ソロアート・オフライン   作:I love ?

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勉強の支障がない程度に書き進め投稿。……え、凍結しただろって? はは、やだなぁ、凍結しても今の世の中は便利だから解凍出来るんだぜ?
……まぁ冗談はこれくらいにして。
早いものでもう十一月。受験が終わるまでに投稿できるのはこの話か次の話で最後だと思います。
完結はさせますので、どうか他の二次創作物でも読んでお待ちください。
人気なやつだと五話前後でこの作品の総合得点越えちゃうから嫌になっちゃうな、もう!(これが言いたかっただけ)


未だ彼は自分自身の心に気づかず、まちがい続ける。

静かなことを表す単語は多くある。

沈黙、閑静、静寂、静けさ、閑散、閑寂……。しかし、逆に言えばこの単語は静か、ということしか表せない。

静かさにも色々ある。

学級会のような重々しい沈黙だったり、言ったことがすべってしけたり、恋愛漫画のような甘い無言の空間だってあるのだろう。

いわゆる空気、というやつだ。

無言の空間。会話のないパーティー。言葉を発しない俺たち。

先頭を行く純白の騎士はこちらを振り返らず、俺たちの間にいる漆黒の剣士はチラチラと俺たちを見比べる。

何てことはない。人生のレールが離れるときが来ただけなのだろう。

元々俺は独りでやって来た。できないことはやらなきゃいいし、そこそこまでなら大体何でもやってこれた。

だから俺は人に任せる、ということができない。幾度となくともに死線を潜り抜け、こうしてパーティーを組んだことがあるこいつらでも俺は『いつか裏切るのではないか』と思ってしまう。

信用はできる。だが信頼はできない。俺という人間はそうなのだろう。

頼れ、と言ってくれたやつなど今までにいない。こちらが勝手に頼ったら容赦なく裏切られる。SAOではそれは文字通りの命取りなのだ。

情報屋や、商人プレイヤーのバックアップがないと攻略組は戦えない。

このSAOではさすがに俺も独りでは戦えない。だが、馴れ合うつもりなぞない。こいつらだって、なんやかんやで二年間ずるずる続いてきただけの関係なのだ。

俺には、失うものなどない。

なぜなら、なにも手に入れたことなどないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘でも危ない場面が増えてきた頃に、次の安全地帯(セーフティエリア)に到着する。当然誰も口を開かず、各々持参した昼飯を口に運ぶ。

……なんか、マジぃな。

いつも通りの出来なのだが、なんか不味い。トマトみたいな味がする。酸っぱくて、少し苦い。

それでも一応食べ物は食べ物なため、無理矢理胃に詰め込んだ。口直しにレモン水みたいな清涼飲料を飲み、リフレッシュ。だが口にはまだ苦々しさが残る。

 

「あ! の……」

 

最初は強く口に出したが、凄んだつもりはないのだが俺とアスナが顔を向けた途端に尻すぼまりしてしまう。

 

「その……戦闘も危ない、場面が……だから、その……隊列を……」

 

遂には囁くような声になってしまい、迷宮にはまた沈黙が降りる。さすがにいたたまれない。

 

「……まぁ……、そうだな。でも隊列は今がベストだろ、多分……」

 

いたたまれない? なんでそんなことを感じる?

胸にしこりがあるような違和感を覚えつつ、俺が絞り出した言葉に返答をするやつはいない。

なんで俺はこいつらと関わることになったのか。

……気紛れ、だな。そうでなかったら俺はこいつらをただの物……攻略組の一戦力として扱っていたにすぎない。

俺はこいつらを、こいつらは俺を利用し百層の攻略達成を目指す。ギブアンドテイク。

 

「……?」

 

しかしなぜかしっくりこない。頭のどこかで否定してくるような感覚を覚え、考えることをやめる。

 

――本当に大事なものは目には見えないんだよ。

 

ふと、その一節が頭をよぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休憩もそこそこに、俺たちはまたボス部屋の捜索をしていた。

 

「ふるるるぐるるるるぅ!」

 

お前声帯ないのにどうやって声出してんだよと言いたくなる風貌の骸骨騎士……正式名称《デモニッシュ・サーヴァント》は無骨な剣をアスナに振るい――、あっさりと弾かれる。

 

「………………」

 

通常、細剣使いと骸骨系のモンスターは相性が悪い。面で攻撃する片手剣や両手剣ならともかく、点で攻撃する細剣や槍は表面積が小さい骸骨系モンスターだと攻撃が当てにくいのだ。

そんなことにも構わず、【閃光】アスナは的確に騎士のウィークポイントに刺突を当てていく。

表面上こそ冷静に見える――表情が冷たすぎて、俯瞰すれば恐怖をするであろう――顔をしているが、内心は憤慨していた。

もちろんそれはエイト――八幡に向けているのも多少あるが、一番は自分自身に対するものだった。

――悔しかった。二年間命を預け合いながら七十三もの階層を突破してきて、未だ信頼されていないことが。

――悲しかった。未だエイトが誰かを信頼せず、今なお独りで戦おうとしていることが。

何より――許せなかった。エイトからの信頼を勝ち取れない自分自身が、なによりも。

最初の印象は、偽善者だっただろうか。

頼まれてもいないのに、見知らぬ人を助けて満足感を得る人だと思っていた。周りの人に負けないようにただひたすら親の言いなりになってきた自分とは違う人種だと。

次に抱いた印象は、変態だった。

いや、あの裸を見られた出来事は彼が悪いのではないことは頭では理解している。だが親以外の異性に裸を見られたら誰でもああなるはずだ……。多分。

決してこちらが良い態度をとっていなかった中、それでも彼は道を指し示してくれた。あの時言われたことを今でも鮮明に覚えている。

 

『――アスナ、この世界……《ソードアート・オンライン》はクリア不可能じゃない、だろ?』

 

思えば、当時は自覚がなかったが、あの時から彼に惹かれていたのかもしれない。

彼は確かに証明してくれた。SAOのクリアは夢物語じゃないと。いや、『してくれた』ではない。『し続けている』。最前線の地にその二本の足で立ち続け、相棒の剣を振るい続けることで。

不謹慎だが、嬉しいのだ。彼が最前線に立ち続けることが。

二年近くも前の言葉を覚えている気がして。それは今でも自分の芯になっていると断言できる。

あの時から、命をなげやりにするのは止めた。

あの時から、いつか彼の隣に並び立ち、支えたいと思った。

あの時から……わたしは、《結城明日奈》は、彼に恋をしている。

だから、今。

わたしは彼にわたしを認めさせてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、なぜ人を信じれなくなってしまったのか。

今までそれが当たり前だったのに、頭の中にその素朴な疑問がずっと根付いている。

空欄を埋め、完成した定理。

正しいはずなのに、どこか足りない。何かの計算を俺はまちがえた。

さっきまで正しいと思っていたものが、段々とまちがっているんじゃないかと思えてくる。いつもの俺、いつもの俺のやり方。なのに、解らない。

俺は、自分の行いを疑ったことはない。正しいかまちがいかなんて関係なかった。やり方を一つしか知らないのだ、俺は。

今回も同じことをした。済まそうと思えばそれで済ませられる。

計算終了。解は出た。まちがっていない。

俺が一人で敵に突っ込んで、二人がその間に包囲を突破する。……何がダメだった?

あれが一番効率がよかった。結果として群れを殲滅させることもできた。成果は充分すぎる。

……解らん。

必死に考えているからか、俺は気づかなかった。

――そもそも、なぜこいつらがこんな顔をしているのか突き止めようとしているのか、と……。


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