ソロアート・オフライン   作:I love ?

25 / 133
いやー、ぜんっぜん!進まない。
プログレッシブの内容飛ばした方がいいですか?
SAO編が百話でも終わらなそうなんですけど……


余計なことに、比企谷八幡は口を滑らせる。

三人が去ってから俺はベンチに腰掛け鍛治屋の方を向いていた。

その隣にはアスナ………何故だ。

本来なら、背中にあるスチールブレード+3を強化しようと来たのだ。

俺はマロメの村で腕のいい鍛治屋がいる、と小耳に挟んだ(盗み聞きじゃないよ!たまたま聞こえただけだよ!)ので、わざわざウルバスまで来たのだ。

それをさっきの騒動のせいで水を差されたのだ。

別に、気にせず「強化お願いしまーす」と言えばいいのだが、まさかプレイヤーとは……

おまけに先刻聞いた話が更にプレッシャーだ。七割成功で+4から0とは……

もし俺のスチールブレード+3が0にでもなったりしたら……うん、損害賠償を求めるな。

さて、そろそろ聞くか。

 

「……で?何でお前居んの?」

 

「何でって、あなたもあの鍛治屋さんに強化頼みに来たんじゃないの?」

 

えー、何コイツ怖い。何で分かるの?八幡検定何級?

 

「……何でお前分かるんだ?エスパーなの?」

 

そう言ったら、はあ、とため息を吐かれた。何故だ。

 

「そんなわけないでしょ……一昨日の夜にマロメで会った時、東の岩山エリアで、あなたと一緒に《レッド・スポデット・ビートル》狩りしに行くって……キリトちゃんが」

 

キリトかよ……というかキリトにちゃん付けって違和感ありまくりだな。

いや、容姿とか性格が問題じゃなくて、名前が。

あとなんかキリトとかアスナとのエンカウント率高いんだよなぁ……

 

「お、おお……勉強してんだな」

 

「何?その反応」

 

おおう……いちいち反応が怖いなコイツ……

 

「ひ、ひや、最初に比べると随分MMORPGのきょと分かっちぇっるなちょ思いまちて」

 

「…………」

 

い、いや本当に情報は大事だからね?ホント、マジで。

俺の心のアドバイス(言い訳)が通じたのか、特に何も言って来なかった。

 

「最近、いろいろ勉強してるから」

 

俺はそうか、とだけ呟く。

……さて、ついつい忘れがちだが、俺は『ビーター』と呼ばれている(勝手に)のに対し、相手は二人しかいない、最前線女性プレイヤーの片割れだ。あまり一緒にいるのはよろしくない。

「んじゃ、俺用があるか「嘘吐かない」ら……」

 

だから何で分かるのん?プライバシーの侵害だ!

 

「ねえ、何で元ベータテスターじゃないって言わないの?」

 

一瞬だけ自分の体が止まったのが、自分でも分かった。

このまま帰ろうとしても、帰してくれないだろう。

 

「はあ……別に大層な理由じゃねーよ」

 

「それでもいいから教えて」

 

その声は有無を言わさない迫力があった。

……はあ、まあ教えてもいいか。

 

「はあ、まず一つ、ベータテスターの中で区別をつけることだ」

 

「区別?」

 

「そうだ、ビギナーはベータテスターを憎んでる……少なくともいい感情を持ってないのは一層で分かったろ?」

 

少しだけローブが上下に動いた。

……まあ、ベータテスターだと隠していたけど、上手くやっていた例外はいた……が、ディアベルはもういない。

 

「だが、そこにビーターという悪のベータテスターが現れたことで、ベータテスターの中でも明確に区別を付けさせた。これが一つ」

 

そう、人間のグループやカーストのように分けることで、悪と善のベータテスターは関わることはなくなるだろう。

 

「その二、区別した善のベータテスターを被害者にすること」

 

「被害者?」

 

まあ、これだけじゃわからんわな。

 

「ビギナーは、ベータテスター全体を憎んでいたが、実際はビーターが悪いと思い直した。少なくとも、ベータテスター全員が悪いわけじゃないと思った。ここまでは理解できるか?」

 

今度はローブが大きく上下に動いた。

俺は更に説明を続ける。

 

「つまり、何の罪もない者達を嫌い、迫害し、遠ざけた。だから、何かしらの罪悪感ができるはずなんだ」

 

ここまでは理解できたらしい。……頭の回転が早くて助かる。

 

「つまり、だ。自分達はビーターという加害者に傷つけられた被害者だ、という仲間意識ができる」

 

「ビギナーは、ビーターに見捨てられ、ベータテスターは、ビーターと同じにされ、迫害を受けた、が具体例だな」

 

これは約二ヶ月前の文化祭でも使った手段だ。

 

「人を最も団結させるのは、共通の敵だ。ビーターという敵ができたビギナーとベータテスターは、協力するだろうな、めでたしめでたし」

 

「待って」

 

立ち上がり、今度こそ帰ろうとしたら手を掴まれた。

 

「質問の答えになってない。わたしは、何でベータテスターじゃないって否定しないのかを聞いた」

 

「誰かがやらなきゃいけない立場であり、俺が適任だからだ」

 

そう、実際こんな役割幾度となくやっていた。

文化祭もそうだし、中学時代の時は、やってもいないことを押し付けられて怒られたことなんてザラだ。

俺は、きっと、この役割から変われないし、変わる気もない。

カースト最下位のボッチは、身の丈に合った生活をしてればいいのだ。かなり楽だし。ボッチって。

 

「んじゃ、そういうわけで、あまり俺に関わらない方がいいぞ」

 

何度目になるだろうかと思って、ベンチから腰を浮かす。

 

「……元テスターへの恨みや妬みを全部一人で背負おうだなんて、無茶しすぎのかっこつけすぎだと思うけど……」

 

無茶してないし、かっこつけてもいない。と心の中で弁明していると、アスナは更に続けた。

 

「それはあなたが決めた選択なんだからわたしは何も言わないわ。でも、それならわたしの選択も尊重してよね。他人に何を思われようと、わたしにはどうでもいいこと。あなたの友……仲間と思われるのが嫌なら、最初から声掛けたりしないわ」

 

……なるほど、そう切り返してくるか。

仲間、という単語について、否定しようとしたが、今のコイツの目には何の嘘、偽り、虚偽、欺瞞がないのでやめた。

……肯定もしないが。

 

「別にお前の選択に口挟む権利なんかないから構わんが……」

 

さて、ここで何か裏があると思うのが俺だ。

……俺と関わってもメリットがないことを提示してやろう。

 

「別に俺に関わったからって何もメリットないぞ?金とアイテムはやらんし、情報だってキリトとか《鼠》のほうが持ってる」

 

ふっ、言ってやったぜ。

……我ながら卑屈だ。

 

「別にメリットなんて求めてないわよ……」

 

……あきれ声で言われてしまった。

あるぇー?おかしいなぁ?仲間とか言う奴は何かしらメリットを求めてるもんだと……

 

「メリットなんか求めてないし、それはもういいからあともう一つ教えて」

 

「……なんだよ」

 

なんかコイツと話してるの長くね?とか思って聞いている。

 

「あなたが武器強化躊躇ってる理由。実は、わたしも今日、あの鍛治屋さんにこの剣の強化お願いしようと思って来たのよね」

 

「……そうなのか」

 

妙な偶然だ。やっぱりコイツも小耳に挟んで(盗み聞きして)ここにきたのか?

 

「……それ、確か+4だったか?」

 

その言葉にこくりと頷いた。

 

「……強化素材は持ち込みか?何個ある?」

 

「えーと……《プランク・オブ・スチール》が四個と、《ニードル・オブ・ウインドワスプ》が十二個」

 

「へえ、頑張ったんだな。……けど……」

 

俺はアニールブレード基準だが、そのアイテム量の成功率を何秒もかけて暗算した。

……やっぱり数学なんて必要ねぇ……

 

「それでも八割くらいじゃないか?」

 

「賭けるなら充分な数字じゃないの?」

 

「まあ、そうなんだが……さっきの見てからじゃなあ……」

 

ぶっちゃけ、成功率操作してんじゃねーの?と思うくらい見事な失敗だったな、あれは。

鍛治屋の方をチラリと見る。アスナも一瞥してから軽く肩をすくめた。

 

「コインの表が出る確率は、一回目の結果にかかわらず常に五十パーセントよ。さっきの人が何回失敗しても、わたしやあなたの強化試行には無関係でしょ?」

 

たくましいっすね……アスナさん……

まあ、決めるのは剣の持ち主だし、口を挟めるわけじゃない。が、アドバイスくらいはしてやろう。

 

「……失敗させたくないなら、もっと素材を集めたほうがいいぞ」

 

見たところ、完璧を追及しそうなタイプだしな、お前」

 

「ふぅん」

 

な、なんだ、この底冷えする声はっ!

 

「あ、あの、アスナ……さん?」

 

「そこまで言うなら手伝ってくれるのよね?わたし、妥協は嫌いだし」

 

ま、まさか、声に出てた……のか…?

 

「エイト君?手伝ってく・れ・る・の・よ・ね?」

 

「い、イエス、マム!!」

 

「ちなみに、ウインドワスプの針のドロップ率は八パーセントですから」

 

な、何?

 

「…………え?」

 

「そうと決まったら、さっさと狩場に行きましょう。二人なら、暗くなる前に百匹は狩れるわね」

 

「…………え?」

 

何?百匹?どこのブラック企業?

呆ける俺をよそに、アスナは更に言う。

 

「わたしとコンビ狩りしに行くなら、フード取ってね?腐った目が隠しきれてなくて、かえって怪しいから」

 

こんな時に、某ツンツン頭の気持ちがわかる。

 

「…不幸だ……」

 




次回!キリトを交えての三人の狩り!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。