読者「本編書いてどうぞ」
ワシ「待ってくれ…」
読者「作者」
ワシ「待てって言ってんだろ! ああわかったよ、書きゃいいんだろ!」
読者「ああ、そうだよ。書いてくれ。次はどうやって頼めばいい? どうやって命令すればいい? 作者が望む完結まで」
ワシ「ヒェッ」
更新、止まるんじゃねぇぞ…
※上の茶番は十割捏造です。
攻略組にとって迷宮攻略とは必須スキルである。
上の階層に行くためにはボスを倒す必要があり、ボスにたどり着くためには迷宮区を攻略しなければならない。つまり、ゲームクリアのために最優先で身につけなければいけない技術の一つと言っても過言ではない。
況してや、情報も何もない状態で迷宮に挑むには決死の覚悟が必要なのだが……。
「さすキリ無双ゲー」
「どういう意味?」
さすがキリト無双ゲームの略。と胸中でだけ返答し、哀れ無双ゲーの雑魚キャラかのように斬り飛ばされるカエル型のモンスターに合掌する。
そもそもが攻略組トップクラスの戦闘センスを持ち、レベリング厨でもあるキリトが今更高々五十層か六十層くらいの敵に遅れを取るはずもなかった。いいぞもっとやれ。その調子で俺の仕事を無くしてくれ。
「終わったよー。次はエイトが戦う番だからね!」
「えぇ……いいじゃん次もお前で。お前は戦うのが好き、俺は休むのが好き。win-winじゃん」
「人をバーサーカーみたいに言うエイトは休ませてあげません!」
いいじゃんバーサーカー。クソ強い上にロリと不思議な絆を築けるんだよ? バーサーカーは世界で一番強いんだから!
「ふふ、仲が良いんですね」
「はは……否定はしません」
アスナさん? 何その自分達の子供が遊んでるのを見る親みたいな眼差し。俺、君より年上よ? ……そういえばいたなぁ、年が上ってだけでクッソ威張ってくるバイトの先輩とか。体育会系、何でそんな年功序列制なん?
「はい、投擲投擲投擲っと」
「投げナイフでキルするFPSプレイヤーみたいなことしてる……」
確かに似たようなもんかもしれないが、あそこまでガチ勢じゃないぞ。そもそもシステムに規定されたソードスキルはシステムによって補助されるのだから、エイムをそこまで正確にやる必要はないのだ。
「ほい、次アスナな?」
「はーい」
これでしばらくは休みである。装備の確認を一応してからシステムウィンドウを閉じ、閃光様の闘いぶりを見るが、やはりというか無双状態であった。戦国ASUNAですねこれは。
「お、お強いんですねみなさん……」
「まぁレベリングが趣味みたいなやつらばっかりですからね……」
バトルジャンキーキリトに攻略の鬼アスナ。攻略組でもトップクラスのレベルを持つメンバーなのだ。況してや二人揃っている状況下でボスクラスの敵以外に遅れを取るのは考えにくい。
——という考えがフラグであったのだろう。
目の前に立ちはだかるのは骸骨の体を覆う黒いローブ。手に持つは一目見ればわかる鋭い切れ味を持つであろうサイス。そして現時点で最高峰の索敵スキルを持つキリトですら識別できないレベル……強さ、恐怖共に見た目に劣らない死神がそこにいた。
「冗談じゃねぇぞ……」
文字通り運命を刈り取る鎌をどうにか躱すが、とても反撃する余裕などない。これがレイドでの戦いならそれでも良いかもしれないが、今はそこまでの戦力はない。ましてや相手は俺たちより遥かに強い。いつまでも避けられるとはこの一合だけでとても思えなかった。
だから、この言葉が出るのは俺にとって当たり前だった。
「逃げろ、お前ら」
「なっ……!」
怒った顔をしているのであろうことは容易に想像出来たが、ここは引けない盤面だ。だが誰かがやらなければ全員死ぬ。それは攻略組に属する俺たちはアインクラッドの誰よりも知っている。
「まぁ聞け。こいつを倒せる見込みがあるなら三人で戦うのがベストなのは違いない」
「なら!」
「だけどお前らもわかってんだろ? そんな可能性は一厘たりともない。なら逃げるしかないよな? その為には足止めがいる……それに適任なのが俺っつーだけの話なんだよ」
ボス戦でヒースクリフとともに攻撃を捌き続けて来たのはキリトでもアスナでもなく、俺だ。火力でキリトに敵わなくとも、正確さでアスナに敵わなくともあいつらだって人間だ、俺が勝る部分だってある。
「……理屈としてはわかる、けど……また、私達を置いてくの?」
「まぁ待て。これまでみたいな、ああいうのは……やめだ。その上で、三人が生き残る可能性が高い方法がこれなんだよ」
ヒースクリフを除けばという枕詞は付くが、攻略組で一番タゲを取って来たのは俺だ。格上だからこそ、攻撃を捌くのは一人でやりたい。そして今ユイ達がいる
「……うん、わかった。信じるよ」
「おう、まあ任せとけ。——よし、行け!」
合図と同時にアインクラッド最高峰の敏捷力を活かし、一目散に部屋へと駆けて行く。それを阻止せんと死神が鎌を振るう予備動作をするが、ヴォーパル・ストライクを隙だらけの体に放ち意識をこちらに向けさせる。
俺の攻撃は軽い。だから硬直時間が長いというリスクがあるにしても高火力なヴォーパル・ストライククラスのソードスキルじゃないとタゲが取れないと思っていたが……予想は間違っていなかった。浮かぶHPバーはミリ単位すら動いていないが、今回は勝つのが目的じゃない。
鎌のソードスキルなんて見たことも聞いたこともないが、両手武器というのは総じて一撃一撃の隙が大きいと相場は決まっている。次の一撃を捌けなければ……俺の
……死ねない。
今までは死にたくないから生きてきた。死は怖く、忌避すべきものだと思い、生きていたいという理由はこの二十年近くの人生で見つからなかった。けれど、漸く見つけたのだ。
バカみたいなお人好し。自分の命が懸かっているのに、人殺しをした俺なんかを見放さず、命を預けてくれた
だから、そんなバカがせめて損をすることがないよう戦うのだ。
「ヌゥッ!」
剣でマトモに受け止めるだけで俺には致命傷になり得る。回避なんて言えないくらいに無様に転がり、どうにかこのボスの攻撃をいなすが、離脱するだけの隙がない。意識を他に割いたら死へとまっしぐらなのが理解できてしまう。
「クッソ……!」
どうしても躱せない時に強いられるソードスキル。しかも圧倒的な能力値差をカバー出来るだけの上位高威力の技相応の硬直時間が俺を後手に回らせて行く。まるで崖側にじわじわと追い詰められているかのように死に少しずつ近づいていた。
「エイト……!」
キリトの心配そうな声が剣戟の合間に聞こえる。パーティーを組んでいるから、俺のHPバーが段々と削られているのが見えているのだろう。打開策はないか、思考を巡らせる。
……リズベット、すまん!
剣を逆手に持ち替え切っ先をあの死神へと向け、SAOで片手剣スキルと同じくらいお世話になったスキルを発動する。
「行けッ!」
投擲スキルの一つ、ポイント・シュート。筋力と敏捷力補正で威力が上がるのが特徴の上位スキルだ。それに加えてもう一つ、このスキルで放たれた武器が敵の弱点に当たると僅かな時間ではあるが相手を硬直させることが出来る。
とはいえ、投擲武器じゃ威力が足りない。だが幸い俺には
弱点に当たるかなんて確証はない。トレイターですら威力が足りなくて怯ませることが出来ないかもしれない。もし一つでも条件を満たせなければ俺の命は間違いなく刈り取られるだろう。
——だが俺は賭けに勝った。
後ろから死神の苦しげな声が迷宮に響いた。確かに怯んでいるのかまでは声では判断できなかったが、最高速を緩めないために振り返らずに走った。
前に見える部屋の明かりがどんどん近づいていき、キリト達の表情が段々とハッキリ見えてきた。それは、安堵の表情から、絶望の表情へと変わった。
「なん、で……?」
確かに隙を作り出したはずの死神が、黒い靄から姿を現わす。思わず先程まで死神がいた場所を見てしまう。そこには闇が広がるだけだった。……いや、よく見れば死神が現れたところにあるのと同じ黒い靄がある。
「空間転移……!?」
じつにシンプルで強力な能力に思い至り、心中で呪詛を吐き捨てた。なんてクソゲー、今まで鍛え上げてきた敏捷力を全否定された気分だ。
そんな俺を嘲笑うかのように、死神はゆっくりと鎌を持ち上げた。まるで咎人を裁く処刑人かのように、ゆっくり、ゆっくりと。
——あ、こりゃ死んだな。
死神の動きが緩慢に見えるのに体は動いてくれない。或いは、死を間近にした人間の感覚が鋭敏化したことによる引き延ばしか何かか。今となっては詮無きことだ。
命を刈り取る形をした鎌は容赦なく振るわれ、黒鉄宮地下の迷宮が紅いエフェクトで彩られた。
原作沿うところは書きづらいんぢゃあ〜
というか百何十話書いて未だにSAO編終わらんだめ作者とかおる?(鏡から目を背けつつ)
誤字あったら報告お願いいたします