夏目アンアンや他の魔女達を幸せにしたいTS幼女さん 作:雨神 白那
前日譚その5
………すみません。少し……
夏目家の皆さんにお世話になって早数年。………時が流れ、アンアンに身長を越され打ちひしがれていた私は、深夜に寝床に来た方々とお話したくなってしまった。
「………ターゲット確認。」
「………顔写真とも一致する。」
「……薬品での昏睡を進める。」
「………………」
「………ターゲット、異常なし。」
「………脈拍、吐息、乱れなし。」
「………よし、少女を連れて……」
「おや、おしまいですか?」
「「「!?」」」
「もう少し丁寧に縛り上げて運ばれるんだと思ってました。」
「ターゲット、覚醒!」
「昏睡用の薬品が効かなかったのか!?」
「そんな筈は無い、……覚醒状態のターゲットを殺害して……」
「いや、抵抗する気は無いですよ?【鎮静化】も自分にしか使って無いですし、目も開いていません。………と言うか、連れ去られるのは別に良いです。気にするほどじゃないので。」
「………」
「………っ。」
「………………何故、起床した。」
「………?簡単な話です。元より自身の身体に【鎮静化】の魔法を掛け続けていますので。薬品の昏睡効果を、引き起こす前に動かなくする。それだけです。」
「………!」
「………化け物め!」
「………理屈はわかった。しかし、そこまでして我々と話す理由はなんだ。魔法を行使する事で、我々を殺害するのは難しくない筈だ。」
「………………その。連れられる前にお話したかったのと。………………おトイレ、済ませようかなって。」
「「「………………。」」」
「………いや、真剣に言ってることではあるんですよ?下手に途中で起きてること気付かれて即殺害とか洒落にもなりませんし。後普通に人としての尊厳くらいは保ちたいですからね?」
「………」
「………あー……」
「………そうか。」
「なので、とりあえずトイレ行かせてください。ついてきても良いですけど、流石に最中を見るのはやめて下さいね?」
「………ならば、俺が付き添おう。」
「………目は閉じたままで……いや、目隠しを付けさせてくれ。」
「………了承した。付き添いが終わり次第に、身柄を確保させて貰う。」
「わかりました。………目隠し、お願いします。」
「………あの、おトイレ多分ここなので、窓も無いですし、扉前でお願いします。」
「………了承した。」
「………えっと……ドアノブはっと……」ガチャッ
……トイレに行きたいは確かにそうだけど……書くものが無いわけじゃないからね~。………目を隠した状態で隠せるかな?
「………すみません、終わりました。」
「………ああ。」
「戻りましょうか。」
「………先導する。」
「お願いします。」
………うまいこと見つかると良いんだけど。アンアンは恐らくは自分と同じ形だろうし………お二人の目に入れば少しでも安心してくれるかな?
「すみません、お手洗い終わりました。」
「………戻った。」
「あ、お帰り…なさい…?」
「………では、すまないが………。」
「………あぁ、大丈夫ですよ。【鎮静化】弱めます。」
「………………。」
「………あー……おやすみ?」
「………了承した。責任を持って身柄を確保させて貰う。」
「………………んぅ。………おぇがい……しゅまふ……。」
「……………ターゲット、昏睡状態。」
「……………。」
「連れていくぞ。」
「「了解。」」
深夜に動く影が複数。二つの人影を連れて、孤島へと身柄を輸送していく。……そのうち数人の心には、感情の入り混じった複雑な思いが渦巻いていた。
「………………?」
「………ん………。」
やけに静かな朝。人の気配が隣の伴侶以外にない事に気付き、二人の人影は動き始めていた。
「………アンちゃん?……リビングにもいない……。」
「………シロナちゃん?……いつもならアンちゃんと一緒に居るのに、どうしたのかしら?」
「………嫌な予感がする。」
「アンちゃんもいないし………シロナちゃんのお家訪ねてみましょうか?」
「………あぁ。……嫌な予感が当たらないと良いんだが。」
二人はシロナの家に向かった………が。人の気配が変わらず無い。事前に教えて貰ったポストの合鍵を取り出し、家を開ければ、静寂が迎えた。
「………シロナくん?……居るかい?」
「………シロナちゃん?アンちゃん?……居ないかしら?」
「寝室に行こう。寝てるならそれで良いんだ。」
「………ええ。」
「………失礼するよ。居るかい?……居ないね。」ガチャッ
「………何処に行ったのかしら?」
「探そう。アンちゃんもシロナくんも、何も言わずに消える子達じゃないからね。」
「………そうね!かくれんぼだったら、それで良いのよ!」
「………リビング、台所、風呂………トイレにも………?」
「………どうかしたの?」
「………!これを見て。」
「………?……!そう、なのね。」
ペーパーの置き場辺りに挟まれていたメモ用紙。汚い……と言うか、見て書いている訳では無いように見えるそれは、『おそらくくに』『アンアンともに?』『かえる、おねがいしま』といったことが書かれていた。
「………おそらくだが。国は魔法の事を知っていた。」
「………ええ。」
「そして魔法を使える子達を連れて何処かに連行した筈だ。」
「………アンちゃんも、シロナちゃんも、そこにいるのかしら。」
「多分。………僕らに出来ることは多くないだろう。でも、帰るまで家を守ってあげる事は出来る。」
「………ええ!」
「だから、二人が帰ってきた時に、優しく迎えてあげるのが僕らの役目だ。………もちろん、捜索届けは出して、ね。」
「私たちの………四人の居場所を守って、また楽しいお茶会をしましょう!」
「あぁ。……まずは朝食だ。ちゃんと食べないとシロナくんに叱られてしまうからね。」
「えぇ、そうね!アンアンちゃんはシロナちゃんに任せましょうか!」
………かくして少女達は舞台へと上げられる。本来ある筈のない、14人目の囚人を加えて。【鎮静化】の魔法を持つ、TS幼女さんという異物を含んで。
シロナ「………何処とも知れない孤島………か。」
シロナ「………帰るのは、随分先になりそうです。」
シロナ「あの二人に、きちんとメッセージは届いたでしょうか。それだけが、心配です。」
アンアン「何の話だ」
シロナ「………アンアンちゃん、居たんだね。」
アンアン「何か黄昏ているように見えたからな。」
シロナ「あのお二人の事が心配です。………という話ですよ。」
アンアン「………そうだな。早く、帰りたい。」
シロナ「………うん。皆一緒に………と言うのは傲慢かもだけど………ね。」