ソロアート・オフライン   作:I love ?

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……どうでもいいかもしれませんが、この作品は作者がぼっちアートオンラインを見たことが切っ掛けです。もうあれは心理描写がパネェ。
結論。
早く更新してェェェェェッ!



比企谷八幡にも、度重なる理不尽を嫌に思う気持ちは人並み以下だが確かにある。

午前九時。待ち合わせ時刻である。

 

「ふあぁ……」

 

周りにはちらほらプレイヤーはいるが、お目当ての人物はいない。宙船ばりに舟を漕いでいる。

……いかんいかん。

眠気に耐えるているあいだは体感時間が長く、時計を見たら一分しか経っていない。というか、今見て気づいたけどパーティーメンバーにキリトいるんですけど……。別にいいけど。

瞼をしばたたかせ、また瞼が落ちていく。

 

「エイトー!」

 

が、一気に見開かれた。どこぞのカゲロウプロジェクト並みに目が醒め、意識がクリアになっていく。

 

「お、おぉ……。朝から元気だな……」

 

リポビタンDでも飲んだの? まさか昨日一睡もしてないせいでハイテンションとかやめてね?

 

「うんッ! 昨日はすごい快眠で寝起きがよかったんだ」

 

ならなんで時間ギリギリ? まぁ女子は出掛ける準備に時間がかかるということで納得しておこ……。

 

「……そうか、俺は眠くてな……」

 

ついさっき醒めたけど。キリトの挨拶には眠気の抑止作用があると銘打ったら絶対売れるな。録音結晶使って商品化したい。

 

「えっ、大丈夫なの? 最前線の攻略に行くんでしょ?」

 

「……まぁ、戦うときにはちゃんとスイッチを切り替えるわ。死にたくねぇしな」

 

また一つあくびをし、ボーッと行き交う人々や街並みを眺めていると、おずおずといった様子でキリトが再度話し掛けてくる。

 

「……ねぇ、エイトって二ヶ月前から今までなにしてたの?」

 

「……色々、だな」

 

「……そっか」

 

周りの喧騒だけが聞こえ、俺たちはお互いに口を開かない。遠くもなく近くもない関係、和やかとも険悪とも言えない空気がちょうどよかった。

 

「つーか誘ってきたやつが遅れるってどういうことだよ……」

 

重役出勤? 働く時間が少なくて給料を多くもらえるとか、なにそれいいね。なんなら働かずに給料を多くもらいたい。

……やっぱり小説ほしいでござる。暇潰ししたい。なんなら立ったまま寝ちゃおうかな……。

瞼を閉じようとしたときに、何回も見た青い転移光が目を射す。

 

「どいてぇぇーッ!」

 

青い光の中から白い物体がこちらに飛んでくるので、半ば反射的に避ける。「ふぎゅ!」という間抜けな音が聞こえたところで、俺にダイビングしてきた物体の全貌が明らかになった。というよりアスナだった。

 

「だ、大丈夫?」

 

突然の事態から立ち直ったキリトが声を掛けると、跳び跳ねるように起き上がった。そしてそのまま俺を盾にするように俺の背後(バック)を取った。……え、なに? なんで俺を人身御供にしてんの?

またも光った転移門から出ていた人物を見たら、血盟騎士団の制服を纏った俺並みに目付きが悪いプレイヤーだった。

ば、バカな、お前は……ニューディール(多分)! なんでお前がここに!?

ニューヨーク(きっと)がなんでここにいるのかをアスナに訊ねる前に、入浴が話し掛けてくる。明らかに憤懣やるかたない顔で、アスナに。

 

「ア……アスナ様、勝手なことをされては困ります……!」

 

……またなにかやらかしたのだろうか、この自由奔放副団長殿は。ヒースクリフが放任主義なんだから、お前がギルドを纏めろよ……。

内心呆れている俺に同調してくれたのか、入浴(メイビー)はさらに言い募る。

 

「さあ、アスナ様、ギルド本部まで戻りましょう」

 

「嫌よ、今日は活動日じゃないわよ! ……だいたい、アンタなんで朝から家の前で張り込んでんのよ!?」

 

「うわぁ……」

 

前言撤回。血盟騎士団ロクなやつがいない。キリトに引かれるって相当だぞ? ていうかそれ、オレンジにならないだけで犯罪行為じゃね?

 

「ふふ、こんなこともあろうと思いまして、私一ヶ月前からずっとセルムブルグで早朝より監視の任務についておりました」

 

……仕事(ストーカー)、ご苦労様です。

接点がないので直接は言わないが、内心で皮肉る。アスナはいい加減俺を盾にすんのやめてくんない? 三白眼の睨み、モロに受けんだけど。

 

「そ、それ、団長の指示じゃないわよね……?」

 

「私の任務はアスナ様の護衛です! それには当然自宅の監視も……」

 

「ふ……ふくまれないわよバカ!!」

 

護衛が護衛対象に不安と恐怖与えてどうすんだよ……。権力(KoB)を盾にのさばった結果がこれだ。

ちらりとキリトを見ると、険しい顔をしていた。いやー、ここまで来たらもう嫌悪感混ぜちゃっていいと思いますよ? ほら、すごい形相でこっち向かってきますし。

リア充が前方から歩いてきたときのように道を開けようと横にずれる。のだが、アスナはまた俺の背後に付く。……お前はスタンドかよ。

結局俺は押しやられ、入浴はアスナの腕を掴む。……あいつ、倫理コードに引っ掛かって黒鉄宮に行かんかな……。押しやがって。

 

「聞き分けのないことを仰らないでください……さあ、本部に戻りますよ」

 

御しきれない感情を孕んでアスナを睥睨し、無理矢理に転移門に引っ張って行く。……いや、だから護衛が怖がらせちゃダメだろ……。

ぶっちゃけ俺には関係ないことだ。アスナがすがる眼で見てこようが、キリトがアスナの腕を掴んでる、男の手を払おうとしようが俺には関係ないし、害もない。

ただ……気に食わない。

別にいたいけな少女に乱暴したとか、嫌がってるのに連れていくななんて、とか正義感じみたことを言うつもりなんて微塵もない。

ただ、人がなんでも自分の思い通りになると思っているような目が、その人をよくも知らないくせに人を下に見ているような態度が気に食わないのだ。

集団に属せばその分しがらみや制限、制約は掛かるものだし、上に立てば立つほど制約は減るか増えるかのどちらか、それは理解している。だが、その人の持つ肩書きや、周りの奴の独り善がりで個人の意見が無視されるのは違うだろう?

さっきも思ったが、これは正義感や思い遣りから来た行動じゃない。俺の自己満足で、利己的な気持ちから来たものだ。

 

「……あの、すんません。一応、俺たちが先約なんで……そちらの副団長さん、一日だけ貸して頂けますか?」

 

気に食わない、とは思っているがわざわざことを荒立てる必要もない。できるだけ穏便に、とまるで葉山のようなことを考えているのに辟易とするが致し方ない。……キリトが意外そうに見てるのは何気にショックだが。

配慮にフォローを重ねた俺の心遣いを、しかし目の前の男は台無しにする。

 

「貴様ァ……!」

 

……ごめんなさいすいませんやっぱ副団長さん、持ち帰っていただいて結構です。

つい口にしそうになった言葉を呑み――【ご】はもう口にしてたが――、なんとか違う言葉を捻り出す。

 

「……安全面は保証します。パーティーは俺と副団長さんだけじゃなくて、KoBの団長にも多分匹敵するキリトもいますから」

 

「私ッ!?」

 

安全面という点で、ヒースクリフを除きキリト以上に安心できる実力者はそうそういまい。そう思っての発言だったのだが……。

 

「ふざけるな! 貴様ごときにアスナ様の護衛が務まるわけがないだろう!」

 

……話を聞けよ。少数派の意見だって聞くのは大事って、中3の公民の教科書にだって書いてあるぞ。……今は一対一だけどな。

 

「……いや、ですから。別に俺じゃなくて、そこにいるキリト……《黒の剣士》になら務まるでしょう? あなたも血盟騎士団なら、黒の剣士の実力はよく知ってるはずですし……」

 

「そんなことは関係ない! 貴様のような《人殺し》の《ビーター》なんぞのいるパーティーになぞアスナ様を任せられるか!」

 

「なッ! クラ……」

 

なにかを言いかけたアスナを視線で黙殺する。どいつもこいつも事実なのだ。

至極全うな意見。しかし、こいつは本心からではなく、建て前として俺が人殺しのビーターということを言っている。

罵り、謗り、罵倒し、陰口を叩き、悪口を言い、批難し、糾弾し、悪口雑言、罵詈雑言の限りを尽くすのはいい。人なら誰でもやることだし、やられたところで俺はなにも思わない。

俺は人一倍トラウマを抱えていると自負している。だからこそ言えることもある。

本当に自分を責めるときというのは、他人から言われるまでもなく自分が一番やってはいけないことをしたと理解しているときだ。今思えば、俺が今までトラウマと呼んできたものはトラウマと呼ぶに値しない。確かに当時に傷ついたことは多々あった。だが、それだけだ。

あれは、俺と彼女とのコミュニケーション手段のひとつだったのかもしれない。

罪を犯した人を悪人と呼ぶのならば、誰よりも罪を悔い改めようとする人に笑顔で傷口に塩を塗り込む貴様らは悪魔だ。

本当のトラウマというものは、精神に根深く絡み、根を断ち切れば絶ち切ろうとするほど自らの心も同時に刻み付ける。

中学校の頃、カウンセリングの先生に一度だけ相談に行ったことがあった。

「――気持ちは私にも解るよ」

 

そんな安っぽい同情では心の傷など癒せやしない。

気持ちが本当に解るなら、今俺がどんな気持ちか言ってみろ。気持ちか本当に解るなら、あの時どうすれば正解だったんだ。

言葉というのはひどく無責任なもので、言った側にその気がなくとも、言われた側には曲解して伝わる。

そしてそれを勘違いと言うのだろう。

百戦錬磨の最弱。それが俺。負けることに関しては俺が最強。

だが今回は勘違いでもなんでもない。純粋な悪意、それだけを向けてきている。なら、敬意も節度も礼儀も必要ない。

 

「……ストーカーの血盟騎士団員よりはマシだろ。しかも護衛が副団長を怖がらせてるしな。少なくとも俺は怖がられてないぞ……多分」

 

むしろこっちが戦々恐々させられてんかんな? 連れに来たのお前じゃなかったら喜んで引き渡してたからな?

ストーカーに人殺し、暴力者と、犯罪者の坩堝に流れる空気を爆発させたのは入浴だった。

 

「ガキがァ……。私は栄光ある血盟騎士団の一人だぞ!!」

 

「はー……。なにお前中二病? 栄光ある血盟騎士団とか……ハッ」

 

思わず失笑してしまう。

なにを強くなった気でいるのだろうか? こいつは。甚だ疑問だ。

 

「貴ッ様ァ……」

 

怒りのあまり、ボキャブラリーが全くなくなっている。そんなんじゃ語彙ノ下の口撃を掻い潜ってきた俺の精神を折ることはできんぞ。

しかし入浴は口撃ではなく、攻撃を行ってきた。

 

「あっぶね……。なにすんだよ」

 

「クラディール! あんたなにしてんのよ!」

 

何気に入浴がクラディールということを今知ったが、まぁどうでもいい。苛立ちが天上越えて宇宙まで行ってしまったらこうなるんだな〜と他人事のように感じていた。

そもそもあいつ、ここが圏内だということも忘れている。

振られた剣はまぁ両手剣らしく、鈍重で重そうな斬撃だが当たらなければどうということはない。

 

「……なぁ、アスナ。こいつとデュエルしてもいいか?」

 

自分を見失ってる輩を冷静にさせるには言葉じゃ無理だ。目には目を、歯には歯を、理不尽な暴力には理不尽な暴力を。

部下の失態は上司の責任と言う。それは違う。逆だ。部下の功績は上司のもの。部下の失敗は部下のもの。そして、上司の失態は部下のもの。そう、上司(アスナ)の失態は部下(クラディール)のものなのだ。

今までの理不尽な暴力(リニアー)暴虐(フラッシング・ペネトレイター)の清算はこいつにしてもらおう……と、今までのイライラ(アスナ七割、クラディール三割)をぶつけることを決意し、アスナが決闘を許可したことに内心歓喜したのだった。




ちなみに八幡君のデュエルの戦績は、
キリト
一戦、一敗。
アスナ
二戦、一勝一敗。
クライン
一戦、一敗。
エギル
一戦、一勝。
です。
ちなみに八幡君のデュエルをしての感想は、
キリト
反射神経もはや人間じゃない! こんなんチートや、チーターやん!
アスナ
あいつの剣速すぎ。マジレーザー。こんなんチートやチーターやん!
クライン
刀の独特な間合いがやりづらい。こんなんチートやチーターやん!
エギル
一撃の威力半端ない。相性いいからなんとか勝てた……。こんなんチートやチーターやん!
ですかね。
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