも、わがはいのわがままで両親を壊しかけたのだ。それを治して………いや、もっと良い形にしてくれた。シロナには感謝でいっぱいだ。」
「………うーん。まあ、うん。どういたしまして、で良いかな。」
「ああ。それに、わがまま言っても大丈夫なのはシロナだけだからな。気にせず喋っても良いのは、良いものだ。」
「言葉は人の心の拠り所だからね。気にせず吐き出せるなら、自分に出来る範囲で聞くよ。」
「………あぁ。ありがとう。」
膝枕して頭を撫でながらゆったりして少し。お二人も降りてきて、恐れ多くも四人で朝食を取る。
「「「「いただきます。」」」」
「………うん。美味しい。」
「ありがとう、シロナちゃん。」
「わがはいの専属シェフだからな。」
「違うよ~。元調理師だっただけの、お兄さんだからね?」
「あはは………でも、専属シェフと言うか、家政婦みたいな感じではあるよね。シロナくん。」
「そうね。あの日から、毎日隣の家から来て、面倒見てくれるもの。ありがたいわ。」
「シロナがお兄さんと言うには今の見た目で説得力は無いな。」
「………すごいボコボコに言うじゃん?流石に悲しいぞ?………否定出来ないですけど。」
「あはは!」
「うふふ!」
「そうじゃないかw」
「……えぅん、なーんも言えんですねぇ。ほら、お食べください。冷めますよ。」
そんなこんなで人様の家庭に少し紛れ込んでる変なのではございますが、とっても良い人たちです。………一緒に居させて貰えて、とっても、と~っても嬉しいです。
こんな家庭が今生でも自分にあれば良かったのに。
彼は起きた。目の前の絶望は変わらない。それを埋め、感謝し、こんな魔法があったことを後悔し、感謝する。