夏目アンアンや他の魔女達を幸せにしたいTS幼女さん 作:雨神 白那
本編その1
今の状況で証明は難しいが、私は………
我々は此処の囚人である。
暗がりで目を覚ます。………牢屋、だろうか。あの人たちに連れられた後、ずいぶん時間が過ぎたはず………とすれば、どうにも緩い場所だ。………もっと厳しいものを考えていたが……いや、第一印象で考えるのは良くないな。想像よりも、遥かに酷い状況だと考えるべきだ。
………?……ん?
「ん?」
ひらひらしてる。………?えっ?あ、?ん?
「ん?」
………は?何これは、何?……いや……囚人服、なのか?………いや………
「………馬鹿か?」
「ふぇっ!?」
「あ、んん?」
………不味い、あまりの意味不明さに困惑していた。……いや、それよりも、だ。同室の人が居たのか。………いや、二段ベット、だな。当たり前か。
「………すまない。驚かせただろうか。」
「………あ、いえ……すみません。」
「………ふむ……」
………白いシスターのような人だ。………少女にしては、随分落ち着いている………私のように、ある程度理解している状況で連れられたのだろうか?
「えっと、可愛い、ですね!」
「……ハァ?」
「ひっ、………す、すみませんっ!」
「………ああ、すまない。怖がらせただろうか。あまりこのような衣服を好まないのでね。………似合いはするだろうが、あまり触れないでくれると嬉しい。」
「………えっと………はい。その、すみませんでした……」
「いや、こちらの都合での事だ。怖がらせた私が悪い。………ごめん、白シスターさん。」
「………えっ、白シスターさん……?」
………このような衣服は母であった少女のほうが似合うだろう……自分のようなのが着こなす物ではないな。………【鎮静化】………深く眠っていたせいか、常日頃から回していた魔法が止まっていたな………また回しておくか。
「………ふむ……。」
「………あの、その、えっと………」
「どうした、白シスターさん?」
「………白シスターさんって、私、ですよね?」
「………?名前を聞いた覚えも、自己紹介をした覚えも無いからね。とりあえずの特徴で呼んでいる。………自己紹介をしようか?」
「………えっと………はい。氷上メルル……です。」
「雨神シロナ。魔法は【鎮静化】。とりあえず人の感情を抑制するくらいなら年単位で出来る。………もっとも、君は随分落ち着いているから、使う必要性は無いと思うが。」
「………それは……」
白シスターさん………氷上メルル、だったか。彼女が考え込むような素振りを見せた時だった。
「~~ー~~ー~~ー!!」
「~~ー、ー~~ーー!」
「~~ー、ー~~ー!?」
「………騒がしいな?」
「えっ、あ、ああ、そうですね?」
他の所に連れられたのだろうか?………少女の声が聞こえる。どうにも声が………似たような年齢?ぐらいの声の高さな気がする。………おそらく彼女も………。
「……えっと、大丈夫ですか?」
「ん?……ああ、考え込む癖があるんだ。先ほども怖がらせたね。すまない。どうにも人から見ると随分印象がチグハグに見えるらしい。………気にするような事ではないから、私の事は置いておいて構わない。」
「………そう……ですか?………なら、そっとしておきますね?」
「ああ。何かあれば………ん?」
話をしている途中で、壁にあるモニターが音を立てた。電源のついた画面には、白いもふもふ………フクロウだろうか?表示されていた。
「あ……もしもし……映像って見えてます……?何せ古くて故障が多いので……やれやれ。」
「私……ゴクチョーと申します。」
「詳しい説明がしたいので、ラウンジに集合してください。」
「監房の鍵を開けますので、看守の後についてきてください。」
「抵抗とかは自由なんですが……命とかなくなっちゃうので……はい……。」
そう言い終えるとモニターの電源は消え、画面は暗くなった。
「………可愛いが、声が予想外の方向だったな………あと物騒だ。」
「………そう……ですね。」
「………ん?………何かを引きずる音……だろうか?」
聞き耳を立てれば、少女達の怯える声と、何かが動き、引きずるような音が響いている。……引きずる音を出すそれはすぐに目の前に現れた。
「………てるてる坊主?………不気味……とも取れなくは無いが……」
「………ラウンジに、と、ゴクチョーさんが言っていたので、その、着いていくようにと言っていた、看守さん……じゃないでしょうか………?」
「………あぁ。そう言うことか。あまりにも看守というイメージから掛け離れているから、何者かと思ったよ。」
「………そう………なんですか?」
「………世間一般でこれを見て、最初に看守という人はあまりいないと思うが。………いや、人によるだろうか?まあ、着いていかなければ、ね。ありがとう、メルルちゃん。」
「……あ、はい!えっと………どういたしまして?」
………随分とファンシーな監獄なんだな………此処は。魔法がある時点で不思議や違和感はそれなりにあるものと考えるべきなのかもしれないが。………他の少女………囚人達も、看守に連れられラウンジに行くのだろう。
「ー~~ーー!」
「ー~ーー~。~ー~~~~ーーー~ー。」
どうにも、トラブルばかりが起きているが、仕方の無い事だろう。おそらくは、事情の説明もなく連れられた者だけだろうからな。………しばらくは、囚人生活だろうか。
「ふむ………ラウンジは此処か。……暖炉に火も入っているし………これで適温なら、少なくとも日本の管轄でも、程近い場所では無いかもしれないな?」
「………そう……なんですか?」
「国には気候がある。時期にもよるが、誘拐される前の状況だと、春のはずだ。暖炉に火を入れる必要は無いと思う。」
「………そう……なんですか。」
「まぁ、場所によるから、なんとも言えないかもしれない。北の方ならまだ理解出来る。」
………元より此処に長居したくは無いが、強制連行された身だ。何らかの問題の解決、もしくは妥協点を見つける他無いように思う。……そしてそれは……おそらく。
考え事をしていれば、看守によって、囚人たる少女達が集まったのだろう。ラウンジの入り口に留まっている。………そして、少女の中には、見覚えのある子もいた。
「………メルルちゃん。知り合いを見つけた。そちらに行く。何かあれば声を掛けてくれ。」
「………あ、わか、……わかり、ました。」
「………あぁ。また後で。」
そうしてメルルちゃんと離れ、向かうは一つ。未だうつむき、自分の事を認識していない少女に声を掛ける。
「………アンアンちゃん。無事かい?」
「………!?……!シロナぁ!」
「っおぅ……今は君の方が大きくなった筈なんだがね……。」
「………っ!シロ……ナぁ!」
「あぁ、うん。此処に居るよ。アンアンちゃん。無事で何よりだ。」ナデナデ
家で着ていた物よりもヒラヒラが随分増量された服を着た彼女は、持っていたスケッチブックを投げ捨て、私の方まで突撃してきた。
突撃してきたアンアンを受け止めるが、体格差と慣れない服、それからボリュームの増した彼女の服を受け止めるには少し力が足らずそのまま倒れ込んでしまった。
知り合いが無事なのは喜ばしい事だ。それが、守ろうと決めた幼子であるならなおさらに。モフモフ感が増した彼女を撫でながら、周りにとんでもなく注目されているのを見て、苦笑いしか出せない現状の中。
この後どうしようか頭を回す事しか出来ないのをちょっとした諦めと共に、受け入れることしか出来なかった。
「………落ち着いた?」
「………あぁ。ありがとう、シロナ。」
「なら良かった。……所で、今の状況は理解してる?」
「………?………!?あ、これはそのっ!」
「あー……うん。とりあえず落ち着いて。生暖かい目で見られてるのはもう諦めたから。」
「……あー///………すまない///」
「うん。大丈夫だよ。さ、上から退いてくれ。体格差で何も出来んから。」
「………あぁ。すぐにどく。……///」
「………よいしょっと。とりあえずは………」
安否確認は出来た。アンアンちゃんは無事だ。先ほどのフクロウとかの話が始まるまで……
「いやぁ~すごいですねっ」
「………んぇ?」
「突然牢屋で目覚め!化け物に見張られていて!なんかすごいことが起こっているのを感じます!高まっちゃいますね~!」
「え、う、うん……?」
「………すんごい突然だね?いや、お騒がせした自分らが言うのは違うだろうけどさ。」
ぶんぶん腕振られてる………勢い凄いな、大丈夫か?あれ。
「なあにが、高まっちゃいますよね~、ですわ!」
「やべーことになってるんですわ!もっと危機感を持った方が良いんじゃないかしら!?」
「………耳が痛いな………。」
「……!?耳が痛いのか!?……まさかさっきの………」
「いや、違う。例えの話で言っただけの………
アンアンの誤解を訂正しながら、自分は大丈夫だと弁明していると、どうにも周りは自己紹介をしているらしい。ちょっとした口論や、随分元気な声が聞こえたり。………視界の端に見えたが、メルルが傷を直すのも見えた。………………やはり此処は【魔法】の………
「ええと、あと、残っているのは……」
………少し考え事をし過ぎたか。自己紹介はするべきだな。
「自分が行こうか。名前は雨神シロナ。………諸事情あって証明も今は難しいが、私は……この中で恐らく最も背が低いが、精神年齢的に、この中で最年長に当たる。少なくとも、合わせて30後半程になる。なので、大人の判断を必要とする時は呼んでくれ。自分に出来る範囲で力になろう。」
「………それと。」
『わがはいは夏目アンアンである。………シロナとは、此処に連れられる前から交流があった。先ほど、シロナと話していたが、基本これで会話する。』
「………それぞれの諸事情に関わるので、深掘りは後にさせて欲しいが、彼女は普段、声での会話をしないようにしている。聞くのは大丈夫なので、回答だけはスケッチブックを見てあげて欲しい。」ナデナデ
「………時間を取りすぎてしまったね。次、どうぞ。」
随分時間を取ってしまった。………やはり簡潔に纏めるのは苦手だな………。しかし、後で会話と説明の時間を持てそうなのはありがたい。事情説明をしておかないと、私が少女達に混ざるのはちょっと………ん、んん。輪に加わって居なかった少女まで、自己紹介を終えた。
「ここにいる意味は、私にもわからない。けれど冷静に行動………」
「あ、ちょっといいか?えっと……レイアちゃんで、あっているかい?」
「あぁ。あっているよ。」
「ありがとう。意味については少し検討が付いている。ただ、君の言った様に冷静に行動する事。それに付け加えて、先ほどのフクロウ……くん……?の説明を待つのが大事だと思う。レイアちゃんの考えの通りに、落ち着くことだね。」
「……あぁ。私も同意見だ。」
「だから、後で自由時間があったら、この全員で集まりたい。………出来れば、レイアちゃんに司会進行を任せて、見解をぶつけ合う場を整えて欲しい。………大人だと言ってはいるが、目立つのはとっても苦手でね。」
「……!そう言うことなら任せて欲しい!きちんと舞台を整えて見せよう!シロナくん!」
「おねがいするよ。」
会話が終わった直後、通気口から、あのフクロウ……?が出て降りてきた。
そのまま机に降り立ち、自己紹介と説明をしてくれた。
可愛いフクロウ………ゴクチョー。………確かに可愛い。………それと、【魔女】。【魔法】関連の行き着く先だろうか?………世界に害なす悪者。
ココ………だったか。彼女が文句をぶつけたのはありがたい。【大魔女】………救済という言葉と、見つける事。呪いをということはつまり、魔法という呪いをどうにか出来るのではないか、と言うこと。………この後の説明が信憑性と説得力を持ったな。
………すまないゴクチョー。その期待、大いに持たせて貰う。それと、さすがに私は飽きるぞ?帰る場所がある少女達も居るからな。
………………あ、てるてる坊主じゃなくて元人間ね。………【なれはて】か。洗脳して使える駒にと………安全なら随分人材確保が楽だな。………いや、物騒。逆らう=死は極端だな………。
周りの少女達は信じれていないのが多数………ん?………二階堂ヒロ、だったか。
「間違いです。私は悪ではない。」
………善悪は個人が決める物ではないはずだが。他を悪とするのが傲慢な悪と言える気がするよ。………後ゴクチョー。物騒な事言い過ぎて平和を願うその本音が薄っぺらいぞ………?確かに残業は嫌だが………。
「間違っている。私は悪じゃない。」
迷っていない………やらかすな。………はぁ。目立つのは嫌いなんだが。
「この世界を正すことができるのは、私だけだ。」
………傲慢な正義。そして死ぬ。死は人を壊す。
「私はこの世の悪を排す。まずは___」
火かき棒………やらかすな。これは。
「貴様だ!化け物!」
そうして地を蹴り………
「止まれ馬鹿天秤。頭に外付けの倫理観と常識を着けてから動け。」
身体から力が抜け落ち………シロナに手を捕まれた。
「………っ、!?」
「貴様は未だ幼い少女達に、人の死と言うトラウマを植え付ける癌になるところだった。それは、貴様が取った行動が正しくないと証明する、変わらない事実だ。………【鎮静化】。」
「何を……して……っ!」
「まず考えろ。貴様の目の前に居るそれが、本当に死ぬと、正せると何故思った。貴様の目の前に居るのは、化け物だ。死なないこと位考えろ。………そもそも一つしかいない訳ないだろう。」
「………………………。」
「【鎮静化】は掛けた。もう一度考えろ、二階堂ヒロ。貴様の善悪の天秤には、何が乗る?自己の主張だけか?周りの不安と心配は乗らなかったのか?………わからないなら大人しくしていろ。一時的な外付けの倫理観になってやる。」
「………………すまない。」
「………分かったなら良い。」
「………すまないゴクチョー。話を中断させた。」
「………いえ。ありがとうございます。……残業は嫌ですからね。………ああ、それと。火かき棒で何度も叩かれた位では死なないので。次は止めてくださいね。」
「__あっ、あと何個もすみません。最後に、みなさんに、もっとも大切なことを伝えておきます。」
「魔女になりつつある者は、抑えきれない殺意や妄想に取りつかれてしまいます。」
「………はぁ?」
「面倒なことに、いずれ囚人間で殺人事件が起こるんですよ。」
「殺人事件っ!?」
「………いや、それ早く言おうよ?危うく一人殺しに行くとこだったよ?社会の歯車なら、報告、連絡、相談はしっかりしな?言わないと、責任は自分が負うことになるよ?」
「すみません………まあ、毎度のことなんですよねぇ………というわけで。さすがにそんな危険人物とは一緒に生活出来ませんよねぇ。」
「というわけで殺人事件が起こり次第、【魔女裁判】を開廷します。」
「【魔女】になった囚人は……あのー……処刑しますので……。」
「詳しくは、【魔女図鑑】をご覧ください。では私はこれにて……。」
ゴクチョーが羽ばたき、通気口の中に消えていく。
「………とりあえずゴクチョーは中間管理職だな……。上に話を通すときはおねがいしよう。」
………こうして、少女達の獄中生活は始まった。崩れ落ちる足元を、補強しながら歩む。そんな一つの命綱と共に。
ヒロちゃん「あの時は本当に申し訳ない。あの時、正しくなかったのは私だった。」
シロナ「あー……大丈夫だよ。………言っちゃあれだけど、下手したら死んでたし。」
ヒロちゃん「………?」
シロナ「いや……あの時加減間違えかけてそのまま殺す所だったから………。」
ヒロちゃん「………(絶句)」
アンアン「やっぱりポンコツシロナじゃないか?」
シロナ「………いや、うん。……何も言えん……。」
エマ「………えっ!?ヒロちゃんあの時そんな危なかったの!?」
ヒロちゃん「………エマ?……待て、君は一体何時から其処にいたんだ?盗み聞きするのは正しくない………
エマ「ごめんヒロちゃん………でも、そんなこと………
シロナ「………まあ、平和だから良いか。」
アンアン「………シロナ、膝を貸せ。長くなるだろう?」
シロナ「ん?あぁ。良いよ。………ちなみに座るのと枕どっちだそれは?」
アンアン「当然枕だ。」
シロナ「………お茶菓子食べてすぐに横にはならない方が良いんだけどな………?……ほら、良いよ。」ポンポン
アンアン「むふー。」ニッコニコ
シロナ「………平和だな~。」